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「いい本屋」ってどんなお店? 本好きな夢眠ねむが、「独立系」書店店主から聞いた大切なこと

「いい本屋」ってどんなお店? 本好きな夢眠ねむが、「独立系」書店店主から聞いた大切なこと
Photo: 印南敦史

ご存知でしょうか? 本日11月1日は「本の日」です。「111」と並ぶ数字の1が、本が並んでいるように見えることから決まったのだとか。

また、そこには「想像、創造の力は1冊の本から始まる」というメッセージも込められているのだといいます。そこで、本に関連した書籍をご紹介したいと思います。

『本の本』(夢眠ねむ著、新潮社、2017年11月発売)がそれ。著者は先ごろ、芸能活動10周年を機にアイドルグループ「でんぱ組.inc」からの卒業、そして芸能界引退を発表した人物です。

この本は文字通り、小説でもなければ写真集でもない、「本」そのものについての本です。私は本が好きです。そして、なにより本屋さんが大好き! 一度行けば両手に紙袋をぶら下げて帰るほど。

しかしある時、深刻な本離れによって本屋さんが減っているというニュースを知ってから、心がざわついていました。(「はじめに」より)

著者自身、ネットで本を買うことも多く、電子書籍にもお世話になっているのだといいます。

しかしその一方には、「そういわれてみれば、昔より本屋さんに行って本を買うことが減ってしまったかもしれない」という思いも。

そこで、本のためになにかできることはないだろうかと考えていたとき、「ほんのひきだし」というサイトから、本についての連載夢眠書店開店日記のオファーを受けたのだそうです。

本書は、その連載に書き下ろし分を加え、加筆・修正してまとめたもの。

本が大好きなアイドルである著者が、いつか「夢眠書店」を開店させるために、本について学ぶという内容。具体的には、本に関わるさまざまな職種の人々と、著者との対談形式になっています。

きょうはそのなかから、第2話「ねむ店長の師匠!? 独立系書店の作り方」に焦点を当ててみたいと思います。

この章で登場するのは、大手書店チェーン「リブロ」から独立し、東京・荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店「Title」をオープンした辻山良雄さんです。

どんなふうにして「書店員」になったのか

本好きが高じて書店員になったという辻山さんですが、そのきっかけが訪れたのは浪人時代。予備校へ毎日往復1時間くらいかけて電車通学していたため、その時間を利用して本を読みはじめたらはまってしまったというのです。

子どもの頃からたくさん読んでいたとか、そういう訳ではないです。(27ページより)

そして大学生時代には出版社でアルバイトをしていたため、なんとなく本の近くにいたのだといいます。そのため就職する年齢になったときにも、本を扱う仕事に就くことしか考えなかったそうです。

おもしろいのは、結果的に出版社ではなく書店に就職したということ。出版社を受けようと思っていろいろ調べているうち、「本屋」という仕事もあることに気づき、採用情報を調べて受けて見たら採用されたというのです。

(そのころは)まだ「いい時代」と言われていましたね。本が一番売れていたとされるのが1996年くらいで、私がアルバイトをしていたのもその時期にあたるので、「未来は明るい」という雰囲気でした。

なので、問題意識を持って出版業界に入ったというわけではなく、自然な流れで本の中で働くようになり、今この店をやっているという感じです。(28ページより)

自分の店を持ちたいという思いも、ぼんやりと持ってはいたといいます。しかし、なかなか実現に至らなかったのは、当時やっていた仕事もおもしろく、いつの間にか時間が過ぎていってしまったから。

ところが、そののち転換期が訪れることになります。

2015年に、そのとき働いていたリブロ池袋本店が閉店することになったんです。それがひとつの区切りのように感じられて、「新しいことをやってもいい」「自分でやってみよう」と思いました。

リブロでは長く働いていたので、次第に管理職になってしまったんです。書店といってもひとつの会社なので。でも私はもう少し、本が売れていく現場の中にいたかったんですよね。

そうするとやっぱり、自分で場所を作るのが一番早いかなと。(28ページより)

そんな経緯を経て「Title」を開店した辻山さんは、本屋さんには、実際に見るからこそ感じられる「質感」のようなものを大事にする人が多いと感じているそうです。(27ページより)

どんなふうに「本屋」をつくってきたのか

一口に本屋といっても、その個性はさまざま。個人店の場合は特に、店主のカラーが反映されるはずです。辻山さんの場合は、「Title」をどんな店にしたいとイメージしていたのでしょうか?

本屋を始めるには、まずは「場所」が必要ですよね。独立して本屋を始めるにあたっては、まずそれが決まらないとイメージが湧かないなと思っていたんです。

実際、場所がここに決まると、例えば「住宅街の中だから、かっこいい本屋というよりは年配の方からお子さんまで皆が知っている本屋にしたい」とか、具体的なイメージをもつようになりました。(29ページより)

そして重要なのが、「こういう本を入れたい」というこだわりの部分。著者も「Title」を訪れた結果として、「街に自然になじみつつ、本のセレクトにも気を遣っているな」と感じたそうです。

果たして、選書に関してはどのようなことを意識しているのでしょうか? また、どのような本が人気なのでしょうか?

中央線沿線って、昔から本好きな人が多いんですよ。なので例えば文学ひとつとっても、しっかりした外国文学や純文学、詩などがよく売れます。(30ページより)


本を一冊一冊選んだり、商品が開店して新しく仕入れたりするときには、お店に来てくれるのはどんな方か、どんな本が好きかということも考えます。(30ページより)

何度も仕入れている本であれば、たいていはまた同じように仕入れることになるでしょう。

しかしそれだけではなく、あまり回転していない本でも、昔から定評があるものだったり、そこに挿さっているだけで棚がピリッと引き締まって見えるようなものは仕入れるのだといいます。

そういう本は切らしてはいけないと、昔から言われているのだそうです。とはいえ当然のことながら、そういう「常識」のようなものは誰かから教わるわけではありません。

「俺の背中を見ろ」という感じですね(笑)。マニュアルがあって「この本は切らしてはいけません」と書いてあるわけじゃないんですよ。

長年本屋をやっている人の「これは昔からあって、いい本だ」という情報が、継承されていくんです。(31ページより)

そして辻山さんは、いつか自分の本屋を開きたいという夢を持つ著者に対し、「締りのある棚をつくるためには、いろいろなタイプのお店を見てみるといい」と助言しています。(29ページより)

「いい本屋」ってどんなお店?

では、他のお店に足を運んだ際、辻山さんはどの棚を見て「いい本屋だな」と感じるのでしょうか?

私の場合は人文学や芸術、文学とか、そういう棚を見がちです。でも結局のところ、お店はお客さんと一緒に作っていくものなんですよね。(32ページより)

この問いに対する著者の質問は、「『いまのこの棚、完璧!』と思う瞬間ってありますか?」というもの。

ないですね。でも今の店はぐるっと見渡して把握できる規模なので、「手の内に入っている」という感じがします。

今までは大型店にいたので、売れるのが当たり前だったり、一日に200~300点もの新刊が毎日入ってきてとても覚えきれなかったりしたんです。

今はそれぞれの棚にどんな本が挿してあるか、だいたい分かっています。うちでは世間一般の売れ筋よりも、そこから少し外れた「オルタナティブ」と呼べるような本が結構売れているんです。そういうところも「Title」らしいなと思います。(33ページより)

小さい店ほど、自分の個性を出したほうがお客さんにつたわりやすいということ。そこには、これから本屋を開きたいという思いを抱いている人に対してのヒントが隠されているようにも思います。(32ページより)




他にも著者は、大型書店店長、ブック・コーディネーター、本の流通センター担当者、編集者、装丁家、校閲者などに興味深い話を聞いています。

本が好きな人なら、きっと楽しめる内容。この機会に、手に取って見てはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

印南敦史

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