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ビジネス書はスマホで書くと面白くなる。『転職の思考法』著書と人気ブックライターが語る、ヒット作のつくり方

ビジネス書はスマホで書くと面白くなる。『転職の思考法』著書と人気ブックライターが語る、ヒット作のつくり方
Photo:ライフハッカー[日本版]編集部

11月1日、「本の日」に開催されたトークイベント「だから、本は面白い」。

今年10月に上梓され10万部のヒットとなった『転職の思考法』の著者である北野唯我さんと、ブックライターである上阪徹さんが「本」をテーマに語り合いました。

平日毎日「書評」を掲載しているライフハッカー[日本版]ですが、私たちがいつも読んでいる人気のビジネス書はどのように作られているのでしょうか? その背景を聞くことができました。

登壇者プロフィール

上阪 徹(うえさか とおる)| 公式ページ

1966年、兵庫県生まれ。89年、早稲田大学商学部卒。リクルート・グループなどを経て、94年よりフリー。2011年より宣伝会議「編集・ライター養成講座」講師。2013年、ブックライター塾開講。これまでに担当した書籍は100冊以上、携わった書籍の累計売上は200万部を超える。

『10倍速く書ける 超スピード文章術』『マイクロソフト 再始動する最強企業』など自著も30冊を超え、ビジネス書作家としての顔も持つ。インタビュー集に40万部を超えた『プロ論。』シリーズ、『外資系トップの仕事力』シリーズなど。

北野 唯我(きたの ゆいが)| Twitter

新卒で博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ハイクラス層を対象にした人材ポータルサイトを運営するワンキャリアに参画、経営企画担当の執行役員。

また「職業人生の設計」の専門家としても活動し、TV番組のほか、日本経済新聞、東洋経済、プレジデントなどのビジネス誌でコメントを寄せる。初の著書『転職の思考法』が10万部突破のベストセラーとなっている。

スマホで書く? 著者たちの文章術

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(左)上阪徹さん(右)北野唯我さん
Photo:ライフハッカー[日本版]編集部

北野:上阪さんはブックライターとして、文章を書く時に意識していることはありますか?

上阪話すように書くことです。まさに、今ここで話しているように。文章を書きはじめると「うまく書こう」と思ってしまい、手が止まってしまうことはありませんか?

これは、「小学校で習った書き方で書く」という呪縛にかかっているから。

学校で習う書き方は「起承転結」という作家さんの書き方ですが、僕が生業とするビジネス書等の書き方とは異なります。ビジネスシーンではメールを起承転結で書く必要はもちろんないわけですが、学校で教わってないからうまく書けないんですよね。

北野: 僕もそこは同じ感覚です。プラスでいうと、実は『転職の思考法』ってスマホで全部書いたんですよ。最初はパソコンで書いていたんですが、夜の10時に家に帰ってから書こうと思っても、疲れていて頭が回らない。

そこで、ソファにゴロッと転がってスマホで書きはじめたんです。そうしたらすんなりと進んで、1時間で3000文字ほど書けたんですよね。しかも、スマホで書いた文章のほうがおもしろい。

スマホは長い文章は書けずシンプルになりやすい分、喋っている感覚に近いと思いました。パソコンだと考えすぎてしまい、文章が難解になることも多い。上阪さんがそのほかに意識していることはありますか?

上阪:「文章を書くための素材を用意する」「書き出しと締めをしっかり書く」ということも大切です。僕は小さいころからあまり本を読んでこなかったので、できれば読みたくない(笑)。(読むよりも)人に話を聞いたほうが早いというのもあります。

僕のように「できれば読みたくないという人」にとって、つまらない書き出しはアウトです。

北野:以前、ライターの古賀史健さんに本を書くときのポイントを聞いたら、デパートを意識していると。

デパートに例えると、本の1章はデパートの1階。そこから不思議な世界が広がり、2階もまだその世界観を引き継いでいる。そして3階になると実用的な世界が広がっていき、最後、屋上に抜けるような開放感がある。書籍の章も同じ構成であるべきだと。

『転職の思考法』も、最初は「違う世界に来たぞ!」という章になっていて、最後の終わり方が気持ちいいという感想をいただくことが多いので、デパートのような構成になっているのかなと。構成に関して、上阪さんのこだわりはありますか?

上阪:膨大な情報量をどう整理すれば読みやすくなるか? ということは意識します。

忙しいビジネスパーソンの中にはビジネス書は1章しか読まない、という人もいるので、冒頭を読んだら「最初から最後まで一気読みできるような文章・構成」にすることが大事です。

インタビューにおいて大切なこと

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Photo:ライフハッカー[日本版]編集部

北野:上阪さんは本づくりのプロセスで何千人にもインタビューをされていますが、インタビューで気をつけていることはありますか?

上阪:相手のことを事前に調べすぎないようにしています。また、インタビューの最初は数字で答えられることを聞きます。

たとえば、「何年生まれですか? 従業員何人くらいですか?」などですね。そうしたジャブを打ってから、本質的なことを聞くようにします。

あと、質問項目は事前に送ることが多いですね。そのほうが親切だと思います。

北野:インタビューにおいて、「どれだけ良質な質問を準備しているか」は重要ですよね。とくに一流の人にとっては「良質な質問を用意すること」こそ、最高のギフトになりますから。そして良質な問いとは「その人にしか答えられないもの」であることが多い。

たとえば、昔、為末大さんと対談した時に、スポーツとビジネスって全然異なるもののはずなのに、なぜビジネスパーソンはアスリートの言葉に耳を傾けるのか? という疑問をぶつけました。これも言語化能力が高い為末さんだからこそ「答えられる問い」ですよね。

上阪:僕の場合は、話の中で自然とキラークエスチョンが出てきますね。話してくるうちに、相手のことが次第にわかってくる。そこで、「いや〜いい質問だね」と言われるとうれしい。

ひねった質問をすることもありますが、意外にシンプルな質問のほうが相手がドキッとするもの。「今更こんなこと聞く?」というような青臭い質問もします。

「HOW」ではなく「WHY」を聞け

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Photo:ライフハッカー[日本版]編集部

北野:本の執筆から離れますが、僕がチームをマネジメントする際に一番重要にしているのは、「Why」を聞くということです。

仕事って「How」の話ばかりしてしまいがちですが、「なぜそう考えたのか?」と聞くことは、その人の存在を認めるということ。

本づくりのためのインタビューにおいても、その人が「なぜそれをやっているのか?」に想像を膨らませるというのが、シンプルだけど重要なことだと思います。

上阪:わかります。経験豊富な人はHowの質問を嫌います。以前、養老孟司さんに「若い人はこれからどう生きていくべきか? どうするべきか?」と聞いたら、「明日のことは誰もわからないから、聞かないでくれ。自分で考えるしかないんだ」と言われたことを覚えています。

また、ハリウッドの映画監督にインタビューした時、「このインタビュアーはなぜ、Howばかり聞くんだ!」と言われたこともあります。そのときに、僕は間違っていたと気がつきました。できるだけ「Why、What」の話をする。Howに本質にはないということですね。

インタビュー中に相手に信頼してもらうのは簡単ではありませんが、冒頭で「今日はなにをしにきたのか」をきちんと伝えることが大切です。誰でもいきなり質問されるのは嫌なもの。意外と忘れている人もいるので、これは意識しておいたほうがいいと思います。

『転職の思考法』の販売戦略

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Photo:ライフハッカー[日本版]編集部

上阪:世の中には転職に関わる本が数多くある中で、『転職の思考法』が10万部超えていると聞いて驚きました。

小説的手法を使っているので読みやすいし、世界観がいい。社会的問題意識、日本はどうあるべきかという視点を織り交ぜ、高い視点から転職について考える本になっていると思います。それだけ売れたのは、何か理由があるのでしょうか?

北野:ありがとうございます。『転職の思考法』は売り方も戦略的に行いました。大きく分けると、3つのことを意識しました。

1つ目は、ダイヤモンドオンラインで本の記事を書いたこと。僕はオウンドメディアを運営しているので、ネットの文脈を理解して文章を書き、PVを伸ばしました。

2つ目は、ユーザーの体験を拡張するということ。この本が出る前にFacebookグループを作って、最初の50ページを無料で読めるようにしました。ただし、コメントをくださいという条件付きで。この時点で、150人くらい集まりました。

その上で、発売後は、「#転職の思考法 で呟いたコメントは全部見る」とTwitter上で宣言しました。これって、読者の人からすれば最高のユーザー体験ですよね? だって、自分が感動した本の著者から直接コメントがくるわけなので。

3つ目は、口コミを発生させるということ。どうしたら口コミが生まれやすくなるのかと考えたときに、感想の書きやすさが大切だと思いました。転職の思考法はAmazonのレビューが149件、レビューも平均4.5点(2018年11月時点)と高い数字を出していますが、本来、本についてレビューを書くというのは難しいものです。

しかし、文章がシンプルで読みやすければ、「本が読みやすかった」という感想は誰でも書ける。だから、最大限読みやすいようにしました。

また、「SNSで引用しやすい印象的なフレーズや画像を使う」ということも意識しています。印象に残ったフレーズを引用することで、口コミをしやすくなります。

上阪:SNSで口コミを発生させ、購入してもらいやすくすると。そうしたネットでの動きは、リアル店舗での売上にもつながっていますか?

北野:ネットの口コミだけで本を買うというのは、そこまで多くありません。しかし、だからといって無駄ということではなく、何度も何度もネットで口コミを目にすることで、本屋に行ったときに「お、この本か」と手に取ってもらうことはあると思います。

今後どのように本と関わっていくか

北野:僕は人の可能性を阻害しているものを排除したいと考えていて、『転職の思考法』には「転職を阻害するものを取り除きたい」という思いがあります。

だからこそ、売れなかったら意味がない。5000部しか売れなかったら、5000人にしか届いていないということですからね。また、30歳の僕に転職の本を書かせてくれた出版社もリスクをとっているので、自分のできることは精一杯やろうと思いました。

本はやり方次第でまだ「売れる可能性」があると思います。僕自身も人生の節目で本に出会い、助けられているところもあり、できるだけ出版業界に恩返ししたいと思っています。

上阪:僕にとっては、仕事で人の役に立てる、喜んでもらうというのが最大のモチベーションです。20代のころは、「超一流のクリエイターになるんだ」と自分のために書いていました。

しかし、働いていた会社が倒産して、世の中から必要とされない辛さがわかりました。お仕事をいただけるということは、必要とされること。今後もいただいたお仕事を必死にやるということは、変わらないと思います。


Photo:ライフハッカー[日本版]編集部

Source: Peatix

島津健吾

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