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「頭のいい伝え方」をする際のポイントは、「ちょい出し」を活用すること

「頭のいい伝え方」をする際のポイントは、「ちょい出し」を活用すること
Photo: 印南敦史

私は大学院で物理を勉強し、卒業してから広告代理店で数年間、営業マンとして働いた後、ベンチャー企業を経て、経営コンサルティングの会社に転職しました。

広告代理店やベンチャー企業での経験を通して、人を活かし、人を動かして成果を上げることに手応えを感じ、次は「会社を動かす仕事」に挑戦したい、と考えるようになったからです。(「はじめに」より)

頭の悪い伝え方 頭のいい伝え方』(高橋輝行著、アスコム)の著者は、自身の経歴についてこう説明しています。ちなみにそれ以前は、自分の「伝え方」に問題があるとは思っていなかったものの、経営コンサルタントになったとたん、「伝え方」にダメ出しをされることが増え、自信が崩れ去ったのだそうです。

そして、そのようななかで試行錯誤を続けていった結果、あることに気づいたのだといいます。それは、「世間で『頭がいい』と思われている人の多くは、『頭のいい意見を出す人』ではなく、『頭のいい伝え方ができる人』」だということ。

そこで研究を続けた結果、ふたつのことがわかったのだそうです。まずひとつは、「頭の言い伝え方」ができている人はみな、だいたい同じテクニックを使っているということ。もうひとつは、言葉の選び方のセンスや語彙力がなくても、そのテクニックさえ身につければ、「頭のいい伝え方」ができるようになるということ。

ところで著者は、「頭のいい伝え方」の鍵は、次の3点にあると考えているといいます。

・いかに聞き手の感情に寄り添い、『話を聞きたい』という気持ちを持続させるか

・いかに自分の考えや物事、状況などを正確に言語化するか

・いかに相手の頭の中を整理してあげるか

(「はじめに」より)

そして、それらを実現するために特に必要なのが、次の5つのテクニックだというのです。

①「ちょい出し」 相手に聞く準備をさせる

②「時間」 時間を明確に伝え、相手のストレスをなくす

③「ジャストアイデア」 相手が耳をかたむけやすくする

④「簡略化」 長い説明を簡略化し、明確にする

⑤「細分化」 曖昧な説明、依頼を明確にする

(「はじめに」より)

つまり本書では、これらを軸として「頭のいい伝え方」を解説しているわけです。きょうは第1章「今日からできる! 『頭のいい伝え方』の速攻テクニック」のなかから、もっとも基本的なテクニックだと言えそうな「ちょい出し」に焦点を当ててみることにしましょう。

頭の中整理し、「聞く準備」をしてもらうためのテクニック

著者によれば「ちょい出し」とは、「なにかを説明する際、話の結論や本当に伝えたいことを、最初に提示すること」。単純なことのようにも思えますが、そこには次のようなメリットがあるのだそうです。

・話のもっとも大事な部分が、相手に伝わりやすい

・話の着地点を最初に提示することで、相手のストレスを減らし、相手の興味をひくことができる

(26ページより)

人になにかを伝えようとして、ついつい話が長くなってしまい、相手にイライラされてしまったというようなことはあるものです。あるいは逆に、人から要領を得ない話を延々と聞かされ、「この人は結局なにが言いたいんだろう?」と感じたこともあるのではないでしょうか?

「高校時代に、ある同級生がいたんですよ。彼はおとなしくて目立たないタイプで、成績も中ぐらいだったし、スポーツも特に得意ではなかったし、友だちもそれほど多い方ではありませんでした。ただ、読書が好きで、休み時間や学校の行き帰りもずっと本を読んでいました。その彼がいつの間にか小説家になっていて、最近、××賞を受賞したんです。いやあ、びっくりしました。人生、何が起こるかわかりませんね」(26ページより)

たとえばこのような話し方をしてしまうと、相手は「どうしてこの人の同級生の話を聞かされているんだろう」とストレスを感じたり、途中で話に飽きてしまう恐れがあるわけです。

なぜなら人は、「先の見えないこと」に対して不安感や不快感、モヤモヤした気持ちを抱く傾向があるから。

しかも前置きが必要以上に長ければ、そのぶん「同級生が××賞を受賞した」という、もっとも伝えたかった情報のインパクトも弱くなってしまいます。

でも最初から「いやあ、びっくりしましたよ。高校時代の同級生が、××賞を受賞したんです」と切り出したとしたら、相手は「いまから、その同級生の話を聞くのだ」と心の準備をすることが可能になるわけです。

もうひとつ例を挙げましょう。

会社の同僚や家族などから「確認したいことがあるから、別室で話そう」とか、「話し合いたいことがあるから、早く帰ってきて」などと言われ、ドキッとしたことはないでしょうか?

そういう場合、その場では内容を知らされないわけですから「なにか失敗でもしてしまったのだろうか」「大きな事件でも起こったのだろうか」と、悪い想像や不安ばかりがふくらんでいくものです。

ところが実際に話を聞いてみたら、「今度の飲み会、誰に声をかける?」とか「今年はいつ帰省する?」などといった内容で、表抜けしてしまったりすることも少なくありません。そしてそんなときには「たいしたことじゃなくてよかった」とホッとすると同時に、「先に用件を言ってよ」「今日一日、仕事が手につかなかったじゃないか」というような気持ちにもなってしまいます。

こうしたケースについても、最初に話し手が「今度の飲み会のメンバーについて確認したいから、別室に来てほしい」「今年の帰省時期について話し合いたいから、早く帰ってきて」というように結論を先に伝えてさえいれば、言われたほうはモヤモヤを抱えずにすみます。

つまり「ちょい出し」を心がけるだけで、聞き手はさまざまなストレスから解放されるということ。そのため、話し手も評価を下げずにすむわけです。(24ページより)

メールこそ「ちょい出し」が必須

部下が上司に、次のような報告メールを送ったとします。

お疲れ様です。 本日の××社との打ち合わせでは、先方から以下の点についてお問い合わせがありました。

(1)新商品の名前について

(2)納期について

(3)デザインについて

(4)見積もりについて

このうち(1)については××××、(2)については××××、(3)については××××とお答えしたのですが、(4)については引き継ぎ案件であるため、私が把握しきれていない点もあります。 つきましては、明日にでも、見積もりについて相談させていただけますでしょうか(31ページより)

このメールのうち、上司が把握するべきことはなんでしょうか?

結局のところ、それは「明日にでも、見積もりについて相談させていただけますでしょうか」という一文のみです。したがって、最初に「××社関係の新商品に関して、明日にでも、見積もりについて相談させていただけますでしょうか」と書いておけば、上司は無駄な時間や労力を費やさずにすむわけです。

会話同様、文字でのやりとりでも、事前に話の結論や本当に伝えたいこと、伝えるべきことを「ちょい出し」する。

それは、相手が余計な時間やエネルギーを費やしたり、余計なストレスを感じたりすることを防ぎ、ひいては話の内容への関心度や、話し手自身への評価を高めることにつながります。(32ページより)

「どの情報を『ちょい出し』したらいいのかわからない」という場合は、「自分がなにかを話す前に、あるいは誰かの話を聞いたあとに、頭のなかで『要するに?』と考えてみる」というトレーニングをするといいそうです。話をまとめるため、自分に問いかけをするということ。

たとえば、もし誰かに「先日、友人と行った、表参道駅近くのイタリアンレストランは、とても落ち着いた雰囲気で、でも値段はランチがだいたい××円、ディナーは××円くらいと手ごろで、どの料理もおいしいけれど、ポルチーニのパスタがとにかく絶品で…」と話したくなったら、まず「要するに?」と自分に問いかけます。 そして、

「要するに…先日行った、表参道駅近くのイタリアンレストランの、ポルチーニのパスタが絶品だった」

といった具合に、これらの情報の中で特に大事だと思うこと、伝えたいこと、もっとも印象に残っていることを考えるのです。(34ページより)

最初は難しいかもしれませんが、日々の生活のなかでトレーニングを続けているうちに、必ず「要するに」に続く言葉(話の結論やもっとも伝えたいこと)が、すぐに出てくるようになるといいます。(30ページより)




コンパクトにまとめられているため、アイデアやメソッドをすぐ身につけることができるはず。それらはきっと、円滑なコミュニケーションを実現してくれることでしょう。


Photo: 印南敦史

印南敦史

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