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仕事で自分を押し通し、攻撃から身を守る「ポジティブな攻撃性」とは?

仕事で自分を押し通し、攻撃から身を守る「ポジティブな攻撃性」とは?
Photo: 印南敦史

気が小さくても立場を悪くせずとも職場のアホを撃退できる! 都合のよすぎる方法』(イェンツ・ヴァイドナー著、片山久美子訳、SBクリエイティブ)とは、なんとも過激なタイトルです。

著者は、ハンブルク応用科学大学経済社会学部・教育学および犯罪学教授。攻撃性を抑えるためのトレーニングプログラム「Anti‐Aggressivit¨ats‐Training,AAT」を開発し、ドイツやスイスで100以上の暴力矯正プログラムに関わってきたという人物です。

1994年以降はこれを逆の視点から利用し、やり遂げる力と闘志を高めたい人々のトレーニングを行っているのだそうです。

つまり本書ではその考え方に基づき、「仕事で自分を押し通し、攻撃から身を守ること」につなげてくれる「ポジティブな攻撃性」を呼び起こす方法を解説しているのです。

ちなみにその方法は、効き目が非常に強力であるため「ペペロニ戦略」と名づけられているのだとか。

世界最高峰の辛さを誇る唐辛子の一種であるペペロニのように、「使用はほどよい加減に抑えておかないと危険」だというわけです。しかし正しい用量を守れば、仕事でもっと多くの貫徹力と防御力を手にすることができるのだといいます。

2005年8月に出版された本書の第1版は好評を博し、経済紙『ファイナンシャル・タイムズ』ドイツ版の経済本ランキングで33週連続1位を記録したというのですから驚き。しかしそれは、本書で扱う「ポジティブな攻撃性」がもたらす「仕事で自分をどうやって押し通し、攻撃から身を守るか」に多くの人が関心を抱いているからだと著者は分析しています。

とはいっても、本書が主張したいのは「何が何でも権力を手にすること」ではありません。もっとスマートに自分の人生を優位にさせる方法を説いていきます。(「はじめに」より)

第3章「攻撃性の中で唯一推奨されている『ポジティブな攻撃性』とは」のなかから、「この8つを行えば、ポジティブな攻撃性が発動できる!」に注目してみましょう。

ポジティブな攻撃性は、これら8つを実行することで実現するというのです。

その1:力で自分を押し通すほどの目標なのかを再確認する

もしも困難を楽しんで乗り越えたいのであれば、自分が目指す「よい目的」を信じなければならないと著者は言います。それがあれば、自分自身と会社のための戦いにもやりがいを感じることができるから。

目標は、富でも、健康でも、家族の幸せでもなんでもOK。いずれにしても競争を戦い抜くには、基本的な信条が必要だということです。

でも、もし戦うだけの価値がある目標が見つからないのだとすれば、ゆったりとくつろいでいるのもいいといいます。

余ったエネルギーは、子どもの教育や趣味やボランティアなど、別のなにかのために活用したほうがいいというのです。(67ページより)

その2:勝率が50%ない場合は戦わず、味方になってもらう

大切なのは、戦い始める前に、勝算があるかどうかを確認すること。それが51対49なら、参戦するに値するといいます。

とはいえ著者の場合、70%は勝てるチャンスがあると事前にわかっている戦いを優先するのだそうです。なぜならそのほうが、力を出し切らずに済むから。では、勝てそうもない場合はどうすべきなのでしょうか?

この問いについて著者は、「勝てる見込みがそんなになければ、関わるのはやめ、味方にしてしまうべきだ」と主張しています。

敵に取り入るかのようで幼稚に聞こえるかもしれないけれども、実は賢い選択なのだとも。なぜなら、敵として強すぎる相手であるとしたら、味方として頼もしいからです。(68ページより)

その3:先手必勝! 早いうちから、自分の考えを人前で話す

人から聞かれる前に、押しつけがましくならないように注意しながら、自分の考えを人前で話すことを著者は勧めています。

そうしないと、無視されてしまう可能性が高くなってしまうから。頭がよくて、本当に内容のある話ができるのだとしたら、なおさらだといいます。

なぜなら、あなたの賢いコメントで、他の人たちが色あせて見えるかもしれないという正当な「危険」が、彼らの側にあるからです。

いつも控えめな第三者の輝かしい発言を我慢できるのは、本当に有能な人だけで、その他大勢は、あなたが放つ革新的なオーラをできれば避けたいと思うでしょう。(69ページより)

人から意見を聞かれる前に人前に出る勇気を持ち、同僚や上司からのやる気を削ぐ侮辱的な決まり文句にも、きちんと反論すべきだといいます。(69ページより)

その4:不平家、負け犬、心配性とは距離を置く

不平ばかりを口にする同僚に囲まれていると、彼らと同じようにネガティブな人間だと思われてしまう危険性があります。

しかし、涙もろい人を仲間に呼び入れ、言葉をかけてあげたとしても、彼らを不幸でやる気のない状態から助け出すことは不可能。それどころか、気を遣うこちらのイメージを損なうことになる可能性も。

「親切な人だ」と思ってもらえず、「永遠に文句ばかり言う連中の仲間だ」と思われるだけだというのです。

それはウィン・ウィンの戦略とは対極に位置するため、オススメできないと著者は言います。(70ページより)

その5:攻撃を受けた先には、大きな報酬が待っていることを楽しみにする

自分を押し通そうとすれば、反対意見に突き当たることを避けるわけにはいきません。それどころか、強硬な抵抗だってあるかもしれないわけです。しかも、そのような場合、相手はこちらの弱点を狙って攻撃をしかけてくるため、痛みを伴うことも考えられます。

でも、それでまごついていてはいけません。これも権力争いの一部なのですから。それに、将来的に誰を信用してはいけないかも、そこからすぐに分かります。

そんな攻撃をしてくる輩は、将来的にもあなたに対して誠実に接したりはしないからです。対決は明快な答えを出してくれますーーあなたが対決を好まないとしても。

もちろん、あなたが敵の激しい攻撃を受け続けた後に反撃できれば最高です。「これはこれですばらしい一撃だったけど、もう一度、ちゃんと力を入れて攻撃しなおしてみたら?」とにこやかに返せたらすてきじゃないですか?

こんな反撃は、相手を揺さぶります。あなたに打撃を与えられなかったことを思い知らされるからです。(71ページより)

この戦略は、世界一のボクサーであるモハメド・アリに由来するものなのだといいます。ある試合でアリは、ロープにもたれ、拳で防御しながら嵐のようなパンチを浴び続けていたのだそうです。

相手はKO目前だと信じていましたが、短いブレイクの際にアリが耳元で「さあ、いい加減、本気のボクシングを始めようじゃないか」とささやいたことで事態が変わったというのです。

その時点ですでに力の限界まで闘っていた相手は身震いし、精神的に打ちのめされ、結局アリがその試合に勝ったというわけです。(71ページより)

その6:防御の言葉を用意しておく

当然のことながら、言葉での攻撃は予期せぬときに来るもの。相手は、こちらを陥れるために「不意打ちの効果」を狙っているはずだというのがその理由です。

だからあなたも予防として、対抗用フレーズをいくつか用意しておき、それを言って時間を稼ぎ、余裕が持てるようにしておくとよいでしょう。

時間稼ぎ用の対抗フレーズ集の中で私が個人的に気に入っているのは「あなたが言っていることは実に面白い。ちょっと考えてみましょう…」というものです。

やってみてください。大抵の批判屋は驚いて、素早い洞察に心を打たれてしまうようです。だから、言葉で追い討ちをかけることもしません。(72ページより)

また、彼らの言葉を手帳にメモしたりすれば喜んでもらえるので、相手の心をつかむことができるといいます。(72ページより)

その7:自分に関する悪いうわさには即座に対応する

もしも自分に対する当てこすりや中傷が耳に入ったら、即座に対応することが重要。そういう場合、こちらの耳に入る前に、すでに部署の全員がそのうわさを知っているわけですから、すぐに反論することが大事だという考え方です。

うわさは、こちらの立場を弱くすると著者は指摘しています。そして、一度つけられた傷はもとには戻らないものだとも。まったく無視すれば、いじめの最前線に晒される可能性もあるだけに、注意が必要だということ。

特に、「信用できない」「誠実でない」「ふまじめだ」というような、ばかげた、害がないと思われるようなうわさほど気をつけるべきだそうです。(73ページより)

その8:敵の分析は定期的に行う

仕事のチームのなかにおいて、「敵は誰なのか」を定期的にチェックすべきだと著者。いつも微笑みかけてはくれるけれど、実際には邪魔したりいちいち疑問をさしはさんだりするような同僚とは、距離を置くべきだということ。

それどころか、会議でほめたり評価するのも絶対にダメ。それだけでなく、仕事を手伝ったり引き受けたりしてもいけないといいます。

そういう人たちが超多忙であるなら、ずるい策略を練るヒマもなくなるから。でも手伝ってしまったら、敵がもっと力をつけ、あとあと自分が押さえつけられる危険にさらされてしまうというのです。

これらペペロニ戦略8つの基本原則は、なにごとかをやり遂げる人たちの世界に、本気で、そして確実に近づくためのお守りなのだと著者は記しています。

大事なのは、対決する相手を間違えないこと。仲間を大事にし、分別があり、まともな対話ができて建設的な解決方法を導き出せるような人たちとは権力争いを始めたりしないことが重要だというのです。(73ページより)




著者の言葉は非常に直接的なので、「ここまで書くか?」と感じるようなこともあるかもしれません。しかし、それも個性と捉えるべき。だからこそ、ドイツでロングセラー実績を立ち上げることができたのでしょう。



印南敦史

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