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「主導権」を相手に与えてみよう。「やっかいな人」に対処するための2つの方法

「主導権」を相手に与えてみよう。「やっかいな人」に対処するための2つの方法

数十年のキャリアを持つ精神分析医として、「やっかいな人たち」に関わってきたというのは、『身近にいる「やっかいな人」から身を守る方法』(マーク・ゴールストン著、レッカー由佳子監修、室﨑育美訳、あさ出版)の著者。

しかし現実的には、誰でもほとんど毎日のように理不尽な人と関わっているはずだともいいます。

たとえば、不可能なことを要求する上司。あれこれと指示するうるさい親や、反抗的な思春期の子ども。すべてを意のままに動かそうとする同僚や、つねに挑戦的な態度をとる近所の人。

すがりつく恋人や、無理難題を押しつける顧客もいることでしょう。だからこそ本書は、「やっかいな人から身を守る」ことをテーマにしているというのです。

ここで「やっかいな」や「異常な」という言葉の意味を確認しておきたい。「やっかいな」や「異常な」というと、差別的に聞こえ、不快に感じるかもしれない。

しかし、この本で私が使うこれらの言葉は、精神障害者のことではない。特定の人たちを非難するつもりもない。

なぜなら私たちはみな、ときどき、やっかいで異常な状態になるからだ。 私がいう「やっかいな」や「異常な」とは、“理不尽な言動”のことだ。あなたと関わる相手が次の4パターンに当てはまったら、その人は理不尽だといえる。

●自分の置かれている状況がわかっていない

●言動や思考の筋が通っていない

●自分にとって最善でない決断をする、またはそのような行動をする

●まわりの人が理屈で言い聞かせても、どうにもならない

(12ページより)

つまり本書では、こうした人たちの「理不尽の壁」を打ち破るための秘訣が紹介されているというわけです。第3章「やっかいな人と向き合う13の術」の中から、2つの方法をピックアップしてみましょう。

主導権を与え、緊迫感をやわらげる「腹見せの術」

やっかいな人と話すとき、人は無意識に話のなかで主導権を握ろうとするもの。それはもともと「優勢が勝ち、劣勢は負ける」と思っているからなのだそうです。特に男性にこの傾向があるといいますが、攻撃態勢にある人に対して優位に立とうとすると、相手はこちらの喉元につかみかかってくることになるでしょう。

すると両者とも痛手を負うことになるので、その後も敵対したままとなり、和解の道は歩めません。

さらに、予備知識として押さえておくべきことがあるといいます。多くの場合、やっかいな人は自分の無力を感じたとき、理不尽極まりない行動に出るということ。

そのような状況で相手を攻めると、彼はさらに無力を感じ、逆上するわけです。だからこそ著者は、「積極的な従順」と呼んでいる反本能的な方法を試してほしいのだといいます。

(「積極的な従順」とは)矛盾しているように思えるが、じつはちがう。これを理解するために、2頭の闘犬が闘うところを想像してみよう。これには3通りの結末がある。

●2頭はたがいにズタズタになるまで闘い続ける

●1頭は逃げ、もう1頭は捕食本能に駆り立てられる

●1頭は地面に転がり、腹を見せ、「わかった、降参だ。服従するよ」と白旗を掲げる

(105ページより)

ここで著者が焦点を当てているのは、3番目の結末である「積極的な従順」のパターン。やっかいな流れに身をゆだねるとき、相手に主導権を与えると、一瞬のうちに関係が変わるというのです。相手の権力を増大させることで、相手はさらなる攻撃に出る必要がなくなるから。

そしてその瞬間、相手にとって自分は危険人物ではなくなるので、そうして相手の陣営に入るわけです。その際の指導者は、当然ながら相手。

するとたいてい、敵だった相手は新参者を無意識に守ろうとするものです。なぜなら、それが陣営指導者としてすべきことだから。

仰向けになって腹を見せることで、さらに一歩踏み込むことになるのだと著者は主張します。

なぜならそれは自分の弱点を認めるだけではなく、相手のやっかいな部分をなごませるから。危険なことのようにも思えますが、この方法は驚くほど効果があるのだそうです。

事実、著者のクライアントはこの方法を使って、離婚相手からビジネスパートナーまでの、すべての相手と和解してきたのだといいます。

そしてもうひとつ、この方法が興味深いのは、著者が「組織内のやっかいな人」だと思うようなタイプの人にも効果があるということ。

自分を従順に弱く見せることで、好戦的な同僚、あるいはもっと強い人たちや権力のある人たちの攻撃を抑え、流れを変えることができるというわけです。

役立つ知恵:従順になることで、勝者になりえる。

やりかたとポイント:攻撃を受ける状況に置かれ、どう戦うべきかわからないとき、次に述べる腹見せの術の3つのパターンのうち、ひとつを試していただきたい。対面ででも、電話のときにでも、メールでも使うことができる。


腹見せの術1:自分に非がある場合→非を認めること。そして、「どうするべきか教えてください」と言おう。

腹見せの術2:自分は何をすべきかわからない場合→相手に次のように言おう。「私が何かを言ったりしたりすると、状況はより悪くなるでしょう。でも、何も言わなかったり、しなかったりしても、状況は悪くなります。だから、今は何をするにもまったく自信がありません。どうか教えてください。状況が良くなるように、何を言ったりおこなったりしてほしいですか?」

さらにこう尋ねよう。「状況を改善するには、何をするべきですか?」

腹見せの術3:非現実的な相手の要求を断る必要がある場合→相手に次のように言おう。「要求に応じることができません。あなたの反応を覚悟しているのですが、それがどんな反応なのかは、まったくわからないのです。だから、あなたにすべてを任せます」

続けてこう言おう。「手を貸してください」

(104ページより)

過去よりも未来に目を向ける「タイムトラベル法」

著者が考案したという「タイムトラベル法」のポイントは、同じ会話をやっかいな人と何度もくり返してはいけないということ。

「最後までやり抜いたことがないじゃない」「おまえはいつも俺をけなす」「一度くらい、責任をとってよ」などと言うべきではなく、かわりに明日、来年、あるいは10年後の自分たちの人生をはっきり思い描くことが大切だというのです。

たとえば、いつも怒りをぶちまける短気なパートナーに対して、こう言うとする。

「僕がすることや、できていないことに対して、不満がたまっているようだね。僕にどうしてほしいんだい?」

もしパートナーが「私が怒っているときでも無視しないで、話を聞いてほしいの」と返したら、それに従うことを伝えよう。そして、こんなふうにも言ってみるといい。

「ひとつだけお願いしたいんだけど、できれば、こんなふうにやってくれないかな。これからは、僕が家に帰ってきたら、してほしいこと、あるいはしてほしくないことを、その夜にはっきりと伝えてほしい。そして、穏やかに言ってもらいたいんだ。そうすると攻撃されているような気分や、逃げ出したくなることもないからね」(121ページより)

このタイムトラベル法で著者が気に入っているのは、ほとんどのやっかいな人に対応できるということだそうです。理不尽になっている友人やパートナーや子ども、その他の人と接するときに効果があるというのです。そのうえ、とても気難しい、または口汚い取引相手と関わるときの優れた先制攻撃としても使えるのだとか。

また、身のまわりの優柔不断な人にもとても効果がある。急に立ち止まって前進しなくなる人、外食に出たときに、レストランを決めることさえできないような人だ。

このような状況のとき、こう言うといいだろう。

「これからは、よっぽど僕に食べたいものがない限り、きみにどこに食べに行きたいか尋ねるよ。もし迷っていたら、少し待つことにする。それでも決められなかったら、僕がレストランを選んで、一緒にそこに行こう。できるだけ、きみの好きそうな場所を選ぶようにするけど、決めるのは僕だからね」(122ページより)


また、過ぎたことにあれこれケチをつける人にも試してみよう。あなたの下した判断が結果として間違っていたとき、あなたを責めまくる人だ。何の役にも立たない批評を浴びせ、あなたに罪悪感や憤りを覚えさせる。そういう人にはこう言おう。

「これからは、事前にあなたの意見を求めていないかぎり、私が物事を決めたあとに、ほかの対処法をとるべきだったなどと言わないでほしい。こんなことが続くなら、決めたことをもう話さないわ。それはトラブルを避けたいからではないの。事が起こったあとに、介入してほしくないだけ。でも、判断を下す前なら、あなたに意見を聞くこともあると思う」(123ページより)

このようにタイムトラベル法は柔軟性があり、あらゆる状況にも適応できるのだと著者はいいます。(121ページより)




著者は本書で紹介している秘訣を使って、企業内でのもめごとを収めたり、夫婦の離婚の危機を救ったりと、さまざまな問題を解決してきたのだそうです。

そして、どんな人でもこれらの方法で日常の理不尽な人とうまくつきあえるようになるといいます。人間関係で悩みを抱えている方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。


Photo: 印南敦史

印南敦史

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