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公務員試験のウソ・ホント。予備校講師が明かす、あえて公務員を勧める理由とは?

公務員試験のウソ・ホント。予備校講師が明かす、あえて公務員を勧める理由とは?
Photo: 印南敦史

「皆さん、こんにちは。私は元ギャル男かつ元ニートの予備校講師、寺本康之です。

学生の頃、公務員試験に複数合格したにもかかわらず、その後も公務員にはならずに、鳴かず飛ばずの役者を続け、今はこうして講師業をしています。大学卒業後、大学院に二つ行きましたが、そのうち一つは中退しました。教授とケンカしたからです。

ちなみに、私の周りは公務員だらけで、父は元公務員、母も元公務員、妹も公務員、妹の旦那も公務員、私の妻も公務員、義理の妹も公務員です。講師の仕事は、26歳の頃に軽いノリで始め、本業にしたのは28歳のとき。売れない役者の仕事にもそろそろ見切りをつけなきゃなと、この仕事を生業とすることに決めました…」(「はじめに」より)

こう自己紹介するのは、全国各地の大学生協講座、東京法経学院、公務員予備校EYEなどで講師を務めているという『わが子に公務員をすすめたい親の本 就活生の親がやるべきこと、やってはいけないこと』(寺本康之著、実務教育出版)の著者。

親やきょうだいとはずいぶん歩んできた道が違いますが、なにが自分ときょうだいの進路を分けたのかといえば、それは「親と子どもの関係」だったと分析しています。たとえば親の意見をしっかり聞くタイプで、その結果、人生に迷うことなく最良の選択をして公務員になったのが著者の妹や妻。

一方、人に物事を相談するのが苦手で、なんでも独自の判断で決めてきたのが著者。そして、そんな経験があるからこそ逆に、就職活動に関してはひとつの持論に行き着いたのだといいます。それは、「就職という大切な節目だからこそ、親の的確なアドバイスや協力が必要」だということ。

中学受験、高校受験、大学受験の際には積極的に子どもにアドバイスする親も、こと就職活動の場面になると消極的になるもの。しかし、就職という大切な節目だからこそ、親の的確なアドバイスや協力が必要だというのです。

確かに、「自分の人生だから自分で決めるべきだ」という価値観はそのとおりです。

私も最終的には子どもが自分で決める問題だと思います。ですが、「ブラック企業」に就職して苦労していたり、民間企業に勤めたものの数年で辞めて公務員試験を受け直したりする若者を見たりするたびに、「学生のときに公務員試験の受験をすすめてくれる人はいなかったのだろうか」と思ってしまいます。そして、「その役目を担うのは、やはり親なのではないか」といつも考えてきました。(「はじめに」より)

そこで、「わが子に公務員をすすめたい」「わが子に公務員になってもらいたい」と考えている親が、自信を持って子どもにアドバイスできるように、必要な情報を本書に盛り込んだというわけです。

とはいえ、公務員試験についてわからないことは意外に多いもの。そこできょうは第3章「知っておきたい公務員試験のウソ・ホント」から、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

国家公務員よりも地方公務員のほうが人気?

昔は、「公務員といえば国家公務員」というイメージが強かったかもしれません。しかし最近は地方公務員を第一志望とする学生が多く、特に地方に行けば行くほど地元の県庁や市役所を志望する学生の割合が高くなるそうです。

一昔前は、国立大の中でもいわゆる旧帝大の学生や、私立でも早慶レベルの学生は、国家総合職(キャリア官僚)をめざすのが当たり前でした。今はその傾向がだいぶ変わっています。

東大生や京大生でも地方公務員を第一志望にする人が珍しくありません。早慶の学生だと、都庁や県庁、政令指定都市、東京23区などを第一志望にする割合が高いです。(135ページより)

原因はいろいろ考えられるでしょうが、ひとつには東日本大震災の影響があると著者は指摘しています。あれから多くの国民が、危機管理の大切さや地域コミュニティ再生の必要性考えるようになったというわけです。

もちろん学生も同じで、災害ボランティアや復興支援などの経験を通じ、「地域住民のために貢献したい」「親の近くで働きたい」などと考える学生が増えたということ。

東京消防庁を筆頭とする消防職もこれに追随して人気が上がり、試験の難易度が相対的に上がったのだとか。

また、こうした動きに拍車をかけているのが最近の地方創生ブームで、「Uターン組」と呼ばれる受験者も年々増え続ける傾向に。その一方、かつてはほとんどの学生が併願していた国家公務員を受験しないケースも、年々増えているという実感が著者にはあるといいます。事実、そのせいか国家一般職の倍率は、過去最低といえるレベルまで下がっているというのです。

いずれにしても昔とは違って、肩書きや地位にこだわる古いタイプの学生は減り、「自分のやりたいこと」を基準に地方公務員を選ぶ人が増えているということのようです。(135ページより)

社会人は公務員試験に受かりにくい?

これは気になることかもしれませんが、著者によれば完全にウソ

最近は、採用側がさまざまなバックボーンを持った人材を求めるようになってきており、社会人経験者を対象とした試験も増えたのだそうです。また年齢制限を満たしていれば、社会人であっても新卒の学生と同じ試験に挑むことが可能。

試験に合格する人数は学生の方が多いものの、合格率を見ると社会人のほうが高いのではないかという実感もあるといいます。また、「結局受からなくてあきらめた」というケースも、圧倒的に学生のほうが多数。

だとすれば気になるのは、なぜ社会人は学生よりも合格可能性が高いのかということ。この点について著者は、時間感覚の影響ではないかと記しています。つまり時間の使い方にシビアな社会人は、責任を持って勉強に取り組む傾向にあるということです。いいかたを変えれば、「もう後がない」ことを知っているということ。

人は追い込まれないと、がんばろうとはしないもの。だからこそ、崖っぷちに立たされていることを認識したとき、初めて本気になれるということ。「焦り」と「がんばり」は紙一重だというわけです。

もちろん仕事を続けながら勉強をしている以上、勉強に割く時間には限りがあります。

しかし、時間の使い方を工夫することで、その障害を乗り越えることが可能になるのも事実。しかも仕事をしている社会人の場合、面接については学生よりも優位性があるものです。民間企業の面接を一度経験しているということはアドバンテージになりますし、仕事でさまざまな人とコミュニケーションをとる機会が多いはずだから。

したがって、あとは「なぜ民間企業を辞めて公務員を目指すのか」「自分の経験を公務員としてどう活かしていけるのか」という点に対する明確な回答を用意しておけば、面接ではさほど苦労しないといいます。(138ページより)

公務員試験に学歴は関係ない?

ほとんどの公務員試験は受験資格として年齢制限のみが設定されており、学歴が問われることはほとんどないため、たとえば大卒程度の試験を高卒者が受けることも可能(一部には院卒者や資格取得者を対象とした試験もあるそうですが)。

しかも単に受験できるというだけでなく、実際に毎年のように合格しているのだそうです。著者はこれまでに公務員試験予備校で、中卒、高卒、専門学校卒というような若者を大卒程度試験に多数合格させてきた実績を持っているだけに、それは間違いないと断言しています。

とはいえ当然ながら、面接では厳しい質問が来るもの。

「中学(高校)を卒業してからなにをしていたのか」「なぜ、いまになって公務員を目指すのか」というようなことは根掘り葉掘り追求されるわけです。そのため一般的な志望動機だけではなく、公務員を目指すに至った経緯をきちんと答えられるように対策しなければならないということです。

ちなみに学力面については一切心配不要で、基本的な勉強をやっていれば問題はないそうです。どうしても心配なら、予備校に通えばOK。

反対に高卒程度の試験でも、大学生が受験できることがあるのだといいます。

公務員試験の大卒程度、高卒程度というのは、単に試験問題のレベルを表したもの。そのため高卒程度という試験区分であっても、受験資格(年齢制限)を満たしていれば、大学生でも受験できるというわけです。

特に市役所試験では、大学生向け・高校生向けというくくりを設けず、筆記試験自体は高卒程度のものを使用するというケースが見られるとか。ただ、高卒程度の試験だから受かりやすいかといえば、それはまた別の話。倍率を見ても、高卒だから低いということはないそうです。

もちろん、高校生・高卒者を受験対象とした国家公務員試験、地方公務員試験も。

昭和のころにくらべれば受験者は減ったものの、少しでも早く社会に出て働きたい、社会のため・地元のために働きたい、家族に恩返しをしたい、警察官や消防官などに憧れている、商業高校で学んだ簿記などの知識を活かしたいなどの強い動機があれば、検討に値するといいます。

もし子どもがまだ高校生で、特に受験にこだわっていないのであれば、選択肢として勧める価値はあるということ。高卒3年以内の離職率が40%もあり、年々増加していることも考えあわせると、離職率の低い公務員を仕事として選ぶのは賢い選択だとも考えられるわけです。(142ページより)




このように著者の説明はわかりやすく、そして実用的。だからこそ、もしも親の立場から「本当は公務員を勧めたいのだ」と感じているのなら、本書はそれを伝えるための手助けになると思います。「親にできること」について改めて考えなおしてみるためにも、読んでみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

印南敦史

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