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やらなければいけないことの「先延ばし」を克服するための方法

やらなければいけないことの「先延ばし」を克服するための方法
Photo: 印南敦史

DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』(エドウィン・ブリス著、弓場 隆訳、ダイヤモンド社)の著者は、アメリカの元経営コンサルタント。それ以前にも新聞記者、編集者、上院議員秘書、ロビイストを経験してきた人物であり、「先延ばし癖」と「時間管理」に関するセミナーを全米各地で開催してきたのだそうです。

本書は、私がセミナーやカウンセリングでさまざまな質問に答えてきた経験をもとに、「先延ばし」について対話形式で進めていく。鋭い質問の連続だったが、手際よく答えられたと自負している。(「はじめに」より)

読者が日ごろ抱いている疑問を想定して書かれたというだけあって、先延ばしの克服に役立つアドバイスが多数収録されている点が最大の特徴です。そんな本書のなかから、きょうは第3章「すぐやる人は『失敗』を恐れない」に焦点を当ててみましょう。

前向きに失敗する

── 先延ばしの原因になる感情はありますか?

この問いに対して、さまざまな「恐怖」が先延ばしの原因になると著者は述べています。たとえば「失敗の恐怖」「嘲笑の恐怖」「苦痛の恐怖」「リスクをとることの恐怖」「恥をかくことの恐怖」「未知なるものに対する恐怖」「完璧にできないことの恐怖」など、さまざまな恐怖が先延ばしを邪魔するということです。

── そのなかで、最もよくありがちなのはどれですか?

それは、「失敗の恐怖」。すなわち、「うまくいかないのではないか」と恐れたり、しくじったことを認めるのを恐れる心理。多くの人が、この心理に陥って身動きがとれなくなってしまうというのです。

── とはいえ、危険を冒すことを恐れるのは、人間として当然ではないでしょうか?

たしかにそうですが、命にかかわるような危険は滅多にあるものではないのも事実。ただ、そんなふうに思ってしまうだけだということです。

また、失敗したからといって、「不名誉だ」とか「もうチャンスがない」というわけでもないはず。いってみれば失敗は、たいてい一時的な挫折にすぎないということ。そう考えれば、やる気を失うことなく楽観的な姿勢で情熱を維持できるわけです。それだけでなく、失敗が恩恵をもたらすこともあるだけに、前向きにとらえることすらできるといいます。

── 失敗を前向きにとらえるというのは、少しオーバーでは? 人はみな成功を目指して努力し、敗北ではなく勝利を祝い、敗者ではなく勝者をたたえるもの。成功しなければ、意味がないとも言えます。

たしかに成功しなければ意味はありませんが、ただし必要なのは、成功という言葉を正しく定義すること。成功とは1度も失敗しないことではなく、失敗を乗り越えて目標を達成することだという考え方です。

失敗は長期的な成功に不可欠です。その気になれば、どんな失敗からも教訓を学べます。プロゴルファーのトム・ワトソンの言葉を借りれば、「敗北を通じて勝ち方を学ぶ」ということです。失敗するたびに自分のミスを検証し、次はどうすればいいかを分析する機会を得ることができます。(58ページより)

失敗を有意義な経験とみなせば、進んでリスクをとることができるようになるはず。そして、恐怖のために身動きがとれないようなことはなくなるというわけです。(56ページより)

なぜ失敗したくないのか?

── 失敗の恐怖への対処は、決して単純ではないもの。なにが起こるかわからないという漠然とした恐怖が、先延ばしにつながることがあるからです。

このことについて手がかりになるのは、「漠然とした恐怖」という表現。自分が感じている恐怖が曖昧である限り、どうにも対処のしようがありません。病院に行って単に「気分がよくない」と言うだけでは医者が治療できないのと同じで、まず恐怖の正体を明らかにする必要があるということです。

── この場合、失敗の恐怖という原因が明らかになっているのではないでしょうか?

それではまだ曖昧で、さらに原因を究明し、「なぜ自分は失敗を恐れているのか」を正確に把握する必要があるのだといいます。深く掘り下げると、たとえば、失敗して同僚の前で恥をかくのを恐れていることがわかるかもしれないわけです。

なお、少なくとも明確な原因を特定すれば、次のような質問を自分に投げかけることができるそうです。

・失敗したら、本当に大問題か?

・同僚はそれを気にかけるか?

・同僚がどう感じるかは重要か?

・私が失敗したら、同僚はどんな態度をとるか?

・同僚に笑われるのは不愉快だが、それでどんな実害があるか?

・失敗したことについて人前で批判されたら、どう対処したらいいか?

・逆に、勇気を出して行動したことをたたえてくれる人もいるのではないか?

・失敗したら、どんな教訓が得られるか?

・失敗するおそれはさておき、成功する可能性はどのくらいあるか?

・恥をかく可能性はそんなにないのに、心配しすぎているのではないか?

・もし成果をあげたら、同僚から尊敬されるのではないか?

・他人からどう思われるのかを気にしすぎているのではないか?

・私の本心はどうなのか?

・勝っても負けても引き分けでも、恥をかくことを恐れずに勇気を出して挑戦したことに対して誇りを持つべきではないか?

・まず何をすべきか?

・なぜグズグズしているのか?

(63ページより)

「なにを恐れているのか」を正確に把握しなければ、これらの質問を自分に投げかけることすらできないわけです。(62ページより)

ネガティブ思考を打ち消す「勇者」のセルフイメージ

── 自分が抱えている恐怖を理解し、いくら願っても恐怖が消えないときは、どうすればいいのでしょうか?

問題の本質を探っても、恐怖を克服できないことはよくあるもの。そんなときは、「もし恐怖を感じていないなら、どのようにふるまうか?」と自問し、その答えをもとに行動すればいいのだとか。これは、17世紀に活躍したフランスの軍人、テュレンヌ大元師にちなんで「テュレンヌ方式」と呼ばれる方法なのだそうです。

三十年戦争のさなか、テュレンヌ大元帥はフランス軍を率いて自分達より大きな軍勢に果敢に挑み、たびたび戦功をあげました。 彼は勇気をたたえられたとき、「私はつねに勇者のようにふるまっているが、心の中ではいつも恐怖を感じている。しかし、恐怖に屈せず、『震えながらでも前進しろ』と自分の肉体に命じると、私の肉体は前進を開始する」と答えました。(65ページより)

これが、恐怖に対する究極の答えだということ。決して恥じるべきことではないからこそ、心の中で恐怖を感じていることを否定する必要はなし。心の中で恐怖を感じていることを認めつつも、恐怖を感じていないかのようにふるまえばいいという考え方です。

このテクニックを使えば、自尊心が高まると著者は言います。恐怖におののく臆病者の立場に甘んじるのではなく、恐怖に立ち向かう自信に溢れた勇者というセルフイメージによって意欲を掻き立てることが大切だということです。(65ページより)

「イメトレ」が恐怖を消し去る

著者は、セルフイメージの効果をより発揮させるために、行動を起こす前のイメージトレーニングも勧めています。

── イメージトレーニングとはどのようなものですか?

ノーマン・ヴィンセント・ピール牧師が「イメージング」と名づけた手法のことです。自分が行動している様子を鮮明かつ詳細に思い描いて、心の中で予行演習するのです。自分がそれを実際にやっている姿を心の中で見ましょう。段階を追って行動している明確なイメージを抱いてください。(67ページより)

── スポーツなど肉体的なスキルに関係している場合、心の中での予行演習は効果絶大だといいますが、それは先延ばしの克服にも応用できるのでしょうか?

この原理は普遍的で、たとえ心のなかでも予行演習をすれば、実際にそれをするときはより簡単にできるようになるそうです。なぜなら、心の中での簡単なイメージトレーニングによって、恐怖などの精神的負担が軽くなるから。

なお著者が提唱しているのは、課題について心の中で考えるのではなく、「それに取り組んでいる様子」を心の中で見ること。つまり分析したり推測したりするのではなく、自分が行動している様子を、ビデオで見るように心の中で観察するということ。(67ページより)




著者によれば、本書の最終目的は、先延ばし癖に対する理解を深めることではなく、ふだんの行動パターンを一変させること。つまりは、本書の提案を日常生活に応用することが必要だというわけです。

そこで、まずは「仕事の先延ばしリスト」「家庭の先延ばしリスト」「人間関係の先延ばしリスト」「個人的目標の先延ばしリスト」と「4つの先延ばしリスト」をリストアップすることを勧めています。それをそばにおいて本書を読むと、日常生活で起こりうる数々の問題についての答えをより明確に理解できるというのです。

対話形式なので、読みやすさも抜群。「つい先延ばししてしまう」と悩んでいる方は、読んでみるといいかもしれません。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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