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仕事は何歳からでもチャレンジできる、子どもとの時間は一瞬。ブランド戦略構築家・但馬武さんの子育てハック

仕事は何歳からでもチャレンジできる、子どもとの時間は一瞬。ブランド戦略構築家・但馬武さんの子育てハック
写真提供: 但馬武

敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ子育て術「HOW I PARENT」シリーズ。今回はフリーランスのブランド戦略構築家として活躍している但馬 武(たじま たけし)さんの子育て術です。

但馬武さんってどんな人?

もともとパタゴニア日本支社でダイレクトマーケティングを担当していた但馬さん。環境問題への取り組みで知られるパタゴニアのような企業を増やしたいと、副業としてパラレルキャリアでコンサルティング業務を開始します。

その活動がきっかけとなり、ローカルベンチャー支援などをおこなうエーゼロ株式会社に転職。ちょうど息子さんが高校に入学するタイミングでの思い切った決断でした。

さらに、この3月末には自分の使命は“愛される企業をつくる伴走者”であることだと気づき、フリーランスに。

「家族との時間が原動力」と断言し、出張が多い仕事をセーブするなど、良き父親としての家庭的な一面をのぞかせる一方、自分の軸をぶらさない真の強さを垣間みせます。そんな但馬さんの子育て術とは。

氏名:但馬 武(47歳)

居住地:神奈川県横浜市

現在の職業:ブランド戦略構築家

家族構成・年齢:妻44歳、長男17歳、長女13歳

——最初にキャリアについて:ここまでの人生は計画通り? それとも予想外のことが多かった?

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まったく予想していない人生を歩んでいます。今後も多分そうなのだと思います。

これまでのキャリアとしては、大学卒業後に入社した会社を3年で辞め、アウトドアブランドのパタゴニアへ。約20年間ダイレクトマーケティングに携わり、チームの責任者として経験を積みました。

パタゴニアはビジネスを通して環境問題の解決に取り組んでいる会社。そこで仕事をするうちに、“社会課題の多くはビジネスによって引き起こされ、またそれを解決できるのもビジネスではないか”という想いが強くなりました。

そこで、4年ほど前からソーシャルビジネスを中心に、ヴィジョンづくりやマーケティング戦略を構築するコンサルティングをパラレルキャリアとしてスタート。

昨年、その活動のなかで出会ったエーゼロに転職しました。岡山県西粟倉に本社があるエーゼロは、地域経済を醸すための取り組みをしている会社。

私が主に担当している北海道厚真町は本当にステキなところで、その地域がどう変化していくのか定点観測できるのはとてもいい経験になっています。

いまは独立してさまざまなプロジェクトに関わりつつ…。出張で家をあける時間が多かったのもあり、エーゼロでの仕事を週3日の業務委託というかたちに減らして続けています。

そのほかにも、理事を務める一般社団法人RELEASE;では、未来が歓迎する変化を生み出すために、クリエイティブとビジネスの専門家が集まり、企業や地域向けの事業構築をおこなっています。

ずっと続けているコンサルティングでは熱狂的な顧客をつくるためのサポートを。

今は、アメリカでは企業を支える お得意様や従業員のことをtribe(トライブ:部族という意味)というのですが、そんなトライブを増やすべく10月に会社設立を目指しています。

まさか自分が47歳で独立するなんて!

——家事と育児(日常生活、子どものイベント参加や送り迎えなども)をパートナーとどのように分担している?

子どもが小さい頃はちょうどパタゴニア在職中だったので、一般的な男性よりも子育てに関われました。

ラップトップさえあればどこでも仕事ができたので、夜は早めに家に帰り子どもたちが寝てから仕事をしていましたね。

パタゴニアの働き方を象徴するひとつとして、『社員をサーフィンに行かせよう——パタゴニア経営のすべて』という本があります。

要は、いい波はいつくるかわからないから常に仕事はおろそかにせず、チームで共有し、誰が欠けてもスムーズに動く組織づくりが大事だということ。

僕自身も管理職としてそういうサポート体制を意識していたので、より多くの時間を子育てに費やし、妻と協力できました。

ただ、副業を始めてからは週末もない日々になったため、妻の負担が増え、夢の実現と家庭とのバランスに苦慮した時期もあります。

しかし、子どもたちもある程度大きくなっていたので、家にいて直接関わるだけでなく、僕がチャレンジしている背中を見せることも大切だと考え、乗り越えてきました。

——パートナーとの家計管理はどうしている?

妻にすべて一任。

貯金額どころか通帳すらどこにあるかわからない状態です。

——パートナー以外に、誰からどの程度育児を手伝ってもらっている?

僕の両親は4年前まで福島県猪苗代でコテージを、妻の実家も千葉なので、日常的に親族に手伝ってもらうことはほとんどありません。ただ、住んでいるマンションに仲の良い家族がいて、子どもたちが同世代なこともあり、お互いに支え合って育ててこられたのが、なによりの助けになりました。

——「これがないと生きられない」というガジェット・アプリ・チャート・ツールは?

家族として欠かせないのは「旅」。

子どもたちが小学生までは、年に2週間ほど車で日本中を巡る旅を続けてきました。

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写真提供: 但馬武

旅を通じて、日本中のさまざまな風土を知ってもらえたし、なにより親子関係を深められました。いまでも仲の良い家族でいられるのは、それが一番の要因であると確信しています。

——子育てをするようになってから仕事のやり方は変わった?

とても変わりました。

パタゴニアに入社したものの環境問題に対する知識も浅かったため、何を目標に働けばいいのか見えない日々が3年ほど続きました。

そんななか30歳で息子が生まれたときに、“この地球は親の世代から引き継いでいるのではなく、子どもたちの世代から借りている”という言葉を知り、感覚が芽生え、仕事の意義を定義したことを覚えています。

——日々の息抜き方法、リラックス方法は?

ランニングや畑作業、大切な仲間と過ごす時間はリラックスできる大切なひとときですが、一番は妻と会い、話し、ハグをすること。

妻はいわゆる昔ながらの体質の日本企業に勤めていたのですが、僕は社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)に会う機会が多かったので、一時期会話にズレが生じていました。

ですが、妻が知り合いのNPOで働くようになり共通の友だちも増えたことで、対話が面白くなりましたね。

自分の領域に相手を巻き込んだり、お互いに変化しながら安心感のある存在でいることが大切だと思います。

——親として一番誇らしく思う瞬間はどんなとき?

子どもたちが朝起きてきて、ご飯を食べているだけで涙がでてくるぐらい誇らしい気持ちになります。

この世に生まれてきてくれたことに感謝していますし、朝起きて夜寝るまで無事に生きてくれているだけで僕は満足。一緒にいられる奇跡を噛み締めています。

——逆に、一番情けないと思う瞬間はどんなとき?

親として理想的な対応をできないとき。

子育ては点ではなく線だと思っています。

何かあったときの僕の対応、言葉、表情が彼らに記憶され、影響を与えていきますが、僕も未熟なためにうまくできないときがあります。

いまでも情けなく思うことが多々ありますが、子どもたちはそんな僕も父親でいさせてくれますし、感謝しかありません。

——子どもたちには、どんなところを見習って欲しい?

あまり自信はないのですが、ひとつあげるならば“どうやって自分の命を使うのか”にずっと向き合い、行動を続けていること。

日本では大きく価値観が変わってきていますし、どんな仕事をするのか過去の経験から見いだせなくなっています。僕自身、安定したパタゴニアを辞め、いまは47歳で独立する道を選んでいます。

子どもたちには、いま将来の夢を言えなくてもいいから、自分の想像力を最大限に働かせ、欲しい未来を創るアーティストのように生きてほしい。僕の残りの人生をかけて、その露払いになる覚悟です。

——子育てのベストなコツは何?

まだ子育てが終わっていない中で難しいのですが、夫婦が愛し合い、お互いの存在を認め合う関係を見せることではないでしょうか。

子どもたちにはそんな僕らを見て、生まれてきて良かったと心から思って欲しい。

じつは僕自身、悩みを人に相談するのが苦手で、妻に全部をさらけ出せるようになったのは去年、結婚して19年経ってからなんです。それでもずっといい関係でいられたのは、妻が尊敬できる存在だから。

——子育てで一番難しいことは何?

親という漢字は「木の上に立って見る」と書きますが、本当にその距離感だなと思います。

乳児はしっかり肌を離すな

幼児は肌を離せ手を離すな

少年は手を離せ目を離すな

青年は目を離せ心を離すな

「子育て四訓(日本時事評論)」より

大きくなるにつれどんどん難易度があがります。

親だからといって無条件に尊敬されることはなく、僕自身が人として成長しなければ “心を離さない”状態はつくれません。その意味では、いまも日々チャレンジしているまっただ中です。

——1日のうちで一番好きな時間はいつ?

幸せな瞬間はたくさんあるのですが、一番は寝るときに妻の寝息を聞きながら寝入ることです。

——家族を持って、将来の夢やプランはどう変わった?

結婚するまではとても利己的な人間でした。

しかし、愛する子どもたちのさらにその子どもたち、つまり孫の世代によりよい形で地球環境を残していきたいという想いを強く抱くようになりました。

彼らの世代が生き生きとした素晴らしい世界になるようにしていきたいです。

——子育てとキャリアを両立している(させたいと考えている)親御さんたち に一言。

僕が両立できているか疑問ですが、この問いを受け、そもそも両立とは何かと感じます。

僕自身、子どもたちが12歳まではキャリアよりも子どもとの時間を優先してきました。

そのため独立も47歳と遅めですが、僕の心のなかにはたくさんの子どもたちとの大切な時間の積み重ねがあり、いま新しいチャレンジをする原動力になっています。

人生100年時代。誤解をおそれずにいえば、仕事は何歳からでもチャレンジできますが、子どもといられる時間は本当にわずかです。

僕の場合は子どもとの時間をなにより大事にし、ひと息ついたころに多くの扉が開き、いまがあります。ぜひ焦らずに!

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写真提供: 但馬武

取材・文: 佐々木彩子

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