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「転職活動」は毎年すべき。転職を「12回」繰り返してきたからこそ断言できること

「転職活動」は毎年すべき。転職を「12回」繰り返してきたからこそ断言できること
Photo: 印南敦史

著者によれば、『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから"の仕事と転職のルール』(尾原和啓著、ダイヤモンド社)というタイトルには2つの意味があるのだそうです。

1つは、①どんな職場で働いたとしても、周囲から評価される人材になるということ。そしてもう1つは、②世界中のどこでも、好きな場所にいながら、気の合う人と巡り会って働けるということです。 現実味のない話に聞こえるでしょうか。しかし、「どこでも誰とでも働ける」ことを目指すのは決して「理想論」ではなく、激動する時代をサバイブするための、もっとも「現実的」な方法なのだ、というのが本書の大きなメッセージです。 (「はじめに いま起きている3つの大きな変化」より)

著者は大学院で人工知能の研究に没頭したあと、マッキンゼー・アンド・カンパニー、グーグル、楽天など、全部で12回もの転職を繰り返してきたという人物。そのような経験があるからこそ、①の意味での「どこでも誰とでも働ける」方法については、誰よりも言語化して蓄積してきたという自負があるのだといいます。

また、②の働き方も実践中。シンガポールやバリ島を拠点としつつ、日本に定期的に戻ってくるというのが基本スタイルだというのです。そしてなにかやりたいことができるたび、ベルリン、シリコンバレー、深圳(しんせん)、ウクライナなど、世界中を自由気ままに訪れて仕事をしているのだとか。

これまでの常識を根底から覆すような働き方を実践しているわけですが、同じようなスタイルで働く人は、いま世界中で増え続けているのだそうです。なお、そうした「大きな変化」は3つあるのだといいます。

変化1:社会やビジネスが、いっそうインターネット化する

著者は、世界はものすごいスピードで「インターネット化」していると指摘しています。社会の仕組みやビジネスが、どんどんインターネット上で行われるようになってきているということ。

個人の働き方に関していえば、多くの人や企業と対等(フラット)の関係でつながり(リンク)、知識や成果を分け合う(シェア)形に進むことになるだろうと予測しているのです。むしろ、そういう働き方に適合する人でなければ、ビジネスの輪のなかに入ることができなくなっているとも。

変化2:これから仕事で活躍できるのは、プロフェッショナルだけになる

インターネット化した社会やビジネスに適合し、「リンク」「フラット」「シェア」の働き方ができる人は、必然的になんらかの専門性を備えたプロフェッショナルになるという考え方。ちなみにここでいうプロフェッショナルは、医師や弁護士のように伝統的な職種だけを意味するのではないそうです。

プロフェッショナルの語源は、自分が何者であるか、「なにができてなにができないか」を自分の責任で「プロフェス(公言)」すること。自分で自分を律して成果を出し、それを相手にしっかり説明し、相手がそれを評価してくれること。その3つを実行できれば、どんな職種であれ「プロ」と名乗れるというわけです。

そしてネットで自分の考え方ややったことをプロフェスしていくと、信頼がたまっていくもの。そのようにして信頼される「プロ」になれば、「どこでも誰とでも」働くことができるということ。

変化3:会社と個人の関係が根底から変わる

働く人の多くがプロフェショナルになれば、必然的に会社と個人との関係は変化していくことでしょう。これまでの正社員を前提とした終身雇用的な関係から、フラットにつながりつつ、利益をシェアする関係が主流になるのです。また、既存のインターネットのみならず、AI(人工知能)やブロックチェーンなど、いままさに進行している技術革新もそれを後押しすることに。

一方、ベストセラー『LIFE SHIFT ライフ・シフト』(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著、東洋経済新報社)に示されていたように、今後は多くの人が100歳まで生きる社会が現実になる可能性があります。そうなれば、80歳程度の寿命を想定していた従来の就職や転職の仕組みも大きく変わることになります。なぜなら、「最初の20年で学び、その後40年働き、残りの20年は引退生活で自分の趣味を楽しむ」という前提が大きく崩れるから。

ずっと学び、ずっと働きながら、自分の趣味を全うする、しかも変化する時代のなかで、常に自分も変化し続けることが求められるということです。

つまり本書は、こうした変化を乗りこなせる人間になるための指南書といえそうです。ところで著者は、なぜ12回も転職をしたのでしょうか? 今後の転職のあり方を説いた第2章「人生100年時代の転職哲学」から、その答えを抜き出してみたいと思います。

会社を辞めるつもりはなくても転職活動は毎年する

著者はいまでも、毎年転職活動をしているのだそうです。正確には、転職するかどうかにかかわらず、ずっと転職サイトに登録し、「外から見た自分の評価」を更新し続けているというのです。

就職活動後に新卒入社し、そのまま同じ会社で働き続けると、会社内での自分のポジションはわかっても、「世の中から見た自分の評価」は就職活動をしていたころから更新されないことになります。そこで、少なくとも数年ごとに就職活動をして見て、自分の価値を客観的に知っておくことに意味があるということ。

ところが実際には社歴が長い人ほど、「いまの会社を離れると、仕事がもらえなくなる」と思い込んでいるもの。いまの仕事に意識ががんじがらめにされてしまい、「この仕事しかできない」と思い込んでしまう。その結果、ブラック職場でストレスを抱えながらもがんばってしまうようなケースが出てくるというのです。

自分に自信が持てないのは、自分の価値に気づいていないからです。世の中から見た自分の価値を知るには、労働市場に身を置いてみるのがいちばんです。つまり、最終的に転職するかどうかは別として、実際に転職活動をしてみれば、他社から見た自分の評価がわかります。(118ページより)

実際に面接までは至らなかったとしても、毎年自分の履歴書や職務経歴書を更新し、リクナビやビズリーチなどの転職サイトに登録しておくだけでも意味があるといいます。なかには、試しに別の名前で登録して見たら、自分の会社から自分の給料の倍のオファーをもらったという冗談のような話もあったのだとか。

とはいえ実際のところ、「転職する気もないのに転職活動をするなんて、いまいる会社に対しても、面接を受ける会社に対しても失礼だ」「せっかく内定を出したのに断るのは社会人失格だ」などという意見もあることでしょう。

しかし会社の側も、採用する場合もあれば落とす場合もあります。「最初から転職する気もないのに、面接を受けるのは問題だ」という理屈を成り立たせるためには、「全員採用することはできないのに、面接を受けさせるのは問題だ」という理屈も成り立たせる必要があると著者。

現実的には、普通の人が仕事人生のなかで転職するのはせいぜい2、3回程度。その一方、会社は毎年採用し続けており、しかも向こうから断ってくるケースが圧倒的に多いわけです。それだけ情報が不均衡なのだから、個人の側も自分なりのやり方で不均衡を正そうとするのはむしろ当然。

それどころか、日ごろから転職サイトで自分の価値を確認しておかないと、結局は相手(会社)の言いなりになってしまう危険があるという考え方です。

誤解して欲しくないのは、会社とそこで働くあなたは、会社が親で、あなたが子どもという親子関係ではないということです。会社と個人はあくまで対等(フラット)で、お互いにメリットを提供し合う(シェア)関係なのです。(119ページより)

10年後に会社が生き残っているという保証はどこにもないはず。それなのに転職どころか、転職活動をしただけで「裏切り者」呼ばわりされたり、内定を蹴ったくらいで「人でなし」と文句を言ったりするのは間違っていると著者はいいます。(117ページより)

「いつでも辞められる」から最高のパフォーマンスを発揮できる

著者が毎年転職活動をしていることには、もうひとつの目的があるそうです。自分がこの先目指すべき分野、将来価値が高まりそうな分野を見極めるためだというのです。

相手の会社がこちらの能力をいくらで買いたいかを提示するのと同じように、こちらも会社が3年後に成長するかどうかを冷静に見極める。お互いに相手の持つ力を真正面から評価し、手を組むかどうかを決めるのが転職活動という場だという考え方です。

大切なのは、会社という枠から一歩外に出たところで、自分にもこんな価値があるのだと実感すること。それに気づくと会社に対する依存心がなくなり、「いまの会社を辞めたら仕事ができない」という思い込みも消え、会社といい距離感でつきあうことができるというわけです。

「いつでも辞められる」と思えば、会社でも、周囲の顔色ばかり伺うのではなく、自分の思いを大胆に主張できるようになるもの。逆説的ですが、いまいる会社で最高のパフォーマンスを発揮するためには、「いざとなったらいつでも辞める」という覚悟が必要だということ。

会社にしがみついている人には、本気で会社を変えることは不可能。いまの職場を変えられるのは、「辞める覚悟」をもって「辞めずに取り組む」人だという考え方です。(120ページより)




これだけを見てみても、働き方が大きく変わろうとしていることが実感できるはず。しかもそれは「特定した誰か」の話ではなく、すべてのビジネスパーソンに関わる問題でもあります。だからこそ本書を参考にしながら、働き方について考えなおすべきかもしれません。

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