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「筋膜」を刺激して心と身体の柔らかさを取り戻す方法

「筋膜」を刺激して心と身体の柔らかさを取り戻す方法
image: worawit_/Shutterstock.com

なんとなく身体が重くだるい、そしてその身体に引きずられるように心も重くなってくる…というご経験は誰もが感じたことがあるでしょう。そしてその逆もまた然り。そう、身体と心の重さには深いつながりがあります。 最近話題のキーワードである「筋膜(きんまく)」にも、そうした身体と心のつながりが隠されています。

「筋膜」とは、英語の「facia,fascia(ファシア)」を訳したもので、本来「筋肉の膜」のことだけを指すものではありません。筋肉の他にも骨や臓器、神経、血管、リンパなど、全身のあらゆる器官をつなげているシステムです。さらに、この全身につながるネットワーク「筋膜」の柔軟性は、心の柔らかさとも関わっているのです。

今回は、「筋膜」を刺激して心と身体の柔らかさを取り戻す方法をお伝えします。

筋膜とは? 身体は膜でつながっている

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image: Dasha Petrenko/Shutterstock.com

人間の身体は、元々は一つの細胞がどんどん分裂してできたものですから、その全てはつながっています。

普段は「頭」「首」「胴体」「手足」「内臓」などと分けて考えていると思いますが、それは便宜上、境い目を決め、そこに分けて名をつけているだけのこと。

自分の身体をしげしげと眺めてみると、身体の外側は皮膚で覆われ、鼻や目、口、などいくつかの裂け目から身体の内側へとつながっているのがわかると思います。

心臓、肺、肝臓、胃、腸などの各臓器も、単独で身体の中に浮かんでいるのではなく、必ず身体の内側で何か他の組織とつながっているわけです。

そうした、身体のあらゆるところををつなぐものが「筋膜(facia,fascia)」です。

一般的に「身体をほぐしたい」というときに話題にのぼっているのは、全身をスパイダーマンのスーツのように包む「筋筋膜」、中でも皮膚の下の脂肪層に存在する「浅筋膜」そして、そのさらに下の層で600数個の筋肉を包んでいる「深筋膜」のことを指しています。

ちょっと、スパイダーマンスーツのような全身タイツを着ている自分を想像してみましょう。

肩先の布をねじってつまんでみると、全身のシルエットがヨレて崩れます。 さらに腰のあたりでもう一ヶ所つまんでみるとどうでしょう? このように、引きつれたり、ヨレたり、身体のあちらこちらに布の(筋筋膜)の縮みが増えると、その下で連動している筋肉もその影響を受けてしまいます。 デスクワークや、偏った身体の使い方をするようなことが続くと、筋筋膜にこのようなヨレが生じてしまいます。ある部分は密集し、ある部分は伸びてしまった結果、それがコリとして感じられるというのは想像がつくでしょう。

極端な話ですが、有能な秘書さんが右側にいる上司の気配をいつも気にしていたら、右側にばかり緊張や不調を感じるようになった、なんていうこともあり得ます。

そんな風に、筋筋膜のヨレは自分でも知らず知らずのうちに、生まれてしまうのです。

試してみよう:筋筋膜のつながりを感じるワーク

筋筋膜には感覚受容器が豊富に存在しています。そして、外部から感覚受容器への刺激が加わることで、組織の水分量が変わり、柔軟性や流動性を取り戻します。その力は決して強い必要はありません。優しい刺激でもセンサーが反応します。「全身は筋膜でつながっている」ということを、すぐに体感できるワークをご紹介しましょう。

WORK:

  1. まず今の身体の状態をチェックします。身体を前に倒して前屈し、身体の柔軟性を確認しましょう。決して無理せずに、今の状態を把握するだけで大丈夫です。
  2. 額の生え際に両手の小指から人差し指までの指腹を置きます。皮膚の下の頭の筋肉をとらえ、上下に揺らしたり、生え際に円を描くように、少し動きをつけます。
  3. もう一度、身体を前に倒して前屈してみましょう。先ほどと比べて、柔軟性に変化がありますか?

頭を軽くゆるめただけで、身体の柔軟性に変化があるのが、おわかりになったかと思います。これは、頭の先から足裏までの筋膜のつながりがあるため。ちなみに、足裏を少し揉みほぐすことでも同様に全体の柔軟性が向上します。

足ツボやリフレクソロジーなどボディケア施術を部分のみで受けたり、美容院でシャンプーされただけでも全身がスッキリするのは、こういった理由からなのです。

身体のクセは心のクセ

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image: Africa Studio/Shutterstock.com

筋筋膜にヨレを作るのは、物理的な姿勢や身体の使い方のクセだけではありません。

例えば、人が落ち込んでいるときに、肩をそびやかし、胸を反らせてなんだかエラそう、というのはみたことがありません。逆に自信満々なのに、うつむいて猫背、というのもなんだか不自然ですね。これらは極端な例ではありますが、人の心と「身体の在り方」というのは少なからず関連があるということの現れです。

私たちが赤ちゃんの頃、身体は柔軟性があり、とても自由な状態です。この時に持っている生来の資質にプラスして、親や学校、友人など様々な環境の影響を受け、良くも悪くも私たちの感情の反応や、身体の反応が特徴づけられていきます。

自分のお布団に潜り込んでぬくぬくしたり、パートナーとスキンシップをとったり、安全で安心な環境にあるとき、私たちの身体は安心しきってお腹をみせてる犬のようにリラックスし、とてもゆるんだ状態になります。

逆にとても怖い思いをしたとき、不安なとき、人は身を縮めて自分を守ろうとします。瞬時の恐怖や、日々の継続したストレスに反応した私たちの身体は、無意識に姿勢を変え、それが筋膜のヨレを作っていきます。

つまり、身体のクセは心のクセであるとも言えるのです。

もちろん身体に残ったストレス反応が上手に解消されれば良いのですが、この情報や変化の多い現代で長く生きている間に、そうした筋膜のひずみは澱のように蓄積してしまいます。

身体を丁寧に触れられるようなボディケアを受けたときに、自分でも予期せぬ涙がこぼれる…という経験をされる方がいるのは、筋筋膜がゆるんだときに、そこに記憶されていた感情が不意に解けてこぼれだすから。決してネガティブなことではありません。

涙も笑いと同様に感情のエネルギーの解放。上手に発散して、身体の柔らかさを取り戻すことは、心の柔らかさを取り戻すことにもつながります。

試してみよう:身体と心のヨレを整える横隔膜ワーク

手のひらで触れることと、呼吸を使って身体全体の筋筋膜をゆるめてみましょう。

ポイントは、呼吸を通じて身体の中心で様々な膜とつながっている横隔膜を動かすこと。そして、触れることでその動きをご自身でも感じることです。

横隔膜は、心と身体をつなぐ場所。 何か気が向かないことやストレスに直面したとき、何かを我慢するとき、人は無意識的に「ウッ」と呼吸を止めてしまっています。つまり横隔膜は心の状態を膜の硬さとして影響を受けやすいのです。逆に、中央部にあるこの膜が動いてくれることで、その柔らかさは波紋のように身体全体へと伝わっていきます。

また、少し時間をとって自分が手を触れている部分の「感覚」にも意識を向けてみましょう。温かい、冷たい、重い、軽い…。何も感じなくても、大丈夫です。ストレスにさらされ続けてこわばった状態の膜は、感受性が鈍くなっているかもしれません。

そんなときは「何も感じない」を味わってみるとよいと思います。感覚に意識を向けはじめることで、自然と感受性が育っていくと思います。もし「感情」が浮上してきたら、「あっ! 自分はこんな感情を持っていたんだ」と、ただ気づいて、眺めてみます。そして、また手が触れている部分の感覚へと意識を戻しましょう。

WORK:

  1. 仰向けに寝転がり、リラックスします。
  2. 鼻先やヘソを目印に身体の中心線を意識し、ゆったりと自然な呼吸を繰り返します。
  3. 胸と下腹部の中心に手のひらをおき、その部分がどんな感覚がするか少し感じてみましょう。何も感じなければ、それでもかまいません。
  4. 呼吸と共に胸や下腹部が隆起し、少しずつ手の平の温もりが皮膚に沈んでゆくのを感じましょう。
  5. 少し身体がゆるんできたら、呼吸と共に身体の縦軸に広がりが出てくるのを感じましょう。
  6. さらに身体がゆるんできたら、呼吸と共に体の中心から放射状に広がりが出てくるのを感じましょう。
  7. 自然な呼吸に戻したら、手のひらの感覚に意識を戻します。
  8. もう一度、胸と下腹部がどんな感覚がするか、感じて見ましょう。何か変化はありましたか?

普段は無意識的にしている呼吸を、このように「心と体に影響する膜のつながりである」という意識を持って行ってみるだけで、身体の感受性は変化します。

そして、身体の膜の柔らかさを取り戻すこと、「感情」「感覚」など「感じる」ことに素直になることは、人生の様々な局面を柔軟に乗り切る強さを生みだすのです。ぜひお試しくださいね。


「今を生き抜くためのセルフケア術」過去の記事はこちら:

小松ゆり子/パーソナル・セラピスト

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音楽、カルチャー、リラクゼーションを融合する「relacle」「CHILL SPACE」スーパーバイジング・ディレクター。南青山のプライベート・アトリエ「corpo e alma」を中心にセラピー・セッションやセミナー活動を行う。東洋的な押圧とロングストロークやストレッチングを多用し、植物や鉱物の力をフュージョンさせたオリジナルメソッド「VITAL touch therapy」を提唱し、密度の濃い「パーソナル」なスタンスでオーダーメイドの施術を行っている。約12万人以上を動員する音楽フェスティバルSUMMER SONICで10年連続セラピーブースを展開するほか、新宿のシェアオフィス「HAPON」でのオフィスリラクゼーション、アパレルブランド「かぐれ」でのセラピーや講座など他業種とのコラボレーションも多数。現代人が都会でバランスを保ちながら生き抜く知恵やプリミティブな五感を取り戻す方法をさまざまな角度からナビゲートする。


image: worawit_,Dasha Petrenko,Africa Studio/Shutterstock.com

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