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世界レベルのビジョンを持とう。「海外で通用する人材」になるために意識すべきこと

世界レベルのビジョンを持とう。「海外で通用する人材」になるために意識すべきこと
Photo: 印南敦史

世界で通用する「地頭力」のつくり方 自分をグローバル化する5+1の習慣』(山中俊之著、CCCメディアハウス)の著者は、グローバルリーダー開発をしているトレーナー。これまで研修・コンサルティング・大学講義・グルーバルビジネス・外交の現場において、多数の国内外のリーダーたちと向き合ってきたのだそうです。

「世界に通用する力を身につけて、活躍するためにはどうすべきか」ということは常に最大級のテーマであり、多くの世界のリーダーとともに議論してきました。 本書は、その経験や蓄積のもと、「情報」「知識」「ワークスタイル」「コミュニティ」「オフ」「英語」の観点から、日本人ビジネスパーソンの課題と課題解決のための習慣・方法論をまとめたものです。(「はじめに 世界に通用する人材になるための習慣」より)

本書で著者が問題視しているのは、日本だけで通用するような「ガラパゴス化」の弊害。世界がグローバル化するなかにおいて、日本人の情報、知識、思考、行動、成果は国内だけに閉じて留まっているため、世界とのギャップがますます大きくなっているというのです。

いわば世界に通用しない人材を量産しているような状態であるため、「世界に通用する人材になるための習慣」を意識的に身につける必要があるという考え方。そこで本書では、著者が豊富な経験のなかから導き出したメソッドを紹介しているわけです。きょうはそのなかから、「第3の習慣『ワークスタイル』を変える」に注目してみたいと思います。

世界的に見ても異常な状況

ワークスタイル(働き方)について、著者は日本の問題点を指摘しています。公務員はもとより企業に勤務する人にも大企業思考、安定思考があり、自分の属する組織に対するぶら下がり意識が日本社会全体を覆っているというのです。

そのような組織へのぶら下がり意識は世界的に見ても異常であるため、そこに大きなメスを入れる必要があるということ。

もちろん、こうした考え方に対しては、「正社員として就職するだけでも大変なのに」という反論もあるでしょう。しかし現実的には、正社員といっても安泰ではいられない時代。ビジネスパーソンとして生き残っていくためには、ぶら下がり意識を捨てるべき、それが著者の勧めるワークスタイルであるということです。

そして、そのためにクリアするべき根本課題は次のとおり。

1. 世界に比べジョブ、キャリアへの意識が弱く、モチベーションが低い

2. 時間単価、時間成果を意識しないのでパフォーマンスが低い

3. 空気を読むためイニシアティブをとらない

では、こうした課題をクリアするためには、具体的にどのような習慣を身につければいいのでしょうか? 著者が提案しているなかから、いくつかをご紹介してみることにしましょう。(102ページより)

小さくても世界に通用するビジョンを持つ習慣

世界で通用する人材は、自国だけでなく世界で通用するビジョンを持っているもの。なぜなら世界においては、個人としてどのようなビジョン、大義を考えているのかが問われるから。とはいえ、壮大なビジョンである必要はないといいます。日常の職務を通じ、世界を少しでもよくしようとするビジョンがあればいいということ。

たとえば、自社のプリンターを使ってもらうことで世界中の企業の業務を効率化させたい、自社のeラーニングの仕組みを導入してもらうことで社員の能力を高めたいなどです。また、自分の住んでいる地域をよくするといった地域限定でも構いません。世界の貧しい村の衛生状態をよくしようというNPO職員のビジョンのように、世界全体をターゲットにしたビジョンである必要はないのです。(111ページより)

ただし、他国や他社の犠牲のうえに立つ、排外主義的なものは例外。「自国ファースト」も、もし他国を犠牲にしてでも実現するといった内容であれば、世界では通用しないわけです。理由は明快で、世界は共存共栄で成り立っているから。

同じように、私利私欲なく他社のために貢献する内容であることも重要。「売上○○円達成」「経営者の収入アップ」といった内容ではなく、「世の中の多くの人にとってプラスになるような大義」が必要であるということです。

そのようなビジョンを持つためには、情報と知識を変える必要があるでしょう。人口が多いわりに英語が通用しない日本は、どうしても内向きになりがち。そのため多くの情報に触れ、広く深く学び、そこから生み出された見識に基づくビジョンであることが重要なのです。

ビジョンを会社任せにし、主体的なジョブ意識のないまま、毎日漠然と働いているのでは、世界に通用するビジョンを持つことができないと著者は指摘しています。ビジョンこそが、ワークスタイルを変える出発点ともいえる重要なポイントだということです。(110ページより)

世界では当たり前――好きなことにこだわる習慣

好きなことでないと伸びないということは、多くの識者が指摘しています。ところが「上司に言われたのでやむを得ず実行する」「仕方なく転勤に同意する」など、日本企業では主体的にキャリアが形成されず、不本意な仕事を担当することが往々にしてあるものです。

本来、不本意な仕事であれば転職するというのは世界共通の発想。しかし日本では、転職せずにいやいや従うことが少なくありません。でも、それではモチベーションが上がらなくても当然の話。

「今までは、就職するために大学が必要で、大学に入るために勉強するというプロセスが有効だった。でも今は、好きなことをやる、そのビジネスモデルを作る、そのために学ぶというプロセスに切り替えた方がいい」(「週刊東洋経済」2017年8月26日号)(112ページより)

これは、MITのメディアラボ所長である伊藤穰一氏の言葉だそうです。そしてこの言葉を踏まえ、著者は「どうしても好きなことが見つからない場合は、趣味でも遊びでも追求すべき」だと主張しています。

個人として、自らの得意分野と技を磨き、地道にPRしていく習慣が必要だということ。(112ページより)

現業にこだわらず、幅広くキャリアの可能性を考える習慣

好きで、やりがいのある仕事でないと全力投球できないのは当然なので、そういう意味で現業に不満を持っている方も少なくないはず。その場合、副業や転職、独立起業などの可能性は常に考えておくべきだと著者はいいます。自分の可能性を常に検討することで選択の幅が広がり、落ち込むことも少なくなるというのです。

最近は、ソフトバンク、ロート製薬など兼業を認める会社も増えてきました。生駒市役所などの自治体でも一定のルールの下で副業を認める動きがあるようです。(117ページより)

「厳しい発言で大変に言いにくいことですが」と前置きをしたうえで、著者は「これからの時代は、同じ会社に長期的にいることで視野を狭められてしまうリスクにも配慮しなければいけない」と主張しています。

ある戦略コンサルタント会社出身者が講演で、「これからは転職経験がないと経営者はもちろん管理職も難しい」と述べていたといいますが、著者もまったく同意見だというのです。(116ページより)

新規事業、海外事業に手をあげる習慣

しかし、「多様な職務経験が必要だとはいっても、現実的に転職はできない」「海外転職はハードルが高い」という声もあるはず。そのような場合は、ぜひとも社内で新規事業、または海外事業のリーダーに手を上げてもらいたいと著者。

当然のことながら、新規事業立案は簡単ではなく、単なるアイデアを事業計画にまで持っていくのはとても大変なことでしょう。とはいえ、本当の新規事業立ち上げの大変さはそこから。

実際の製品・サービスの作り込み、販売チャネルの確保、人員の確保など、多岐にわたることに対応しなければならないからです。しかし、それらをリーダーとしてこなしていくことが、従来の延長線上ではない働き方につながっていくということ。

日本企業の働き方は世界的に見ても異質な点が少なくないものの、海外事業であれば、ワークスタイルを変えることにつながるはず。海外事業で多国籍の人々と一緒に仕事すること、そのなかでリーダーとして実績を残すことにより、ビジネスパーソンとして間違いなく成長できるわけです。

そのため著者は、海外事業に手を上げる際には、海外勤務海外転勤も是非検討してほしいと記しています。なぜなら、次のようなメリットがあるから。

第一に、人口減少が現実のものになり、経済成長率が大きく鈍化している日本にくらべ、海外では人口も増え経済成長率も高い場合が多いということ。一般論としては、伸びる市場のほうが自らを成長させるのに適しているといいます。

第二に、語学や文化、商習慣などを習得できるため、3~5年程度居住したのちに帰国した際にはビジネスパーソンとしての市場価値が上がり、日本国内での転職や起業が有利になるということ。

第三は、海外には日本語や日本の商習慣を知る人材を雇用したい企業がたくさんあること。英語や現地語の能力、業界や職種に必要な能力経験は求められるものの、意外に間口はあるそうなのです。また、日本企業の現地法人への就職という方法も。これに関しては、処遇面をあまり気にしないのであればハードルは比較的低く、可能性は広がるといいます。

しかもそれだけでなく、他にもいくつか候補が。

第一は、国際機関やNGOなど世界の諸問題を解決するための組織。外務省などが日本の若者を国連などに送り込むことを奨励する仕組みもあるので、検討の余地があるというのです。

第二は、若い人であれば青年海外協力隊。現地に徹底的に溶け込み、かつ現地に貢献するという意味においては、とても素晴らしい機会になるといいます。グローバル化を強く推進する企業のなかには、青年海外協力隊出身者を積極的に雇用しようとする例もあるのだそうです。(118ページより)




各テーマについてまずは「根本課題」を指摘し、次にその課題をクリアするための「習慣」を提案するという構成になっているため、要点をしっかりと把握することができるはず。世界で通用する人材を目指そうという意思があるであれば、ぜひとも読んでおきたい1冊です。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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