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「自己催眠」は「瞑想」とどう違う? 脳の正しい使い方

「自己催眠」は「瞑想」とどう違う? 脳の正しい使い方
Photo: 印南敦史

私たちはなぜ、自分の脳について教えられることがこんなにも少ないのだろうか。脳は、私たちがすることのすべてに関わっている。ところが、私たちはその使い方のマニュアルを与えられず、そのせいで苦労している。(「はじめに」より)

脳のフィットネス完全マニュアル』(フィル・ドブソン著、斉藤裕一訳、CCCメディアハウス)の著者は、このように主張しています。

私たちは「忙しい」毎日を過ごしているだけでなく、働く時間はますます増えています。そのため自分自身のために使う時間が減り、幸福がそこなわれることに。さらには他者との交流のために取る時間も減り、人間関係にしわ寄せが及ぶケースも。

そんななか、疲れを感じたり、集中力が続かなくなったりしても、私たちは、もっとがんばって働くことが唯一の答えであるかのように反応しているというのです。

だとすれば、どうすればいいのでしょうか? この問いに対して著者は、「解決策は、もっと賢く働くことだ」と答えています。本書の目的は、脳について解明されていることに基づき、もっと賢く考え、賢く働くための原則を伝えることなのだとも。

ちなみに著者は、コーチングを手がけるブレインワークショップス(Brain Workshops)の創設者。神経科学と認知・行動心理学の知見を仕事のスキルに応用し、世界中の企業経営者に仕事の能率の高め方を指導しているのだそうです。つまり本書のバックグラウンドにも、そのような活動から得た知見があるわけです。

きょうはPART 6「脳をプログラミングする」のなかから、いくつかの要点を引き出してみたいと思います。「脳の力の生かし方」という観点から、注意の振り向け方、頭のなかでのリハーサルで成果やスキルを高める方法、感情的反応をコントロールする方法などを紹介した章です。

注意を向けなおす

著者はここで、脳が生み出す「現実」に影響を与える、2つのシンプルな方法を紹介しています。

感謝の気持ちをもつ

自分を幸せな気分にしてくれることや、ありがたさを感じることについて考えること、それは時間の有意義な使い方になるといいます。感謝の気持ちを絶えず表すことで、不安のレベルが下がり、身体的・感情的・精神的な幸福感が高まるというのです。

大切なのは、目標の達成にとらわれすぎず、「いま」という瞬間を単しむようにすること。しかし、「これができれば、すべてがうまくいく」というように考えてしまうと、自分が完全に経験できる唯一のものである「いま、この瞬間」を味わえなくなってしまうのだといいます。自分がありがたみを感じるものについて、少し時間をとって考えてみることが大切だというわけです。

ネガティブな思い込みや、自分を縛っている思い込みを覆す

著者は心理セラピストとして、ネガティブな思考で自分を弱らせてしまっている人をたくさん見てきたのだそうです。自分自身に対してネガティブな思い込みに陥ってしまうと、その証拠ばかりを見つけようとする「確証バイアス」が働いてしまうもの。しかし逆にポジティブな自己意識を持てば、その証拠も見つかることになるというわけです。

注意の向け方が経験に影響を及ぼすのと同じように、考え方は知覚に影響するもの。つまり、自分についてどう話すかが、自分の経験に深く影響するということなのでしょう。

ヘンリー・フォードがこう言っている。 「できると思おうが、できないと思おうが、どちらもそのとおりになる」 (155ページより)

自分が自分についてどう話しているかに意識を向け、自分の可能性を狭めるような考え方をしているようなら、それを突き破るようにすることが大切だということです。(154ページより)

想像力をはぐくむ

自分の脳に影響力を振るう、さらに強力な方法、それは、想像力を働かせて脳を前向きに導くこと。

たとえば、アスリートがパフォーマンスを高めるためにメンタル・リハーサル(予行イメージ法)を使っていることはよく知られています。カナダ・ケベック州のビショップス大学の研究チームは、アスリートが想像力を使うだけで筋力を24%も高められることを確認しているのだといいます。

またハーバード大学の神経学者アルバロ・パスカル・レオーネは、メンタルなイメージが脳にどう影響するかを調べるため、ピアノを練習している人たちの脳に着目したのだそうです。

被験者の一方のグループには、ひとつの楽器を5日間練習するように指示し、もう一方のグループには、頭のなかで練習を創造するように指示。その結果、両グループとも、練習で使われる身体的運動に関わる脳の運動皮質の部位に同様の変化が生じていたというのです。

自分の行動をイメージするのにも、実際に行動するのにも、私たちはかなりの程度、同じ神経回路を使っているもの。脳と体は想像に対して、あたかも現実であるかのように反応するというのです。

メンタル・リハーサルをスキルの習得や成果の向上、癖の修正、感情的反応のコントロールに活用することが可能。そしてメンタル・リハーサルで最大の効果を得るためには、まず学習に求められるリラックス状態と精神的な集中を生み出す必要があるということ。それは、「自己催眠」と呼ばれることもある状態。(156ページより)

自己催眠の活用

自己催眠などと聞くと、なんだか怖いイメージがあります。しかし実際のところ、催眠は誰にとってもなじみ深いものなのだと著者。

おもしろい本を無我夢中になって読んだとか、旅の目的地に向かってなにも考えずに運転していたとか、映画のエンドロールが始まって「トランス」状態から醒めたというような経験がある人は、もう催眠状態を経験していることになるというのです。

つまり催眠とは単純に、注意の持続による自然な結果であり、体のリラックスを伴うことが多いのだという考え方。

だとしたら、自己催眠は瞑想とどう違うのでしょうか? 著者によれば、それは自己催眠の使われ方にあるのだそうです。瞑想とマインドフルネスはリラクゼーションのエクササイズであり、自分の意識に注意を向けるもの。その結果として、身体・感情のコントロールと集中力の向上という効果がおのずと生まれるというわけです。

対する自己催眠は、それよりもう一歩踏み込んだもの。リラックスして集中力が高まった状態を、すばやい学習に生かすということです。たとえば集中瞑想をする場合、瞑想に入った状態でメンタル・リハーサルをすれば自己催眠を実践していることになるのだといいます。

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Image: ライフハッカー[日本版]編集部

誰かに催眠をかけてもらう必要はなく、意識やコントロールを失うことにもならないということ。ましてや、意識の下に押し込められたトラウマ(心的外傷)というパンドラの箱を開けることにもならないはず。いわば自己催眠とは単なる「没頭」の状態で、だから正しく使えば脳の活動を導くことに役立つというわけです。(158ページより)




「脳のフィットネスの高め方」にはじまり、「生産性の高め方」「想像力の高め方」「記憶力の高め方」と、脳のフィットネスをさまざまな角度から検証した内容。著者が言うように「もっと賢く考え、賢く働きたい」と考えているのであれば、手にとってみる価値はありそうです。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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