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ブレストだけじゃない。ゼロからアイデアを考える時に使える3つの発想法

ブレストだけじゃない。ゼロからアイデアを考える時に使える3つの発想法
Photo: 印南敦史

アイデア発想法16 どんなとき、どの方法を使うか』(矢野経済研究所 未来企画室著、CCCメディアハウス)によれば、「アイデア発想」のために大切なポイントは、「どんなときに、どんな場面で、どの発想法を使えばいいのか」。そのことを知らなければ、せっかくの知識も宝の持ち腐れになってしまうため、本書もそこにフォーカスした内容になっているというのです。

一般的にアイデア発想法は、新事業や新商品のアイデアを考えるときに使われるものというイメージが強いでしょう。しかし、課題解決の方法を考えたり、業務改善のアイデアを求められたりするのは、企画系の部門だけではありません。生産管理や調達、営業や顧客管理、物流や管理部門を含むすべての業務部門において「創造的なアイデア発想力」は不可欠であり、今後ますますその重要性は増していくことでしょう。(「はじめに」より)

つまり本書はそのようなことを念頭に置き、どのようなビジネスシーンにおいても最適なアイデア発想力を見つけられるようにつくられているということ。きょうは第2部「こんなとき、この発想法でアイデアを出す」のなかから、「1 ゼロから検討を始めるときに使う発想法」を見てみたいと思います。

自由に多くのアイデアを出す「ブレインストーミング」

アメリカの実業家であるアレックス・F・オズボーン氏によって考案されたブレインストーミング(ブレスト)は、アイデア発想法の王道中の王道。もっともシンプルかつパワフルな発想法であり、「どんなに使えないアイデアでもよいので、とにかく自由に数多くのアイデアを出す」ことを最大の目的としています。その基本的なルールは次の4つで、これらを周知徹底することが重要。

1. 批判厳禁(他人のアイデア・意見を批判・批評してはいけない)

2. 自由奔放(突拍子もないアイデア・意見も受け入れる)

3. 質より量(アイデア・意見の質・内容は一切不問)

4. 便乗歓迎(他人のアイデアや意見に乗っかったアイデア・意見を歓迎する)

(39ページより)

議論の進め方は、自由な討論形式でも、参加者に順番にアイデア・意見を求める形式でもOK。

ブレストでは参加者に自由なアイデア・意見を求めるため、声の大きな参加者や地位の高い参加者の意見が重視、尊重、忖度される傾向にあります。内気、口数が少ない、あるいは地位の低い参加者のアイデア・意見が活かされない傾向にあるため、それを回避するための工夫が求められる場合も多くなるということ。

また「批判厳禁」であるため、他人のアイデアの反対方向にあるアイデアを出しにくいのも事実。検討すべきテーマを適度に絞り込み、参加者全員がきちんと同じレベルで共有しておかなければ有効な検討には至らないという問題もあります。

しかし、そうした点に気をつける必要はあるものの、どのようなアイデアを発想したらいいのかわからない場合は、まずブレインストーミングからはじめてみるといいと著者はいいます。(39ページより)

自由なアイデアを紙に書き込む「ブレインライティング」

ブレインライティングは、ブレインストーミングを紙面で展開する発想法。強制的に、参加者へ均等にアイデアを求めることが可能で、ドイツのバッテル記念研究所が、ブレストをベースに考案した発想法なのだそうです。

基本的なルールはブレストと同じで、1. 批判厳禁、2. 自由奔放、3. 質より量、4. 便乗歓迎の4つのルールを周知徹底。なお「6・3・5法」と言われることもあるように「6人」で、「3アイデアずつ」、「5分ごと」に出すスタイルが有名ですが、必ずしもそうしなければならないわけではないとか。

メリットは、他人の意見を聞く時間を割愛できるため、アイデアを考える時間を多くとることができる点。また、誰が出したアイデアなのかわからなくすることで、声の大きな人や地位の高い人の意見が重視・尊重される傾向を緩和することも可能になります

反面、他の人の発案や意見を聞く時間がなくなるため、「便乗歓迎」においてやや弱いという側面も。これを回避するために、5分ごとに用紙を回して前の人のアイデアを参考にアイデアを考え、書き足していくような工夫も必要だといいます。

また、よりいっそうの効果を狙って、ブレインライティングのあとにブレストを実施するという方法も有効。

ブレストがあまりうまく機能しないとか、偏った人の意見や発言時間に議論の多くを割かれるような場合には、ブレインライティングが有効だと著者は記しています。(42ページより)

アイデア出しに行き詰まったときに使う「ゴードン法」

「自由奔放」「質より量」とはいえ、議論がスタートするとつい「これはダメだろう」「あれはすでにあるな」などと考え、活発な議論にならないことがあるもの。社会(市場、商品、サービスなど)が成熟していく過程において、これまでに相当数のアイデアが出尽くしてしまったからこそ、既知情報や過去の常識にとらわれてしまうと、こうした傾向になりやすいわけです。

そんななか、これを回避するために生まれたのがゴードン法。アーサー・D・リトルに勤めていたウィリアム・ゴードン氏が考案したものです。

ブレインストーミングでは事前に検討テーマを参加者に明確にしますが、ゴードン法ではあえて本当のテーマを伏せたまま、ブレインストーミングを実施するのが特徴。本当のテーマは伏せつつ、その本質やそれと関連づけたテーマを明確に伝えるわけです。つまり目的そのものを検討してもらうか、目的の重要因子を検討してもらうかの違い。

たとえば、一度封をすると二度と開封できない(破らなければいけない)樹脂製のジッパー付き袋があったとします。この商品の用途・使途について検討してもらうならブレストを行います。一方、一度封をすると破らなければ開けられない袋(袋の代わりに箱やケースとしたり、もっとぼかしたい場合は「もの」としても良いでしょう)の使い方を検討してもらうのがゴードン法です。(44ページより)

ゴードン法では、「ジッパー付き袋」という具体的な商品を連想させず、重要な機能だけを提示するということ。そうすることによって、「ジッパー付き袋」という商品への常識・固定観念が抑えられるというわけです。そしてその結果、参加者の検討の視野や思考が、一般的な常識などから解放されることになり、自由なアイデアの発想を行いやすくなるということです。

もうひとつ例を挙げましょう。 「新しいカレーライスの商品アイデア」を発想する場合です。 「新しい」にもいろいろありますが、今回は「香り」にフォーカスしたいと考えました。このとき、「新しい香りのカレーライスを考えてほしい」と言っても、斬新なアイデアはなかなか出てこないでしょう。しかし、これを「食べ物(あるいは食品)につける新しい匂い・香りのアイデア」として検討を進めると、カレーライスという常識にとらわれない斬新なアイデアが出てきやすくなります(バラの香り+カレーライス、など)。(45ページより)

つまり一般的な常識や固定観念を除くかたちで、その本質だけ検討してもらえるようにテーマ設定することがポイントだということ。

ゴードン法は、検討すべきテーマについてあえて遠まわりすることで、最終的に本来の目的につなげていく手法。そのため、事前準備を含めファシリテーター(司会進行役)の技量が問われるわけです。ブレストにくらべ、ファシリテーターのセンスや経験がその成否を大きく左右するということ。

なおゴードン法の基本ルールと方法はブレストと同様で、ブレインライティングを活用・併用するのも可能。ブレストを行なってもありきたりのアイデアしか出てこないときや、何度もブレストを実施し、それ以上アイデアを出すのが難しいときなど、「行き詰まり感」が漂っている場合にはゴードン法にチャレンジするといいそうです。(44ページより)

6色の帽子を使って論点を絞り込む「シックスハット法」

シックスハット法は、アイデアを検討する視点、あるいは検討のプロセスを細かく切り分け、それぞれの視点で全員が一致し、同じ方向でアイデア、意見を出し合う方法。対立思考ではなく、水平思考でアイデアを発想するわけです。

その名のとおり、6つの視点で検討を進めるのが特徴。6つの視点に色づけをし、その色の帽子をかぶってアイデア出しを行なったことからその名がついたのだといいます。もちろん色つきの帽子はなくてもかまいませんが、議論中に、「いま、どの色(視点)を議論しているのか、視覚的に認識できるような環境をつくることがポイント。

具体的には、青→白→黄→黒→緑→赤のステップで検討を進めていくのだそうです。

最初のステップである「青」で行うのは、「立ち位置の確認」。具体的には、検討テーマや検討ステージ、これまでの検討結果・経緯などを参加者で共有するわけです。

次のステップ「白」で行うのは、「事実の確認・把握」。検討するテーマに関し、参加者それぞれが持っている客観的な情報やデータ、事実などを発言して共有し合うのです。

さらに「黄」と「黒」は、検討テーマに関するよいところ(長所)悪いところ(短所)をそれぞれ議論するステップ。「黄」のときはよいところだけ、「黒」のときは悪いところだけと限定して意見を出し合うということ。

そして、本質的なアイデア発想の色として「緑」があり、ここでは新しい代替案や創造できそうなことを議論。

最後の「赤」では、出されたアイデアについての素直な気持ち(どう感じるか、好きか嫌いかなど)を話し合い、アイデアを検証し、必要に応じて仕切りなおしやブラッシュアップのステージにつなげるわけです。

シックスハット法のポイントは、ある色の視点で検討するときは、無理にでもその色(同じ視点)で意見を出し合うこと。よって、そのルールを守らなければならないということ。

ブレストなどと同じく、制約条件がほとんどないなかでアイデアを発想することも可能ですが、ある程度テーマを絞り込み、方向性だけでも設定しておかなければ検討が進みにくくなることに。もし検討テーマが曖昧な場合は、「青」の立ち位置の確認だけで、意見がまとまらずに検討が終わってしまう可能性が高くなるといいます。

つまりシックスハット法は、具体的な既存のビジネスや商品、サービスに関するアイデアの創出に適した発想法だということ。ゼロベースの新規事業を検討する場合には、事前に「青」や「白」についてある程度方向づけをしてから進むべきだということ。

なお、6つのプロセスの順序に関してはいろいろな考え方があるものの、著者は「青」→「白」→「黄」→「黒」→「緑」→「赤」の順に進めることを勧めています。もちろん特定プロセス(色)の割愛や繰り返し、プロセス(色)の入れ替えがあっても問題はなし。いずれにしても「なかなか議論がかみ合わない」「違う論点での議論が多い」と感じたときには、シックスハット法が役立ちそうです。(47ページより)




本書の内容を理解して実践したとしても、必ず優れたアイデアが出てくるとは限らないと著者は記しています。アイデアを出すためには運も必要ですが、ただ待っているだけではなく、最大限の努力をしてこその運だということ。その点をきちんと踏まえてアイデア発想に臨んでみれば、いいアイデアを導き出せるようになるかもしれません。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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