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「仕事の達人」になるために、単純な仕事やつまらない仕事を大事にすべき理由

「仕事の達人」になるために、単純な仕事やつまらない仕事を大事にすべき理由
Photo: 印南敦史

早いものでもう4月。この春から社会人になるという方も多いことでしょう。そこで、希望と不安を抱えた若きビジネスパーソンにこそご紹介したいのが、『働き始めた君に伝えたい「仕事の基本」』(江口克彦著、日本実業出版社)です。

なにごとも同じですが、仕事においても人生においても「ツボ」「押さえどころ」というか、「基本の基本」というものがあります。(中略)

あなたが、懸命に努力しているのに、でも思ったほど成果が上がらない、評価されないとするならば、実にもったいないことであり、実に気の毒なことだと思います。

あなたのその一生懸命さが、努力が、汗が、無駄にならず報われるようにするには、仕事においてどのようなことを心掛けたらいいのか、どういうことに気をつけたらいいのでしょうか。(「はじめに」より)

著者は23年間にわたり、「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助さん(松下電器産業株式会社《現・Panasonic》創業者)に直接仕えてきた人物。また、PHP総合研究所の経営者として、そして参議院議員としても1期6年間努めてきた実績の持ち主です。つまり、そうしたキャリアのなかから「これは大事だ」と再認識した22項目を厳選し、ここに書き記しているわけです。

それは著者の言葉を借りるなら、「経験的に感じ、実行し、効果のあった『ツボを押さえた仕事の仕方』」。そのなかから、きょうは仕事についての基本中の基本というべき、ひとつの重要な考え方をピックアップしてみたいと思います。

単純な仕事を大事にする

単純な仕事、簡単と思われる仕事こそ大事にする。(21ページより)

それは、誰でも心がけなければならないことであると同時に、社会人1年目の人たちには特に頭に入れておいてほしいことだと著者はいいます。

多くの場合、最初に与えられる仕事は単純なものが多いはずであり、それが普通。なぜなら会社としての仕事は99%ではダメで、ひとりひとりの仕事が100点でないといけないから。ひとりひとりの100点の仕事が集まって、初めて会社は全体として機能し、発展することができるというわけです。

上司が新入社員に、まずは単純で簡単な仕事を与えるのも、そんな理由があるから。もちろんその一方には、「失敗したら困る」ということもあるでしょう。しかしそれ以前に、「失敗して将来に悪い影響を与えないようにしよう」という配慮もあるわけです。

とはいえ新入社員の立場からすると、毎日同じような仕事が続いたとすれば、たとえそれが仕事だとわかっていても「もう勘弁してよ」と思う可能性は大いにあります。しかし大切なのは、そこで気を緩めず、与えられた単純な仕事にしっかり取り組んでいくこと。

そういう、単純だけれど「仕事の基本」といえるような仕事を最初に体に浸み込ませ、血肉にできるかどうか。それが将来を決めてしまうといっても過言ではないということです。

「なんだ、こんな仕事」と思う仕事を、きっちりとやり遂げる。「なんだ、こんな単純な作業を」と感じる仕事を正確かつ迅速に仕上げる。そういう姿勢が大切だという考え方です。

なぜならば、大きな仕事も、そうした単純な、一見小さく見えるような、あるいは雑用かと思うような仕事を土台にして成り立っているからです。

そうです、その単純な仕事が、実は機械でいう「小さいけれども必要な部品」。あなたが小さいと思う仕事によって、会社全体が維持されているのです。(24ページより)

単純な仕事をきっちり誠実に仕上げていくということの積み重ねによって、次のより大きな仕事を100点満点で処理していくことができるというわけです。つまり、どんなに小さな仕事に対しても、どのような雑用の仕事に対しても、誠実にしっかりと対応し取り組んでいく。そんな姿勢が「仕事の達人」への第一歩になるということ。

大きい仕事は小さい仕事の集合体です。一気に大きな仕事はできません。

一見、些細な、平凡な、単純な、簡単な仕事の集積なのです。

完璧な小さな仕事が集まって、あるいは、小さな単純な仕事が集まって、大きな仕事の土台になるのです。その土台がしっかり造られていればいるほど、その上に立派な家を建てることができるのです。(26ページより)

だからこそ、今取り組んでいる仕事が自分の期待にそぐわない仕事であったとしても、全力をあげて取り組むことが大切だということ。そうすることによって、将来、大きな遺影を立てることができる。すなわち、とてつもなく大きな仕事に取り組み、成功することができるというわけです。

「つまらない仕事」こそ、真剣にやるべき

毎日が単純で、毎日が平凡。

実際問題、社会人になればそう感じることは少なくないでしょう。でもそれは、すべての社会人が通るところでもあります。だから乗り越える必要があるし、重要なポイントがここにあります。

「こんな仕事をするために、この会社に入ったのではない」と不満に思う前に、いずれ大きな仕事を成功させるためにも、いま目の前にある「つまらないと思う仕事」こそ、大切に、誠実に成し遂げていくべきだということ。

たとえばコピーを頼まれたら、そのコピーの仕事に誠実に取り組む。伝票の仕分けを指示されたら、単純だと軽く考えず、ていねいに取り組む。送られてきたお中元、お歳暮の名簿をつくれと指示されたら、確実かつ正確につくる。

それらは、どうでもいい仕事であるように見えて、実は「誰かがやらなければならない仕事」。つまり、つまらなく思えても意味のある仕事であり、しっかりとやり遂げる「価値」があるということです。

ちなみに著者はこのことについて、社会人1年目の人に限っての話ではなく、中堅からベテランの人たちにも当てはまることだと記しています。立場に関係なく、その思いや誠実な取り組みが、周囲から認められ、評価され、上司に安心感を与えるということ。そしてそれが認められれば、次に責任の重い仕事、より大きな仕事を担当させてもらえるようになるということです。

そういう真摯な仕事への取り組みが、自分自身を「仕事の達人」にするための出発点になるのだと著者は主張しています。そして、それが「仕事の基本」だということを、しっかり心にとどめておいてほしいとも。




著者の言葉に強い説得力があるのは、たしかな実績の裏づけがあるからこそ。しかも、そのメッセージには押しつけがましさがないからこそ、余計に心に響くのです。

社会に出るにあたり緊張していて、「なにをどうすればいいのかわからない」という気持ちになっている方にとって、あるいは、「仕事を始めたけれど、どうにもうまくいかない」と悩む人にとって、本書は大きな力になってくれるはずです。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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