
普段は気にならないのに、寒い日などに妙に恋しくなるのが甘酒。自販機で、ついポチッと押してしまう方も多いでしょう。春が近づき、徐々に暖かくなってきていますが、朝晩はやっぱり冷えます。
でも、実は「甘酒」は夏の季語になっているように、江戸時代では夏に飲まれていました。今も夏バテ防止や健康のためとして、年中楽しむ人も少なくありません。
そこで、ひとつアイデアがあります。ただ甘酒を飲むのではなく、別の飲みもので割ってみたらどうなるのか。カクテル風にしてみたら、もっとおいしくなるのでは? それに、味にバリエーションがあれば飽きがこず、出番が増えそうです。
そこで、甘酒を割るための飲料をいくつか用意して試してみました。
甘酒の種類
検証の前に、甘酒には2種類あることについて知っておきましょう。甘酒には、「アルコールが入っているのかいないのか」という議論がたびたび起こります。答えは、どちらも間違っていません。「種類によって違う」というのが正解です。
甘酒は、“酒粕”から作るものと、“米麹”から作るものとに分けられます。酒粕は日本酒の製造過程でできるものなので、もちろんアルコールが入っています。それをお湯で溶いて砂糖を加えて作るのが、酒粕から作る甘酒です。
一方、米麹から作る甘酒は、米に麹を合わせて保温し、発酵させてできたもの。アルコールは入っていません。自然な甘みがあるので砂糖は不使用。ヘルシーで栄養価も高く、“飲む点滴”とも言われます。
今回使用するのは、米麹から作られた甘酒。袋入りになっている、水で薄めるタイプを使用します。水の代わりに、別の飲みもので割ってみるというわけです。
割りもの

用意した割りものは、牛乳、豆乳、コーヒー、紅茶、緑茶、ほうじ茶、トマトジュース、青汁、アーモンドミルク、ライスミルクの十種類。スーパーやコンビニで売っている、パックやペットボトルのもので揃えました。
作り方は、通常の袋入り甘酒と一緒。鍋に甘酒と割りものを同量入れて、火にかけて温めます。
選定員は、料理研究家のオガワチエコ、アシスタントの千葉あゆみ、料理カメラマンの大崎えりやの3名。春を前に冷え切った女性たちを、ほっこり温め、満足させられる甘酒は果たしてどれか?
結果は、「イマイチ」「普通」「おいしい」の3段階に分けて発表します!
イマイチ:緑茶

緑茶ということで、もっと緑がかっている状態を想像しましたが、見た目は普通の甘酒とあまり変わりなし。緑茶割りといえばお酒では定番ですが、甘酒には適さないようでした。
大崎:「渋さがマッチしそうだけど、そうでもない。なんか違う」
オガワ:「お茶の香りがぼんやり漂っているけど、それがかえって邪魔になっている」
千葉:「苦みがもうちょっとあるといいかも。ペットボトルじゃなくて煮出しのお茶のほうが良かったのかな……」
イマイチ:牛乳

色合いも似ていて、割っても問題がなさそうな牛乳が、思わぬ低評価。選定員たちが顔を曇らせた要因となったのは……。
千葉:「甘さが強すぎ。牛乳を混ぜることで甘さが際立ってしまってる」
大崎:「確かに甘い。甘酒というより、甘い牛乳だと思って飲んだほうがおいしく感じるかな……」
オガワ:「洋風のスイーツみたい。食後にはいいかも。もっと牛乳多めにして甘さを抑えたほうがいい」
以上が、「イマイチ」の評価を受けた2種類でした。
どちらも味を予想しやすかったものの、実際飲んでみるとその期待を下回ってしまったのが、低評価の要因となったようです。決して「マズい」というわけではありませんでした。
続いて、「普通」となった割りものを紹介します!
普通:豆乳

牛乳とさほど差はないように思えるものの、豆乳のほうが高い評価となりました。相性の差となったのは……。
オガワ:「豆乳に甘さがないのがいい。水で作るよりもスッキリしている。濃厚だけど甘さが抑えられている感じ」
千葉:「私はもうちょっとパンチが欲しいね。レモンを入れたら絶対もっとおいしい」
大崎:「豆乳感がちょっと強い。できれば感じたくないかな……」
普通:ほうじ茶

ほうじ茶ラテなども出回っているため、割りものとして期待は高かったのですが、そこまで評価は伸びず。やや味に物足りなさがあったようです。
千葉:「鼻に抜ける香ばしさがいい。私は好きだね」
オガワ:「無難な味かな。期待してたけど、そこまでではなかったかな」
大崎:「ほどよい甘さと香ばしさがよく合ってる。飲んだあともスッキリ」
普通:ライスミルク

ライスミルクとは、白米や玄米を砕いて水を混ぜて作る穀物のミルクのこと。食物性の飲みもので、健康飲料として用いられ、甘酒のさらなる健康効果アップにつながりますが……。
オガワ:「甘酒も米から作られているから、米と米とで合わないはずがない」
大崎:「違和感がなく自然に飲める。逆に言えば、割る必要もない気が……」
千葉:「普通の甘酒って感じ。少しコクが加わるかな」
普通:青汁

一般的には「あまりおいしくない」とされる青汁ですが、悪くない評価でした。割っておいしくなったというよりは、もともとの青汁がフルーツで割られて飲みやすくなっていたことが評価につながったのかもしれません。
大崎:「マズい青汁をおいしく飲みたいときに、こうするといいのかも」
千葉:「野菜っぽくて健康的な味だね。朝にグビッと飲みたいよ」
オガワ:「青汁の青臭さが、甘酒の甘さを中和して丁度いい。草の香りがして爽やかに感じる」
以上が、「普通」評価となった4種でした。
どれも味としては問題なし。ただ、飛び抜けておいしくもない。割りものがこれしかない……というときに試してみるぐらいのレベルでしょうか。
それでは、「おいしい」と評価されたものご紹介しましょう!
おいしい:トマトジュース

鮮やかな赤い色になり、甘酒の面影はなし。しかしながら、不安を打ち消すおいしさに一同歓喜の声を上げました。
千葉:「トマトの酸味が甘酒とよく合う。酸味のある食べものは、きっと合うに違いない」
オガワ:「見た目はリゾット。オリーブオイルを垂らしたくなるけど、そのままでも十分おいしい」
大崎:「甘酒の甘さが緩和されて飲みやすい。スプーンですくって飲みたくなる」
おいしい:アーモンドミルク

アーモンドを砕いて水を加えてできたのが、アーモンドミルク。コクがあって飲みやすいと好評でした。
オガワ:「ナッツの香ばしさが利いて飲みやすい。アーモンドミルク自体の甘さが、甘酒の甘さをうまく緩和している感じ」
大崎:「オシャレな味。これは、男子が女子に作ってあげると喜ばれるに違いない!」
千葉:「少し甘いけど、嫌な甘さじゃない。冷やして飲んでもおいしそう」
おいしい:コーヒー

茶色く濁っていて見た目はイマイチ。ですが、恐る恐る口に含むと、味は格別。予想外のおいしさに驚愕の一品となりました。
オガワ:「苦みがどうかと心配したけど、まったく問題なし。お菓子の雷おこしをドリンクにしたような味がする」
千葉:「駄菓子の麩菓子みたいな味だね。いつまでも飲んでいられそうな、飽きのこない味」
大崎:「香ばしさにやや苦みも加わって、ビックリするぐらいおいしい。お店に合ったら注文しちゃう」
おいしい:紅茶

紅茶にもいろいろ種類がありますが、今回使用したのはダージリン。選んだ茶葉の種類も、高評価につながる要因となったようです。
大崎:「あとに残る香りが上品。ティータイムって感じですね」
千葉:「まろやかなミルクティー。それでいて飲み終わったあとはスッキリしている」
オガワ:「ダージリンが甘酒と合わさることで、華やかな香りが加わる。ほかの種類の紅茶では、こううまくマッチはしないかも」
以上が、「甘酒をよりおいしく飲むための割りもの」の検証結果となりました。
まず、“失敗”というようなマズいものはありませんでした。ただ今回は、甘酒と割りものが1:1と同量の割合での検証となったので、甘さを強く感じてしまうものもありました。量を調節することで、よりおいしくなるものもありそうです。
また、少し時間が経って冷めてから飲むと、味が落ち着いて違和感がなくなるものもありました。イマイチだった牛乳などは、冷めたほうがおいしかったので、作り置きして冷蔵庫に入れておくといいかもしれません。
温めて飲むもよし、冷めた状態で飲むもよし。甘酒の自然な優しい甘みとともに、うららかな春の訪れを感じてみてはいかがでしょうか。
レシピ・文/オガワチエコ
料理研究家。ル・コルドン・ブルー、東京會舘クッキングスクールで料理と製菓を学ぶ。著書に『彼の家に作りに行きたい!純愛ごはん』(セブン&アイ出版)、『おにぎらずの本』(泰文堂)など。道具も調味料もない彼の家で、いかに間単に失敗なく美味しい料理を振舞うかに特化したレシピ本になっている。2015年9月11日には新刊『スティックオープンサンドの本』を出版。
Photo: 大崎えりや
オガワチエコ
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