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「育児休暇」とは異なる、男性の「育児休業」。実際に育児休業を取得したパパ3人がそのリアルを語る

「育児休暇」とは異なる、男性の「育児休業」。実際に育児休業を取得したパパ3人がそのリアルを語る
Photo: ヨコヤマコム

1月13日、ライフハッカー[日本版]は主催イベント「育休パパが語る『育児休業のリアル』ーロンドン、NY、東京ー(Lifestage Hackers Vol.02)」を実施。ロンドン・東京・ニューヨークとそれぞれ異なる街・環境で育児休業生活を行った(行っている)男性スピーカーによるトークを繰り広げました。登壇したのは、以下の3名。

ひとり目は、ライフハッカー[日本版]に寄稿いただいていて、このイベントの発起人でもある豊田直紀さん。会場となった東京・渋谷にあるインターネット企業、ビズリーチに勤務しており、現在は奥さまのMBA取得によるイギリス留学にともない、育児休業を取得してロンドンにて育児をしている様子を「育休とってロンドンで主夫するブログ」でつづっています。

ふたり目は、電通のコピーライターで、ウェブ電通報でもコラム『男コピーライター、育休をとる。』連載中の魚返洋平さん。昨年7月からイベント直前の今年の1月まで育児休業を取得していました(奥さまも同時に育児休業を取得)。

3人目は、現在はAmazon Japan G.K.勤務、前職勤務中の2015年8月から2年間育児休業を取得し、奥様の留学先のニューヨークにて育児を行った小野俊樹さん。自身のブログ「Appreciation of Life」では、育休中から、子どもの誕生、NYでの子育て、海外から行う日本の保育園探しなどをつづっています。

モデレーターはライフハッカー[日本版]編集長・松葉信彦が務めました。

イベント当日の様子は以下の動画でもお楽しみください。

育児休業をなぜ取得しようと思ったか?

そもそも「育休」というと「育児休暇」をイメージする方も多いと思います。しかし「育児休暇」と、今回のイベントのテーマである「育児休業」は別物。前者は「休暇中に育児をする、育児のために休暇を取得すること」、後者は「法律に基づいて取得することのできる休業制度」と、まったく異なる性質のものなのです。

厚生労働省によると、2016年度の男性の育児休業取得率はわずか3.16%(2020年度の目標は13%)。れっきとした制度である「育児休業」を取得した方の声を伝えることで、その生活のリアルを伝えるべく実施したのがこのイベントです。

まずはゲストの方々から自己紹介をかねて、どのように育児休業を取得するに至ったのかをお聞きしました。

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魚返洋平(うがえり・ようへい)
電通 コピーライター。1981年生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2003年に電通入社。業種・媒体を問わず幅広く広告の企画・制作にたずさわる。2017年6月に第一子(女)が誕生し、7月から6カ月間の育児休業を取得。その体験をコラムとしてウェブ「電通報」に連載し、大きな反響を得ている。6年前から作詞活動も。趣味はビール。東京都在住。
男コピーライター、育休をとる。(電通報)
Photo: ヨコヤマコム

魚返さんは、新卒での就職活動時から会社の福利厚生に関心があり、さまざまな会社に「育休はどうなっていますか?」と聞いていたそうです。就職後も社内で年間数十人が育児休業を取得したり、育休に詳しく相談に乗ってくれる経験者の方もいたりするなど、社内ではポジティブな雰囲気で取得することができたとのこと。

また、社内での根回しにおいては、人事部には今後さまざまなキャリアパスの事例を増やしていきたいという意向があるはずなので、積極的に問い合わせて知識を仕入れるといいというアドバイスも飛び出しました。

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小野俊樹(おの・としき)
アマゾンジャパン合同会社勤務。1980年生まれ。京都大学大学院修了後、2006年に大手携帯電話会社入社。法人向け端末・サービス企画、コンシューマ向けのサービス企画に携わる。2015年に長男が誕生。長男が3カ月の時に妻が留学することになり、育児休業を取得し家族で渡米。NYで2年間の主夫生活を送る。2017年に帰国し、現在の会社に転職。育休中から、子どもの誕生、NYでの子育て、海外から行う日本の保育園探しなどをつづったブログを執筆。
Appreciation of Life(個人ブログ)
Photo: ヨコヤマコム

奥様の留学先であるニューヨークでの子育てに取り組んだ小野さんは、仕事が楽しく「元々は育児休業することにはあまりポジティブではなかった。子育てでキャリアが止まることはいいのだろうかと悩んだ」といいます。ただ、妻に負担をかけたくない・家族を大切にしたいという日頃の思いを言葉ではなく行動で示せる機会だと、休業に踏み切ったそうです。

豊田さんも同じく、奥様がロンドンへ留学するタイミングで自身が育児休暇を取得。渡英し現在まさにその生活を送っています。

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豊田直紀(とよた・なおき)
1984年4月生まれ、慶應義塾総合政策学部卒業。ロンドンで妻と生後7カ月の娘と暮らす33歳。学生時代は2016年東京オリンピックの招致活動に従事。2008年、株式会社ビズリーチの創業期に学生インターンとして参画。2009年4月、楽天株式会社に新卒として入社し、2013年3月に株式会社ビズリーチに転職。2017年6月に日本で第一子が誕生、2017年8月に妻がMBA留学、というふたつをきっかけに育児休業を取得し渡英。株式会社ビズリーチでは男性初の育児休業。育児も海外生活も初めての経験で、奮闘する日々を送る。最近の悩みは、右手首の腱鞘炎。得意になった料理は、メンチカツ。趣味はサーフィンとトレイルランニング。
育休とってロンドンで主夫するブログ(個人ブログ)
Photo: ヨコヤマコム

三者ともに共通していたのが「育児休業を取得すると周囲に伝えるタイミングを決めること、しっかり周知すること」ことを重要だと認識していたこと。

魚返さんは、安定期に入った翌月・休業がスタートする半年前から、直属の上司を皮切りに「じわじわと」「何度も」社内外に周知していったといいます。小野さんは「上司は基本的には時間さえあれば解決策を探せるもの。(休業する前の引き継ぎの)時間を上司に渡すこと」と表現。また「一対一で話すこと」も重要なポイントであると語りました。豊田さんは、どのタイミングで周囲に伝えていくかを奥さんとしっかり相談しながら決めることも大事であると語りました。

また、魚返さんは育休に詳しい社内の方から、かなり具体的なアドバイスまでもらったそう。そのアドバイスの例がこちら。

魚返さん「平日しか適用されない有給休暇と考え方が異なり、ハローワークから出る育児休業給付金は土日祝日も対象になるので、期間の最初と最後は必ず休日を含めた方がいいんです」

育児休業中の1日のタイムテーブルを披露

今回のイベントでは「育児休業のリアル」を伝えるものとして、三者三様の「育児タイムテーブル」も披露されました。

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Image: 魚返洋平
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Image: 魚返洋平

こちらは魚返さん。上が「子どもが生まれてから2カ月目」、下が「6カ月目」のものです。緑色が「妻ワーク」、ピンク色が「俺ワーク」です。

2カ月目は母乳・オムツ・あやすことなどのタスクがおおよそ3時間区切りになっていますが「3時間をプロットで考えちゃダメで、で考えなければいけません。実際にやるまではこれはわからなかったですね。(はじめは)3時間ごとにインターバルがあるとしか思いませんでした」と、休む暇のない様子を表現。

6カ月目になれば睡眠のリズムも一定に、ミルクを一部離乳食に変更、などといった変化が。また少し時間の余裕が出て来たことで、夫妻で(子供はだっこして)ランチで外食に出ることもできるように。「(外出中は)ベビーカーを利用するので、その間結構寝ているんですよね。実は外出中が一番落ち着くんです」とのこと。

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Image: 小野俊樹

小野さんの休業当時のタイムテーブルはこちら。

子どもの起床が早く、早い時には5時台に「枕の下に手をいれてなんとか起こそうとしてきた」といいます。奥さんは8時過ぎくらいに出かけてからは「それ以降はひとりでやっていました」とのことで、奥さんが作ってくれた離乳食を解凍して準備したり、遊び相手になったり、寝かしつけしたりというスケジュールになっています。

小野さんのお子さんは「1歳すぎになると歩けるようになったので、なるべくいろんな刺激を与えてあげたいと思い、外出していたんですが、まぁ元気で(笑)、午前中に1回か2回。午後に1回、公園に遊びに行くのが日課でした」とのこと。毎日このペースで外出していると流石に行ける公園がなくなってきて困ってしまったそうです。

ただ「子どもとの勝負だと思っていて(笑)、常に面白いものを提供したい。子どもがいかに興味をもってくれるか。これは刺さるかなぁと考えていました」と、お出かけ先探しには熱意を燃やしていたようです。

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Image: 豊田直紀

昨年から育休生活がスタートした豊田さんのタイムテーブルはこちら。

豊田さんは「(奥様の学校があるため)日中はひとりです。育児に取り組む前は、合間に自分のことができるのでは?などと考えていたのですが、初日にしてそれは打ち砕かれました。ミルク、オムツ交換、あやすことなどが常にミックスされている状態だったり、気づいたら2〜3時間経っていたりとか。例えばクリスマスカードをポストに届けようという自分のタスクすらも完了できない時もあります。育児をなめていたなということを今実感しているところですね」と語ります。

育児休業を取って、大変だったこと・良かったこと

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イベントの後半では育児休業を取って「大変だったこと」「良かったこと」の両面が語られました。

「大変だったこと」で魚返さんが挙げたのは「ひとりになれる時間がない」こと、「自分のダメなところを突きつけられる」ような感覚になること、「生活にメリハリがなくなる」こと。小野さんは「(趣味など)自分でやろうと思っていたことができない」ことと、育児においても「できないことが多い」事実を突きつけられるため、最初はタスクリストのようにして「できたこと」「できなかったこと」を分類していたそうですが、「できたこと」だけを書くようにしてプラスの面を意識することにしたそうです。

豊田さんが挙げたのは「孤独を感じる」こと。仕事だと自分がやったものが周囲の声や評価で目に見えてわかるものの、育児は決してそうではないということ。三者とも、仕事中心の生活から一気に生活が変化した際、時間との向き合い方や毎日のできることにおいての葛藤があったようです。

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Photo: ヨコヤマコム

一方で「良かったこと」としては、それぞれがこのように語りました。

魚返さん「ひとつは、子どもが0歳の時にずっと一緒にいたという思い出に、いつでも戻ってこられるということ。また、人間としてちょっと優しくなれたかなという気がします。育児というこんな大変なことを、子どもを産んだ人は全員やっているんだと、世の中の大人に対してすごいなと、優しい気持ちになれます。さらに夫婦というミニマムな文化が、より強固になったと思います。自分たちだけに通用する、『わが家スラング』とでもいうべき言葉ができたりもしましたが、そういったことを含めて、夫婦でしか通用しないものが生まれてくる。そこで結びつきが強くなったと思います」

小野さん「子どもの成長における“最初”をリアルタイムで見られたことです。ハイハイ、座った、立った、言葉をしゃべった…そのほとんどを最初に見ることができました。また(妻にとっては)自分ではなく人に任せるというのは、気持ちとして大変だったと思うのですが、妻から子育てをかなり任せてもらえたことは自分の自信にもつながりました。いまはふたりともがんばれば自分ひとりでも子どもの面倒をみることができます。だからこそ、どちらかが忙しくなっても子育てをしっかりできるんです。結婚する時に、お互いやりたいことやろうね、それをできるようにお互い協力しようねという話をしました。子どもがいるからやりたいことができない、ということにもなりたくなかったですし、相手のために自分のやりたいことを我慢しない、という夫婦になっていけたのが良かったなと思います」

豊田さん「何より、夫婦はパートナーであるということを改めて認識できました。ぶっちゃけて言うと、必ずしもすべての男性が育児休業を取得しなくてもいいと思っています。大事なことは夫婦間で、それぞれ個人として、家族としての人生をどう歩んでいきたいかをしっかり話し合うことです。ただ仮に、夫婦ともに働くことも大切なライフワークであるといった場合に、『男性は仕事、女性は育児・家事を選択すべきである』という固定観念に縛られる必要はないのでは、と思います。お互い話し合った結果、『このタイミングでは、僕が仕事の比率を少し減らすよ』というやりとりがあってもいいんだな、ということに気づけたのがよかったです」

イベントではこの後、参加者との交流の時間も。参加者は各々の思う質問や感想をぶつけていました。

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Photo: ヨコヤマコム

イベントを終え、二児の父である編集長・松葉は「自分は、妻が保育士という子育てのプロで、かつふたり目の子どもが生まれたときに退職して子育てをしたいという意思を尊重したのもあり、自分が育児休業を取るという選択はしなかった。しかし、そうでなかったら自分が育児休業を取れたかというと疑問が残る。豊田さんの言うとおり、家族で話し合った上で、結果的に(男性が育児休業を)取らないという選択があってもいいと思う。ただ、まだまだ男性が育児休業を取るということに抵抗があるのが現状。取るという選択が取らないという選択と同じくらい気軽にできる世の中になってこそ、平等な選択肢と言えるようになるのでは?」と総括しました。

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Photo: ヨコヤマコム

ライフハッカー[日本版]では、今後も「ライフステージを変えようと思っている人」に向けての有益な情報・声を提供するイベントを実施していきます。ぜひ次の機会にはあなたのご参加もお待ちしています。


Photo: ヨコヤマコム

Image: 豊田直紀 , 魚返洋平 , 小野俊樹

市來孝人

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