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「ボツ企画」をためておけば、やがて答えが見えてくる? 企画を実現させるためのマインドセット

「ボツ企画」をためておけば、やがて答えが見えてくる? 企画を実現させるためのマインドセット
Photo: 印南敦史

きょうご紹介したいのは、『一生仕事で困らない企画のメモ技(テク)』(高橋晋平著、あさ出版)。ご存知の方も多いと思いますが、著者はバンダイで大ヒット商品となった玩具「∞プチプチ」に代表されるバラエティ玩具の企画開発・マーケティングに携わってきた人物。現在は株式会社ウサギ代表取締役として、さまざまな形の「モノコトづくり」に携わっています。

本書はそのような実績に基づき、「新しいことをやりたいんだけど、なにをやりたいのかは特に思いつかない」という、“世の中にたくさんいるフツーの人たち”のために書かれたもの。

とはいえ著者自身、「あれをやりたい、これをやりたい」というように、次々にやりたいことを思いつくような人間ではなかったのだといいます。にも関わらず現在では、この先「一生企画に困ることはない」と公言しているというのです。なぜなのでしょうか?

その理由は、特殊な才能があるからでもなければ、人の何十倍も努力しているからでもありません。日々、企画の材料になるネタをメモし続けて、それをもとに企画を生み出す“仕組み”を試行錯誤のうえ、手に入れたからです。

本書では、企画づくりのためのメモ術により、多くの人に欲しがられる企画をどんどんつくる方法を解説していきます。普段から僕が実際にやっている方法を、今回改めてまとめなおしてみた、初公開のメソッドです。

(「はじめに」より)

きょうは、どのような考え方で、やりたい企画を実現させていくのかを明らかにした第4章「企画を実現させるためのマインドセット」に焦点を当ててみたいと思います。

企画づくりのエネルギーを最大化する

改めていうまでもなく、企画を実現するのは大変なこと。多くの人を巻き込み、協力してもらう必要がありますし、多くの壁を乗り越えなくてはなりません。つまりは、自分自身もものすごいエネルギーを使わなければならないということです。

そのため著者はここで、企画を実現させるためのいくつかの考え方を紹介しています。

企画を立ち上げた当初は、自分のなかでも気持ちが盛り上がっているはず。ところが、いざ実現に向けて企画を進めていくと、必ずさまざまな問題が発生してくるものでもあります。そしてやがて、だんだんとその企画への情熱が失われていったりすることもあるでしょう。

同じように、「飽き」も大敵。初めは情熱を持っていたはずなのに、時間の経過とともに少しずつ飽きていってしまうというのはよくある話だということ。それは著者も同じで、大変なことが続くと心は折れ、飽きることもあるといいます。

しかし著者は、自分にそうした弱さがあることを知っているからこそ、だんだんと情熱を高められることを前提にせず、「多少飽きてもまだ超ワクワクしている」ぐらいの企画をスタートさせることを重視しているのだとか。

そうすれば、たとえ壁が立ちはだかっても、高いエネルギーを維持したまま楽しみながら乗り越えて進めるわけです。

そのためには、企画を進める理由が建て前ではいけません。

「この企画を自分自身が絶対に利用したい。利用することで、今より圧倒的に幸せな人生を手に入れたい」

という、自分のための本音の欲求を持つことが必要です。(190ページより)

大切なのは、スタートするときに、やりたい気持ちがあふれ出ている企画をつくること。あえて「進めよう!」という気合いを入れなくても、勝手に進めることのできる企画こそが、結果的に成功するというのです。(188ページより)

ボツ企画がたまれば売れる企画が見えてくる

企画を連発できるようになるために、著者がいちばんオススメする方法が「ボツになった企画のコレクション」なのだそうです。企画書を書き、「いける!」と思ってスタートしてみたものの、いろいろな壁を突破できずボツになってしまった企画。それらを、楽しみながら「ボツ企画」として集めていってほしいというのです。

アイデアや企画を考えることが苦手な人は、ダメな考えばかり浮かぶことを「無駄である」と感じて嫌になり、やる気をなくしてしまうもの。しかし決して無駄ではなく、むしろボツ企画を「ボツ」であると認識できた経験は、ものすごく貴重だという考え方です。なぜなら、ボツになった「理由」が手に入るから。

企画者として成功するためには、「失敗体験」と「成功体験」の両方が必要不可欠で、どちらか一方が欠けてもだめだといいます。

「なぜダメだったのか」「なぜ誰もついてこなかったのか」「なぜ実現できなかったのか」などの理由が蓄積されると、「では、実現できて、人々を喜ばせられる企画とは何か」がだんだんとわかってきます。この楽しさを覚えることが、企画の仕事をするための絶対条件だと僕は考えています。(195ページより)

そこで、企画の仕事に携わっている人には、とにかく小さな一歩を何度でも踏み出し、そのたびに振り返ってほしいのだと著者は強調しています。

なにもしなければ、なにも起きず、なにもわかりません。しかし、「わかる」ことにはとても大きな価値があるということです。(191ページより)

プレゼン準備は企画づくりと同時進行

「客先や部内でプレゼンをしたが、通らなかった」「上司に相談したら、止められた」など、他人の合意が得られずに企画が頓挫するというケースはよくあるもの。ところで著者はこのことに関連し、プレゼンは「結婚のプロポーズ」と一緒だというイメージを持っているのだそうです。

プレゼンは「提供内容をいい感じで見せ、とにかく好きになってもらう」というイメージで捉えられがちですが、そうではなく、プレゼンは提案する側と受ける側の結婚(合意形成)であるというのです。

だとすれば、プレゼンが通らなかったら、それはそれで幸福な結果なのかもしれないということ。いろいろな誤解や勘違いがあるまま結婚生活を進めたとしても、うまくいくはずがないわけです。

プレゼンは、さらけ出す行為です。弱みも含めて、やりたいことと現状をさらけ出し、それで受け入れてもらえた企画が、人を巻き込み、成功に向かって進んでいくのです。

不利な部分を隠して仮に提案が通ったとしても、後々、話が違うことになって、信頼を失うことにもなりかねません。(197ページより)

お互いの言いたいことをすべて出し合って、提案者と受け手の向く方向を同じにしない限り、企画が通ったとしても、結果的には誰も幸せにならないという結果を招いてしまうことになります。

それでも通さなければならないプレゼンがあるという場合は、可能な限り、事前に関係者に根回しをし、意図をより深く理解してもらったり、課題を教えてもらったりするというような努力をしたほうがいいそうです。

著者はプレゼン内容を、企画を詰める段階で同時に並行して考えるのだといいます。プレゼンとは、「なにを言って説得するか」を後づけで考えるものではないから。

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ここで重要なのが「三角形メモ」。すなわち「なにを」「誰に」「いくらで」売ればマーケティングができるのか、つまり「企画を勝手に売れていく状態にできるのか」ということをどう伝えるか、ということを示すもの。

それがちゃんと完成して入れば、プレゼンでなにを話したいかもおのずと決まってくるというわけです。その内容がしっかり伝われば、プレゼンの受け手に納得感を得てもらうことができるわけです。

そして、それを伝えるために重要なのは「大トンガリ」の強さなのだとか。大トンガリは、「顧客の心を動かす一撃」。それが、そのままプレゼンの受け手の心を動かす一撃にもなっていることが理想だというのです。

三角形メモを書きながら、「この企画を関係者にプレゼンしたら、伝わるかどうか」をイメージして考えていくと、その企画に足りないもの、欠けているものがわかり、企画をよりよいものにしていけると著者はいいます。そして同時に、よりよい伝え方が見えてくるとも。(196ページより)




「いかにして企画を出すか」という問題を抱えている人にとって、本書はきっと役立つはず。平易でわかりやすく、ひとつひとつが実践的。しかも著者が実際にやっている方法ですから、大きな説得力があるのです。レベルアップを目指したいのなら、この内容を活用しない手はありません。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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