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新しい価値を生み出すときに重要なのは「初心者のマインドセット」

新しい価値を生み出すときに重要なのは「初心者のマインドセット」
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ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち』(ピョートル・フェリクス・グジバチ著、大和書房)の著者は、ポーランドで生まれ、ドイツ、オランダ、アメリカで暮らしたあと、2000年に来日したという人物。

モルガン・スタンレーなどを経て入社したグーグルではアジアパシフィックでのピープルディベロップメントを担当したのち、グローバルでのラーニング・ストラテジーに携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。日本在住17年となる現在は、独立して2社を経営しているそうです。

そして、そのように実績を積み上げてきたいま、実感していることがあるのだといいます。外見や学歴などで仕事を判断していた時代が終わり、「私たちはどのように働き、生きるのか」という大きな視点で見ても変化が必要な時代に入っているということ。

従来型のオールドエリートは固定化された「地位」のようなものでした。有名大学を卒業したら、学歴エリートとして「○○大学卒」という肩書きのもとに生き続ける。一部上場の大手企業に就職すれば、エリート社員としてい続けられる、という具合に。

しかし裏を返せば、そのようなオールドエリートには成長の余地がないというのです。

これからの時代をリードする人には、もっと違う定義づけができるはずです。重要なのは、「今どこにいるか」という地位よりも、元いた場所と今いる場所に差があるということ。つまり、僕の成功の定義は「持続的に成長していること」です。

たとえば、会社員だった人が努力の末に起業の夢を実現したら、それがどれだけささやかな事業であっても、見上げるような成功です。小さな会社でも、転職してやりたかった仕事に就けたのなら、やっぱり成功です。

一定期間で区切った成長度合いで比較すれば、特に成功者とみなされていない人の中にも、実は成功者が存在します。

むしろ、彼らが成功者としてみなされる時代が遠からずやってくるはずです。こうした人を、僕はニューエリートと定義しています。

(「はじめに モルガン・スタンレーでイケイケだった僕が、あっさりスーツを捨てた理由」より)

著者が訴えたいのは、自分がいま当たり前だと思っている世界は、まったく当たり前ではないということ。変化は突然やってくるもので、それを止めることも避けることもできないのだから、変化を受け入れ、乗りこなし、楽しむ必要があるということです。

そこで本書では、「これからの時代をリードする人」とは、どんな仕事をして、どんなふうに生きているのかについて、独自の視点から語っているわけです。その点を踏まえたうえで、第1章「2020年代の『成功者』とは?」からいくつかの要点を抜き出してみたいと思います。

未来は予言できないが、新しい仕事を作ることは、いまできる

ハーバード大や東大の卒業生のなかには、祖父母の代からハーバード、東大を出たというエリート家系の人がいるもの。裕福な家族が教育に手厚い投資を行い、子どもを有名大学に入学させ、エリートコースを歩ませるわけです。

著者は、一概にそれを否定するつもりはないといいつつも、別な流れに注目しています。いまや自動化・アウトソーシング化やAIによって、これまでの仕事が急速に変化し、消滅してしまうことも実際問題として起こっているということ。

ここではその一例として、弁護士が挙げられています。ご存知のとおり弁護士という職業は、社会的なステータスも高いエリートの職種として認知されています。そして弁護士になるためには、難しい司法試験を突破しなければなりません。

そのために求められるのは、既存の法律をひたすら学ぶこと。多くの法律に精通し、問題解決のために過去の判例を参照できる能力は、この仕事に欠かせないものとして尊重されてきたからです。

とこがいまや、それらの仕事の一部はAIによって自動化することが可能。すでに裁判前のリサーチのために数千件の弁論趣意書や判例を精査するソフトウェアが活用されており、たとえば米シマンテック社のサービスを利用すると、2日間で57万件以上の文書を分析できるのだといいます。だとすれば、人間が太刀打ちするのは不可能だということになるでしょう。

そのため、新任弁護士の仕事はAIに取って代わられると見られており、少なくともパラリーガル(弁護士秘書、法律事務員)の仕事がなくなる可能性は濃厚。

一度、「大手企業の社員」「弁護士」というエリートコースに乗ったからといって、それが10年後にも保証されているわけではない。逆に言えば、今のいわゆる「エリートコース」から外れている人も、それだけで将来が閉ざされたとは言えない。まずは、この事実をしっかり認識してください。(31ページより)

ちなみに日本に関しては、AI化が進むかどうかの話ではなく、「日本がその受け皿を維持し続けられるのか」という問題が重要だと著者はいいます。

人口減少が進み、海外からの労働者が増えますが、その労働者も自国の発展とともに日本から去るわけです。そのとき、AIの技術を取り入れたビジネスを日本で展開したいと考える企業が、はたしてどのくらいあるのでしょうか?

AIを導入するという企業は、今後の発展を見込んでいることになります。しかし、その土壌が「日本でなければいけない理由」を、果たして見つけ出すことができるのかということです。

十分に予想できることではありますが、著者はこの点について、かなり厳しいと考えているそうです。だとすれば、フィールドを変えなければいけないということになるわけです。

会社に合わせて生きるくらいなら、社外に道を切り開け

日本の大手企業に勤務する人たちは、おおよそ20代後半から30歳ごろにかけて「壁にぶつかる人」「壁を乗り越える人」に別れると著者はいいます。

大手企業の多くは、新卒で入社した社員の選別を、比較的早い時期からはじめるもの。入社数年時点でコアメンバーを選出し、「次世代リーダー研修」などと銘打った研修を通じて育成に着手するわけです。

一方、コアメンバーから除外された社員は、20代後半から30歳ごろまでに「自分は選ばれていない」と気づき、ショックを受けて悩むことに。そして当然のことながら、コースから脱線したとたんに投げやりな気持ちになり、パフォーマンスは低下することになるでしょう。

とはいえ、会社が決めた出世コースから外れたからといっても、まだ他にいくらでも道はあるわけです。単に、会社が決めた規格に合わなかっただけのこと。会社に合わせて生きるくらいなら、自分で新しい道を切り開くべきだと著者は主張しています。

社会を見渡せば、既存のコースはどんどん色あせています。IT業界をみると、DEC、コンパックなど、かつて成功した企業が姿を消しています。まさに栄枯盛衰です。

一方で、現在成功している企業を見ると、業界内で戦っている企業ではなく「新しく業界を作ろうとしている企業」であることに気づきます。グーグル、フェイスブック、エアビーアンドビー、ウーバーといった企業です。

最も成長している企業は、新しい業界を作り、競争がない市場でナンバーワンになっています。(37ページより)

さらにいえば、キャリアにも同じことがいえるのだとか。つまり会社内での出世競争に価値があるのは、たまたま会社が安定して存続しているからだということ。しかしそのようなキャリアは、業界や会社がなくなれば、たちまち効力を失うわけです。そんななか、新しい価値を生み出すために必要なのは、「初心者のマインドセット」だと著者は訴えます。

僕がグーグルで人材開発、組織開発の仕事をしていたとき、20%ルールの一環として「ピョートルのチームで働きたい」と希望する人がたくさんいました。

他にも、3ヵ月という期限付きのローテーションで僕のチームに参加する人たちもいました。たとえば、営業チームの人が3ヵ月だけ僕のチームに参加して、一緒にプロジェクトを進めていく。そんな経験を幾度となくしました。(40ページより)

そうしたなかで気づいたのは、初心者ならではの新鮮なフィードバック。営業チームの人は人材開発の専門家ではないからこそ、手垢のついた発想や偏見から離れ、柔軟な発想や鋭い指摘ができるということ。

新しい価値を生み出すとき、こうした「初心者のマインドセット」がとても重要です。初心者は、業界のルールや慣習・規則にとらわれない、常識破りの発想をしてくれます。(40ページより)

つまりキャリアアップを考えるときにも、狭い業界内の発想にとらわれることなく、「自分のスキルをどのように活かせるのか」を広い視野で考えることが大切だということです。




本書のベースになっているのは、決して恵まれてはいなかった環境から抜け出し、自分の力で現在のポジションにたどり着いた経験。机上の空論ではなく、ファクトから答えを導き出しているからこそ、ひとつひとつの言葉に強い説得力があるのです。これからのビジネスパーソンの生きるべき道を考えてみるためにも、ぜひとも読んでおきたい1冊です。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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