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AIづくしの3時間!「J-WAVE INNOVATION WORLD COMPLEX vol.1」でAIの活用法、人との共存を考える

AIづくしの3時間!「J-WAVE INNOVATION WORLD COMPLEX vol.1」でAIの活用法、人との共存を考える
番組「INNOVATION WORLD」に出演しているAI「Tommy」の“姿”はこの日が初披露

AIを知る AIを体験する」をテーマに、2月28日に東京・渋谷のduo MUSIC EXCHANGEで開催されたイベント「J-WAVE INNOVATION WORLD COMPLEX VOL.1」。

AIに様々な分野からアプローチしている多彩なゲストによるトークセッションを中心に、TDKIBMといったAI開発に携わる企業の展示や、AIに関わるベンチャー企業のピッチコンテスト等が行われ、さらにはイベントのMCすらもAI(IBM Watsonを活用した「Tommy」。詳しくはこちらの記事から)が行うという、AIづくしの一夜となりました。

トークセッションのラインナップは下記の通り。このセッションの模様を中心に、「J-WAVE INNOVATION WORLD COMPLEX vol.1」を振り返ります。

「現実を拡張するAIの作り方」:川田十夢(AR三兄弟長男)、三宅陽一郎(日本デジタルゲーム学会理事/ゲーム開発者)、小池誠(きゅうり農家/エンジニア)

「AIでスポーツを拡張してみた」:江渡浩一郎(メディアアーティスト/研究者)、岡田明(日本IBM株式会社)

「AI時代の教養とは何か」:竹内薫(サイエンス作家)、山本一成(将棋ソフト・ポナンザ開発者)

「AIの生命と意識へのアプローチ」:川田十夢(AR三兄弟長男)、斎藤由多加(ゲームクリエイター/シーマン開発者)、池上高志(東京大学大学院情報学環 教授)

(敬称略)

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「TDK DREAM PITCH AI SPECIAL」では、川田十夢さんをはじめとする登壇者がAIベンチャー3社のピッチを聞き、アドバイスを行った

ゲームにおけるAIの考え方は、農業でも応用可能

「現実を拡張するAIの作り方」に登壇した三宅さんは「メタAIとは、ゲーム全体を(俯瞰して)コントロールする“神様AI”です。例えばユーザーが退屈しているようならソンビを出したりと、ユーザーの心理の分析や、経路の予測を行います」と、自身の専門分野である「メタAI」の役割を語ります。

自動車関係のプログラム設計から「これからは農業だ」と実家に戻り農家に転身し、AIによる出荷するきゅうりの等級の選別を行うシステムを開発した小池さん。収穫したきゅうりは「ある程度見た目で判断して」等級ごとに分けて箱詰めをして出荷されるのですが、その分け方は農家の「長年の経験や審美眼」だけが頼りで、なかなかアルバイトを雇って…ともいかなかった中、このプロセスの効率化を試みました。開発したのはきゅうりの画像をカメラで撮影し、その画像をAIが読み込んで等級を判断するシステム。実際にAIを組み込んだことでおおよそ「1.4倍のスピードアップ」 を果たしたといいます。

「ゲーム」「農業」とそれぞれの分野で「AI」と向き合っている三宅さんと小池さん。一見離れ離れの分野ですが「メタAI」の考え方は、農業にも応用が効くものだという議論に。川田さんは「湿度や気温など、どういった環境の時にきゅうりがどういう成長をしたか拾える要素があるので、(ビニールハウスに)まさにメタAI的なものを入れて、(農家が)休みたい時に休むなんてことはできそうですよね」と、農業のフロー自体をコントロールする「メタAI」の可能性に言及。

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人にとっての「高度」と、AIにとっての「高度」は別物?

「AI時代の教養とは何か」セッションでは、佐藤天彦名人を破った将棋ソフト・ポナンザ開発者の山本さんが開発を始めた当時のことを振り返りました。「(大学時代)将棋が好きだったので、自分の将棋の知識と、コンピューターの記憶力・計算力を組み合わせたら、ものすごく強いものができるんじゃないかと確信していたのですが…とても弱いプログラムができました」とのこと。それは「(自分は)将棋のことをよく知っていると思っていたけれど、全然分かっていなかった。うまく説明できなかった」という気づきになったといいます。

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将棋ソフト・ポナンザ開発者、山本一成さん

「人間で考えていることは難しい」「コンピューターが考えていることはかわいいこと。単純な計算と単純な記憶しかできないですからね」という山本さん。将棋という、複雑な頭脳戦において人間(名人)をも上回るAIを開発した身から見た「人間とAIの共存」については、このように語りました。

「よく聞かれるのは、『(AIにより、人間の)どんな仕事がなくなりますか?』ということですが、一般には高度な仕事が残るといわれますよね。ただ、AIも将棋のプロ棋士というとても高度なことを(すでに)していますよね。どういうものが高度かというのは、人間とAIとで異なる可能性があります。(人から見て高度でも)AIからみて高度じゃないかもしれないですよね」

そんな中で「人」はどう生き残るかについて山本さんは、「(仮にAIが人を上回ったとしても)将棋の世界は全然盛り下がっていない。人間って、ものすごく人間が好きなんですよ。人間を魅了していくコンテンツはかなり強いかなと。例えばお笑い芸人とYouTuberは強いんじゃないかなと思っています」と分析。

「AIでスポーツを拡張してみた」セッションにおいても「人」と「AI」の適性についての議論になりましたが、ここで「未来の運動会」という、共創型イノベーションとしてスポーツを自ら作り・プレイする機会を創出している江渡さんは「30年後くらいにはディープラーニングの発展は止まると思います。(その頃には)問題を解決する能力が溢れかえっていて問題を作る能力、解決すべき問題の方が希少な資源になると思います」と、「人」だからこそ「問題を作ること」ができると定義しました。

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「未来の運動会」を紹介する江渡浩一郎さん

「シーマン」開発当時の裏話も

「AIの生命と意識へのアプローチ」セッションで、池上さんがAIの象徴的な事例として挙げたのが昨年ニューヨークを中心に話題となった『Universal Paperclips』というゲーム。プレーヤーは「ペーパークリップを作る」という仕事を任されたAIとなってひたすら大量に作り続けていくのですが、量が増え続けるうちにいつか地球が滅びてしまうというもの。コンピューターの中で地球が滅びる分には問題がないものの、この構造が外に出ると危険ーーつまりAIの危険さを体感できるゲームなのです。

さらに池上さんは斎藤さんが1990年代前半に手がけた『The Tower』というゲームについても言及。ビルを経営し、その中のテナントを管理したりフロアを増やしたりしていくというもので、エレベーター待ちで待たされると赤くなるなど不満が可視化され、怒った住人は出て行ってしまう。そうならないようにビルに血液が流れているかのようなイメージで、「移動」という切り口でのシミュレーションを行うというゲームです。

『The Tower』が『Universal Paperclips』と「似ている」と断言する池上さん。その共通点は「数を増やすことで物事は複雑化することもある」ことの象徴だということです。「AIは、ビックデータを集めると収斂すると思っているけれど、集めれば集めるほどわからなくなるものもある。生命現象は、やればやるほど複雑化していく」と語り、AIのアプローチへの示唆となる視点を提供してくれました。

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斎藤由多加さん(左)、池上高志さん(右)

斎藤さんの代表作の一つでもある『シーマン』開発の裏話も披露されました。「発売は1999年、もう20年も経つんですよね。当時は音声認識を使ったゲームも初めてですし、テレビに向かって話しかけるというアクティビティの面でも(ユーザーに受け入れられるのかと、メーカーと)ぶつかったのを覚えています」と振り返る斎藤さん。

発売前・開発の詰めの段階であるにも関わらずメディア向けのイベント(水族館での「シーマン展」)を行うことになった際、なかなかシーマンが反応せず、シーマンが「聞こえないことを謝る」のではなく「話しかける方の滑舌が悪いんだ、と怒る」ように変えたという当時の苦労談も。ちなみに、そのようなシステムに変えたところ、「赤ちゃんに話しかけるように」みんなシーマンに優しく話しかけるようになったとか。

約20年経ち、AIスピーカーの登場により「音声認識」技術への注目が集まるようになった現代ですが、斎藤さんは「機械の部分は頑張って作られるけれど、会話の部分(の開発)は後回しになっている」と現状を捉えているよう。「ならば先に作っておいて、もし外部から依頼があればパッと出せる会話エンジンを作ろう」と、現在「シーマン人工知能研究所」で自律型の会話エンジンの開発に取り組んでおり、今年中にはプロトタイプをリリースする旨の発表もありました。

ラジオ番組「INNOVATION WORLD」で4週にわたってOA中

この記事で紹介した内容は一部ですが、様々なゲストによる独自の“AI論”を楽しむことができた当イベント。まだ研究者やメーカーによっても定義がまちまちで、何かとその全体像を捉えづらい「AI」。今はとにかく様々な人の“AI論”に触れてみることこそが良いのかもしれません。

今月は、J-WAVEで毎週金曜日の22〜23時に放送のラジオ番組「INNOVATION WORLD」でもその模様が順次放送されています。スマホアプリradikoAppStoreGoogle Play)ならタイムフリーやエリアフリーでの視聴も可能なのでぜひチェックしてみてください。


Photo: J-WAVE

Source: INNOVATION WORLD COMPLEX VOL.1

市來孝人

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