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靴は磨いた人の精神性を映し出す。日本一の靴磨き職人の仕事を通して感じる美学とは

靴は磨いた人の精神性を映し出す。日本一の靴磨き職人の仕事を通して感じる美学とは
Photo: Okihiro Mori

こんにちは! メンズファッションライターの丸山です。今回は1月27日に行われた「靴磨き日本選手権」の様子をお送りいたします。

皆さん、「靴磨き」というとどんなイメージをお持ちでしょうか? 高架下や、駅の中などで小汚いオジサンが年季の入ったエプロンをかけてやっている…中にはそんな風に思われている方もいるかもしれませんが、今や日本の靴磨きの技術は世界に誇れる芸術、そして文化へと進化しています。

カメラアップ3
Photo: Okihiro Mori

2017年のワールドチャンピオンシップオブシューシャイニング(靴磨き世界大会)で日本人の長谷川裕也さんが優勝されたのは、記憶に新しいこと。そんな世界で認められる卓越した日本のシューシャイン文化をさらに発展させるべく、全国から集められた腕利きのシューシャイン職人の中からナンバーワンを決める大会が銀座三越で1月27日に行われました。

大会ルール

65靴磨き手元
Photo: Okihiro Mori

大会のルールは、乳化性のクリームでのみ仕上げているスコッチグレイン(SCOTCH GRAIN)の人気定番ラスト(木型)『オデッサを20分で両足磨き上げること。鏡面磨きをするのであれば、両足で20分はプロでもかなりタイトな時間です! 静かな、しかし激しい戦いとなること間違いなし。

審査基準

審査基準は5点満点で、以下の3項目を審査。

・光沢感

・全体の美しさ

・所作

さらに、この中で誰に磨いてもらいたいかという審査員特別点1点が加点されます。

準決勝(各戦4名×3戦)はダークブラウン、そして勝ち抜いた3名で行われる決勝ではチェストナット色の靴を磨きます。

磨き上がりの出来栄えだけでなく所作の美しさが評価されるところがポイント。所作はその人の性格や、靴磨きに対する哲学が大きく表れるところだと言えます。

出られるのは全国からたった12名

今回、日本一の座を争うべく出場した方々は、以下。

第1戦:伊藤 渉さん 山地 惣介さん 小林 亜弥子さん 須賀谷 甫さん

第2戦:三村 宙央さん 安部 春輝さん Steve Hungさん 石見 豪さん

第3戦:林田 直樹さん 岡嶋 翔太さん 杉村 祐太さん 佐藤 我久さん

全国からたった12名という、この少ない枠に選ばれるだけでも本当に素晴らしいですよね。

道具選び

63用品選び
Photo: Okihiro Mori

選手は磨く前に自分が使いたいクリームや、ワックス、ブラシといったケア用品(R&Dとコロンブスの製品)をわずか1分間で選びます。公平性を期すため、持ち込みが許されているのは靴磨き職人にとって命ともいえる、磨きクロスのみ。

ご存知の方も多いかと思いますが、おろしたてのワックスは空気に触れていないため、硬さが十分でなく、それだけでもかなり悪条件。ワックスが緩いと、非常に鏡面が作りにくいからです。

しかし、全ての選手に同じ条件を徹底するため、毎回新しいワックスをおろします。職人として普段使っている馴染んだ愛用のブラシや、加減のわかっているワックスやクリームが使えないので非常にチャレンジング。「弘法筆を選ばす」とは言いますが…まさに道具の違いは一切なし技術力を純粋に競い合うということに焦点を置いた大会です。

超満員の観覧席

61観客
Photo: Okihiro Mori

11時の開始をまたずに観覧席は即満員で、座れずに立ち見をする方が続出。そして、観覧にいらっしゃる方は皆さん足元が本当に美しい! 関心の高さに正直私も驚きました。

靴磨きを生業にしているプロに対してハッキリと優劣をつけ、「誰が本当に一番うまいのか」を決めるのは、ある意味ずっとタブーとされてきたこと。そのナンバーワンが、今日、自分の目の前で決まるのですから無理もないですよね。

全国トップの職人さんが銀座に一堂に集結し、そこに日本を代表する靴メーカーと、シューケア用品を扱う日本の2大メーカー、そして靴業界の各著名人が加わった、まさにドリームイベントです。

決勝進出はこの3名

653人で靴磨き
Photo: Okihiro Mori

激戦を勝ち抜いて決勝に進出したのは、東京 BriftH 山地 惣介さん(左)、大阪 The Way Things Go 石見 豪さん(中央)、静岡 Y’s Shoe shine 杉村 祐太さん(右)。

準決勝では磨きながら各選手にインタビューも行われ、楽しい雰囲気もあったのですが、決勝は緊迫した雰囲気の中で必死に磨く3人を、審査員も観覧席もじっと黙って見守る20分となりました。

82審査
Photo: Okihiro Mori

三者三様に本当に素晴らしい仕上がりで、審査員側も点数をつけるのに悩み抜いている様子。

優勝はThe Way Things Go 石見 豪さん

88石見丸山_
Photo: Okihiro Mori

優勝はTWTGの石見さんに決定!2位は山地さん、3位に杉村さんとなりました。

石見さんは、美しい鏡面を作り上げた事はもちろん、革本来の質感を最大限に引き出し、日本人の心の根底にある、素材そのものの良さを生かすという美学を見事に表現しきったことが高く評価されました。

準決勝でも20分という非常に限られた時間の中で、他の選手がベースづくりはできていると見なしていきなりワックスを乗せていく中、一人だけクリーナーを使って一旦表面をまっさらな状態に戻してからきっちり鏡面づくりまで行うフルケアーで仕上げるという素晴らしい時間配分を見せ、審査員も目を見張る実力を発揮。

どんなに普段と違う道具を使っても、たくさんの人に注目されても、真の実力を発揮できるその精神力には脱帽でした。

そんな石見さんですが、なんと今年4月に東京でも出店予定。大阪まで行かなくても、磨いてもらうことができるようになるんです。楽しみですね!!

審査員はこんな人達

91関係者写真
Photo: Okihiro Mori

ちなみに、栄えある「靴磨き日本選手権」第一回の審査員は写真の面々でした。

男の靴雑誌『LAST』の編集長を務める菅原 幸裕さん(上段中央)

服飾ジャーナリスト、『マツコの知らない世界』などのテレビでも大人気の飯野 高広さん(上段右から2番目)

メイドインジャパンのこだわりの靴SCOTCH GRAINでおなじみ、ヒロカワ製靴 代表取締役 廣川 雅一さん(下段左から2番目)

BOOT BLACKなどの日本の気候と日本人に合わせた日本製のシューズケア商品を打ち出す、株式会社コロンブス シューケアプランナー 松戸 啓明さん(下段 右端)

磨きのプロ集団 R&Dシューケアマイスター銀座店代表 羽田野 晶斗さん(上段 右端)

銀座三越 紳士靴バイヤー 大野 靖弘さん(下段右から2番目)

そして私、丸山 尚弓も、女性目線で靴磨きやメンズファッションなど紳士の世界に光を当てる活動をしているライターとして審査員にご指名いただきました。

アドバイザーには昨年世界選手権で優勝したブリフトアッシュ代表 長谷川 裕也さん(上段左端)と、伊勢丹新宿 イセタンメンズネット編集部 田代 径大さん(上段左から2番目)。お二人がMCも担当されました。

もっと靴磨きを身近に

今の日本で電車に乗って、ふと8人掛けの座席に並んで座る人達を見たとき、いったい何人がきちんと手入れされた靴を履いているでしょうか。

今回のようなイベントを通じて、靴を永く履き続けるため、そして自分らしさを表現するために必須になってきている「シューシャイン」がもっと認知され、向かい側に座る人全員の靴が「よく手入れされていてキレイだな」と思える日が来るぐらい、日本や世界の靴磨きに対する意識や価値観が変わっていったら嬉しいなと思います。

大切なものこそ、長く愛用したいですよね。今年もたくさん靴磨きに関する情報をお届けする予定です! 乞うご期待!!

丸山 尚弓(まるやま なおみ)Facebook

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美人すぎるメンズファッションライターとして活動中。メンズファッションを題材とした自身のFacebookは、コメントが女性目線で分かりやすいと好評で、紹介した商品には問い合わせが殺到する。ファッション初心者を「素敵な男性」へと優しく導くことが信条。またファッションだけでなく「人生を豊かにするライフスタイル」をテーマに、男性としてトータルの魅力アップが目指せる記事を発信している。ライター以外の活動として、メンズブランドの企画やブランディングも行う。特技はコミュニケーション力を活かして外国人ともすぐに友人になること。趣味はタウンウォッチと英語での映画。

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Photo: Okihiro Mori

撮影協力: 銀座三越

Reference: スコッチグレイン

丸山尚弓

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