特集
カテゴリー
タグ
メディア

書評

日々の仕事で「ラクして速い」を習慣化するためのコツ

日々の仕事で「ラクして速い」を習慣化するためのコツ
Photo: 印南敦史

「ラクして速い」が一番すごい』(松本利明著、ダイヤモンド社)の著者は、PwC、マーサー、アクセンチュアなど世界的な外資系コンサルティング会社において、グローバル展開やM&A、事業再生に基づく人事制度改革・人材開発に24年以上携わってきたという人物。一貫して行ってきたことは「人の目利き」であり、仕事はリストラと選抜だったそうです。

注目すべきは、そんな経験に基づいて「実際に活躍しているのは、眉間にシワを寄せて一生懸命働く人ではなく、涼しい顔でサクサク仕事を進めている人」だと断言していること。努力は必要なく、ラクに仕事をするほうが、結果が出て、さらに人生の選択肢も増えるというのです。

ただし“ラクをする”とは「手抜きをする」「適当にする」ということではなく、力の「入れ所」と「抜き所」を押さえ、ムダな仕事を減らすこと。そうした心がまえを持ち、日々の仕事に取り組めているかどうか。そこがリストラされる人と選抜される人の差なのだという考え方。

そこで本書では、力の「入れ所」と「抜き所」を押さえ、スピーディに仕事を進める方法を「ラクして速い」と定義しているのです。

【「ラクして速い」の定義】

“ラク”とは、力の「入れ所」と「抜き所」を押さえ、ムダな仕事を減らすこと

“速く”とは、1秒でも早く仕事を終わらせること

(「はじめに」より)

それは、「集中すべきものと、捨てるべきものを正しく取捨選択する」と言い換えることもできるといいます。ちなみにムダな努力は、次の5パターンに分類することが可能。

1. 一生懸命がんばるけれども、やり直しが多い

2. すべてに全力投球で、疲れ果てる

3. 責任感を持ちすぎて、仕事を抱えすぎる

4. 根回しに労力と時間をかけすぎ、疲弊する

5. 上司の指示通りにやるが、結果が伴わない

(「はじめに」より)

こうした「結果に繋がらない努力」を排除するために書かれた本書から、1章「一発で決める」に焦点を当ててみましょう。

「長い1回」ではなく、「短い10回」をスピーディに

上司や取引先から頼まれた仕事については、「一発OK」をもらいたいもの。しかし、こちらが苦手と感じる相手の仕事に限って、「支持した内容と違う」「データの分析が甘い」「そもそも論だけど」と、やりなおしが多くなりがちでもあります。しかし当然のことながら、やりなおしは、生産性とモチベーションを一気に下げてしまうことになります。では、どうしたらいいのでしょうか?

この問いに対して著者は、確認やチェックの回数を増やせばいいと主張しています。苦手な相手ほど、「打ち合わせは1回ですませたい」などと避けたい気持ちになりますが、それは危険。わずか1回の長いミーティングですまそうとした場合、一度ひっくり返されたら終わりだからです。

そこで、1回のミーティング時間を短くし、そのぶん回数を増やすべきだという発想。1時間のミーティングで勝負するのではなく、5〜6分の短い打ち合わせを10回行うようなイメージです。

確認回数を増やすと、“何回言ってもわからない、仕事のできないヤツ”と思われてしまうのではないかと心配になるかもしれません。しかし実際には逆で、相手からはうれしく思われるものなのだとか。なぜなら、どんな上司や取引先も、「私のことを大切な存在と見てくれているか」と、常に不安に思っているものだから。

そのため、どんな小さなことでも報告したり、確認を怠らない人には、「私を大事な存在と認めてくれている」と、信頼感が高まるというのです。

現実的に、短い打ち合わせは10回も行わなくてすむものです。すると必然的に、トータルのミーティング時間も減ることになります。さらに相手からは「すぐに確認してくれるので、信頼できる」と評価も上がるということ。

なお、打ち合わせを切り出す際に便利なのは、「1つ確認ですが」という言葉だといいます。これなら、仮に理解の行き違いがあったとしても、誰かの責任になることはないわけです。あくまでも「確認」なので、違っていれば修正するだけでいいということ、そして「確認」であれば、作業の話に集中できるので打ち合わせも効率的だといいます。(20ページより)

100点を目指すより、「60点の出来」で突っ込ませる

一発で仕事を通そうと思えば、より完璧に仕上げたいという気持ちがわいてくることでしょう。誤字脱字や数値のミスが1つでもあると、資料はもちろん、提案内容への信頼も薄れてしまうからです。しかし大事なことは、「誤字脱字もなく、資料が完璧」とほめられることではないと著者はいいます。それより重要なのは、速く確実に仕上げて通すこと。

なお、最初から100点を目指すのではなく、あえて60点で出し、どんどんフィードバックをもらうべきだといいます。著者によれば、60点で出すメリットは3つ。

1. 方向性を確認できる

ある程度仕事を進めた段階で、相手に方向性や内容を確認してもらえば、やりなおしのリスクを減らすことが可能。しかしストレートに「60点の出来」と言ってしまうと突き返されてしまう可能性が。そこで、調査・分析であれば「速報」、書類であれば「ドラフト」というかたちにすればOK。そうすれば、必ず見てもらえるというわけです。

2.相手に突っ込ませて、ゴールを明確にする

依頼者が最終形をイメージできないときは、「60点」での提出が効果的。依頼者が常に正解を持っているとは限らないため、依頼者の状況を想定し、仮説でもいいので「こんな目的と内容でよろしいでしょうか?」と質問するわけです。

3.いじわるな上司対策

著者いわく、これは「あとからひっくり返すことが仕事」だと勘違いしている依頼者対策。このタイプはダメ出しをすることで影響力を発揮しようとするので、完璧に仕上げてから持っていっても、「そもそも論」を持ち出してすべてひっくり返そうとします。対策は、本筋をずらさずに、依頼者が突っ込みやすいポイントを準備しておくこと。このタイプはいくつか突っ込み終えると満足するため、やりなおしのダメージを最小限に抑えられるのだそうです。(24ページより)

「報連相(報告・連絡・相談)」を行うことは仕事の基本。具体的な支持をもらって動けば、仕事のムダはなくなるという考え方です。ところがその一方、「上司から言われたとおりにやってもうまくいかない」「相手をかえって怒らせる」などということになる場合もあります。そんなときは報連相ではなく、“ソラ・アメ・カサ”を使うといいのだそうです。

これはマッキンゼーの日本オフィスが考えた思考のフレームワークで、誰でも簡単に使いこなせるもの。「空を見ると曇ってきた(事実)。雨が降りそうだから(洞察)、傘を持っていこう(打ち手)」と覚えるといいそうです。

事実を伝えるとき(ソラ)に、「どうなりそうか?」(アメ)、「ゆえに、どんな打ち手や行動をすればいいか」(カサ)の3つをセットにして伝えるのです。すると、認識のズレなく、上司に正しく判断してもらえます。(33ページより)

ソラ・アメ・カサで肝になるのは、事実をどう解釈し、洞察するかという「アメ」。アメは日本語でやりとりすると省略されてしまうことが多いため、こちらからアメを伝え、認識のズレを確認すべき。なぜなら、アメは1つではないから。事実をどう解釈したか、その仮説の数だけアメは生まれるということです。(32ページより)




「スパッと割り切る」「抱え込まない」「組織の『壁』を利用する」「自分で『できる』ようになる」と、以後もムダを省くための方法をさまざまな角度から紹介しています。取り入れやすいことばかりなので、試してみれば仕事を効率的に進められるようになるかもしれません。

Photo: 印南敦史

印南敦史

swiper-button-prev
swiper-button-next