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姿勢や波を意識すれば「集中力」は向上する

姿勢や波を意識すれば「集中力」は向上する
Photo: 印南敦史

世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる超集中術』(池田義博著、ダイヤモンド社)の著者の肩書きは、「一般社団法人日本記憶能力育成協会会長」。学習塾を経営していたころに記憶術と出会い、独学で習得。2013年2月に、初出場した「記憶力日本選手権大会」で優勝し、記憶力日本一となったという人物です。さらに13年12月にロンドンで開催された世界記憶力選手権において、日本人初の「記憶力のグランドマスター」の称号を獲得したのだそうです。

とはいえ、最初から記憶力に長けていたわけではないのだとか。試行錯誤を繰り返した末、「集中力」に注目し、その能力を伸ばすことに成功したのだそうです。

ちなみに著者が考えた集中力とは、次の5つのこと。

・すぐに取りかかれる力

・周りを気にしない力

・思考がぶれない力

・長い時間、取り組める力

・最高のパフォーマンスを発揮できる力

(「はじめに」より)

そして、このことを意識しながら「集中力を生み出す場所はどこなのだろう?」と考えた結果、集中力を生み出す場所は脳であり、脳の性質に従って正しいトレーニングをしていけば、「誰でも」「いつからでも」高い集中力を発揮できる「集中脳」をつくることができると確信したのだといいます。

そこで、集中力を生みだす源泉であり、集中力を支える「柱」を見つけ出し、それらを鍛えることで、集中力を向上させる方法をとることにしました。

その柱とは、「メンタル」「注意力」「モチベーション」「コンディション」の4つです。(「はじめに」より)

つまり本書では、この4つの柱の鍛え方を紹介しているわけです。きょうは「コンディション」について書かれた第4章「『コンディション』を向上させて、高い集中力を発揮する」から、いくつかの要点を抜き出してみることにしましょう。

姿勢ひとつで、集中力が変わる

教師や指導者などが「姿勢を正しなさい」と指示するのは、単に雰囲気の問題だけではなく、集中力を含む心理に影響を与えることができるからなのだと著者は主張しています。

姿勢が心理に及ぼす影響を調べた興味深い実験があります。いろいろな座り方をしたときに、どのような気分になるかを調べたものです。

座り方は、「背筋、腰ともに伸ばす」型と「肩、腰を落とし、背中を丸める」型という2パターンとします。そして顔の向きを「上方45度」「正面」「顎を引き、うつむく」の3パターンとし、体の形と顔の向きを組み合わせて、計6パターンの姿勢で調べたそうです。

被験者にそれぞれの姿勢のときに、あらかじめ用意した気分を表す形容詞を使って評定してもらったところ、「背筋を曲げて顔を下に向ける」という姿勢が最もネガティブな気分になったそうです。(177ページより)

座るということに関していえば、姿勢を良くするのが正解でしょうが、著者はそこに「ある改良」を加えているのだそうです。

座り続けていると、足はあまり動かさないもの。しかし足は血液循環のポンプの役割を担っているため、足を動かさないと血流が悪くなります。飛行機に乗ったときのエコノミー症候群の原因は、まさにこれ、そこで著者は、座る時間を少なくしようと努めているのだといいます。

また、歩くときにも背筋は伸ばすようにしているそうです。歩いていると、後ろ向きでネガティブな考えは浮かんでこないというのです。しかも足はポンプの役割を担っているわけですから、歩くことで足の血液ポンプが働き、脳への血流が増えるということ。

そしてもうひとつ。ホワイトボードを活用した方法も紹介されています。

著者が集中して仕事をする部屋には、ホワイトボードがあるのだそうです。当初は情報を書き込んで、少し離れたところからそれを眺めて答えを導き出したり、水平思考をするのに使っていたといいますが、いつの間にか歩きながら思いついたアイデアを書き込んでいくための大きなメモ帳としての役割が加わったそうなのです。そして、いまの著者の知的生産のときのルートは次のようになっているのだといいます。

・歩きながら、ときには立ち止まって頭の中で発想を広げる。

・何か思い浮かんだらホワイトボードに、単語、イラスト、長い文を書き込む。

・ある程度ホワイトボードに情報が集まったら、情報を整理してパソコンで清書する。

(180ページより)

ホワイトボードを利用するということは、立って仕事をするということになります。著者にとってその大きな目的は、集中力のリズムを崩さないようにすること。リズムを保つことで、長い時間集中力をキープすることができるというわけです。(177ページより)

集中力の波を活かして、パフォーマンスを上げる

1日の脳のコンディションにはリズムがあり、集中力のレベルも変動を繰り返していて一定ではありません。だとすれば、集中力の高まる時間帯を知り、その時間帯に合わせてタスクをこなせば、効率的に作業を進めることが可能になるはず。

しかし集中力の高まる時間帯があるということは、裏を返せば、集中力が低くなる時間帯があるということにもなるはずです。ならば、集中力が低下する原因を知り工夫することで、少しでも集中力を引き上げることができれば、生産性をさらに上げられるということになります。

そこで著者はまず、「集中力が高まる時間帯」について説いています。

朝起きてから約4時間がよく脳が働く時間帯です。「社会生活基本調査」(総務省調べ)によると日本人の平均起床時間はおよそ6時30分ですので起きてから午前10時ぐらいまでが集中力が高い時間帯といえます。

その中でも起きてから2時間は特に集中力が高い時間帯ですので、この時間を有効活用できれば、さらに生産効率を上げることができます。

そして、集中力が高まるもう一つの時間帯は、夕食前の時間になります。午後4時ぐらいから夕食までの時間が2回目の脳が働きだす時間帯になります。(192ページより)

つまり1日に2度訪れる「集中力が高まる時間帯」をうまく活用できれば、相乗効果で高いパフォーマンスを発揮できるということ。では、脳のリズムが低下している時間帯に効率をあげるためには、どうすればいいのでしょうか?

いうまでもなく、集中力が低下するのは食事後。動物の生存本能を基準にして考えると、食欲が満たされることによって危機意識が低下するわけです。しかし、食事後も急激に脳の働きを低下させずにおける方法もあるのだといいます。それは、満腹になるまで食べないこと。

満腹になると、脳は生命を脅かす危機が去ったと判断し、集中力のスイッチを切ってしまうもの。それを防ぐために、「まだ食べたい」という気持ちがあるところで食事を終え、脳に多少の危機意識を残しておくということ。

しかし、昼食を工夫して急激な能力低下を防げたとしても、まだまだ集中力を引き上げる工夫の余地は残っているそうです。それが、「パワーナップ」と呼ばれる15〜30分の仮眠。ある研究によれば、パワーナップをとることで、なにもしないときにくらべて、脳のパフォーマンスが34%も向上することがわかっているのだそうです。

ただし寝すぎは禁物で、30分以上寝てしまうと、かえって疲労を増加させてしまうことも。それを防ぐには、パワーナップの直前にコーヒーなどでカフェンをとっておくといいそうです。しかし、すぐに効きはじめるわけではなく、効果が表れるのは飲んでから30分後くらい。つまり、それで寝すぎを防ぐことができるわけです。

夜は1日の疲労の影響もあり、夕食の時間を過ぎたあたりから集中力が落ちてくるもの。体も睡眠に向かって、活動量を徐々に落としていく時間帯です。しかし、この時間帯に、誰にも邪魔されることなく知的生産をしたいのであれば、「座る、立つ」をひんぱんに繰り返すことが効果的なのだといいます。

体の各部位は神経で脳とつながっています。しかし、脳が情報処理する量はすべての部位で同じではありません。

一番脳が処理する量が多いのは、「手」と「顔」からの情報で、次に多いのが「足」からの情報です。

立つことにより、足からの刺激が増えることで脳を活性化しようというわけです。裸足になると、さらに足裏からの刺激を増やすことができます。(196ページより)

このとき、タイマーを利用するとさらに効率アップにつながるそうです。座り続けて立ち上がるまでの時間は10分から30分くらいの設定が適切だそうですが、そのときタイマーを一緒にセットするということ。それが、心理学でいう「締め切り効果」を生み出すのだそうです。締め切り時間を意識すると脳が危機感を増し、さらに集中度が増すということです。(191ページより)




集中力を高めることは、ビジネスパーソンにとっての重要事項。とはいえ、なかなかうまくいかないものでもあります。だからこそ、本書を活用してみてはいかがでしょうか? もしかしたら、いままで気づけなかったことに気づくことができるかもしれません。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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