lifehacker

特集
カテゴリー
タグ
メディア

「雇われている」と考えなければ、会社とより良い関係が築ける

「雇われている」と考えなければ、会社とより良い関係が築ける
Image: g-stockstudio/Shutterstock.com

業界によっては「終身雇用」なんてもはや都市伝説になってしまっているのではないでしょうか? 気がつけば、私たちは会社にそんな期待をするのをやめてしまっていました。「裁量労働制」にまつわる、理想と実体とがかけ離れた労働環境も問題になっています。

そういった問題に直面した時に考えるのは「では、個人はどう会社と向き合えばいいのか?」かということ。

そんななか行われたのが、虎ノ門ヒルズフォーラムにて2月15日に開催の一般社団法人at Will Workによる「働き方を考えるカンファレンス2018 働くを定義∞する」にて、ベンチャーキャピタル「WSLab Ventures General Partner」のクリス・イェ氏と株式会社「ほぼ日」取締役CFO・篠田真貴子氏による、これからの企業と人との関係についてのキーノートセッションです。

会社と対等な関係で働く

aww
Image: at Will Work

2015年に刊行され、企業と人は新たな信頼関係を築くべきだと提唱した書籍「アライアンス」。

その著者のひとりであるクリスと、国内外さまざまな企業での就業経験を持つ篠田氏がこれからの人と企業との関係性のあり方をめぐって語り合いました。セッションの最後には、一般社員管理職経営層と、企業で働くそれぞれの立場の人たちに向けたメッセージも。その様子を順を追って見ていきたいと思います。


会社と人のアライアンスとは?

1
Image: at Will Work

篠田氏: この本で伝えたかったことを、改めて教えてください。

私がこの本で書きたかったのは、会社と人との関係についてです。会社と人というのは平等な関係にあって、相互に信頼し合い、相互に投資しあってお互いにメリットを得る関係なのだ、ということです。

篠田氏: 働く人と会社とは、相互に信頼関係を築いた対等な関係である…。これはシリコンバレーでは普通のことなんでしょうか?

シリコンバレーにはスタートアップ会社が非常に多くあります。それはもう、すでにアライアンス関係になっているということです。

どういうことかと言うと、こういう会社はとても短い期間で成功・失敗が決まってしまうので、働いている人たちは、自分のしていることが会社の成否にダイレクトに繋がってしまうことを肌で感じているんですね。別にアライアンスをやろうと思っている訳ではなくて、そうしていかなければ、やっていけないんです。

篠田氏: アメリカ全体として考えると、こういう働き方はすでに一般的と言えるのでしょうか。それともシリコンバレーはアメリカでも特殊な環境なのでしょうか?

「アライアンス」のコンセプトは、アメリカ全体で広がりつつあります。アメリカの大企業もかつては、今の日本のように終身雇用といった就業形態が一般的でしたが、最近ではほぼすべての会社において、平均が2年~3年になってきています。具体的な名前を挙げるとすれば、Uberのような会社では平均就業期間は1年です。

そうなってくると、人と会社の関係、会社に対する忠誠心や関わりなどは自ずと変わってくるものです。

働き方について、日本人が考えたいこと

IMG_8552
Image: at Will Work

篠田氏:この本を初めて読んだ時に私も、アメリカでも終身雇用の仕組みが主流であったということに驚きを感じました。そこから日本は日本の発展の仕方があり、アメリカにはアメリカの労働環境の変化があったのだな、ということが第一印象として残っています。

これはアメリカの状況を踏まえて書かれた本ですが、それでは、今日ここにいる、日本で働く私たちにこの本はどういう意味を持つのか? クリスさんは日本の起業家や大企業と多く仕事をされているので、そこについて伺ってみようかなと思います。

非常に面白い質問だと思います。その問題に関わる方向性や側面が違うだけで、実は日米は同じ問題に直面しているのではないかと考えているんです。

アメリカにおいては終身雇用というものがなくなった(変化が起きた)後に、会社に対して忠誠心を持ち続けるべきか、または会社を変えながら如何に自分のキャリアを築いていけば良いかといったことが中心になります。

一方、日本の場合はそれとは反対に、これから日本が変化していかないといけない状況のなかで、長い間ひとつの会社で働いている人がいるとして、その人が会社にどのような貢献をしたらこの変化を乗り切れることができるのか、ということを考えなければいけない。

篠田氏: 日本の大企業と外資系大企業いくつか、そして「ほぼ日」という創業社長のいる小さな会社で経験を積んでの実感からすると、終身雇用という仕組みは一定の大企業ではまだあることになっているけれど、20年前とはだいぶん性質が違っているのかもしれない。この信頼関係が崩れてきているのかもしれないな、と。

ただ、クリスの話をきいて思ったのは、どこであれ働く以上は、会社と人がお互いに信頼関係が持てたらいいという希望はある。希望があるから崩れたことにがっかりする訳ですよね。

そうですね。もともと私が「アライアンス」を書いた理由は、アメリカにおいては会社と人との信頼関係というのが、これまでにないほど最悪の状況になってしまったというところがあるからです。

つまり、上司や会社が従業員に対して何かを約束したとしても、その約束は破られるだろうと考えるのが当たり前の状況になってきていたからです。

そこで私がこの本で伝えたかったのは、たとえば会社が人に対して「ここで一生雇います」と保証はできないけれど「この会社で働いている間は、次の仕事に役に立つような経験を提供しましょう。その次の仕事というのは、この会社かもしれないし別の会社かも知れないけれど、あなたが働いている間にはあなたの為になることをしてあげられますよ」という約束できるべきだということです。

篠田氏: 信頼関係を持って、何を約束するかというのが大きく違う。会社も「終身雇用はできません」と前もって話して、働く人も了承して「じゃあ、お互い今できることは何なのか?」という話し合うのはどうだろうと提案するということですね。

かつての終身雇用が親子のような関係だったとすると、この「アライアンス」で提案されているのはより対等な…、友人あるいは純粋に仕事のパートナーとしての関係なのかな、と私は思いました。

親子関係となると「会社が一生世話を見ます」といった約束になると思うんです。それが破られると、働いている人が会社を信じられなくなるのは当然です。

終身雇用はできないけれど、その替わり、こういった形の約束ができるということを会社の魅力として提示しようとしなければなりません。

3種類のコミットメント

IMG_8540-1
Image: at Will Work

篠田氏: 「アライアンス」の中で特に大事な概念だと思ったところがあるので、ご紹介してクリスの意見をもらいたいです。

いままでのような話をすると、どうしてもハイキャリア、あるいはエンジニアのように特定の専門性があって、複数の職場で活躍できる人だけを念頭に置いているのではないかという思われるところがあり、対訳者としても同じような意見を多くもらいました。ところが、この本は全くそういうことではなく、信頼関係、アライアンスの関係も3種類あるのだと言っています。

コミットメントの枠組みとして、最初は会社に「規模拡大」をもたらすローテーション型というものがあります。このタイプは新入社員として入社した段階になりますが、会社も一度にたくさんの人を採用するので、そのなかで決められたことをある程度言われた通りにやっていきます。お互いに知り合って、だいたい仕事というのはこんな感じなんだ、というのが分かり始めます。

その次には変革型というものがあります。この変革型を人は何回か繰り返すのだと思うのですが、自分の適性を活かして個人にあった形で会社に変革をもたらす役割を担っています。

その次が基盤型。個人は、自身の全キャリアを持ってその会社を伸ばしていきたい。会社は、その人が自社にいることに価値があると考えて雇っていきたいと思うような状態です。これは、どちらかというと終身雇用に近いものと言えるかもしれません。

ただ従来の終身雇用の違いは、このタイプではある時点での従業員のミッション、やるべきことを明確に伝えることになることです。たとえばある人が30年ある会社に勤めたとしても、数年ごとにその会社でのやるべきミッションというのは変わっていくものなので、それらを会社から明示的に伝えられてそれを達成するために働く、ということになります。

篠田氏: これらは決して一部の働き方という訳ではなく、たとえばわたしの経験でいえば、銀行に新卒で入って窓口で働いていた時期がローテーション型。メーカーでの事業改革や、これまで進出したことのない国に進出するといったミッションを持ってタンザニアに赴いた変革型基盤型というのはまさに今で、働く会社の価値観とともにコミットしていく働き方。

具体例を挙げて説明したことで「アライアンス」が伝えようとしていることが、日本の現状とも繋がりそうだと思っていただけたでしょうか?

何を強化していくべきか?

IMG_8575
Image: at Will Work

篠田氏: これまでと、これからの働き方の違いとは「終身雇用」ではないということを明示して、数年間一緒にやっていきましょうというところでした。ということまでを理解した今、我々は何を強化していくべきか、というところを伺おうと思います。

一般社員の場合

あなたが一般の社員であれば、上司や管理職からいま自分がいる会社のゴールを学びましょう。そして、それらのパートナーとなりましょう。

上司や会社をパートナーと考えて、ゴールを達成するために自分はどんな貢献ができるか、あるいは上司のキャリアを進めていくために自分にはどんな手伝いができるかという観点から仕事をすればいいと思います。

管理職層の場合

「この仕事をしてほしい」「どれくらい昇給しよう」と考えるだけではなく、自分の部下の価値を上げるために「今どんなことをやらせてあげるのが良いのか」、雇用・労働市場でもっと活躍するために「どんなキャリアを身につけさせてあげれば良いのか」を考えましょう。つまり、その人の価値を高めるような作業をさせてやろうということです。

経営層の場合

CEOやCFO。あなたがCレベルであるとしたら、自分たちの会社が、給料の高さや福利厚生ではなく、そこで働いた人たちがその後どれだけキャリアを花咲かせられるかで評価されるということを理解するべきです。

世界で名の知れた会社や大学を考えてみてください。卒業生やその会社出身の人がどうなったかという現状によって、その会社は評価されます

自分たちの会社で素晴らしい価値を蓄えた人は、外に出たときにはさらにさまざまなところでもっとすばらしい作業や貢献ができる。そういった人を育て世に送り出すことで、その人たちがまた新しいビジネスを会社にもたらしたり、知恵を持ってきてくれることを忘れてはいけません。

篠田氏: このお話を聞いて、日本だとまだまだ無理だよという声も上がるかもしれません。実際、3年ほど前にこの本が出た時には、ベンチャー界隈ではうけたものの大企業からの反応はあまりありませんでした。

でも、たとえばパナソニックといった大企業が出戻りで役員を受け入れたり、電通が会社を卒業された人たちの同窓会をオフィシャルで発足したりという話も伺っています。日本では無理だとか、自分たちには無理ということでは決してないんだと思います。


IMG_8531
Image: at Will Work

最後のメッセージとしてクリスが残したのはこんな言葉でした。つまり、 わたしたちは意思を持っていまの会社を選び取って働いている一方、これからどこででも働いてもいいという選択肢も持っているということです。

「アライアンス」という考え方は、これから先、就業人口が減少して、より自由により自立して働かなければいけない時代のベーシックな心がまえとなるのではないでしょうか。

Source: at Will Work

Image: at Will Work

岸田祐佳

swiper-button-prev
swiper-button-next