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「理系アタマ」になると、仕事ができるようになる理由

「理系アタマ」になると、仕事ができるようになる理由
Photo: 印南敦史

ビジネスで差がつく論理アタマのつくり方』(平井基之著、ダイヤモンド社)には、「カンタンな中1数学だけでできる!」というサブタイトルがついています。その根底に根ざすのは、中学1年生の数学に論理思考のエッセンスがたくさん詰まっているため、僕たちはすでに論理思考を持っているのだという考え方です。

とはいえ、予定されたカリキュラムに従って進められる学校の数学の授業では、論理思考を身につけさせる目的で授業をしないもの。そのため、中1数学の授業を受けても、論理思考ができるようになるとは限らないというのです。しかし中1数学の教科書を眺めてみると、その内容は論理思考を学ぶのに役立つことばかりなのだとか。

ご存知のとおり、数学は実に論理的です。それは高校数学でも中学数学でも変わりません。あえて言うならば、算数から数学に切り替わった中1の数学こそ、論理的な数学の土台となる単元が目白押しです。

だから、中1数学を学び直すと、論理思考も同時に学ぶことができるのです。(「はじめに」より)

つまり本書は、中1数学を通じて論理思考を学ぼうという意図に即して書かれているわけです。

ちなみに「受験戦略家」を名乗る著者は、東大に文理両方で合格した実績を持つ人物。現役で東大理科一類に合格し、卒業後に大手学習塾に入社してからは、東大合格者数の激増に貢献したのだそうです。さらに注目すべきは、過去に培ったノウハウを自ら実践するため、30歳を超えてからふたたび受験勉強をし、1年で東大文科三類の合格を実現したということ。つまり本書における主張は、そのようなバックグラウンドに基づいているわけです。

それにしても、なぜ論理思考が重要なのでしょうか。第1章「論理思考で3つの力が伸びる」から、その答えを見つけ出してみたいと思います。

理系アタマになれば、仕事ができるようになる

大学受験の世界では、「すべての科目のなかでいちばん大切なのが数学だ」とか「数学の力が、すべての土台になっている」と言われることがあります。著者によればそれは、数学が「論理の学問」だから。勉強において論理を必要としない科目はないからこそ、数学がすべての土台だと言われているというのです。

そして重要なのは、論理思考が身につけば、他のさまざまな能力が同時に上がるということ。たとえば国語と英語は「言語」という点で似ていますし、数学と理科は共通して計算が必要。しかし、このように共通点を探し、「より根本的な力はなんだろう」と考えると、その要素は3つしかないのだそうです。

その3つとは、「論理力」「言語力」「暗記力」。しかもこの3つはそれぞれ別ものではなく、ひとつひとつが関連しあっているもの。そのため、1つを鍛えると、他の2つも同時に伸びていくというのです。(12ページより)

論理思考を身につければ、東大合格も夢じゃない

いかにも派手な見出しですが、著者がこのフレーズを用いたことには理由があるのだそうです。論理力を極めると、勉強に必要な言語力や暗記力が身につくから。

東大入試には、論理思考がいらない問題が出ることはありません。数学や理科であれば当然必要ですし、英語や国語も実は非常に論理的。というのも、文章というのはただやみくもに言葉を並べたものではないからです。「文法という論理」を使って記述するため、文法の力を極めると、読めない文が限りなく少なくなるということ。また同じように、文章全体も非常に論理的に構成されているものです。

丸暗記でも対処はできるとはいえ、単語や熟語の暗記は論理を使うと非常にスムーズになるもの。よって論理的に考えていくと、何倍も暗記のスピードが増すのだといいます。

社会系の暗記科目も、年号や人物名、事件の名前をひたすら暗記していく科目と思われがち。しかしこれも単語や熟語と同じで、論理的に覚えると非常に楽になるのだそうです。そして暗記力をアップさせるためには、知識と知識を関連づけることが有効。そして関連させるときに、論理がとても役に立つというのです。

私の例でいうと、30歳を超えてから、苦手な文系で東大を受験しましたが、そのとき日本史や地理の勉強で丸暗記に費やしたのは、わずか1週間程度でした(しかもセンター試験の直前)。論理力を高めると、これほど暗記が得意になります。(15ページより)

「勉強はストーリーの理解と暗記」であると著者は主張します。国語や英語長文の読解はまさにストーリーの理解であり、数学や理科の広く深い世界は、論理のストーリーの集合。そのストーリーを理解するためには暗記が必要ですし、社会系の科目は、知識を関連づけてストーリーにしながら覚えていくもの。そして、そのすべてに絡むポイントが論理力だというのです。

「論理力を高めると、言語力も記憶力もアップする」ということの裏側にあるのは、こうした考え方。だからこそ、東大合格ですら倫理思考でグッと近くなるということです。(14ページより)

論理思考で、見える世界を変えよう

論理力を高めると、言語力も記憶力もアップするのであれば、具体的にそれはなにに役立つのでしょうか? この問いに対して著者は、仕事に生かせると断言しています。

上司や顧客にわかりやすく話ができず、言いたいことがうまく伝わらないということはよくあるもの。しかし、そんなとき論理的に話せたとしたら、相手に的確に伝わるはず。論理的な思考でビジネスプランを考えれば、メールや文書の作成時間を短縮できるはず。

また暗記力が上がれば、商品知識や顧客情報の把握も簡単にできるでしょう。加えて言語力が上がれば、シンプルで明快なプレゼンができるようになります。また、資格試験の勉強や、子育てに生かすこともできるのだとか。つまり論理思考を身につければ、身の回りのあらゆることが変化する可能性があるということです。(16ページより)

なぜ数学嫌いは生まれるのか

当然ながら数学嫌いが生まれることにも、いろいろな理由があるはず。そのひとつに「学校の授業が合わなかった」というものもありますが、学校の数学はわざとつまらなくなるように構成されているのだと著者はいいます。

現場の先生方が「どうやったら数学を楽しく学んでもらえるか」と、日々実践と研究を重ねているものの、学校のシステムそのものが、必ず数学嫌いを生むように仕組まれているというのです。

その理由はズバリ、テストが存在するからです。(中略)学校の数学の授業は、先生が教科書の例題を開設し、生徒が類題を解く、つまり問題演習を中心に進むのが一般的です。

どうして、そのような進め方をしているのでしょうか。

テストがあるからです。

先生が心の中でどれだけ数学を楽しく教えようと思っていても、テストで点数を取らせることが優先されます。だから、問題演習や計算訓練に多くの時間を割こうとして、本当は面白い背景の話や、論理思考に絡む話などは最小限に抑えられてしまいます。

また、テストをする以上、必ず点数化されますから、点数が取れた子は数学が好きになり、点数が取れない子は嫌いになるのです。(18ページより)

このように、数学嫌いな子が生み出されるというのです。(17ページより)

論理と数学ほどおもしろい世界はない

しかしそれでも、著者は「数学はおもしろい」と声を大にして言いたいのだそうです。事実、その証拠に世の中には多くの“数学オタク”がいるもの。たとえば車のナンバープレートを見ては四則計算(足し算、引き算、掛け算、割り算)を使って10になるように計算し、素数を発見すると喜ぶ人がいます。アイドルのコンサートに行くより、数式を眺めているほうが楽しいという人もいるでしょう。

著者によればそれは、数学がおもしろいから。深くて美しい数学の世界を知ると、その魅力から離れられなくなるということです。

数学は論理の学問。論理を積み重ねることが楽しいということ。そして、学ぶコツは楽しむことだと著者はいいます。学校の勉強のように眉間にしわを寄せてがんばるのではなく、数学のおもしろさに触れ、楽しむことが大切だというわけです。(19ページより)




こうした考え方に基づいて、以後の章では「数学による論理思考」がわかりやすく解説されていきます。なにしろ中1が習う内容なので、親しみやすさも文句なし。専門用語も少ないので、無理せず要点をつかむことができるはずです。ビジネスに生きる論理思考を身につけたい方は、手にとってみるべきかもしれません。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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