特集
カテゴリー
タグ
メディア

書評

リクルートのエンジニアたちが自発的に動き、考え、成長できる理由とは?

Sponsored By 株式会社リクルートテクノロジーズ

リクルートのエンジニアたちが自発的に動き、考え、成長できる理由とは?
Photo: 印南敦史

自走するIT組織 リクルートのエンジニアはこう動く』(米谷修著、日経BP社)の著者は、リクルートテクノロジーズ執行役員CTO(最高技術責任者)。大学卒業後に入社したリクルートにおいて、人材サービス「リクナビ」の開発リーダーを歴任するなど、多くのネットサービスの立ち上げに携わってきたという実績の持ち主です。

本書は、そんな著者が『日経SYSTEMS』に連載してきたコラムを再編集したもの。約30人のエンジニアたちのエピソードをオムニバス形式で紹介しながら、成長の軌跡や問題解決の方法、プロジェクトの成功あるいは失敗の経験を通じ、「なにがエンジニアを人として成長させるのか」「なにが組織を強くしていくのか」「なにがイノベーションを実現していくのか」などを明らかにしているわけです。

ちなみにリクルートは2000年に会社としてウェブサービスに注力するという大きな戦略を立て、今日では国内屈指のウェブサービスを提供する企業へと変貌を遂げました。

しかしそのリクルート自身の変化のなかでも、最も驚くべき変化の一つは、私の予測をはるかに超えるスピードで若手エンジニアが次々と成長を遂げたことでした。(中略)本書はリクルート、そしてリクルートテクノロジーズという舞台で、なぜ彼ら、彼女らが成長を遂げ、そしてどんな自己実現を達成してきたのか。私なりの背景や理由を謎解きするように考えつつ紹介したものといっていいでしょう。(「はじめに」より)

本書の最大の特徴は、「挑む」「創る」「繋ぐ」「調える」という4つのテーマごとに話が進められていく点。そのため、エンジニアたちがそれぞれの目的とどう向き合ってきたかが明確になっているのです。各テーマごとに、印象的なエピソードを抜き出してみましょう。

【著者プロフィール】

米谷修(よねたに・おさむ)

profile_recruit2

リクルートテクノロジーズ執行役員CTO(最高技術責任者)。大阪大学基礎工学部合成化学科を卒業後、1988年にリクルート入社。人材サービス「リクナビ」の開発リーダーを歴任するなど、現在リクルートが主力とするさまざまなネットサービスの立ち上げに携わる。2012年10月より現職。

挑む:「クール」なエンジニアが秘めていた熱い想い

高い専門スキルを持っていることも、もちろん重要。しかし、技術者が高いパフォーマンスを発揮できるか否かのカギは、むしろ「なんとかしてやる」という熱い思いをどれだけ持てるかということにある。著者はそう感じているのだそうです。そしてここでは、ITアーキテクトとしてインフラの刷新プロジェクトを大成功させてきたA君というエンジニアの事例が紹介されています。

ベンダー出身であり、中途入社した時点でサーバーやストレージといったインフラ周辺の豊富な知見と技術力を備えていたというA君。冷静な判断力と、きわめて合理的に物事を進める推進力を持ち合わせた「クールな人物」なのだそうです。

当時のリクルートのインフラ環境は、採用しているプロダクトのEOSL(End Of Service Life)が迫っており、増設では対応しきれなくなりつつあったのだとか。そこでA君に、性能やキャパシティーの大幅な改善に加え、ランニングコストの大幅削減、高い拡張性など、かなり難易度の高い目標を掲げた刷新プロジェクトを任せたといいます。

その結果、A君は見事に期待に答えることに。サーバー台数の大幅削減と性能向上を狙った全面的な仮想化技術の導入を検討。製品選定の過程においては「石橋を叩いて壊す」ほどの検証を繰り返し、性能や安全性を徹底的に確認したというのです

実機による検証を徹底的に繰り返し、技術的な課題や懸念点を解決しながら推進。細かいレベルであってもパートナーに任せきりにせず、自らが主体となって積極的に取り組んだのだそうです。その結果、プロジェクトは大成功を収めることになったというわけです。

本プロジェクトの成功要因は何だろうか? 当初筆者は「技術力+冷静沈着な判断力、推進力」であると考えていた。だがそれだけではなかった。A君いわく「自分には、アーキテクチャーを改善したいという強い思い、気合、根性、精神力、執念といったある意味で前時代的な精神論があったのだ」という。

これには驚かされた。(中略)A君はほとんど感情を表に出すことなくロジカルかつドライにプロジェクトを推進しているように見えていたのだが、内側には実にアナログでウェットな思いが込められていた。(40ページより)

技術だけでなく、熱い想いが大きな成果を生み出すという事例です。そんなA君は、いまでは執行役員のひとりとして組織の統括を担うようになっているのだそうです。(40ページより)

創る:「技術で“ドヤ顔”をしたい」がモチベーション

要件定義、設計、実装、テスト、本番リリース、その後の保守運用——というのがシステム開発の一般的な流れ。しかしそれとは別に、リクルートテクノロジーズには「先端技術のR&D(研究開発)」を専門とするチームが存在するのだとか。

そして著者によれば、このチームの活動意図やモチベーションの源泉を象徴するメンバーが、リサーチャーのN君。そのミッションは、国内外を問わず、リクルートのビジネスに貢献しうるような新しい技術の種を見つけてくることだといいます。

N君はこの組織に配属される前から「勝手に」新しい技術を見つけてきては「自分で」検証し、全社のサービスに実装展開していくという動きをしていたという人物。たとえば全社的に導入していた検索エンジンのコストが多大であることを知ると、オープンソースの検索エンジンを探し出し、検証を重ね、本番サービスに適用できるレベルにまで引き上げたというのです。

著者がそんなN君にモチベーションの源泉を尋ねてみたところ、「国内外の技術者に、技術で“すごい!”と思われたいじゃないですか」という答えが帰ってきたといいます。リクルートは野心を持った人が多いことでも有名ですが、そんななか、「技術で“ドヤ顔”をしたい」と言い切るのだそうです。

その後N君は「“ポストシリコンバレー”、先端技術が集まる場所だ」と自身が主張するベルリンに常駐。現地に集まるさまざまなスタートアップ企業と交流を深め、「ちょっと未来」の技術ネタを日々探索しているのだといいます。なかにはリクルートのビジネスにどうつながるのか想像がつかない技術もあるとはいえ、著者はその嗅覚を信頼しているようです。

N君の、ある種「先を読む活動」は、常人にはなかなか理解が及ばないかもしれない。ただ、ITを駆使したビジネスで勝負していくには、先端技術をいかに競合に先駆けて導入できるかが重要なカギを握る。N君のように、ビジネスにどう活用するのかといった思考を良い意味で外し、純粋に技術視点で先端のものを探索する動きは、研究開発という面では実に理に適っている。(96ページより)

そんなN君の動きが市民権を得て、現在ではチームに所属するメンバーの一人ひとりが、個人商店のように技術要素を研究しているのだそうです。(94ページより)

繋ぐ:チーム力を最大化するための「魔法」

「エンジニアの専門性を生かすも殺すもチーム編成次第」ということで、ここではチーム編成に少しの“魔法”を加え、チーム力を最大限に発揮した事例が紹介されています。主役は、2006年の中途入社組であるS君。入社後には基盤エンジニアのリーダーを務めていたというS君のミッションは、「スマートデバイス向けのアプリ開発を進化させること」

リクルートグループは就職や住宅購入、自動車購入、結婚などさまざまな事業領域でデバイスのアプリを提供しています。しかし、当初はそうしたアプリ開発のプロセスやアーキテクチャーは事業領域ごと、担当するシステムインテグレーターごとに異なっていたため、開発スピードを高めることも開発総量を増やすことも難しかったのだとか。

そこでS君は、アプリ開発の共通基盤を作り、「機能別編成チーム」に改めます。ただ、専門性の高いチーム編成にすると、セクショナリズムが生まれて生産性低下のリスクが高まるため、S君は「1カ所への集結」「シンプルなゴール」という2つの施策を打つことにしました。

まずは「1カ所への集結」について。アプリ開発に関わる、商品企画担当者、アプリ開発エンジニア、基盤担当者らを同一フロアに集めたというのです。 その結果、自然と相互理解が進み、エンジニアのハートにも火がついたのだそうです。

また、アプリが絡む事業においては、競合他社よりどれだけ早く、どれだけ多くの便利な機能を世に出せるかで勝負が決まるもの。そこでS君は「より早く、より多くつくるエンジニアが偉い」と「シンプルなゴール」を繰り返し口にし、一人ひとりの競争心をかき立てたのだといいます。そしてこのシンプルなゴールに達するには、周囲と密にコミュニケーションを取らなくてはならないため、全員の一体感がさらに高まったのだそうです。

専門性を追求しつつ、皆で一致団結する。一般には背反すると思われているこの二つの事象が、S君の“魔法”によって同時に起こった。(133ページより)

結果として、S君が築いた体制の下で、現在も多くのアプリが生み出されているといいます。(130ページより)

調える:「プロジェクトを実施しない」という判断の裏側にあるもの

「システム開発の醍醐味とはなんだろうか」という問いに対し、「そのプロジェクトをなぜ行うのかを考え抜くこと」だと答えたのは、若手プロジェクトマネージャーのI君。新卒で入社して6年目、これまでに難易度の高いプロジェクトをいくつも経験してきた人物。なかには失敗の烙印を押されてもおかしくないものもあり、そのひとつが、ある大規模サイトのリニューアルプロジェクトだったそうです。

当初「リスクは少ない」と考えられていたものの、そのプロジェクトは進めれば進めるほど問題が噴出したというのです。そのたびに立ち止まって仕様を確認するわけですが、なかには「なぜこのような仕様なんだ」と疑問を感じるものも。そればかりか、リニューアルプロジェクトそのものに「これはやるべきプロジェクトだったのか?」と疑問の声が出ることもあったといいます。

そのプロジェクトは障害が多発し、安定稼働に数カ月を要したそう。I君は当時はまだサブシステム担当のひとりでしかなかったものの、このプロジェクトを通じて「目的不明のプロジェクトはやるべきではない」と思い至ったそうです。

そしてその後、I君は自身の考えを決定づけるプロジェクトに関わることに。「新サービスの企画を一気に進めるためにシステムをつくりたい」と、大規模プロジェクトの要請がきたというのです。そこでI君はそのプロジェクトの検討チームに加わり、1カ月にわたりヒアリングしたうえで、どの程度の人員を割くべきかを判断したそうです。

そんな経緯を経て検討チームが下した判断は、「このプロジェクトは実施すべきではない」というもの。さまざまな角度からプロジェクトの目的を本質的に見なおし、こうした方針を導き出したということです。結果的に新サービスは既存システムを活用して柔軟に展開できているため、その際の検討チームの判断は正解だったと著者は記しています。

システム開発プロジェクトに関わると、「いかにプロジェクトをうまく遂行するか(How)」を意識するものだ。もちろんそれは間違ってはいない。だがI君は「プロジェクトを進めること自体が目的になってはいけない。何のためのプロジェクトか(Why)を考え抜くことが大切だ」と言う。(194ページより)

この大切なことそのものに、I君はプロジェクトの醍醐味を感じているということ。そして、「Why」が定まったうえで「How」を検討すべきだという考え方については、著者も合意しています。(192ページより)




本書に登場するエンジニア達のエピソードを読んでいくと、彼らがなぜ成長できたのか、その理由が見えてきます。

「挑む」で紹介したA君は、冷静かつ合理的な人物でありながら、その奥に秘めた「熱い想い」が成功の原動力となっていました。「創る」のN君は、「技術で“ドヤ顔”をしたい」をモチベーションに、自発的に動くことで新技術の実用化を推し進めています。

「繋ぐ」のS君は「魔法」のような2つの大胆な施策で、背反する「専門性」と「一致団結」を両立する組織体制を作り、「調える」のI君は失敗を通して、プロジェクトに対して「WHY」を考え抜くことの重要性を学びました。

これらのエピソードには、共通して言えることがあります。それは、彼らの成長はリクルートのチャレンジングな環境や仕事の賜物であるということ。

著者は本書の最後で、以下のように語っています。

私が部下にチャレンジングな環境を提供し続けるのには、もう一つ大きな理由があります。

それは、優秀でモチベーションが高い社員ほど、常にチャレンジできる環境を求めている、ということです。そしてチャレンジのしがいがなくなった途端に、彼らは新たな環境へ飛び出そうとします。

(中略)

彼らにとってやりがいのある環境となるよう、私は管理職として絶えずチャレンジングな仕事を社内に用意し続けなければなりません。

(225〜226ページより)

管理職である著者のこうした意識によって、リクルートは「エンジニアにとってチャレンジしがいがある会社」であり続けられるのでしょう。

仕事において参考になるヒントが数多く詰まった本書ですが、先述したとおり『日経SYSTEMS』での連載を再編集したものなので、コンパクトにまとまっていて読みやすい点も魅力。

一つひとつのエピソードがコンパクトにまとめられており、 気になるテーマを見つけてどこからでも読むことができるので、多忙なビジネスパーソンにもオススメの1冊です。

Photo: 印南敦史

Source: リクルートテクノロジーズ

印南敦史

swiper-button-prev
swiper-button-next