lifehacker

特集
カテゴリー
タグ
メディア

マネー特集─今さら聞けない、お金の疑問

相続で損をしないために今から知っておくべきこと、やっておくべきこと

相続で損をしないために今から知っておくべきこと、やっておくべきこと
Image: beeboys / Shutterstock.com

12月は確定申告や年末調整などがあり、税金について意識してしまうシーズンです。また税金といえば、そろそろ相続について知っておきたい年齢に差し掛かっている人もいるでしょう。今のうちに知っておくべきことや対策した方がいいことはあるのでしょうか。ファイナンシャル・プランナーの吉武さんにお話しを伺いました。

財産とは何なのか、どう価値が決まるのか

まず、遺産の大元となるのは相続財産と言われるものです。金額(価値)はどのようにして決まるのでしょうか。財産というと言葉的にプラスのイメージですが、借金のような負債も含まれるので、資産(プラス)から負債(マイナス)を差し引いた財産の価値が実際にどれくらいあるのかを、評価をすることになります。

この評価額は、実際の価値よりも増えたり減ったりしますが、基本的には減るものだそう。資産の中でも生命保険と不動産として受け取るお金は減額が優遇される措置がいろいろとあるため、評価が下がるからです。財産の評価が終わると相続財産が決定します。

相続税はどのように決まるのか?

20171225_inherit1
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

次に、いくらくらいから相続税が発生するのかということですが、税金には基礎控除があるので、相続税がかかるのは基礎控除を超えた金額から。これを課税財産といって、相続財産の金額から基礎控除の金額分を引いたものです。

基礎控除の金額は、2015年1月以降は以下の式で算出されます。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人)

つまり、基礎控除額は法定相続人の人数によって変化。

20171225_inherit2
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

法定相続人とは、法で定められた相続の権利がある人で、優先順に配偶者、子供、親、兄弟姉妹となります。たとえば自分が相続財産として5000万円持っていて、妻と子供2人がいると仮定しましょう。法定相続人は3人なので、以下のようになります。

4800万円(基礎控除額)=(3000万円+600万円×3(法定相続人))

課税財産は、相続財産から基礎控除額を引いた金額になるので、

課税財産(200万円)=5000万円(相続財産)ー4800万円(基礎控除額)

この場合、相続財産が基礎控除額を超えた200万円が課税遺産総額となり、相続税がかかることになります。ちなみに、超えなければ税金はかかりません。基礎控除額が増えれば課税財産は減るので、法定相続人が多いほど基礎控除額が増えます。とはいえ法定相続人は遺言などで増やせるわけではないので、お金持ちが孫を養子にしたり、婿養子をとったりすることがあるのは、そういう理由もあるのかもしれませんね。

課税遺産額の累進課税制度にともなうポイント

課税遺産の相続税は、累進課税によって金額が決まります。

20171225_inherit3
Image: ライフハッカー[日本版]編集部

1000万までは10%、3000万円までは15%、5000万円までは20%、1億円までは30%、2億円までは40%、3億円までは45%、6億円までは50%、それ以上は55%が課税遺産に対してかかります。

ここで気をつけるポイントが、5%刻みで上がっているところと10%一気に上がっているところがあること。5000万円から1億円の間の金額の人が多く、せめぎ合いになる場所です。5000万円を少しでも超えると30%の税金になってしまうので、5001万円になるなら4999万円になんとか課税財産額を落としたいとなるのが人の心というもの。

税金を払いすぎないために今からできること

それでは、今からできることは何があるでしょうか。

1.生前贈与

まずは生きている間に相続させたい人に少しずつ分配し、相続財産を減らしておくことが大事。贈与税という税金がかかりますが、110万円の基礎控除額があり、毎年の贈与額が110万円以内であれば、税金はかかりません。自分の配偶者や子どもの口座に年々110万円を振り込んでいる方もいるかもしれませんね。

しかし、それだけではダメとのこと。後で税務調査が入ったときに渡す側と受け取る側に意志があったことを証明できないといけないのだそう。「贈与契約書」の取り交わしが必要で、それがないと後から課税対象になる恐れがあるので要注意です。

また、現金ではなく不動産を生前贈与される場合は、不動産の評価額から110万円を引いた残りの金額に対して贈与税がかかることになります(※下の「3.小規模宅地の特例」は適応されない)。

ただ、住宅用に不動産を購入する場合は特別控除が発生します。国税庁のホームページによると、2017年1月1日~2020年3月31日に省エネ物件の取得に係る契約を締結した場合は1200万円、それ以外は700万円が控除されます。

重要なのは、控除額が年や税率によって変わるということ。年を追うごとに少なくなってしまうのがまず覚えておくべき点ですが、2019年4月1日~2020年3月31日に消費税率が10%だった場合、省エネ住宅だと3000万円まで控除されます。もとから被相続者の親が子供に3000万円を相続させたいと思っていて、子供も3000万円の省エネ物件を欲しいと思っていた場合、この期間に家を買って相続させると税金がかからないので、得でしょう。3000万円-110万円=2890万円に相続税がかかると、半分近く納めなければならなくなってしまいますから。

2.生命保険

生命保険はさまざまな役立つルールがあるので調べる価値がありますが、わかりやすいものとして生命保険の控除額があり、以下のように計算されます。

生命保険の控除額=500万円×法定相続人

たとえば、1500万円を死亡保険金で受け取り、法定相続人が3人いた場合、税金はかかりません。法定相続人が2人だった場合は、1500万円から控除額の1000万円を引いた、500万円が相続財産の評価の対象となるということです。

また、生命保険の場合、契約の財産評価について留意しておいた方がいいかもしれません。契約者が父、被保険者が子供、受取人が母で父が亡くなった場合、これも相続なので契約者は次に母がなるのか、子供がなるのかを選ぶことができます。

また、解約するとなった場合、これが亡くなったら5000万円もらえる生命保険で月に2万円を20年間払っていたとするなら、480万円を払っていることになります。そして解約すると解約返戻金のある保険ならば、解約返戻金が評価額となります。もしも解約返戻金が400万円なら、400万円が評価額です。そして解約返戻金がない掛け捨ての保険の場合は、評価額もゼロなので相続税もかかりません。

ところで、通常は解約返戻金は右肩上がりで少しずつ増えていく場合が多いですが、保険によっては最初の数年はまったく解約返戻金がなく、途中から一気にあがるタイプのものがあります。仮に上がる直前に被保険者が亡くなって相続をすると、そのときは評価額がゼロで後から上がるので相続税がかからずに済みます。とはいえ、予め予想ができるものではないので、あくまでそういうケースもあるということです。

3.小規模宅地の特例

特定の不動産は評価額が下がる、というものです。まず、居住用の不動産では評価額が80%減るので、残りの20%が評価額になります。ただし土地の広さは330平米までなので、大きいほど得というわけではありません。とはいえ、普通の一軒家なら収まるくらいの広さでしょう。ちなみに、被相続人本人が住んでいる必要があるので、居住用の不動産を何軒も建てることはできません。家を相続させる人を決めておいて、その人の要望を優先して家を建て替えたりリフォームをするのはひとつの手でしょう。

また、貸付事業用宅地といって、投資用の物件を持っている場合、200平米までなら評価額は50%減ります。こちらは何軒も所持することが可能ですが、狭くて価値の高い物件ほど得になるので、都心のタワーマンションなどが該当します。そういえばよくドラマや漫画で、お金持ちの大学生が「おじいちゃんのマンション」と言ってタワーマンションに住んでいることってありますよね。

「相続」を「争続」にしないために、今やっておくべきこと

1.さまざまな先を見越した遺言書を遺しておく

今からできることでいえば、重要なことが他にもあります。最も重要なのは遺言書を遺しておくこと。遺言書は最も効力があるので、遺留分という法律でも侵せない部分以外は遺言書が優先されます。実はお金持ちは銀行や税理士など、たいてい専門家をつけているし、遺言状も書いているので争いになりにくいのだとか。

よく争いになるのは、相続人である兄弟同士の仲が良くてもその配偶者が「子供がいるのでうちはお金がかかる」など、横から口を出してくるケース。また、お金を譲ってほしいと言われた方も、そのときは独身で必要ないと思っていて承諾しても、後から結婚したり病気になったりして、譲ったことを後悔することもあります。また、土地と上に建てた建物で相続人が違うと、土地を持っている方が借金などをして差し押さえられたら、建物に住めなくなるということに。

よって遺言書は自分が書く時はもちろん、親に書いてもらう場合もさまざまな未来を想定しなくてはなりません。ただし、子供の立場から言うと角が立つので、第三者である専門家経由で伝えるといいでしょう。

2.遺産をきちんと把握しておく

プラスになる財産は知っていても、負債に関しては知らず、後から判明して困るということがあります。また、遺産が不動産ばかりの場合、簡単に売れないし、自分自身が居住している場合はなおさらのこと、すぐにお金に変えることができません。よって、相続税を払えるくらいの現金は用意しておく必要があります。

それに不動産は争いの元になりやすいもの。兄弟が相続したのが都会の土地なのに、自分は田舎にある物件や土地を相続するというケースが想定されます。特に畑や山は使い道が難しかったり、手入れが必要だったりします。相続しても田舎に帰って住む気がないなら、居住用として誰かに住んでもらうと課税額が下がるので、今の時代なら売るよりもAirBnBを利用するのはひとつの手かもしれません。

3.法の改正は要チェック

現在は相続税の基礎控除額は3000万円+600万円×法定相続人となっていますが、2014年12月までは5000万+1000万×法定相続人だったので、かなり引き下げられています。具体的に言うと法定相続人が3人の場合、8000万円が基礎控除額だったのが、4800万円になってしまいました。財務省の試算では課税対象になる人の割合が改正前の4.2%から6.2%に増えるとのこと。東京の中心部で物件を持っていたら、ほぼ相続税がかかりそうです。法律を知らないと、相続税がかからないつもりでいたのに、かかってしまって困ることになりえます。

また、「生前贈与」で住宅の購入について述べたように、年や消費税率によって控除額が変わるということが決まっている場合もあるので、国税庁のページは定期的にチェックした方がいいかもしれません。

4.相談できる専門家を身近に作り、誰に何を聞くべきかを知っておく

企業の場合は相談できる顧問の専門家がついているものですが、家庭だとそうはいきません。また、誰に相談すればいいかわからず、借入は銀行、保険は保険会社、住宅は不動産など、各専門家に各々聞きに行くしかないと思っている人が多いのだそう。しかし、めったに行かないこともあり、「一見さん」として見られてしまうので、知識のないままに勧められる通りに必要のないものまでお願いして、余計なお金を払っている人が少なくないとのこと。とはいえ、勉強のために時間はかけられないものです。

よって、何もわからなかったり、計画を立てたりしたい段階なら、まずファイナンシャル・プランナーに相談すること。ファイナンシャル・プランナーは「転ばぬ先の杖」的な存在です。他の分野すべてと関わりがあるので、全体を俯瞰して何をすべきかのアドバイスや、必要に応じて税理士や弁護士の紹介をしてくれます。また、途中で何か変更があった場合も、それに応じた提案をしてくれます。

弁護士は、実際に争いごとが起こってからが出番。つまり、相続が「争続」になってから。遺産協議の際、代理人として立ってもらいます。弁護士の手腕によって、手に入るお金の大きさが変わってきます。そして相続税対策など、ピンポイントでお金の相談をしたい場合は税理士の仕事となります。

病院だけではなく、税金にもセカンドオピニオンがある

ところで税理士には、セカンドオピニオンを専門とする方もいるそうです。相続税対策で税理士に相談するといっても、税理士の仕事は節税をすることではなく、相続税をきちんと納めさせること。遺産総額のボリュームによって手取り(報酬)が決まるので、税理士にとっては節税のために評価額を下げることを頑張ってもメリットはなく、むしろやりすぎると脱税幇助の恐れがあります。よって、あくまで「適切」なくらいで、依頼主が最も得をするギリギリのところまでやるわけではありません。

セカンドオピニオンを生業とする税理士は、チェックをもう一度かけて「ここに漏れがある」と気づく専門の税理士です。ただ、ファーストオピニオンを受けた上でないと依頼は受けられません。税金は払いすぎたらさかのぼって取り戻すことが可能ですが、初回にお願いした税理士に再度依頼をすることはできません。最初にきちんと仕事をやっていないことになってしまうからです。なので、疑問に思ったらほかの税理士に頼む必要があります。

では、何がセカンドオピニオンの焦点になるかというと、山林や農地などの大きな不動産です。不動産の価値なので、角地なのか、死に地なのか、どう道路が通っているのかなど、評価にぶれが生じやすい上、土地は測量が適当なことも珍しくないので、税理士は苦手な人が多いそう。この分野は不動産鑑定士が強いところなので、セカンドオピニオンを専門にしている税理士は、繋がりを持っているのだとか。不動産を相続しそうな人は、心にとめておくと役立つこともあるでしょう。


相続は、「まだ元気だから必要ない」「不幸なことは意識したくない」ということで、考えるのを後回しにしがちです。でも、いざ知識が必要になったときには、そんなに余裕はないものなので、今からできることをやってみてはいかがでしょうか。何より相続は、人生において最も大きなお金が動くとき。知っておくのと知らないのでは、大きく損得に差が出てしまいます。

年末は帰省シーズン。久しぶりに家族で集まる機会に話し合ってみるのもいいかもしれませんね。

money_twenties5

吉武 亮(よしたけ りょう)ファイナンシャル・プランナーブログ

明治大学出身。学生時代、約1000人を集める学生大運動会を企画する学生団体「SWITCH」を友人と創設。卒業後、上場保険代理店で新人賞、社長賞受賞後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。これまで約500人のライフプランニングを手掛ける。クライアントの資産設計をしながら、お金の貯め方・守り方・増やし方をアドバイスしている。出演ラジオ:Rainbow Town FM(79.2MHz)11Crystal

Image: beeboys / Shutterstock.com, ライフハッカー[日本版]編集部

Source: 国税庁

今井麻裕美

swiper-button-prev
swiper-button-next