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「起業」は一部の限られた人間のものではない。20年後に生き残るための「究極の働き方とマインド」とは?

「起業」は一部の限られた人間のものではない。20年後に生き残るための「究極の働き方とマインド」とは?
Photo: 印南敦史

技術やグローバル化の急速な変化によって、豊かさや自由、有意義な人生を手に入れるための成功法則は変わった。

過去100年に生じた社会的、技術的な無数の革新が積み重なり、今、「仕事の終わり(エンド・オブ・ジョブ)」の時代が到来しようとしている。同時に、企業はかつてないほど低リスクで、誰もが始められ、儲かりやすいものになった。(「はじめに」より)

アメリカで自費出版され、ベストセラー記録を打ち立てたという『THE END OF JOBS 僕たちの20年戦略』(テイラー・ピアソン著、児島 修訳、TAC出版)。その冒頭で、執筆当時26歳だったという著者はこのように主張しています。

いまは起業家という生き方、あるいは起業家的な働き方を選択することが、いい仕事を得るための明確な道筋になりつつあるのだとも。それは、「自由で有意義な人生を送りたい」という人間としての基本的欲求と、「儲かる仕事がしたい」という経済的な欲求を両立させられるチャンスが多いというのです。

そのような考え方を軸に、本書では「いま、世界で巻き起こっている新たな変化の波の実態」、そしてそのカギを握る成功法則を明らかにしているわけです。具体的には、「雇われが破たんする時代が到来した」と指摘したうえで、「起業家精神を持つ人だけが突出できる理由」「起業が楽になり、学歴がなくても富を手にできるという現実」などが明らかにされています。

紹介されているトピックスはそれぞれが興味深いのですが、きょうはそれらを飛び越え、「結論 僕たちがこれから20年後、生き残るための究極の働き方とマインド」に焦点を当ててみたいと思います。

絶対的な楽天主義者になる

我々は、ベンチャーキャピタリストのピーター・ティールが「あいまいな楽観主義」(ティールによれば、楽観=未来を待ち望む、悲観=未来を恐れる)と呼ぶ社会を生きている。著者はそういいます。そんななか、誰もが世の中に可能性やチャンスが広がっているのを感じているということ。だとすれば、それをつかむために行動しなければならないはずです。

ところが、多くの人が「いまよりもっと価値のある、大きななにかに向かって進むべきだ」という感覚を持っているにもかかわらず、実際にそれを行動に移している人はわずかしかいないというのが現実。将来に対して楽観的なのに、その楽観的な未来を体現するような行動を“自分が”とることには躊躇しているというのです。

そしてそれは、はっきりとした楽観主義の考え方を持っていた、アメリカのベビーブーマー世代とは明らかに違ったものだといいます。ベビーブーマーたちは、豊かさを、確実に手に入れられるものとみなし、つかみとったのだから。

ところが著者のいう“僕たち”は資本や機会、可能性をたっぷりと与えられていながら、確固とした将来に投資できていないということです。なにかできそうな気はしているものの、希望があるだけだと言えなくもないという状態。

そんな僕たちがいるのは、どんな場所なのか?

それは、人々が従来の仕事のパラダイムに安住し、義務としての仕事を信じることに慣らされている世界だ。雇用統計を国民の生産性の尺度だと見なしている場所だ。

僕たちはそこで、自分たちが世の中をコントロールできないからこそ、社会はよい方向に進み、企業は業績を伸ばすだろうと考えている。

“会社で従順に働くことが未来をつくる”という思い込みに、支配されているのだ。

(295ページより)

これまで起業が「一部の限られた人間のもの」と考えられていたのは、堅実に仕事をして入れば、ある程度豊かに暮らせるだけの収入が得られたから。しかし、未来を予測することが難しく、急激な変化が頻繁に起こる現代においては、世界の構造は変わったのだと認識すべきだというのが著者の考え方。

それは、いよいよ「仕事の終わり(エンド・オブ・ジョブズ)」に到達したということ。いわば親の世代に暗黙の了解とされてきた“長期の安定した雇用”は、もはや共同幻想になりつつあるということです。

しかしそんななか、多くのチャンスを目の前にしているのが起業家だといいます。さまざまな変化によって、以前では考えられないようなレベルの富や自由をつかみとることができるようになったというのです。(292ページより)

大変革時代の勝者は誰か?

「あなたは誰ですか」と尋ねられたとき、「本当の自分とは誰か」を突き詰めて考えようとする人は少ないもの。代わりに、所属先の組織を使って自分を定義しようとするというのです。自分は、親にとっての息子であり、弟にとっての兄であり、会社にとっての従業員である、という具合に。しかし、そうではないのが起業家。それは、所属先との関係を使って表せるものではないわけです。

過去数世紀の間に自由と富は拡大したものの、僕たちはいま、それとは比較にならないほど大きな変化を体験していると著者はいいます。民主主義が実現したことで、人々は選挙を通じて代表者を選べるようになり、企業経済が確立されたことで、物を買うにしても、働くにしても、選択肢は大幅に増えたということ。

そして、起業家精神を持つことによって、人々は人生を思い通りにデザインできるようになる。誰かに用意された選択肢を選ぶのではなく、自分で人生をデザインできる。(298ページより)

著者によれば、私たちは、生産・流通手段を信じられないほど簡単に手にできる初めての世代。たとえば、インターネットとテクノロジーがロングテールの力を顕在化させたため、現在では世界を相手にニッチ市場でビジネスが成り立つようになっています。大きな市場が小さな市場へと細分化されていくなか、多くのチャンスが生まれているわけです。それは、個人が生産手段や流通手段を手にできるようになり、それらを活用して自分自身で現実をデザインできるようになったということでもあるでしょう。

そしてこれからの時代、単純な仕事はどんどん減っていくだろうと著者は予測しています。働くことは、複雑ななにかに取り組むことを意味するようになるというのです。そうした新しいパラダイムに適応した人間ほど、リスクを避けやすくなっていくということ。だとすれば、そんな時代に生き抜いていけるのはどんな人でしょうか? つまりそれこそが、起業家精神を持って働く人たちだというわけです。

経済や社会構造の変化によって生じた「制約」に対処すること、それが、さらなるお金、自由、意味を求める人間の基本的欲求を満たすことと一致するようになる。そのことも覚えておいてほしいと著者はいいます。起業家精神の時代の制約とは、「起業家精神が足りないこと」にほかならないということ。(297ページより)

自分の手で人生を描き出そう

著者はここで、「この1週間に成し遂げたこと」を振り返ってみてほしいと求めています。おそらく、あまりたいしたことはしていないと感じるではないだろうかというのです。しかし、「この3年間で成し遂げたこと」を振り返ってみたとしたら、多くを達成してきたと感じるはず。

なぜなら人間には、短期間で成し遂げられるものを大きく見積もり、長期間で成し遂げられるものを小さく見積もる傾向があるから。

でも、メールの返事をしたり、フェイスブックで記事を読んだりする代わりに、毎日1時間を、以前から“挑戦したい”と思っていた計画に費やしてみたらどうだろう? 本を執筆する。段階的起業法(ステアステッピング)を実践するために、製品を1つ売り出してみる。働いてみたい会社の徒弟制度(アプレンティスシップ)に応募することを検討するーー年をとったときに、孫に自慢ができるビジネスを構築し始めるのだ。

3年後に振り返ったとき、特に重要ではないメールに返信することと、これらの計画に取り組んだことの、どちらが重要だったと思うだろう?

答えは明らかだ。(301ページより)

かくいう著者自身、3年前に目指していた目標を振り返ると、自分を過小評価していたことがよくわかるのだそうです。そして周囲にいるほとんどの人も、同じことを感じているのだとか。

しかし、それを人生というスパンに広げてみたらどうなるでしょうか? 3年間でできることを過小評価するのだから、30年間でできることをどれだけ低く見積もっているのかは察しがつくというわけです。

全員が同じ方向を目指してどこかに進むような時代は終わったのだと著者は断言します。これからは、ひとりひとりが自分で人生を描いていく時代だということ。

人類史上、人が心に描いた夢物語を実現するために、これほど大きな力を持ち得たことはなかった。あなたは今、未来をデザインするチャンスを手にしている。

それはあなたの未来であり、僕たちの未来だ。

(303ページより)

いまから50年後に人生を振り返ったとき、だれかに伝える価値があるのは、自分にしか語ることのできない、自分が描いた人生の物語になるはずーー。著者のこの言葉には、心を強く揺り動かすものがあるのではないでしょうか。(299ページより)




「この変化に抵抗するか、受け入れるかはあなた次第だ。行動するなら早いほうがいい」と著者は記しています。これほどのチャンスは、いつまでは続きはしないだろうから、というのがその理由。

もちろん「起業するか」「組織に属するか」は、必ずしも優劣をつけられるような問題ではありません。しかし、最終的にどちらを選択するにしても、“いま起こっていること”を理解しておくことは重要。そういう意味でも、読んでおきべき1冊だといえます。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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