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判断は「タイミング」が9割? 仕事ができる人のコミュニケーションの習慣

判断は「タイミング」が9割? 仕事ができる人のコミュニケーションの習慣
Photo: 印南敦史

仕事に質を求めれば、必然的に時間がかかってしまうもの。でもスピードを求めれば質が下がってしまうから、仕事の「質」と「スピード」を同時に上げることなど不可能…そう考えている方も、決して少なくないことでしょう。

しかし、そういう考え方が一般化していることを認めたうえで、あえて「仕事のスピードと質は、同時に上げることができます」と断言するのは、『仕事のスピードと質が同時に上がる33の習慣』(鳥原隆志著、SBクリエイティブ)の著者です。

限られた時間のなかで架空の人物になりきって案件を処理していく、「インバスケット・ゲーム」を提供する研修を行なっている人物。おもに管理職のビジネスパーソンを対象としているそうですが、その研修を通してのべ1万人のビジネスパーソンの行動データを分析した結果、「短時間で、かつ質の高い仕事をするビジネスパーソンの思考のメカニズム」を明らかにすることができたのだといいます。

そこで本書では、1万人中6%の人だけしか持っていなかったという「仕事が速くて、デキる人の思考」のメカニズムに基づく仕事の習慣を紹介しているわけです。きょうは第3章「コミュニケーションの習慣」から、いくつかを抜き出してみることにしましょう。

相手を説得するときは「理由は3つある」という

仕事において、もっとも時間と労力を使うものはコミュニケーション。コミュニケーション不足だと、「連携がうまくいかなかったせいで、ミスが起きた」などということになってしまいがちです。だからこそ相手との「合意形成」が必要とされるわけですが、そこで重要なのは、自分の意思を伝える際に「理由」も伝えることだと著者。逆にいえば、自分の意思だけを伝え、その背景を十分に伝えていないケースが多いということです。

著者はなにかを伝える際には、必ず理由に重点を置くのだといいます。しかも「理由は3つあります」と、理由を強調するのだそうです、そうすれば「理由が3つもあるのか」と思ってもらえ、納得してもらえる確率を高めることができるから。

理由は、1つではダメです。簡単にその理由に反論できるからです。

ところが、理由を3つ出されると、相手が受け入れる確率は格段に高くなります。

なぜなら、多くの人は、反論をするより納得するほうが楽になるからです。

大事なのは、理由の質よりも、これだけ理由があると相手に印象づけることです。

人は理論よりも感情で納得します。

だから無理にでも3つ理由をつけるのです。

(120ページより)

また相手を説得しやすいだけではなく、自分自身の意思決定にも自信をつけ、意思決定の質を上げる効果もあるのだとか。「なんとなくこの仕事から始めた」など、「なんとなく」で決めていることは意外に多いものですが、「なんとなく」をなくすためにも、3つの理由を考える癖が身についていたほうがいいということ。3つの理由をつくると、相手が納得しやすくなるだけでなく、自分自身の意思決定の質を上げることもできるというわけです。(118ページより)

判断は「タイミング」が9割

著者の分析結果によると、判断を誤りやすい人の共通点は判断する方法でも性格でもなく、「タイミング」。すぐにしなければならない判断を先延ばしして失敗したケースもあれば、いま判断しなくてもいいのに、早急な判断をして失敗したケースもあるということです。

それを知っているからこそ、著者は採用、部下からの企画申請やトラブル対処、商品開発戦略などを判断するときは、「どのように判断するか?」の前に、「いま、判断すべきか?」と考えるようにしているといいます。判断のタイミングを重視すると、多くのことが「いま決めなくてもいい」ということに気づくというのです。

大切なのは、「判断をしなければならないこと」と「そうでないこと」を分けること。そして、「いまするべきなのか」「あとでもいいのか」を考える習慣をつけること。こうした習慣を続けていると、判断する回数が激減するのだそうです。

見逃すべきでないのは、私たちが思っている以上に、仕事において「判断しなくていいこと」はたくさんあるという事実。そして数を絞ることで、ひとつひとつの判断が正確になり、スピードアップしていくもの。

また、時間を置きすぎるとチャンスを逃すというリスクも生じるので、判断のタイミングを計ることはとても重要。それは、「いますぐ判断することによるリスク」と「あとで判断することによるリスク」を比較して決めるということだといいます。そのため必然的に「判断のリスク」を常に考えるようになるわけです。そんな習慣を持つと、タイミングを計れるばかりか、「自分の判断のリスクはなにか」を考えられるようになり、仮に判断が間違っていたとしてもリカバリーできるのだといいます。(124ページより)

会議では「なにを伝えないか」を決める

会議に臨む際は、「なにを伝えないか」を決めることが大切。会議は多くの人に多くのことを一度に伝えられる場所。そのため、「限られた時間のなかでいかに多くのことを伝えて共有できるか」と考えてしまいがちですが、聞き手の立場に立ってみると、それが大きな誤解であることがわかるというのです。

たとえば、会議で7つの連絡事項を伝えなければならないとしましょう。その際に大切なのは、7つをそのまま伝えるのではなく、3つに絞って伝えること。あとの4つは、あえて伝えないということです。理由は、会議で多くの情報を部下に与えると、すべて理解できずに消化不良を起こすから。

7つ伝えると、何ひとつ理解できない状態になりがちです。

ところが3つに絞ると、3つとも理解してくれるのです。

「大事なことを理解してもらうために、伝えないものを決める」

これが伝達の優先順位です。

(136ページより)

なお、伝えるだけでなく、指示を出す際も同じなのだそうです。多くの支持を一度に出すと、受ける側は「ちょっと待ってよ。そんなにたくさん言われてもわけがわからないよ」と感じてしまうもの、そこで、理解して確実に実行できるように、出す指示も3つまでにするということ。

人間の脳は、多くの情報を「聞く」ことはできても、すべてを「理解」することはできません。そこで、重要な部分に絞って伝えることで、伝達ミスをなくすべきだという考え方です。(135ページより)

伝達率50%の原則

コミュニケーションをとるうえで、著者が強く意識しているのは「自分が思っている半分しか相手には伝わっていない」ということだそうです。そのため、「これくらいで伝わるだろう」とは決して思わず、「まだ伝わっていないのではないか?」と考えるようにしているというのです。

自分自身のコミュニケーション上の失敗を分析した結果、その多くが「伝わっていない」ことに起因し、さらに、自分が「十分に伝わっている」と過信することが本質的な原因だとわかったのだとか。そのため部下には「念のため」という言葉を使い、伝えたかった内容の意図を確認しているのだそうです。

特に、方向性を間違って理解されると、会社全体の活動にまで影響が及びかねません。そこで方向性を伝えるときには、「○○さんは、私の話についてどう思う?」というように、部下に質問を交えながら伝えるようにしているのだといいます。そうすれば、相手にどのように伝わっているかが確認できるわけです。

本当の意思疎通とは、指示という名の一方的な情報発信ではありません。その指示についてお互いが同じ意識を持っていることが大事なのです。

本来であれば、伝わっているだろうと思えるようなことにまで、いちいち確認しようとすると、時間がかかって一見、無駄のようにも見えます。

しかし、意思疎通がうまくいっていないと、目をつむって両手の人差し指をくっつけるのが難しいように、うまくかみ合いません。

お互い同じ考えを持ち、理解していることで、チームとしてより早く、より質の高いアウトプットを出せるのです。

(156ページより)

この習慣がない人は、なにかトラブルが発生したとき、「自分は指示をした」「どうして指示どおりにしなかったのだ」と部下や周囲に自分の正当性を主張するもの、相手が自分の言っていることを理解してくれないと、嘆いたりすることも。一方、この習慣がある人は話が上手だといいます。質問をうまくはさみながら確認するため、部下や周囲も動きやすく、アウトプットも間違いがないというのです。

「コミュニケーションが悪い」とひとことで片づけるのではなく、思い込みによる意思疎通を改善することが大切なのだと著者は主張します。そうすることが、お互いにとって仕事の質とスピードを上げる方法なのだという考え方。だからこそ、「相手に確認する」という行動は、優先順位が高い大事なプロセスだと考えているのだそうです。(155ページより)




「仕事を始める前の習慣」「仕事の進め方の習慣」「コミュニケーションの習慣」「時間管理の習慣」とテーマごとに分けられた33種の習慣は、すぐに取り入れられるものばかり。これらを習慣化すれば、仕事のパフォーマンスを上げることができそうです。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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