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スポーツ特集─やる、観る、ハックする

アスリートのメンタルをポジティブに変える「モチベーションビデオ」のつくり方

アスリートのメンタルをポジティブに変える「モチベーションビデオ」のつくり方
Photo: Jordan Mansfield/Getty Images Europe

スポーツはスキルだけではなく、メンタルも重要な役割を占めています。

たとえば、試合直前、ロッカールームで選手とチームスタッフが円陣を組んで「よし、行くぞ!」とモチベーションを一気に高めている姿が好例かもしれません。

でも実は、テレビ中継には映らない、日々のトレーニングの一環として、選手やチームをメンタル面でサポートし、試合でハイパフォーマンスを引き出すために「MV=モチベーションビデオ」が活用されているそうです。

そこで、国立スポーツ科学センタースポーツ科学部研究員として事業を推進する傍ら、メンタルトレーニング指導士の立場から、世界的にも希有なモチベーションビデオの心理的効果を研究し、日本テニス協会ナショナルチーム強化スタッフとしてモチベーションビデオを作成・提供している永尾雄一さんに、モチベーションビデの目的と役割、つくり方について聞いてみました。

永尾雄一(ながお・ゆういち)

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国立スポーツ科学センタースポーツ科学部研究員。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士。大学在学中よりメンタルトレーニングのサポートスタッフとして活動。同時にモチベーションビデオの作成もスタートし、現在まで19年間作成を継続している。現在は日本テニス協会ナショナルチーム強化スタッフとしてもモチベーションビデオの作成提供を行っている。

モチベーションビデオは、伝えたい人に心に響けばそれでいい?

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Photo: ヨコヤマコム

—— 最初から失礼な質問ですが、好きなアーティストのプロモーションビデオや気になる映画の予告編を見ると、気分が上がったり、観に行きたいと思ったり、心理的にモチベートされますが、永尾さんが制作するモチベーションビデオとの違いはなんですか?

永尾氏:大きな違いは、映像をつくる目的です。プロモーションビデオや映画の予告編は、アーティストや映画を知らない人でも興味や関心を高めて魅力的に映るように構成されています。しかし、モチベーションビデオは、そのビデオを見るチームや選手を心理的にポジティブな状態に変えるのが目的なので、ほかの人が見て「なにを伝えたいのかわからない」と理解できなくてもよいわけです。

また、モチベーションビデオをつくる意味合いや目的も、チームや選手がおかれている状況、個人の性格などによって変わります。わかりやすく言えば、同じ叱咤激励でも、強く押して欲しい人もいれば、少しだけ後押しして欲しい人もいます。背中をポンと押して欲しい人に、強く押してしまう、逆にモチベーションが下がってしまう場合もあるわけです。

チーム力を高めたいのか、国を代表して戦う気持ちを奮い立たせたいのか、諦めずに最後まで戦う意志を強く持たせたいなど、モチベートしたい方向性を心理学的に見立てて、映像や音楽、テロップ(画面上の文字)の使い方をどのくらいのさじ加減にするのが適切なのか。モチベーションビデオをつくる上で、一番難しい部分ですね。

デビスカップで戦う日本代表に見せた、モチベーションビデオの舞台裏

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2016年のテニス国別対抗戦「デビスカップ」のイギリス戦を前に「信じる」をテーマに制作したモチベーションビデオ。
Photo: ヨコヤマコム

—— 日本テニス協会ナショナルチーム強化スタッフとして、デビスカップで戦うためのモチベーションビデオを制作されていますが、どのような手順でつくっているんですか?

永尾氏:現在のモチベーションビデオを作成するスタンスは、監督やコーチが選手たちに伝えたいことを「補強する道具」としているので、まず、監督と打合せをして方向性を定めます。その上で、自分の頭の中で絵コンテを描いていきます。

これまでの大会で、選手の入場シーンや試合の映像、応援してくれる人たちの表情、大会を支えるチケットのもぎりの人など、いろいろな場面を撮影しています。そうした映像を目的に合わせて使ってみたり、まったく別のスポーツの素材をつないでみたり、試行錯誤しながら1つの映像にまとめていきます。

また、ファッションのTPOではありませんが、モチベーションビデオを見るタイミング、場所、場合によっての見せ方も大事になります。伝えたいメッセージをできるだけ100%に近い状態で選手の心に届けられるように、廊下を歩く音や外から人の声が聞こえてこない場所で行なうことは当たり前ですが、落ち着いて集中できる環境づくりにもこだわります。

たとえば、選手がリラックスして座れる場所、映像の狙いがわかるキーワードを交えた監督の事前説明、部屋を暗くするタイミング、見終わった後の監督からのメッセージ。一連の流れを演出できるように、事前に監督と打合せをしてアドバイスを行なうこともあります。

モチベーションビデオは、使い方次第で諸刃の剣にもなる

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Photo: ヨコヤマコム

—— モチベーションビデオを含めたメンタルトレーニングは、地域や学生レベルでも盛んに行なわれるようになりました。しかし、先ほどの話で、つくり方や使い方次第で逆効果になるケースもあるそうですが、具体的には?

永尾氏:学生時代、サッカー部に所属していて、チーム一丸となって戦おうと、ありがちですが、先発する選手の映像をまとめたモチベーションビデオをつくりました。そのビデオでは、今までレギュラーになったことがない選手が1人いたので、ユニフォームを着た映像素材がなく、ビブス(練習用の胸当て)を着ている姿の映像を入れてしまいました。

試合前にチーム全員で見たんですが、試合後に、ビブスを着た自分の映像を見た選手から「自分だけユニフォーム姿ではなく、見たときは凹んだよ」と言われました。志気を高めるはずのモチベーションビデオが、1人の選手にとってはマイナスに作用してしまったわけです。

映像は印象に残りやすく、心理的な影響力がすごく大きいものです。選手を鼓舞するよい道具にもなれば、選手を潰してしまうほどの危険性もあります。単に、ベストプレー集を見れば志気が上がるわけではありません。この点だけは、スポーツを指導する方々に知っておいて欲しいですね。

もしかしたら、モチベーションビデオをつくるより、選手たちと濃密なコミュニケーションをとった方が目的を果たせるかもしれません。現状の課題と克服すべきポイント、その先に求めるものを明確にして、現在地からゴールへ進むために、モチベーションビデオが効果的なのかを考えるべきです。

言い換えれば、モチベーションビデオに決まったスタイルはありません。音楽がなくても、たった1枚の写真を見るだけでモチベートされれば、モチベーションビデオと同じ影響を与えることができます。

カタチにこだわるのではなく、つくりかたにこだわるのではなく、あくまでも1つの手法、チームをモチベートするための道具として活用してもらいたいですね。

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香川博人

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