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起業に必要な3つの要素とは? 「0 to 100」の成長段階(フェーズ)という考え方

起業に必要な3つの要素とは? 「0 to 100」の成長段階(フェーズ)という考え方
Photo: 印南敦史

0 to 100 会社を育てる戦略地図』(山口豪志著、ポプラ社)の著者は、2006年にクックパッド株式会社のインターンシップに参加し、営業やマーケティングの仕事に携わったという人物。その後、2012年に日本最大級のクラウドソーシング事業会社である株式会社リート(現・ランサーズ株式会社)に入社。さまざまな仕事を経験したのち、2015年に株式会社54(ゴウヨン)を設立。上場企業の新規事業開発、創業したての会社のコンサルタントなど、複数の企業で事業づくりのサポートをしているそうです。

経験を重ねるなかで、会社の形や事業の形態が異なっても、新しい事業を興し、それを大きくしていく過程には共通の原理原則があるということに気づいたのだとか。そして、すでに自分のコンサルティングの仕事にも活かしているそれらの原理原則をまとめれば、もっと多くの人に「どういったところでつまずきやすいのか」「成長企業はそれをどうやって乗り越えたのか」「自分たちはいま、なにをすべきか」といったことを示すことができるのではないかと考え、本書を執筆することにしたというのです。

「0 to 100(ゼロ・トゥ・ヒャク)」

本書のタイトルにあるこの数字は、会社の成長段階(フェイズ)を表しているもの。会社の成長に当てはまる原理原則は、いうまでもなく一定ではありません。同じ会社でも、創業し手間もない段階と、ある程度大きな規模になった段階とでは、すべきことが変わってくるというわけです。そこで本書では、<0>から<100>までの成長段階を、

<→0>(ゼロマエ)

<0→1>(ゼロイチ)

<1→10>(イチジュウ)

<10→30>(ジュウサンジュウ)

<30→50>(サンジュウゴジュウ)

<50→100>(ゴジュウヒャク)

と6つのフェイズに分けているというのです。ここでは「<→0>起業前夜」を見てみることにしましょう。

周りを巻き込む「テーマ」を掲げる

大小問わず、会社には「創業期」があります。「生まれたときから大企業」だということはなく、あらゆる会社はゼロからスタートしているということ。なにもないところから新しいなにかを創り出すことを、著者はビジネスの場面において<0→1>(ゼロイチ)と呼んでいるそうですが、<0>に前段階があることは意外に知られていないものだと指摘しています。

つまり、創業100年の会社はぴったり100年前に生まれたわけでなく、その前段階で創業者たちが想いとアイデアを練り上げ、周囲の共感を獲得するという、泥くさいまでの構想期間があるのです。本書ではその段階を<→ゼロマエ>と定義します。(34ページより)

歴史ある会社でさえ、創業者の「この不便を解消したい」「社会がこうなったらいいのに」という想いと、「こうすれば解決できるかも!」というアイデアからスタートしているということ。

いまも昔も、創業者たちは「想い」と「アイデア」を現実の形にできるかを熟慮した結果、「これならいけるぞ!」という確信を軸に、情熱的に行動を起こしているもの。そして自分なりの「テーマ(事業の目的)」を掲げつつ、新たな事業を生み出すために奔走し、周りに「共感」を呼びかけていくというわけです。

もちろん最初のうちは想いだけが先走ってしまったり、あるいは説明が拙かったりして、自分の想いやアイデアが周囲に理解されないこともあり得ます。しかしそれでも、「わかってもらえないかもしれない」という不安に駆られつつも日々情報収集をし、関係各所をたずねまわり、自分の頭のなかにある「事業のタネ」をなんとか形にしようと改良改善を積み重ねていく。

すると、その過程でひとり、またひとりと共感し、応援してくれる「仲間」が現れるようになってくるもの。その結果、本人のなかにしかなかった事業の構想が、一枚の企画書やひとつの試作品として形になっていくというわけです。

共感するテーマを掲げ、そのアイデアを形にしてみる。そこまでたどり着いてやっと、事業づくりのスタート地点である<0>に立つことができるのだと著者は主張します。なお、斬新なアイデアを思いつくことが「ゼロイチ」だと勘違いしている人がいるものの、それでは「ゼロ未満」なのだとか。想いと共感がないまま、アイデアだけで先に進もうとしても、うまくいかないということ。

だからこそ、どうすれば「共感されるテーマ」を掲げることができるのか、それをどのように形にしていけばいいのか、そもそもなぜ「共感」が必要なのか。これらのポイントを押さえておくことが大切だという考え方です。(34ページより)

事業にかける「想い」は本物か?

事業は「想い」「アイデア」からはじまるもの。そして事業の目的である「テーマ」には、これに加えて「共感」が必要なのだと著者はいいます。そのため、テーマを設定する際には、この3つの要素を満たしているかどうかを確認する必要があるというのです。

まずは「想い」。事業を進めるにあたっては、強い想いと納得感を持っておくことが大切だということです。そこを曖昧にしたままだと、「自分がなにをやるべきか」「本当にこれをやるべきか」と、つまずくたびに悩んでしまうことになるわけです。そこで、そうした場合は、一度自らの思いを掘り下げてみる必要があるそうです。

そこで役立つのが、その人固有の思考や想いを形成する際に大きな影響を与えた「原体験」。それは、「その人が事業を興す明確な理由」になるというのです。そして、その原体験が他人に共感されるかどうかがとても重要だという考え方。

強烈な原体験を持っている人ほど、テーマにかける想いも強まります。そして想いが原体験に紐づけば紐づくほど、テーマに対する自分自身の納得感も高まり、荒波の中でも迷いなく突き進むことができます。(40ページより)

強い想いを持つことが、起業の大前提だということです。(38ページより)

その想いに「アイデア」をかけ合わせてみたか?

意外な気もしますが、誰もが知る人気の炭酸飲料「コカ・コーラ」は、いまから100年近く前の1920年に日本での販売が開始されていたのだそうです。高村光太郎の詩集や芥川龍之介の書いた手紙にも「コカコオラ」「コカコラ」といった記述が見られるということからも、注目されていたことが想像できます。ところが、当時は広く浸透しなかったのだといいます。輸入品で値段も高く、庶民にとっては贅沢品だったということ。

ここからも、わかることがあります。「想い」が大切であることに変わりはないものの、それを形にするためには「アイデア」をかけ合わせる必要があるということです。コカ・コーラを安く提供したいという「想い」の場合は、「輸入ではなく、国内で生産する」「そのための権利を獲得する」「輸送費を下げるため工場を全国各地に建てる」といったアイデアを加えることが考えられるでしょう。

そうすることで、「目的を達成するためになにをすべきか」といったことが明確になるということ。強い想いに具体的なアイデアがかけ合わさることで、テーマの強度が増していくというわけです。(38ページより)

そのアイデアは「周囲の共感」を得られているか?

アイデアが出てきたとき、それがどれほど「周囲の共感」を得られるかも重要。むしろ「共感」がなければ、事業としての成功はあり得ないとすら著者はいいます。上記の例でいえば、「輸送費を下げるため工場を全国各地に建てる」というアイデアによって、消費者の共感を得られるとは限らないということです。

「工場によって味が変わっちゃうんじゃないの?」と思う人だっているはず。しかし、「コカ・コーラの原液だけは一カ所の工場でつくるようにして、最終製品は原液を取り寄せた全国各地の工場で行うようにする」といった説明を準備しておくと、消費者も「なるほど。それなら全国どこでも同じコカ・コーラが飲めるね」と共感しやすくなります。

事実、現在コカ・コーラの原液は、国内では滋賀県にある日本コカ・コーラの工場でのみ製造され、それが全国各地のボトリング会社(製品の製造、販売をする会社)の工場に送られているのだそうです。

このように、共感があってはじめて、想いもアイデアもお金をいただくに値する「事業の種」になるということです。(43ページより)


多くの事業の立ち上げに関わってきたという著者は、そこで科学的アプローチを用いたのだそうです。つまり、仮説を立てて検証し、再現性のある法則を見つけ出すこと。雑多に見える出来事のなかから一定の法則や普遍的な形式(原理原則)を見つけ出せれば、再現性が生まれるはずだということです。そんな観点を軸にした本書は、特に起業を目指す方にとっては、大きな意味を持つものとなることでしょう。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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