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脳の不調を解消するために、デジタルの世界から少し離れる3つのプラン

脳の不調を解消するために、デジタルの世界から少し離れる3つのプラン
Photo: 印南敦史

脳が冴える最高の習慣術〜3週間で集中力と記憶力を取り戻す』(マイク・ダウ著、坂東智子訳、大和書房)の著者は、本書の内容について次のように記しています。

この本は、あなたが脳をもっと大事にして、「不安」「うつ」「注意散漫」「ブレイン・フォグ(脳に霧がかかったようになって、思考力が働くなること)」などを解消するためのものだ。こうした問題に、じつに多くの人が悩まされている。

さらに、この本では、あなたの人生を、もっと楽で、幸せで、充実したものにする簡単な方法も紹介する。あなたの「脳」と「人生」は、おおいに関係がある。脳が不調なら、あなたの残りの人生も不調に陥る可能性が高いのだ。(「はじめに」より)

ところが著者自身、もう10年も認知行動療法(認知のしかた——考え方や感じ方——を修正する心理療法)のセラピストをしているにもかかわらず、自分が勧めている手法を実行しなかったせいで、しばらくうつ状態に陥ることがいまだにあるのだそうです。しかしそんなことを繰り返していくなか、「つらい時期は嵐と同じで、必ず過ぎる」ということを学んだのだといいます。そして、さらにはこうも主張するのです。

あなたに朗報を1つ。あなたの内面の「蓄え」を強化することは、あなたが想像するほど難しいことではない。続けるのが難しいような方法で、あなたの生活の1つの面を徹底的に改善するのではなく、まずは達成可能な方法で、生活の色々な面を少しずつ修正しよう。(「はじめに」より)

そんな考え方が軸になっているだけに、「修正のための方法」を紹介した本書では、「食べもの」や「孤独感」までのさまざまなことがらに触れています。きょうは第3部「あなたの脳を汚している『意外なもの』とは?」の第11章「電子機器をオフにしてみては?」に注目したいと思います。

スマホやパソコンには中毒性がある

スマホやパソコンに多少なりとも中毒性がありそうだということには、多くの人が気づいているはず。だからこそ、スマホの着信通知をオフにするとか、フェイスブックへのアクセスを1時間遮断するといったことには、相応の効果があると著者はいいます。そうした小さな修正を加えることは有意義で、やってみるだけの価値があるというのです。

なぜなら、電子機器に気を取られていたら、「しまった!」と思うだけではなく、死亡事故につながる恐れすらあるから。事実、アメリカでは2005年から2010年までの6年間で、「ながら運転」のドライバーにひかれて死亡した歩行者の数が50%増加したのだそうです。

そして、いまでは「ながら歩き」までもが問題視されることに。理由は明白で、「ながら歩き」をしている人たちは、スマホ画面に集中するあまり、道路を遮断する前に左右を確認することさえ怠るから。

スマホやパソコンのことで、1つ知っておいて欲しいことがある。私たちが新しい情報を読もうとして画面をスクロールしているときの、チカチカするライトや通知音、広告のすべてが、脳内のドーパミンの量を少しばかり増やしているのだ。(182ページより)

そのことについて著者は、「病みつきのギャンブラーが、スロットマシンの前に座っているときに、脳内のドーパミンが増えるのと変わりはない」と記しています、フェイスブックの「いいね!」やツイッターのリツイート、インスタグラムのフォロワーなどが、中毒を引き起こす力を発揮するようになっているということ。しかし、どう考えてもそれは健全な状態ではないわけです。(181ページより)

マルチタスクマニアの幻想を正す

テレビを見ながら、インターネットでウェブサイトを見て回っているというような人は少なくないはず。私たちは息抜きの時間にさえ、「ながら作業」をしているということです。しかし「マルチタスク」と呼ばれているものも、実際には、ごく短時間のシングルタスクの繰り返しだということが、2009年に行われた実験で明らかになっているのだそうです。

その実験では、被験者たちが2つのタスクを同時に処理する訓練を受けた。すると被験者たちは、実際に処理スピードが上がった。だから、彼らは「マルチタスク」が上手になったように見えた。ところが、彼らの脳をスキャンして見たら、マルチタスクをしているように見えて入るが、実際には2つのタスクの切り替えがあまりにも速いために、2つのタスクを同時におこなっているという錯覚が生まれていることが判明した。(183ページより)


マルチタスクをしているときの脳は、つめ込み過ぎの状態になり、関係のない情報をふるい分けられないことも、実験で確認されている。被験者たちは、1つのタスクに集中し、それを終わらせ、次のタスクに移ったときのほうが、効率が上がったという。タスクを切り替えることの負担が、効率を40%低下させたこともあったそうだ。ちょっと想像してみてほしい。もしあなたの効率が40%上がったら、どれだけ時間が浮くことになるだろう?(184ページより)

だからこそ、もし集中できないのであれば、「マインドフルネス」の手法をいくつか試してマルチタスクを減らし、効率を上げることを目指そうと著者は提案しています。マインドフルネス(一度にひとつのことを行い、自分がいま行っていることに注意を傾けること)は、私たちのところに昼も夜もやってくる大量の「気を散らすもの」への強力な防御手段になるというのです。

他には、「瞑想」も集中力の改善に効果があるのだとか、しかも、あまり手間を書けずに大きな効果が得られる可能性があるのだといいます。実験では、被験者たちが20分の瞑想を5日続けて行っただけで、注意力が改善し、倦怠感や不安が和らいでいるのだそうです。(183ページより)

デジタルの世界から少し離れる3プラン

著者は、デジタルの世界から少し離れてみることを提案しています。ただし、そうはいってもそれが簡単なことではないのも事実。最初のうちは、極端な手段が必要かもしれないというわけです。そこでこの項では、「最初の一歩」として効果的な手段がいくつか紹介されています。

1. インターネットをブロックするアプリケーションを入手する

mindfulbrowsing.comの「Mindful Browsing(マインドフル・ブラウジング)」のような、インターネットをブロックするアプリを使えば、時間を無駄にしかねないウェブサイトをブロックすることができるといいます。本気で取り組みたい人のためには、自分が選択したウェブサイトを一定時間ブロックし、パソコンを再起動してもそのサイトに入れないselfcontrolapp.comの「SelfControl(セルフコントロール)」(マックユーザー用)なども。

仕事に集中できるように、こうしたアプリ(いずれも英語サイトですが)を使ってみるという発想。最初は、数分間のブロックから始めてみるといいそうです。(188ページより)

2. スマホを離れたところに置こう

仕事中は常にスマホの電源を切っておくか、着信通知をオフにしておこうということ。充電器は、寝室から、キッチンやリビングルームに移すべき。そうすれば、寝る前にいつまでもスマホをチェックすることを避けられるわけです。

そして、プッシュ通知もブロックすること。そうすれば、大事なメールや電話の最中に、ツイートやインスタグラムの写真への「いいね」や、ニュースレターにいちいち気をとられることがなくなるから。そして車に乗るときは、スマホをトランクに放り込むか、着信通知をオフに。さらに週末は、丸1日スマホなしで過ごしてみるのもいいかもしれません。(188ページより)

3. 「マインドフルな状態」を増やそう

「マインドフルネス」の手法を見つけたり、「瞑想法」を取り入れたり、気を散らすデジタル機器のしようを減らしたりすることで、生産性や創造力を高められる可能性があるといいます。

デジタル機器に注意を向けなくなったら、「空想にふける」といった普通の行為が、マインドフルな行為に変わるということ。そうなったら、空想中に新しいアイデアで遊んだり、将来の計画を立てたりすることもできるというわけです。(189ページより)


脳についての考え方を記した書籍は少なくありませんが、そんななかにあっても本書は特徴的。ライフスタイルの改善なども視野に収められているため、とても実用的なのです。リラックスして読み進めてみれば、なんらかの気づきを得ることができるかもしれません。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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