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ランチ特集─ランチを制するものは、ビジネスを制する

働くオトナの昼飯をひたすら紹介する『サラメシ』は、なぜ人気番組となったのか? プロデューサーに制作の舞台裏を聞いた

働くオトナの昼飯をひたすら紹介する『サラメシ』は、なぜ人気番組となったのか? プロデューサーに制作の舞台裏を聞いた
image: 『サラメシ』

ライフハッカーがお届けする「ランチ特集」。みなさま楽しんでいただけていますでしょうか。今回は、NHK総合火曜日午後8時15分から放送されている『サラメシ』のプロデューサー、大橋浩介さんにお話を伺いました。

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image: 『サラメシ』ホームページ

『サラメシ』とは「サラリーマンの昼飯」のこと。 街頭でサラリーマンの方々にインタビューをしてランチについて尋ねたり、時には一緒にお昼ご飯を食べに行ったり、さまざまなコーナーで構成されるオムニバス形式の番組です。

ナレーションは俳優の中井貴一さんが担当。ユーモアあふれるナレーションも番組の人気要素のひとつです。ランチを扱ってはいますが、いわゆるグルメ番組とは異なり、ランチを食べる「人」にフォーカスしたヒューマンドキュメンタリーといった色合いが濃いのが特徴。

ランチを通して、働く人たちの生活や想いを描く番組なのです。大橋さんは、どのような想いでこの『サラメシ』を作っているのでしょうか?

ランチを口実にさまざまな場所に行ける画期的な番組

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『サラメシ』プロデューサー・大橋浩介(おおはし・こうすけ)さん
Photo: 三浦一紀

── そもそも、ランチに焦点を当てた番組を作ろうと思ったきっかけとは?

私は3年前にこの番組のプロデューサーになったので、立ち上げ当時のことは前任者から聞いたことになるのですが、そのプロデューサー曰く「働いている人は、だいたい1日1食は外で食べることになる。それはある種人生の大きな一部分なのに、そこをちゃんと見せる番組がなかった。働くことと食事を結びつけることによって、新しい切り口になるのでは」と思ったのがきっかけのようです。

僕が考えるこの番組のいいところは、「お昼ご飯を見せてもらえませんか?」と言えば、割とどんなところにも取材に行けるというところです。普段足を踏み入れられないような場所にも、お昼ご飯見せてくださいと言えば、入っていけるんです。これは結構画期的だなと(笑)。

──お昼ご飯も楽しみですが、普段見ることができない職場をちょっとのぞき見している感じがおもしろいですよね。

世の中にはいろいろな職業があって、知らない世界というのはたくさんあります。ただ、それらをリアルに知る機会というのは少ない。事故や事件があれば知ることはあるかもしれませんが、普通の人たちが普段どんな職場でどういう感じで働いているのかというのは知られていません。そこにお昼ご飯を口実に入っていくと、すごくおもしろい話があったりしますね。

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シーズン6第12回では、青森の「ねぶた師」のご一家が登場。
image: 『サラメシ』
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image: 『サラメシ』

── ねぶた師や競馬騎手の勝負服のテイラーさんなど、これまでも珍しい職業の方が登場していますが、そういった方々はどうやって探してくるのですか?

ひとつは、ディレクターがおもしろいと感じたものや、そのときにニュースになっているものとか、見てみたいと思うものを探してくる。もうひとつは投稿ですね。視聴者の方がホームページを通じて投稿してくださいます。それが僕らにとっては宝物なんです。地元のちょっといい話とか、こんなことをやっているんだというのは、投稿がなければ知ることはできません。視聴者の方に感謝しています。

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サラメシのウェブサイトでは、「みんなのサラメシ」という投稿コーナーが観られる。

「飯を食う」ときは一人の人間

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Photo: 三浦一紀

── 番組の作りとして、バラエティというよりはドキュメンタリーに近いという印象があります。

その意識はあります。テレビですので、視聴者の方に楽しんでいただくということはもちろんですが、基本はリアルにドキュメントしていくということを愚直にやっています。お昼ご飯にこだわれば、必ず何かが出てくるに違いないと信じながら、ずっとやってきている感じですね。たとえば、街頭インタビューで許可をいただいた方と一緒にお昼ご飯を食べるいう「さし飯」というコーナーがあります。

これは基本的に若いディレクターが担当するのですが、年配の方とさし飯をするときには、その方の仕事のやり方を盗んだり、人生の先輩ということで自分の悩みを相談しちゃうということもありますね(笑)。その答えがすごく含蓄のある言葉だったりすることもあります。若い人とさし飯をする場合は、初対面ではあるんですけど、その人のパッションみたいなものが感じられたり。前向きなことだけじゃなく、ちょっとした悩みや共感できることが浮き彫りになったりしますね。

── 番組を見ていると、全体的に優しさに包まれている感じがします。そこは何か秘訣があるのですか?

秘訣というのはないかもしれませんが、どんな仕事をしている人も、「飯を食う」ときは一人の人間になって、共感できるところや悩んでいること、いろいろなわかり合える部分が見えてくる気がするんです。自分の知らない仕事をしている人を我々が紹介することで、いろいろな職業の人たちをゆるやかにつないでいく

そんな役割を担えたらいいなと思っているんですけど。お互いのことをちゃんとわかり合えるように伝えたいという意識はあります。 ランチを食べないと腹がへるように、『サラメシ』という番組が、見ないと腹がへる週に一度の「ランチ」になればすごくありがたいなと思います。

ランチは社員のコミュニケーションツールでもある

── 社食やまかない飯などもご紹介されていて、おもしろく拝見させていただいています。

先日、大手出版社を取材(「シーズン7 第16回」)したのですが、そこの社食はメニューがひとつだけなんです。そのメニューがすごく遊び心にあふれていて。毎日違うんですけど、たとえば「のりのり丼」というメニューの日がありました。どんぶり飯に海苔が載っているんですが、エビフライや野菜炒め、焼きそばなどの副食が8種類用意されています。それをどんぶりだけではなく、どんぶりを運ぶ銀色のトレーにも載せていいというルールなんですよね。

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image: 『サラメシ』
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image: 『サラメシ』

トレーに目一杯副食を載せている男性はもちろん、女性でも結構がっつり食べている方もいました。 聞けば校閲担当の方で 、「頭を使う仕事はおなかが減る」とおっしゃっていました。また、ある女性社員は「野菜が少ない」と苦言を呈していたら、違う女性社員が「そんなことを言うのは邪道だと思います」と断言していました。

このランチは、今日は何が出てくるんだろうというわくわく感や、これでもか!という驚きが、みなさんの楽しみになっているんですね。作っているほうも、楽しいんじゃないでしょうか。最近は社食は外部に委託しているところが多いのですが、その出版社は直営だったので、自由にできたのでしょう。メニューがひとつという決まり事のなかで、どうやったら喜んでもらえるか、そのためにいろいろ試行錯誤しているみたいですよ。

── メニューがみんな同じというのは給食のようですね。そうすると、ランチが共通の話題になってコミュニケーションが生まれそうです。社員同士のコミュニケーションの場として、秀逸ですね。

ほかの会社では、社員が持ち寄りランチをしているケースもありました。ある女性社員が、カレーが大好きだけれども、家では夫や子どもはごく普通のカレーしか食べないそうなんです。でも、その女性はタイの辛いカレーやインドカレーなど、いろいろなカレーが食べたい。

そこで、月に1回会社で同僚と「カレーの日」を設けて、家で作ったカレーを持って行って給湯室で温め直して食べるんです。ほかの社員は副菜を持ってきたり、男性社員がメロンを買ってきたりして、みんなで持ち寄ってランチを食べていました。家ではできないことを、会社のランチで実現するというのもおもしろいですよね。

── 一口にランチと言っても、いろいろなケースがあるんですね。

ランチタイムの過ごし方の例では、会社の近くのお店を順番に制覇していくという方もいらっしゃいました。”ランチの達人“として、社内や取引先から「あそこのご飯おいしいんですか?」などと聞かれたりするとか。大阪の方は、お昼の1時間でいける範囲で、電車でランチを食べに行って帰ってくるということを毎日していました。14年で食べ歩いた店は3000軒以上になるそうです。それを会社のブログで書いて、人気のコンテンツになっています。

毎日食べるものをローテーションで決めている人もいましたね。曜日にちなんだものを食べるという。火曜日は「火」なので辛いものを、水曜日は「水」なので魚系、木曜日は野菜だったかな? 自分でジャンルを決めることで食事のバランスを取っていたりしていました。

──そうやってランチを充実させていくと、出勤するのも楽しくなりそうですね。

小さな会社の社長さんなどは、ランチの店が充実しているからという理由でその町に本社を構えましたという方もいらっしゃいますね。ランチというのは、仕事の合間のわずかな楽しみですから、結構重要視しているのでしょう。

『サラメシ』スタッフのランチは?

── 大橋さんは普段どんなランチを食べていらっしゃるんですか?

僕はたいしたランチは食べていません(笑)。時間がないときはデスクでコンビニで買ったサンドイッチやパスタなどですね。ただ、毎日それでは飽きてしまうので、週に何回かは街を歩いて外食することもあります。番組で、公園のベンチなどでコンビニ弁当やおにぎりを食べている方をインタビューすることもあるのですが、場所を変えるだけでも気分が変わりますよね。

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Photo: 三浦一紀

また、ごくたまに妻が子ども用に作っている弁当のついでに僕の弁当も作ってくれることがあるので、それはちょっとうれしいですね。

── ロケをしていらっしゃるときにスタッフさんはどんな食事をしているのでしょうか。

うちの番組は、街頭インタビューをしてランチのメニューを聞いたら、そのお店に行って実際に作ってもらって撮影をすることが多いんです。作っていただいた料理は残さず食べるというのが、『サラメシ』の掟なので、ディレクターやカメラマン、ADさんなどで残さず食べます。1日に3食4食ランチを食べることもありますね。

── 実際に『サラメシ』に関わられるようになってから、ランチに対する考え方などは変わりましたか?

ランチは、仕事の合間のちょっとリラックスした瞬間。何もないけど大事な時間だと思うようになりました。そんな時間におじゃますると、仕事の部分ではない、普段はあまり言えないことがポロっと出ちゃって、リアルな部分が見えたりもします。そういう部分を撮らせていただけるというのは、非常にありがたいですし、これからも続けていきたいと思います。

勤労感謝の日は『サラメシ』特番。今年は「真夜中のサラメシ」だ!!

いつもは火曜日20:15に放送されている『サラメシ』ですが、2015年から11月23日の勤労感謝の日に特番を放送しています。今年は、朝8時15分から、「夜働いている人」の特集を放送。

大橋さん曰く「現代社会は、夜中に働いている方々に支えてもらっていることがたくさんあります。夜働いている人がいることで、我々の生活が成り立っているところがあるので、そのようなところもちゃんと伝えていきたいと思います」とのこと。

『サラメシ』は、ただ働く人の食事を紹介しているだけではありません。食事を通じて、働く人自身のこと、その職業のこと、そして「働くということ」まで見せてくれる番組なのです。自分のランチを思い返してみましょう。ただ何気なく食べているランチですが、もしかしたらそこには何かしらストーリーが潜んでいるかもしれません。

もし、何も潜んでいなければ、自分でストーリーを作ってみてはいかがでしょうか。ランチを単なる食事と考えるか、それとも自分の人生の時間を費やす重要な時間と捉えるか。それによって、仕事や人生の価値観が変わってくるかもしれませんね。

さて、今日のランチは何にしようかな?

Photo: 三浦一紀

Source: サラメシ

三浦一紀

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