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運動の強さを表す単位「メッツ」を意識して、スロージョギングを実践しよう

運動の強さを表す単位「メッツ」を意識して、スロージョギングを実践しよう
Photo: 印南敦史

「ランニング」と一口にいっても、レベルも違えば走る目的も人それぞれ。解消したい悩みにもさまざまなものがあるでしょう。

ですが、走ることへのそうした悩みのすべてを解消できる走り方があります。

決して苦しくなく、ウォーキングの2倍ものカロリーを消費できて、効率よくダイエットができる。走れる距離も次第に伸びていき、これまで走ったことのない人でも、最短で2ヵ月あればフルマラソンを完走できる。(中略)さらにいえば、血圧や血糖値を下げたり、脳の認知機能を向上させるなど、健康にも大きなメリットがあることが次々と明らかになってきているランニング方法なのです。

特別なスキルは必要ありません。ちょっとしたコツをつかむだけで、誰にでもマスターできます。(「はじめに」より)

そんな都合のいい話があるだなんて、ちょっと信じられない気もします。しかし、「スロージョギング」と名づけられたその走り方は、『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』(田中宏暁著、ブルーバックス)の著者が47年にわたって研究し、運動生理学の観点からその効果を科学的に実証してきたメソッドなのだそうです。

そこで、運動生理学を専門とする医学博士である著者は本書において、「スロージョギング」の方法や効能などを明らかにしているわけです。きょうはそんな本書のなかから、なにかと気になる「ダイエット」との関連性に焦点を当てた第3章「ランニングとダイエット」に注目してみたいと思います。

痩せるための大前提

軽量化、つまり痩せるために必要なのは、エネルギーの出納バランスを負にすること。つまり摂取エネルギーが、消費エネルギーよりも少なくなればいいという考え方です。では、そのためにはどうすればいいのでしょうか?

もちろん、エネルギーの出納バランスは、エネルギー摂取と消費の関係で決まるもの。そのため一概にはいえないとはいえ、内臓脂肪の減少と運動量との関係を調べた研究(大河原一憲ら/2007年)によると、内臓脂肪の減少を期待するためには、少なくとも一週間に10メッツ以上、できれば30メッツ以上の運動を目指す必要があるのだといいます。

「メッツ(MET‘s)」とは、運動の強さを表すために国際的に使われている単位。「運動時のエネルギー消費量が安静時のエネルギー消費量の何倍になるか」という単位であり、たとえば3メッツは安静時の3倍のエネルギー消費量になるというわけです。3メッツから6メッツが中等度強度運動で、7メッツ以上が高強度運動。ちなみに以下の表は、日常の活動や運動が、どの程度のメッツに対応するかを示したものです。

メッツ活動内容の一例
3エアロバイク(50W程度の負荷)、ボーリング、フリスビー、バレーボール
3.5室内での軽めの体操、ゴルフ(カートを利用)
3.8平地をやや速足で歩く(94/分くらい)
4平地を速足で歩く(95〜100/分くらい)、卓球、太極拳
4.5バトミントン、ゴルフ(カートを使わず自分でクラブを運ぶ)
4.8ダンス(バレエ、ジャズダンス、タップダンスなど)
5野球、ソフトボール、ドッジボール
6バスケットボール、ジョギングとウォーキングの組み合わせ、高強度のウェイトトレーニング(リフティングなど)
6.5エアロビクス
7ジョギング、サッカー、テニス、水泳(背泳ぎ)、スケート、スキー
7.5山登り(1〜2kgの荷物を背負って登った場合)
8サイクリング(20km/時くらい)、ランニング(134m/分くらい)、水泳(クロール)
10ランニング(161m/分くらい)、柔道、空手、キックボクシング、ラグビー、水泳(平泳ぎ)
11水泳(バタフライ/速いクロール)
15 走って階段を上がる

たとえば内臓脂肪を減らすために一週間に30メッツの運動を目標とするなら、6メッツ強度の運動を週にトータル5時間以上行う必要があるということ。なお、5メッツの運動を週に6時間以上でも、7.5メッツの運動を週に4時間以上でもOK。厳密に6メッツと考えなくても、基本的には3〜6メッツ強度の運動を週にトータル6時間以上行うつもりでかまわないといいます。とにかくこまめに運動し、大まかに考えて一日トータルで1時間以上の運動時間を確保することを著者は勧めています。(92ページより)

ベストなダイエット法は?

「ダイエット目的のために筋トレをしている」という方も、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか? ところが意外なことに、トレーニングジムで10分程度の筋トレをしたとしても1メッツ・時に過ぎず、これはぶらぶら歩き20分と変わらないのだそうです。

筋トレをすれば、筋肉がついて基礎代謝が上がると考える方もいるかもしれません。基礎代謝は何もせずにじっとしていても、生命活動を維持するために使われるエネルギーのことですが、たしかに筋肉量が増えれば基礎代謝は上がります。ですが、あまりにわずかな量で、体重を減らすほどエネルギー消費量が増えるわけではありません。

また、痩せるためにはエネルギーの出納バランスを負にすればよいので、食事を控えるダイエット法でも体重を減らすことはできますが、残念ながら筋肉量が減ってしまうというデメリットがあります。一方ランニングは、走ることで自然に筋肉も鍛えられていきます。(95ページより)

他のダイエット法と比較すると、健康的に痩せられるのがランニングだということ。厳しい食事制限の必要もなく大きなダイエット効果が得られるため、メリットがとても多いということです。(94ページより)

運動の消費カロリーを簡単に計算する方法

ところで「メッツ・時」に体重をかけると、簡単に消費カロリーへと換算できるのだといいます。たとえば体重60kgの人が5メッツの運動を1時間、週に6回で「30メッツ」の運動をしたとしたら、消費カロリーは運動1回あたりで300kcal(5メッツ×60kg)ということに。ただし安静にしていても体重60kgの人なら1時間で60kcal消費するため、それを引くと運動だけで正味240kcalを消費したことになるわけです。

つまり、<(メッツ強度—1メッツ)×体重>でエネルギー消費量がたやすく推定できます。(96ページより)

体脂肪1kgを減らすためには、7200kcalのエネルギー消費が必要ですが、この運動を続ければ週にトータル1440kcalを消費することになります。そのため、エネルギー摂取量が運動を始める前と同じレベルでキープできれば、5週間でおよそ体重1kgを減少させることができるということ。腹囲はだいたい1㎝程度は減るのだとか。(96ページより)

1日1万歩で痩せられるか?

では、仮にウォーキングで一週間に30メッツ・時の運動量を確保したいのであれば、どの程度歩いたらいいのでしょうか? 上記の表によれば時速6㎞の速歩が4メッツなので、それを1時間行えば4メッツ・時。毎日続けると週に28メッツとなり、内臓脂肪の顕著な現象が期待できる運動量に近づくことに。さらに食事制限が併用されれば、より高い効果が期待できるといいます。

さて、1日1万歩を目標にしている方も多いと思いますが、痩せるための運動量はこれで大丈夫なのでしょうか? 著者はこの点について、ウォーキングで毎日4メッツ・時行う場合を想定しています。

仮に歩幅を80㎝とすると、4メッツ・時の運動はおよそ7500歩。なお、1日7500歩で十分だということではないそうです。目標にすべきは、普段の生活の歩数に7500歩プラスした歩数。したがって、普段3000歩しか歩いていない人にとって、1万歩はちょうどいい目安になるということ。

日本人の平均は1日6000〜7000歩なので、一般的にいえば1万歩ではなく、1日に1万3500〜1万4500歩を目指す必要があるそうです。(97ページより)

ウォーキングの2倍のカロリーを簡単に消費する

だとすれば、「走ることで痩せるためにはどうしたらいいのか」が気になるところ。上記の表を見てみると、ジョギングは7メッツに分類されています。ちなみに一般的に時速7㎞以上で走ることをジョギング、時速10㎞以上で走ることをランニングといい、どちらも高強度運動。ただし、よりゆっくり走るスロージョギングは、中等度強度運動ということに。歩く速さのスロージョギングの運動強度は、4〜6程度だといいます。

よほど急ぎ足で歩かない限り、歩くときのエネルギー消費量は歩行距離に依存し、体重1kgあたり1㎞につきおよそ0.5kcal。たとえば体重70kgの人が5㎞歩いたとしたら、およそ175kcalとなるわけです。

しかしランニングの場合のエネルギー消費量は、スピードにまったく関係なく体重1kgあたり1㎞につきおよそ1kcal。同じ5㎞をウォーキングではなくスロージョギングで走れば、ウォーキングの倍にあたる350kcalを消費できるということです。

ランニングが大嫌いという方に、スロージョギングの方法を実体験してもらったあと、「歩くときよりおよそ2倍のエネルギーを消費できる」と説明すると、ほぼ間違いなく走ることが好きになります。同じ距離を歩行速度で走ればエネルギー消費量がほぼ倍、しかも運動のキツさは変わらないのです。(99ページより)

しかも、まとまった時間が取れないときは、こまめに分けて走ってもよいのだといいます。1日トータル3〜5㎞走れれば、十分な運動量になるはず。それを考えても、ウォーキングに対するスロージョギングの効果の大きさを実感できるのではないでしょうか。(98ページより)


なるほど、ストレスを感じることなく効果を得ることができるだけに、スロージョギングには期待が持てそうです。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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