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頭のなかにあることを「言葉」にするために、思考を整理・可視化する方法

頭のなかにあることを「言葉」にするために、思考を整理・可視化する方法
Photo: 印南敦史

社会人になると、「頭の中で考えていることを、言葉にして、うまく伝える」ことが非常に重要になります。

なぜなら、どんな形であれ、コミュニケーションが成り立たなければ、ビジネスにおいても、プライベートにおいても、困ることが多いからです。

会社、説明、プレゼン、交渉、文書作成、会議……だけではなく、あらゆることで自分の考えをうまく伝えることが必要になります。(中略)

どんな考えも、言葉にして外に発信しなければ、考えていないことと同じで、なんの意味も生まないのです。

(「はじめに もう、『どう表現すればいいんだろう……』がなくなる」より)

こう主張するのは、『頭の中を「言葉」にしてうまく伝える。』(山口謠司著、ワニブックス)の著者です。音韻学、書誌学、文献学を専門として、長らく言葉を研究してきた人物。以前ご紹介した『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』など、多くの著作をお持ちでもあります。

それらに続く本書で伝えようとしているのは、「自分の考えを言葉にして、うまく伝えるシンプルな技」。具体的にいえば、「思考を整理して、明確にする」「思考を言語化する」「表現の幅を広げるための語彙力をつける」「会話や文章をうまく伝える」「ひとつ上の説明の技術」です。

きょうは第2章「まずは、思考を整理して、可視化する」に焦点を当ててみることにしましょう。

漠然とした考えは、言葉にならないし、伝えられない

自分の頭のなかの考えがしっかり整理され、明確になっている人は、思考を言語化してうまく伝えることができます。逆に思考が明確になっていなければ、「なにを伝えればいいのか」がわからなくて当然。そして頭のなかの考えを効果的に相手に伝えるためには、まず「自分の頭のなかの考えを整理すること」が大切だと著者はいいます。

とはいえ、私たちは外側から得た情報や刺激に対し、なんとなく「おもしろい」「うれしい」「不思議」「楽しい」「不安」「つまらない」といった感覚的な反応を示している時間の方が圧倒的に長いもの。普段から、自分の頭のなかを常に明確に言語化しているわけではないということです。

しかし漠然とした思考を日常的に続けているだけでは、頭のなかは明確になっていきません。そのままでは、プレゼンや交渉の場など、自分の思考が問われるときに、頭のなかの考えを的確に言語化できないのです。かといって、頭のなかに浮かんでくるすべての思考を整理することなど不可能ですし、あまり意味もないはず。

そこで、浮かんでは消えるさまざまなぼんやりとした「考え」のなかから、「これこそ、自分が外側に向けて言いたいことだ」と思えるものだけを取り出す作業が必要だと著者はいうのです。そしてそのために重要なのは、自分の頭のなかを整理すること。言葉にできないということは、思考が明確にできていないということなのだそうです。(44ページより)

2つの軸に当てはめると、思考は整理される

では、思考を整理するためにはどうしたらいいのでしょうか? そのために著者が勧めているのは、2つの軸を立て、それぞれの軸で自分の興味、または考えていることを挙げていく方法。最初は時間がかかるかもしれませんが、この方法を繰り返して慣れると、瞬間的に自分の考えが整理できるようになるといいます。

たとえば営業マンなら、「商品の内容」という軸と、「お客様のメリット」といった2つの軸で考えを整理していけばいいわけです。そうやって、異なる2つの視点で物事を整理してみることで、見えてくることがあるから。すなわち、2つの軸が交差するところに挙げられたものが、「自分が望んでいること」に近いのではないかということが見えてくる。つまり、思考が明確になっていくということ。

なお、この軸は、自分が直面している問題などによって、柔軟に設定できるものだそうです。2つの軸を基にしながら、自分の思考の形を浮き彫りにしていくと、自分の思考の方向性が見えてくるのだといいます。

2つの軸を立てる習慣を持つことです。

このクセづけをするために、まずは日常でトレーニングをしてみてください。

たとえば、最近読んだ本を2つの軸でカテゴリー分けしながら書いてみる。

行ってみたい国を挙げ、まとまった休暇が取れたらやりたいことをあげて、2つの軸で旅行の計画を立ててみる。

歴史上の好きな人物を挙げて、読む本を決めてみる。

トレーニングが大事なので、「こんなことをして意味があるのか」といったことを考える必要はありません。(49ページより)

このように、日常生活のなかでできることからはじめてみることによって、思考を整理する力が鍛えられていくのだそうです、(47ページより)

思考の明晰さとは“キーワード”に詳しくなること

頭のなかの考えを明確にするためのいい方法は、「なにを伝えるのか」をしっかりと自分のなかで把握すること。著者はそう記しています。具体的には、やるべきは、

「自分の考えを2軸に当てはめて、伝えたいことを明確にする」

「それについての情報を集める」

という流れを行うこと。そして「これを伝えたい」と思ったら、それについて詳しく調べてみるべきだというのです。たとえばマーケティングを担当している人なら、「ターゲット」でも「市場」でもなんでもOK。自分が気になる「キーワード」に従って調べることで、思考も深まり、本当に伝えるべきことが明確になるというわけです。

抽象的で大きなことでもいいので、とにかく伝えたいことについて調べてみることが大切。間口を大きくして、伝えたいことに詳しくなることは、とても重要だという考え方です。そうすることで、自分自身の頭のなかが明確になっていくのだといいます。(50ページより)

「工具書」が、思考の整理を手伝ってくれる

思考を明確にするためには、「工具書」を持っておくことも大切。そこで著者は、社会人になったら工具書を少しずつ用意していってほしいと考えているそうです。工具書とは、時点、辞書、目録、地図などのことで、持っておくと調査や研究がスムーズに進むというのです。

情報を集めていると、知らない単語や事柄が出てきます。そもそも単語や事柄について調べないと、文章でも話でも、内容を理解することができないので、工具書は大切なのです。

ちょっとしたことならウィキペディアで事足りると言えなくもありませんが、仕事などの情報は信頼性のある工具書を使って内容を理解することが重要です。(52ページより)

わからないことがあれば、すぐに調べられる工具書を持つべきだという考え方。ただし、絶対にこれがいいという工具書はなく、職業などによっても必要な工具書は異なるもの。つまり、自分なりに必要だと思った工具書を持っておけばいいということです。情報の理解を深めるための道具がなくては、思考は明確にならないとすら著者は主張しています。(52ページより)

“視点をズラすと思考の可視化はうまくいく”

自分の頭のなかにある考えを明確にできない理由として、「自分の思考を常に同じ角度から眺めている」ということが挙げられるといいます。しかし視点が変われば、思考の見え方も変わってくるもの。ある方向から見て説明できない事柄が、違う方向から見ることで簡単に説明できるようになる。そんなことはよくあるということです。そのため、新しい刺激を受け、視点を変えることは非常に大切。

たとえば、私は思考のループに入り、煮詰まったときには、博物館に行きます。(中略)同じ博物館でも、足を運ぶ度に、内容の異なるイベントが行われているので、学ぶことは多いはずです。


視点を変えると、意外な切り口が見つかるということを体感でき、思いがけないところで自分の琴線に触れるテーマが見つかります。

思考のループから抜け出せず、手詰まりを感じたら、こういったことを試してみてください。(61ページより)

視点を変えて見ると、頭のなかの考えが明確になるということは、よくあるのだそうです。(60ページより


前著同様にとても読みやすく、無理なく要点をつかむことができる1冊。「言葉にしてうまく伝える」ことの難しさを感じている人にとっては、格好の内容だといえます。ぜひ一度、手にとってみてはいかがでしょうか?


印南敦史

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