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自動販売機チェーンのスタートアップBodegaが人々を怒らせた理由

自動販売機チェーンのスタートアップBodegaが人々を怒らせた理由
Image: Bodega via Lifehacker US

IoTの自動販売機を開発するスタートアップBodega(ボデガ)の創業者たちは、コンビニエンスストアに取って代わりたいと考えているようですが、インターネット上でこれほど早く嫌われることになるとはおそらく予想していなかったでしょう。

しかし彼らは、嫌われるべくして嫌われたのだと思います。

Bodegaが始動した日、ビジネスメディアFast Companyは「元Google社員2人が、ボデガ(食料雑貨店を意味するスペイン語)や街角にある家族経営の商店を廃れさせようとしている」という見出しで記事を公開しましたが、これは決して偏った意見ではありません。記事によれば、創業者の1人Paul McDonald氏は次のように発言しています。

いわゆるショッピングエリアはいずれ不要になるでしょう。10万個にのぼるBodegaがあちこちに設置され、30メートルも歩けば買い物ができるためです。

Bodegaは、ジムや寮、アパートに設置するインターネット対応自動販売機のチェーンです。高さ約1.5メートルの「パントリー・ボックス」に保存の利く商品が陳列されており、顧客はモバイルアプリで鍵を開け、欲しいものをつかむだけで購入できるという仕組みです。

一部の投資家を除いては、Bodegaのビジョンは不快な様子。これは、人と接する機会や、アパートや寮の部屋から出る機会を奪うビジョンだからです。しかも、多くの「革新的破壊になる」技術とは異なり、このビジョンの革新性といったら、街角の商店に行く機会が少なくなることくらいでしょう。Bodegaが世界にもたらす新しい価値はたったこれだけなのです(Bodegaは、設置場所に合わせて「商品をカスタマイズ」すると約束していますが、これは既存のボデガがすでに行っていることです)。

Bodegaに全く価値がないわけではありませんが、彼らはその価値の見返りとして、いったい何を要求するのでしょうか?

Bodegaが成功するには、つまり、シリコンバレーの投資家たちの要求に応えるには、保存の利く商品を売っている既存の店から売り上げを奪わなければならないでしょう。保存の利く商品を売っているのは食料雑貨店やコンビニです。いくつかの大都市には、Bodegaの名前の由来となった本物のボデガもあります。Bodegaがこの名前を付けたのはおそらく、街角の親切なボデガが客と築いている「本物」の良好な関係を奪い、企業利益を追求するためでしょう。

これは恐ろしく悪趣味なだけでなく(多くの場合、移民が経営していると思われる個人商店の売り上げを奪い、シリコンバレーのカネにしようとしているのですから)、事業計画にも疑問があります。多くの人がTwitterで指摘している通り、人々が本物のボデガを利用し続けるのは、ボデガが単なる巨大な自動販売機のような存在だからではありません。たばこをばら売りしてくれたり、ただ同然のコーヒーやつくりたての卵サンドを提供したりしているボデガもあるでしょう。いつも買うものを覚えていてくれたり、1日の初めに挨拶してくれたり、時には自宅の合鍵を預かってくれたりしてくれるかもしれません。しつこく付きまとう男をボデガの人に追い払ってもらった経験がある人もいるでしょう。自動販売機よりもはるかに優秀です。お気に入りのブランドの歯ブラシや、12個入りのトイレットペーパー、生鮮食品を取り扱っているのですから。

つまり、ボデガはおそらくそう簡単には負けないということです。今回、すぐさま反発した人々は、脅威を大げさにとらえているだけでしょう。ただし、Bodegaとその創業者たち、投資家たちが実現しようとしていることは決して誇張されていません。

さらに、繰り返しになりますが、シリコンバレーの投資家がBodegaのような企業に資金を投じているのは事実です。Bodegaは価値を生み出す存在ではなく、ただ既存の価値をシャッフルしようとしているだけです。最近のユニコーン企業は、顧客に新しい価値をもたらす企業でさえ、ほかの場所で既存の価値を壊そうとしています。Uberはタクシーの問題点を解決しようとしているだけでなく、市場を独占しようとしています。最終的には、自動運転車を導入し、貴重な労働力である運転手たちを切り捨てるでしょう。Airbnbは貸主に収入をもたらし、借主に宿を与えようとしているだけではありません。その結果、家賃が高くなり、税基盤がむしばまれています。

これは決してショッキングな出来事ではありません。約10年前に産声を上げたモバイルインターネットは、あまりに大きな技術革新だったため、シリコンバレーはいまだにその経済的な意味合いを探り続けているのです。しかしその裏では、次なる技術革新がおろそかにされています。シリコンバレーは、世界をより良い場所にしようとして戦う才能ある慈善家のように振る舞いながら、実際にはヘッジファンドのように、既存の産業に手を加え価値を奪い再分配しているのです。

しかし、「BuzzFeed」のBen Smith氏も述べているように、私たちはそれを見抜き始めています。「テクノロジー業界は何年も、批判者たちをラッダイト運動(産業革命時のイギリスで起きた機械破壊運動)にたとえ、それによって利益を得てきました。しかし、それももう終わりです」。政治家たちは左右にかかわらず、テクノロジー企業とその投資家の正体に気付き始めています。いわゆる「金ぴか時代」の資本家と同じで、大きな革新によって夢のような約束をした後、経済から可能な限り搾り取ろうとしているのです。

Bodegaは、あなたの街のボデガをつぶそうとしていますが、ほぼ間違いなく失敗に終わります。ただし、心配すべきことはあります。なぜBodegaとBodegaに資金を投じた人々は、あなたが怒り出すことを予想できなかったのでしょう?


Image: Bodega via Lifehacker US

Source: Bodega, Fast Company, Twitter, BuzzFeed

Nick Douglas - Lifehacker US[原文

(訳:米井香織/ガリレオ)

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