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心と身体のつながり=「ソマティック」で人生をスムーズに乗りこなす

心と身体のつながり=「ソマティック」で人生をスムーズに乗りこなす
Image: Paisit Teeraphatsakool / shutterstock.com

身体に不調があった時、それは「体」が原因でしょうか。例えば胃が痛いという症状があったとして、原因が「食べ過ぎ」「飲み過ぎ」なら、確かに肉体が原因かもしれません。でも、圧倒的にヘルシーな生活を送っているにも関わらず、胃腸の調子が悪いという人も少なくありません。そんなときに「ストレスが原因なのかもしれない」と、実は心の問題であったということに気づくのです。

21世紀に入り20年弱が過ぎた今、このような「心と身体がつながっている」という認識が以前よりも深まって来たように感じます。心が健やかな状態を取り戻せば、(不摂生は別として)身体の健康もある程度維持できるとは思いませんか? そして心身の健康は、自分の人生を思うがままに全うするための必須条件です。

そこで、知っておいてほしいのが「ソマティック」という概念。まだ聞きなれない言葉かもしれませんが、これからの心と身体の健康には欠かせない考え方です。今回はこの「ソマティック」をキーワードに、心と身体のつながりを取り戻す方法をお伝えしようと思います。

天気のように移り変わる「心」に目を向ける

私たちの心は実に流動的です。女性の気分が秋の天候のようにコロコロとよく変わる様を「女心と秋の空」という言葉で表現しますが、実は元々は「男心と秋の空」という男性の愛情の移り変わりやすさを表した言葉です。このように男女問わず、「心」は天気のように移ろうものであるということは、昔から認識されています。そして、そうした変わりやすい天気のような心に伴い、影響を受けているのが私たちの「身体」です。

脳の中で「心」が動くと、自律神経系やホルモンのバランスが変化します。その変化に応じた司令が身体の隅々まで届き、身体反応が生じます。例えば、顕著なのは「顔」の変化です。喜怒哀楽の感情に伴った信号は顔面を構成する筋肉=表情筋へと送られ、人はそれに伴った表情を自然に作り出します。具体例としては、仕事中にも関わらず恋人からの甘いメールが届いた時は、目尻が下がり、口角がふわっと上がるのを慌ててこらえることでしょう。逆に、どんなに楽しい飲み会の場においても、緊急事態を告げる仕事のメールが届けば、眉間にシワがより、表情がこわばるのを感じるはずです。こうした「こわばり」あるいは「ゆるみ」などの影響は、表情だけでなく、身体の内側にある臓器それぞれにも起こっているのです。

もしストレスが短期間なら、思う存分遊んだり、ぐっすり寝たりするだけで発散できるかもしれません。しかし、「責任」という大人の役割を果たそうとするこの社会では、自分が感情を抑えながら生きていることに無自覚なまま日常を送っている人が実に多いのです。そうして自分の「心」をないがしろにしていることや、その「心」が身体に与えている影響にも気づかず、ある日謎の体調不良を訴える、最悪の場合は病気を発症する、ということも。

我慢強く、忍耐力がある人ほど、こうした変化を無視してしまいがちな傾向があります。「いいかげん」というよりは「良い加減」、さらに言えば適度に力を抜いた「テキトー」ができる人の方が、心と身体のバランスにおいては健康を維持しやすいといえます。また、子供は喜怒哀楽の表現が実に豊かです。周囲を気にせずこの世の終わりのように泣き喚いても、嵐が過ぎてしまえば当人はケロッとした顔でいます。そうやって上手に心の滞りを発散しているのです。

大人である以上、ある程度の自制は必要かもしれません。しかし、真の健康のためには、「心」そして「身体」が、刻々と移り変わる存在である、ということをもう一度思い出し、丁寧に観察することから始める必要があります。

心と身体のつながり=ソマティック

「心と身体のつながり」を考えるときにキーワードとなるのが「ソマティック」です。

「ソマティック」の「ソマ(soma)」はギリシャ語で「身体」を意味します。この「ソマ」は単なる物資的な肉体を超えた、心や魂までも含む「いきいきとした身体」を表しています。仏教で言う「心身一如」、つまり「心と身体は不可分であり、ひとつのものの両面である」という考え方と同様であると言っても良いでしょう。

ちなみに「身体」と「体」のちがいはお分かりになりますか? どちらの言葉を使うこともあるかと思いますが、厳密には少し違いがあります。命があるないに関わらず固体としての「ボディ」を表現する時に「体」を用いるのに対して、人間のように心や精神を内包した存在に対しては「身体」を使用することが多いようです。つまり「身体」という表記は「心身」を表しているのです。

1960年代の終わりから1970年代のアメリカでは、ベトナム戦争などの時代背景の中で「合理主義」「物質主義」的な既存の価値観に対してのカウンターカルチャーが生まれました。禅やヨガなどの東洋思想が広まり始めたのもこの頃です。そうした中で心と身体のつながりへの注目度が増し、「ソマティック」という概念が深まっていきました。何らかの心や身体の不調に対し、「心は心」「体は体」と分けてアプローチするのではなく、身体や感情を入り口として心に働きかける、その逆に心から身体へと働きかける、そんな総合的な健康を促すような手法が、多く生まれていったのです。

心と身体のつながりは、現代社会においてはおざなりにされがちです。身体が元気であれば、嫌がる心を無理についてこさせることもできてしまいますし、モチベーションが高い心理状態であれば、疲労感などものともせず、身体を引きずってでも物事をやり遂げようとします。でも、どんなに立派な車(身体)があっても、運転手(心)が倒れてしまったら車は動きません。また、車体が故障していれば、運転手がどんなに頑張っても同じように車は動かず、目的地にたどり着くことはできません。

だからこそ、人生における目的を健やかに達成したいならば、時々立ち止まって「心」と「身体」がどんな状態かを冷静にチェックし、メンテナンスをしていくことが大事です。

「感じる」を言葉にすると癒しになる

身体の状態よりも気付きにくいのが、心の状態です。大きな喜怒哀楽を感じたときには、明確に気づくかもしれませんが、日々細かく「自分が今、何を感じているか」に、シミジミと注意を払ってみることはあまりないのではないでしょうか。

ある心理学の研究で、カウンセリングの効果について分析してみたところ、成功したと言えるカウンセリングのセッションには面白い共通項があったそうです。驚いたことに大事だと思われていた、カウンセラーのスキルやパーソナリティは結果にあまり関係なく、身体の感覚や感情など、クライアント自身が「何を感じているのか」に気付き、それを言葉にしていくことが、問題解決の良い結果に結びついているということがわかったのです。

自分の身体が、あるいは心の内側が、今何を感じているか。それをどんなに抽象的でも良いから自分自身がしっくりくる言葉で表現してみる。そして、その感覚が何か自分にメッセージを発しているとしたら、どんなことだろうか?と、対話してみる。「癒し」はそのプロセスの中で起こっているのです。

今回ご紹介するのは、「頭」「胸」「お腹」の3か所に意識を向けて、それぞれの場所が何を感じるかを表現する「ワンポイント・ウェザーリポート」というワークです。日本列島の天気が北海道、関東、九州とそれぞれ全く異なることがあるように、身体の部位が変わると、それぞれのゴキゲンが思いのほか違う、ということに気づくかもしれません。

それぞれの部位で感じたことを、ただ口に出してみてください。もし口に出せなければしっかりと感覚を確認してみましょう。もし、イメージしにくければ、色やなんとなくの形、あるいは「冷たい」「温かい」「早い」「遅い」など質感を表す形容詞などの中で、ピッタリくるものを探してみます。曇りか、晴れか、雨か、などお天気に例えても良いでしょう。さらに、例えば晴れているなら、カラッと晴れているのか、湿気があるのか、太陽が強いのか、雲があるのか、など細かく描写してみてください。

■ ワンポイント・ウェザーリポート

  1. リラックスできる環境で座ります。目を閉じて、ゆったりと深呼吸を繰り返し、肩の力を抜きましょう。
  2. 今、あなたの頭は何を感じていますか? 頭に手を当てて、ゆっくりと感じてみましょう。そして感じたことを口に出してみます。
  3. 今、あなたの胸は何を感じていますか? 胸に手を当てて、ゆっくりと感じてみましょう。そして感じたことを口に出してみます。
  4. 今、あなたのお腹は何を感じていますか? お腹に手を当てて、ゆっくりと感じてみましょう。そして感じたことを口に出してみます。
  5. 身体の3か所の感覚を感じて、今何か思うことはありますか? もし、自分にかけてあげたい言葉、誰かにかけてほしい言葉が見つかったら、それを実際に自分に語りかけてあげてください。
  6. 自分の中で終わっても良い感覚があったら、自分が感じた感情や感覚に「ありがとう」と伝えて終わります。

いかがでしたか? このワークは5分程度でできるものですから、朝起きた瞬間や、夜寝る前の習慣にしても良いと思います。まだ言葉が話せない赤ちゃんの世話をするときに体調や機嫌を気にかけてあげるように、自分の心と身体に目を向ける習慣をつけてみることが大事です。身体に意識を向けるのが難しく感じるときには、ワークでもやったようにご自身の「手で触れてみる」と、頭で考えなくても瞬時にそこに意識が向きます。気になるところに手を当てて、その場所と対話してみるだけで良いのです。

もっと「ソマティック」を深めたい人へ

「ソマティック」にまつわるワークはたくさんあります。主に身体から働きかけるものを「ソマティクス」、心から働きかけるものを「ソマティック心理療法」と呼んで区別していますが、登りたい山は同じ。心と身体が健やかさを取り戻すことが目的です。

この秋9月29日(金)、様々な「ソマティック」の手法を知ることができる「ソマティックフェスタ」が開催されます。「フェスタ」と銘打っている通り、ソマティックにまつわる様々なワークを1日で体験できる、またとない機会です。この連載を担当するセラピストである私、小松ゆり子も「ソマティック・タッチング」というカテゴリーの中で「自分とつながる、世界とつながるタッチ」というクラスを担当いたします。

また、翌日には「日本ソマティック心理学協会第4回大会 タッチフォーラム2017」が開催されます。「タッチ」を中心とした、心と身体のつながりに関する最新の知見を知りたい方は、ぜひご参加くださいね。

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小松ゆり子/パーソナル・セラピスト

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音楽、カルチャー、リラクゼーションを融合する「relacle」「CHILL SPACE」スーパーバイジング・ディレクター。南青山のプライベート・アトリエ「corpo e alma」を中心にセラピー・セッションやセミナー活動を行う。東洋的な押圧とロングストロークやストレッチングを多用し、植物や鉱物の力をフュージョンさせたオリジナルメソッド「VITAL touch therapy」を提唱し、密度の濃い「パーソナル」なスタンスでオーダーメイドの施術を行っている。約12万人以上を動員する音楽フェスティバルSUMMER SONICで10年連続セラピーブースを展開するほか、新宿のシェアオフィス「HAPON」でのオフィスリラクゼーション、アパレルブランド「かぐれ」でのセラピーや講座など他業種とのコラボレーションも多数。現代人が都会でバランスを保ちながら生き抜く知恵やプリミティブな五感を取り戻す方法をさまざまな角度からナビゲートする。

Image: Paisit Teeraphatsakool / shutterstock.com

Reference: ソマティックフェスタ 1, 2, 日本ソマティック心理学協会第4回大会 タッチフォーラム2017

小松ゆり子

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