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組織の中で「なくてはならない存在になる」方法

組織の中で「なくてはならない存在になる」方法
Photo: 印南敦史

「出口が見えず、うんざりするような仕事から抜け出せない人が大勢いる」と指摘するのは、『その仕事でいいのかい?』(クリス・ギレボー著、甲田裕子訳、TAC出版)の著者。ウェブサイト「Chris Guillebeau」を通じ、ユニークな企業や興味深い働き方をしている人々を紹介し続けているという作家・起業家です。

なお、「うんざりするような仕事から抜け出せない」場合の選択肢は、いまの場所にとどまるか、妥協点を見つけるかのふたつ。ただし、どちらも間違ってはいないものの、ベストの選択ではないともいいます。「いまの仕事を続けたくない、本当にやりたい仕事を見つけたい、でも経済的な余裕もほしい」と、すべての願いを叶えることは可能だというのです。

本書を読んでもらえばわかるが、そのような仕事を見つけた人がたくさんいる。彼らが最高の仕事をつかんだのは、幸運に恵まれていたからではない。全力で試行錯誤を重ねた結果、自分にぴったりの仕事に巡り合ったのだ。そして、彼らの人生は一変した。(「はじめに」より)

なお、ここでもっとも重要なのは、おそらく「全力で試行錯誤を重ねた結果、自分にぴったりの仕事に巡り合った」という部分。ただ悩んで待っているだけではなく、実際に動いて試してみることが大切だということです。本書は、そうした仕事を見つける手助けをしてくれるわけです。

本書は2部構成となっている。第1章から第6章は、あなたが何をしたいのか、どうすればそれが実現できるかを理解するためのレッスンで、第7章から第11章では、多様な戦略や戦術を用いてこれらのレッスンを実行に移すためのメニューを紹介した。(「はじめに」より)

当然のことながら「メニュー」もさまざまですが、実践を意識すると、つい起業ばかりに目を向けてしまいがち。事実、ここでも起業して収入とキャリアをコントロールする方法もしっかり紹介されています。が、きょうはあえて別のメニューに焦点を当ててみたいと思います。第9章「自立した従業員 目標——なくてはならない存在になる」がそれ。ここで示されているのは、組織のなかで自己を確立するための方法です。

会社のために働くのは悪いことではない。

その仕事を自分にとって望ましい状態にすることができれば、特にそう言うことができる。

組織にとってなくてはならない存在になり、同時に上司と交渉して自分の仕事を理想の仕事につくりかえよう。

(第9章「自立した従業員」トビラより)

組織にいても、実質的には自営業

今日の労働市場においては、資格を持った勤勉な人であったとしても、生涯にわたる仕事と給与を保証されることはありません。これまでは“安泰”だといわれてきた仕事が、そうではなくなっているということ。そうした現実を踏まえたうえで、著者はユニークな主張をしています。

定職について安定した収入があったとしても、働くうえでなにが起ころうとすべてを引き受けるのは自分。そういう意味で、「組織内にいる人も実質的には自営業」だというのです。だとすれば重要なのは、常にスキルを磨き、周囲に目を光らせること。このことについての理由は、現在の地位を守るため、そして昇進の手段として有効な方法だからだといいます。

だからこそ、会社をつくらなくても起業家にはなれると著者。普通の企業や組織のなかでも、起業家精神を発揮することは可能だということ。そしてそのコツは、自分の興味が追求できて、実際の自営業者のように積極的に新しいことに取り組めるポストをつくり出してしまうことだといいます。

そのため、すべては「自分が雇い主にとってなくてはならない存在になれるかどうか」にかかっていると著者は主張しています。もちろん、必要とされる存在になるのは容易ではありませんが、次の4つの戦略を実行すれば、いずれ実現できるそうです。(204ページより)

なくてはならない人材になるための4つの戦略

戦略1. グループ全体の業務を予定どおり進ませる

たとえば会議中、誰が仕切っているのかよくわからないようなときには、出席者のリーダーシップのスキルを見きわめることが大切。ただしその目的は、仕事を進め、出席者を上手に導くこと。そのため主導権を握ったとしても、支配してはいけないといいます。質問をして、グループのための作業を進んで引き受けるようにすべき。

会議の終わりに決定したことを簡単にまとめ、確認を取る。「それじゃあジョンが納入業者に電話をして、納品の日程を確認してくれるんだね。ぼくは別件を調べて報告するよ」という具合だ。最後に、ほかに誰も会議の内容を記録していないようなら、あなたが記録するといいだろう。パソコンで議事録を作成して、会議から24時間以内に参加者に送ろう。(205ページより)

どこの職場にも、ずば抜けて仕事ができる人間がいるもの。そういう人は自分の仕事を早く終わらせるだけではなく、助けが必要な人にはいつでも手を貸そうと考えているものだといいます。

「仕事は忙しい人間に頼め」といわれます。だからこそ、「なくてはならない人」になるためには、「仕事のできる忙しい人」になるべきだということ。

戦略2. 職場では悪習を慎む

当然のことながら、“勤務時間”のすべてが生産的なわけではありません。それどころか実際、仕事の時間の多くは非生産的なものだともいえるでしょう。非生産的な作業を完全になくすのは困難だし、日常の業務や会議に一定の遅れが生じるのは避けられないことでもあります。

しかし、非生産的な仕事の多くは、「本当は少しも役に立たないのに、自分の評価を高めるために作業をする」という悪習の結果から生じているもの。そこで大切なのは、できる限りこの悪習を阻止すること。

戦略3. 本来の仕事とは無関係でも、組織の大きな目標達成に貢献する

組織は大きくなればなるほど、たくさんの役割に分かれていきます。なかには収益を上げることや、その他の明確な目標に直接関与しないものもあるでしょう。そんななか、もしも自分が縁の下の力持ちで重要な役割を果たしているのなら、それ以上の働きをする方法を見つけるべきだといいます。単に「熱心に仕事をしろ」ということではなく、利益を生み出すか、自分の仕事を組織のさらなる成功に結びつける方法を見つけるということ。

戦略4. あなたの仕事が時代遅れになる危険があるなら、しがみつかずに転職すべし!

著者がここで引き合いに出しているのは、毎年届く電話帳。すでに携帯電話が主流となっているのに、不要な電話帳はあいかわらず何十万冊も印刷されているという現実です。これは途方もない無駄であると同時に、ひとつのビジネスが消滅しかかっていることを表してもいるというのです。電話帳ビジネスが存続しているのは、お金を払う広告主が存在するから。しかし広告主がいなくなれば、このビジネスは消えてしまうわけです。

そこで、仮に電話帳をつくる会社に勤めていたとするなら、ただちに別の仕事を探す必要があると著者は記しています。もし会社に満足しているなら、どんどん時代遅れになるこの商品を自分の手で生き返らせるか、あるいは、せめてこの商品がもっと時代にあった方向へ転換できるようにする方法を考えるべきだとも。

* 5年後、私たちの商品やサービスの需要はあるか

* どうすれば、わが社のビジネスが時代の変化についていけるのか

(208ページより)

どのような業界にいたとしても、誰に雇われていたとしても、このように自問して、「ポジティブな変化を促すために自分にはなにができるか」を考えなくてはならない。著者はそう主張します。

(205ページより)


著者ならではのユニークな視点を軸として話が進められていきますが、それは実践的なことばかり。つまり興味を惹かれる部分があったら、それをすぐに応用することができるわけです。その結果、「どのように生き、働くか」についての新たな視点を身につけることができるかもしれません。


印南敦史

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