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移住して1年経ったのでオランダで会社を作ってみた

移住して1年経ったのでオランダで会社を作ってみた
Photo by Jordi Huisman

2016年3月末に子どもの教育のためにオランダに移住した筆者。個人事業主用のビザを取得し、個人事業主として、日本企業のヨーロッパ進出や、オランダ企業の日本進出、マーケティング、ブランディング、広告制作、ビジネス、サービス開発、店舗プロデュースから、果てはTV番組やWebでのコンテンツ制作などなど、幅広くお手伝いをさせていただいています。が、この2017年6月に今度は、ニューロマジックという企業と一緒に、オランダで会社を設立することになりました。

「オランダで会社設立」となると、「法人税率の低いTAXヘイブンへ、資産の持ち出しか?」ということが、海外税率などに詳しい方なら頭に浮かぶかもしれません。しかし、噂には聞くものの、果たして本当にそうなのでしょうか?

そこで今回は、実際のところ税金はどうなのか?そもそも会社設立ってどうやればできるのか?など実録ルポというかたちでお届けしたいと思います。

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ニューロマジックがメンバーになっているシェアオフィス「SPRING HOUSE」。1Fはアムステルダムでも指折りのダッチ・フレンチレストラン「Choux」。 ただし、ランチはシェアオフィスのメンバーだけが使用可能。つまり社食。
Photo by Jordi Huisman

「オランダチーズの会」が発端

まずは、簡単に会社設立に至る経緯を振り返ってみます。2016年にオランダに移住した筆者は、日本のクライアントの仕事や案件もあるので、定期的に日本に戻っています。そして、日本に戻るたびに、オランダからのチーズを肴に近況報告を兼ねて、一緒にお酒を飲むという「オランダチーズの会」を開催しています。当初は、比較的近い仲間内で集まっておりましたが、せっかくなのでオープンにしよう!ということで、簡単にフェイスブックで呼びかけをしていたところ、だんだんと参加者が増えて、多い時で、70、80人集まるようになってきました。

こうなると、仲間内の飲み会の域を超えてきます。毎回、筆者が日本での拠点にしている福岡で開催していましたが、中には、わざわざ東京から、大阪から、そして海外から、参加してくれる人も出てきました。

そんな、わざわざ東京から来てくれた奇特な人の中に、木村隆二さんがいました。

全く面識のなかった木村さんからはFBで「チーズ会に東京から参加したいのですが」という連絡をもらいました。「お待ちしています!」と返したものの、どうせ冷やかしかな?と思いながら当日を迎えたところ、本当に木村さんが来たのです。

実は、木村さんは東京でニューロマジックというWeb制作や、サービスデザインや、果ては企業コンサル的なことまでを行なっている会社の役員でした。

たまたま共通の知り合いもいたり、そもそも福岡にもオフィスがあったり、ということで福岡に訪れた際に「オランダチーズの会」に参加してくれたのです。

最初の出会いは、2016年の6月から7月にかけていろいろな相談を重ねていくうちに、「一緒にオランダで会社を作りましょう」という流れになりました。

のちに判明したのですが、代表の黒井基晴さんのもと、WEBデザインや、サービスデザイン、広義の意味でのデザインメソッドなどヨーロッパの技術や考え方を取り入れて、自分たちの提供できるサービス領域を広げるために、海外にそろそろ展開したい、もちろん、海外での事業実績も作ってグローバルに展開していきたい、と考えていたようです。

そのために、いろいろと情報をリサーチしていて、筆者のオランダでの活動に行き当たったようです。筆者が帰国したタイミングで開いていた「オランダチーズの会」に同社の役員である木村さんが参加してくれた、というわけです。

オランダで会社を作るには会計士、公証人が大事

その後、半年ほどの準備期間を経て、実際には2017年の3月から会社設立に向けてのステップを踏み出しました。

まず相談したのは、現地の会計事務所です。筆者の個人事務所の担当会計士が所属している事務所なので、相談は非常にスムーズ。筆者がオランダで下打ち合わせを一度行なった後、木村さんと筆者で、オランダの会計事務所に出向きました。

その場で、条件含め大方の内容を話したところ、「問題ない」ということで、実際の会社設立のステップに入ることを決めました。

この時点で、一番、会計事務所サイドが気にしていたのは、「会社のボードメンバーにオランダに実際住んでいる人間はいるのか?」ということでした。もしメンバーに実際のオランダ在住者がいない場合、「オランダの低い税率による脱税目的の会社設立」と判断される可能性があるからです。

これは、我々を担当してくれる会計事務所の判断ですが、会計事務所サイドも無用なリスクを負いたくないために、この辺はシビアです。なので、この時点で「タックスヘイブンであるオランダで、役員が誰もオランダに住所がないのに脱税目的で会社を作る」というのは不可能になります。

ちなみに、実はオランダの法人税は決して低くはありません。もちろん日本に比べたら、低いのですが、だいたい25%くらいなので、ヨーロッパの中では標準か、多少低いくらいでしょうか。アイルランドやスイスの方がよっぽど低いのです。

ただし、法人税以外で、例えば、「オランダで行われたイノベーションから得た所得には実効税率が5%になる」などの税制優遇はあります。個人事業主として1年間こちらで働いた印象としては、こうしたことも含めて、何がどのくらい該当するのか?は、実際に会社のオペレーションをやってみないと分からない、と感じています。

なので、現状では「オランダはタックスヘイブンである」という感覚はゼロです。

さて、最初の打ち合わせを終えた後は、実はほぼ全て書類のやり取りだけで、ことが進みます。しかも、もちろん全てネットでのやり取りです。

たまたま、オランダの3月は会計事務所的には1年のうちでも最繁忙期だったため、担当の会計士に、我々の会社設立案件を、ちょっと放っておかれてしまい時間がかかったのですが、「こちらでもフォローするから、ちゃんとやってね」と連絡した後は、スムーズに。

4月に入ってから会計事務所経由で、公証人を紹介してもらいました。実際には、会社設立の所々手続きは、公証人事務所が、オランダの各エリアにある商工会議所への書類のやり取りを進めてくれます。ですから、公証人事務所が、全て必要な書類を揃えてくれます。

会社設立の書類のやり取りは、ほぼネットで完了

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アムステルダム市役所で打ち合わせ中。
Photo by 吉田和充

筆者は、公証人事務所には4月中旬に一度だけ出向き、必要な書類にサインをしました。この後は、全てのやり取りはメールでした。ここまでで、およそ2週間かかりました。

また今回は、東京にあるニューロマジックと一緒に会社を作るために、ニューロマジックの書類も必要です。いわゆる会社登記関係の書類、代表者の身分証明書などです。会社の登記書類などに関しては、英訳も必要ですし、それに付随してアポスティーユ(自治体等が発行する公文書に対する外務省の証明)なども必要になってきます。当然、これらは原本でないといけないので、国際郵便などで送ってもらいます。ここで、およそ2週間かかりました。

オランダで筆者がサインをした書類、日本から送ってきてもらった書類など含めて、必要な書類は全て、公証人事務所が商工会議所に送ってくれます。

ちょうど4月末から5月頭には、日本ではゴールデンウィーク、そしてオランダにもチューリップ休暇なる連休がかかってしまったこともあり、この時点で5月下旬になりました。

そして、商工会議所から「会社設立されました」という通知を待つことになります。

1カ月くらいかかるのかな?と思っていたところ、意外や意外、「6月1日に設立されました」という通知があっという間に届いたのです。申請してから設立にかかった時間は10日ほどです

ところが、この時点で「会社ができた!」とは厳密には言えません。というのは、この後に、まず会社の銀行口座を開かないといけないのです。

銀行口座を開くときは、さすがに銀行に出向かないといけないのですが、これもものの数分で完了。もっとも、ここでもオランダ在住者なのか?住所がオランダにあるのか?電話番号があるのか?などはチェックされます。

こうして開いた銀行口座に資本金を入金して、その証明書を会計士と公証人事務所に送ります。それを今度は、公証人事務所が商工会議所に送り、商工会議所で確認をしたという書類が返送されて、ここで手続きはやっと完了となります。

我々の場合、会計事務所の最繁忙期にあたったこと、日本とオランダの連休を挟んだこと、そしてもちろん、日本との書類の郵送のやり取りがあったことにより、少し時間がかかった印象がありますが、手続き自体は非常にスムーズでした。

今回は、初めてのことでもあり、直接話をした方が良かったので、筆者自らが公証人事務所に出向いてサインをしました。ただ、それさえメールで送ってもらった書類にサインして送り返す、ということもできるので、本来はその事務所に出向く必要もありません。

なので、オランダに住んでいて、実際に住所があるなど、必要最低限の条件さえ整っていれば、会社はあっという間にできてしまうことが分かりました。

日本でも会社設立自体は、書類さえ揃えれば特に難しいことはないと思いますが、こちらだと会社設立でさえネットで大方のことが片付いてしまうので、本当に簡単だなという印象です。

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現在オランダでプロデュース中の日本食レストラン。ここからどう変わるのか...。
Photo by 吉田和充

ちなみに、会社の資本金自体は最低1€から設立できます。

ということで、新しく設立した我々のNeuromagic Amsterdam B.Vでは、さっそく、今やヨーロッパのイノベーションキャピタルと言われているアムステルダム市との協働プロジェクトや、アムステルダムでの日本食レストランのプロデュースなどを手がけています。

今後はオランダで起業した経験も踏まえて情報発信をしていきたいと思います。

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著者プロフィール】 吉田和充(よしだ・かずみつ)|Facebook

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2016年3月、CMプランナー/ディレクターとして19年間勤めた博報堂を退社。在職中に1年間の育児休暇を取得し、その間に家族でアジア放浪旅へ。その後、子どもの教育環境を重視してオランダへ移住。オランダと福岡で、クリエイティブ・コンサルタント/クリエイティブ・ディレクター/ライターとして、広報広告全般からマーケティング、企業の成長戦略策定、ブランディング、新規事業立ち上げ、新商品開発、海外進出などを行う会社『SODACHI』@オランダと、『スタイラ東京』@福岡を起業。2017年6月から、Neuromagic Amsterdam BVのCEO/Business development オランダ進出を考えている会社や店舗など、マーケティング全般、Web制作、サービスデザインなどのご相談に乗ります。お気軽にご連絡ください。元サラリーマンクリエイターの海外子育てブログ『おとなになったらよんでほしい|おとよん』連載中。連絡はこちら

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