
Inc.:「未来のオフィス」ってどんな感じだと思いますか? 先日、これからのオフィスに関するプレゼンテーションを聞いたのですが、そこではこのようになると予想されていました。
1. リモートワークが普通になる
UCaaSのサービス提供をしているクラウドベース企業、Fuzeの調査によると、労働者の83%が「オフィスにいなくても生産性を保てる」と考えているようです。また、38%が「リモートワークが許されればもっと仕事を楽しめるだろう」と答えています。
2. 物理的空間は縮小する
コラボレーティブオフィスのような空間モデルへの移行が進み、チームが一同に会し、会話を促し、ベストアイデアを生み出せる職場が増えるでしょう。
3. 従来のデスクは消滅する
パーティションで区切ったデスクは過去のものとなり、よりニーズに合致した環境がもてはやされるようになるでしょう。たとえば、カフェのテーブル、スタンディングデスク、コラボレーションスペースなどです。
4. 「勤務時間」という考えは時代遅れに
仕事は9時〜5時ではなく、24時間365日になります。投資信託大手のFidelityの調査によると、ミレニアル世代は「柔軟な労働環境のためなら給料は下がっても構わない」と考えているとのこと。
でも、ちょっと待ってください。このリスト、多くの企業が持っているオープンプランオフィスに対する考えを如実に表しています。でも、矛盾に気が付きませんか? 項目1と4では人々はオフィスで働きたがっていないと言いながら、2と3ではそのオフィス環境について語っているのです。
これは、悲しい現実ではないでしょうか? 人々は、オープンプランオフィスで仕事をするよりも、家やカフェで働きたいと思っているというのに。
私は過去の記事で、生産性低下による損失が面積の縮小による節約を上回ることから、「オープンプランオフィスが生産性にとって最悪であり、不経済でもあること」を示しました。そんな環境がいかにみじめである(ときに馬鹿げている)かを示す動画も紹介しました。
信じられないという人のために、新たな証拠を紹介しましょう。米国内300のオフィスビルに勤める4万人以上を対象にした調査結果がJournal of Environmental Psychologyに掲載されています。
IEQ(屋内環境品質)のほとんどの項目において、周囲を囲まれたプライベートオフィスが、オープンプランのレイアウトを上回りました。とりわけ、音響、プライバシー、近接性の問題においてその傾向が顕著でした。オープンプランオフィスが持つ「交流のしやすさ」というメリットは、騒音やプライバシーのデメリットをしのぐことはありませんでした。
「近接性の問題」とは、人が他人と近くにいなければならない状況におかれたとき、どの程度不快であるかを意味します。つまり、ひと言で言えば、「オープンプランオフィスにはそれだけの価値がない」ということなのです。
ところで、オープンプランオフィスが嫌われる理由は、騒音や中断だけではなさそうです。ウォールストリートジャーナルでは、こう書かれています。
この環境は、従業員の視点を自分のスクリーン以外に向けさせるというエンドレスな中断を生み出します。このように視界の隅のほうで何かが動く「ビジュアルノイズ」は、集中力を削ぎ、分析的思考やクリエイティビティーを低下させるのです。
騒音の問題はヘッドフォンなどで防げますが、ビジュアルノイズを防ぐ方法はありません。
さて、話を最初に戻しましょう。そう、人々は家で働きたがっています。そして、多くの企業が提供しているオープンプランオフィスから逃れられるなら、給料が下がってもいいとさえ思っています。
それなのに、オフィススペースの設計者や、そこに発注している経営者たちは、この関係を理解していないから不思議です。オープンプランオフィスを強要すれば、生産性が落ちるだけでなく、優秀な人材が逃げていってしまいますよ。
まとめると、こういうことです。
経営者の皆様へ:従業員には、オフィスに出社して長時間そこで働いてもらいたいですか? そうであれば、プライベートオフィスを与えてください。少なくとも、高さのあるパーティションを使って、最低限のプライバシーを確保してください。
これって、そんなに理解しにくいコンセプトではないと思うのですが...。
Open-Plan Offices Kill Productivity, According to Science | Inc.
Image: Monkey Business Images/Shutterstock.com
Source: Inc. (1, 2, 3), Fuze, Fidelity, Journal of Environmental Psychology, Wall Street Journal
Geoffrey James(訳:堀込泰三)
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