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波乱の結末!トヨタがチーム一丸となって残り1台を完走させた、ル・マンに懸ける思い

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波乱の結末!トヨタがチーム一丸となって残り1台を完走させた、ル・マンに懸ける思い
写真提供/TOYOTA GAZOO Racing

Sponsored by トヨタ自動車

「速さはあったが、強さが足りなかった」。

TOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)の開発部部長、村田久武さんは、2017年のル・マン24時間耐久レース(以下、ル・マン)を振り返り、語ってくれました。

世界で最も過酷なレースの1つと言われ、速さ・耐久性・信頼性・安全性・燃費など、クルマの総合力が試されるル・マン。3台体制で挑んだTGRは、予選で史上最速のタイムを記録しながら、2台がリタイヤ。残り1台が総合9位(※)、ハイブリッド技術で争うル・マン最上位の「LMP1」クラスで2位に終わりました。

しかしそこには、サバイバルレースのなか、生き残った1台を完走させるために、チームとして最後まで諦めずに挑戦し続けた舞台裏がありました。

ここでは、現地取材を含め、チーム一丸となって戦い続けたTGRを、チーム力の視点からご紹介します。極限の世界で戦うその姿は、チームビルディングのヒントとして、ビジネスシーンでも生かすことができるはずです。

チーム力は、同じゴールを目指すフラットな関係から導かれる

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マシントラブルの修復作業を懸命に行うメカニックたち。この後、2台が相次いでリタイヤする壮絶な展開に
写真提供/TOYOTA GAZOO Racing

── 今年のル・マンは、参戦したトヨタ3台、ポルシェ2台による優勝争いと言われていましたが、結果、5台すべてがトラブルやアクシデントに見舞われるサバイバルレースとなりました。

序盤、レースをリードしていたトヨタの3台でしたが、深夜に2台が相次いでリタイヤ。残る1台もマシントラブルで緊急ピットインとなり、再スタートしたときの順位は54位。この時点で優勝という目標から大きなビハインドを背負いましたが、それでもチームは一丸となってゴールを目指しました。

村田さん:現在、TGRを含めたチームには20カ国ぐらいのスタッフがいますが、国籍も、肩書きも、役職も関係なく、フラットな関係性で、お互いをリスペクトしながら1つの目標に突き進んできました。

しかし、レースを戦うためには、ドライバーやエンジニアだけでなく、レースの部品を提供していただいているサプライヤーの皆さんなど、いろいろな人たちのプロセスが必要です。良い仕事も悪い仕事も、かっこいい仕事も汚い仕事もありません。「今年こそ優勝するんだ」という共通の思いでつながっている“たすきリレー”なんです。

だからこそ、最後のたすきを受け取った私たちは、多くの人たちの思いを胸に抱いて、優勝するのが難しい状況でも諦めずにゴールを目指し、クルマを完走させなければはいけません。これは、レースの現場だけではなく、トヨタという会社のDNAなんです。

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レースの戦況を見守る、TGR開発部部長の村田久武さん
写真提供/TOYOTA GAZOO Racing

── では、レースの現場でのチームづくりと、企業の組織づくりの共通点とは何か。ル・マンを訪れ、ピットでチームを励ましながら戦況を見つめていた、トヨタ自動車の豊田章男社長に聞きました。

豊田社長:3つのポイントがあると思います。1つめは「信頼」です。ドライバーとチームスタッフ、マニュファクチャー(メーカー)とチーム。それを支えているチューニングメーカーやサプライヤー、応援してくださる人たちなど、いろいろな人たちがいてモータースポーツは成り立っています。企業も同じです。まず、皆さんが共通のゴールを持ちながら、信頼関係を築くことが大切なことではないでしょうか。

2つめは「透明性」。信頼関係を構築するためには、透明性は欠かせません。これは企業経営、組織づくりにも相通じるものだと思います。3つめは「責任」。何かをする以上は責任が生じますからね。この3つが、チームや企業が成長するためには大切なことだと思っています。

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レースと企業のチームづくりについて語る、トヨタ自動車の豊田章男社長
写真/香川博人

レースは人の力が試される。だからこそ、現場で人は育ち、成長する

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多国籍チームのなか、多くの日本人スタッフも最後までレースを戦っていました
写真提供/TOYOTA GAZOO Racing

── ル・マンは勝者を決する24時間レースですが、その歴史は、ディーゼンルエンジンの登場やハイブリッドシステムの導入など、新しいクルマづくりのために、先進のテクノロジーを極限のレースで試す実験場にもなっています。

生き残ったトヨタの1台は、54位から再スタートし、猛烈な追い上げを見せて、総合9位(※)で完走しました。そこには、新しい技術と格闘するメカニック、チームが一丸となってサポートする姿があり、レースは激しい技術競争でありながらも、思いを1つにしたチームがつくりあげるものだとわかった瞬間でした。

村田さん:私たちがレースで戦うクルマは、最高速度が時速300㎞を超えます。エンジンだけではなく、モーターによる出力や走行時に得られる運動エネルギーを回収・蓄積しながら、再利用して高速で走るハイブリッドシステムです。

その技術、部品をつくっているのは人間です。しかし、日本でのテストなどでは、まわりに会社の先輩や同僚がいて、多くのサポート企業の皆さんも協力してくれますが、レースの現場では、エンジンの担当は1人しかいないし、持ってきた部品だけで対処するしかありません。

エンジンに不具合が起きたときに「どうするんだ?」と聞かれたら数秒で答えを返さないと、エンジンが壊れるかもしれないわけです。

大きなプレッシャーがかかるシビアな現場にいると、答えを導くための勉強を自発的にするようになるし、レースでなければ得られない経験が知識となり、技術者としての守備範囲が格段に広げるわけです。

ただ、この1年間、見えた課題、想定される課題を時間の限り潰してきましたが勝つことはできませんでした。

レースをやりながらケアレスミスはあります。そのミスがチームに大きな影響を与えることもあります。レースが終わり、涙ぐんでいるスタッフもいました。

でも、流した涙は一生忘れないと思うんです。自分の人生を懸けたレースの現場で起きたミスや悔しさは、自分の中に刻み込まれて消えません。私もレースで失敗したことがありますが、未だに覚えています。その意味で、彼らは絶対に成長するし、育っていくと思います。レースという仕組みやルールそのものが、私たちを成長させてくれているんだと思います。

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TGRのチームの思いを乗せた8号車が、最後まで走りきり、総合9位(※)で完走を果たしました
写真提供/TOYOTA GAZOO Racing

── では、ル・マンを戦った村田さんは、プロジェクトリーダーとしてどのようにチームを率いたのでしょうか? リーダーとしての心得を聞いてみました。

村田さん:「自分がすべてをわかっていると思ってはいけない」ということですかね。マネージャーなど管理者になると「俺はすごいんだ」と勘違いしがちです。指示を出したり、決めたがるんですけど、全知全能の人はいるわけがありません。

自分がすべて指示してしまうと、本当はもっと伸びるはずだった人が、自分の能力に限界を決めてしまって、成長できなくなる。だから、リーダーとして自分が得意なところは決めればいいけど、自分が不得意なことをきちんと認識して、得意な人を連れてきてやってもらう。以前、お話した「いがぐり」のチーム力です。そのことを自戒するようにしています。

世界最高峰のハイブリッドの戦い。その先にあるのは?

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レースで鍛えたハイブリッドシステムが新しいクルマづくりに生かされる
写真提供/TOYOTA GAZOO Racing

──ル・マンに挑戦するTGRが目指す目標は「優勝」であることに変わりはありませんが、村田さんには、もう1つ大きなミッションが課せられています。最後に、ハイブリッドシステムで戦うレースの先にあるゴールについて聞きました。

村田さん:私が所属するTGRの開発部門は、今年から、レースで培ったハイブリッドシステムの資産を、市販車のスポーツカー開発に生かし、近い将来、皆さまにお届けする重要なタスクが加わりました。

ル・マンをはじめ、レースやサーキットでは、TGRを中心としたチームで開発した部品やコンポーネントのひとつひとつが磨かれ、鍛えられています

たとえば、レースのクルマに搭載している自社製作のハイパワー型リチウムイオン電池は、市販車のプリウスで約3時間かかるフル充電を、ガソリンを給油する程度の約4分30秒で超急速充電することができます。しかも、長く走っても劣化することはありません。

ほかにも、市販車に活用できるハイブリッドシステムの技術や機能は、宝の山のようにあります。ハイブリッドは、燃費がよいエコのイメージがありますが、私たちが目指すのは、単なるエコカーではありません。

クルマは、移動や輸送としての役割もありますが、レースと同じように、操る楽しさもあります。意のままにクルマが動いたり、挙動をコントロールする経験をすると、ワクワク感やドキドキ感を走りながら味わうことができます。

先進のハイブリッドシステムによるクルマに乗る楽しさ、おもしろさを、ル・マンを戦ったドライバーだけでなく、もっと多くの皆さまに感じていただけるように、できるだけ早く実現したいと強く思っています。

※:他チームの失格により、最終的に8位になりました。


昨年の悲劇的な結末から1年、村田さんは今年のル・マンまでの道のりを振り返り、「昨年はうまくいけば勝てるかもしれなかった悔しさ。今年は、強いクルマをつくったつもりだったけど勝てなかった悔しさがある。ル・マンの借りは、ル・マンで返すしかありません」と話していました。

レースの現場には、結果という事実しかありません。しかし、事実を分析・理解すれば、課題が見つかり、チームとして改善策を見いだすことができます。TGRのチーム力の源泉は、事実と真摯に向き合い、努力を惜しまず、一丸となって改善を続けることにあると感じました。

それは、ビジネスの現場でも同じです。昨日より今日、明日の方がもっとよいやり方がきっとあるはずですから。


WEC ル・マン24時間耐久レース|TOYOTA GAZOO Racing

TGR|TOYOTA GAZOO Racing

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(文/香川博人)

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