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「同僚とのおしゃべり」が生産性がアップの鍵だった

「同僚とのおしゃべり」が生産性がアップの鍵だった
Photo by Gettyimages.

Inc.:先日、ある女友だちとランチをしていたときのことです。彼女は自分が事業展開している5つの国を定期的に飛び回る優秀なビジネスウーマン。幼い子どもを育てる愛情深いシングルマザーと二足の草鞋を履く、これ以上ないほどパワフルな人物です。彼女とはFacebookやSkypeを通じて、お互いの近況を把握しあえています。

そんな彼女が「社員にオフィスでソーシャルメディアの使用を禁じている」というのを聞いて、私はびっくりしました。

彼女にその理由を聞いてみると、「社員が職場で噂話をすると気が散るので良くないから」ということでした。「でも、君はこれだけソーシャルメディアを使っていても生産性を損なっていないじゃない」と私が指摘すると、それとこれとは別だそうです。とはいえ、本当は他人とおしゃべりをすることは大変有効な時間の使い方であり、そもそも彼女がここまで成功できたのも、もしかしたら、さかんに他人とおしゃべりしているおかげかもしれません。

おしゃべりの効能

現実的なマネージャーはデータ志向です。収益や営業訪問から各社員の生産性に至るまで、トラッキングできることは、何でもトラッキングしようとします。しかし、社員同士でどのようにコミュニケーションを取っているかをトラッキングするのは困難です。そのため、MITメディアラボのSandy Pentland氏は、実際の職場環境で人々がしているやり取りをトラッキングする「ソシオメーター」というデバイスを考案しました。

Pentland氏は、自著『Social Physics』の中で、人々が実際にはどのように仕事を片づけているか調査したことと、その調査から得られた驚くべき発見について説明しています。それによると、グループのもっとも重要な成功の予測因子は、同僚とのやり取りの量であることがわかりました(あくまでも量が大切であり、質ではありません)。話す内容は無関係で、技術的なことであろうと、単なる暇つぶしのおしゃべりであろうと、他人と話しをすればするほど、生産性が向上するのです。

前述の私の友人は、自分のキャリアを通してこのことにとっくに気づいていました。彼女の外交的な性格が貴重なビジネス上の人間関係を得ることにつながり、それが彼女を成功に導いたのです。しかし、これと同じタイプの対人交流は、役職のない一般社員レベルの人たちにも同じぐらい重要であるとPentland氏は『Harvard Business Review』に発表した論文で説明しています。

コールセンターのチームにソシオメトリックスのバッジを装着させたところ、収益につながる生産性の3分の1は、正式な会議以外での他人とのやり取りで生じることに気づいたPentland氏は、社員に各自ばらばらに休憩を取らせるよりも、チーム全体を1つにまとめて取らせることを提案しています。

そんなふうにちょっとやり方を変えるだけで、特段お金をかけて何かを導入しなくても、1500万ドルの収益増加をもたらしたのです。別のプロジェクトでは、ランチの食卓のサイズを大きくして、より大人数との交流を促してみたところ、やはり効果がありました。職場でのおしゃべりは、単に大目にみてもらうことというわけでなく、収益につながることが判明しました。

多様なネットワークを構築する

チーム内のコミュニケーションを増やすと生産性が向上するということは、ちっとも驚くような話ではありません。ほとんどの人が、自分のチーム内でお互いの家族の話や、オフィス外の生活の話をし合う職場がどのようなものか体験済です。しかし、チーム外の人たちとの結びつきを作ることも同じぐらい大切なことがわかっています。

2005年に、ある研究者チームがブロードウェイの演劇の中にはヒットするものと不興に終わるものがある理由を研究することにしました。制作予算、マーケティング予算、ディレクターの実績など、通常可能性のある要因にすべて着目した結果、出演者と裏方の間に築かれる非公式な人間関係のネットワークが一番重要であることがわかりました。

今まで一度も一緒に仕事をしたことがない人ばかりだと、興行収入も創造性の点でも結果は悪くなりがちです。しかし、出演者と裏方のネットワークが強すぎても、パフォーマンスは良くありませんでした。最大の成功を収めたのは、強い絆と新しい血の両方を備えたチームでした。

同じような効果は他の場面でも観察されています。ベル研究所の花形エンジニアやドイツの自動車産業、為替トレーダーを対象にした研究で、チーム内の団結が強いと同時に、異なるチーム間で自由に情報が交換されるような「緩い結びつき」が長期的にあるグループは新しい物を取り入れていく能力も高いことが実証されています。

同様の原理は地理的にも当てはまります。Anna Lee Saxenian氏は、シリコンバレーとボストンのハイウェイ128号線沿いの地域を比較研究した結果まとめた著書『Regional Advantage』の中で、北カリフォルニアの社交的な生活や仕事を気軽に転々とできる環境が、この地域のイノベーションを推進したことを発見したと書いています。

「失われたつながり」に気づく

私たちは、従来より生産性は冷徹で厳しい効率性によって向上すると思い込んでいます。コツコツ働き続けると、気が散らずに、より多くの仕事をこなせるような気がします。ところが、実際にはそれとはまったく逆のようです。他人とおしゃべりをする時間を持つことで、生産性がアップするのです。

ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院の研究チームがその理由を解明しています。1億7千900万ページの科学論文を分析した結果、論文にもっとも頻繁に取り上げられている職場は、従来の分野の範疇に根差していながらも、少しだけ変わったものを取り入れる傾向があることを発見しました。

Thomas Kuhn氏が自著『The Structure of Scientific Revolutions(科学革命の構造)』で説明しているように、パラダイムを作ることで特定の分野で進歩を遂げていくと、その枠組みの中で解決するのが困難な問題が、隣接定義領域のパラダイムの中ではずっと簡単に解決できることがあることを考えると合点がいきます。

日常的な業務にもこれと同じ原理が当てはまると考えるのが理にかなっています。私たちは何かをするときはいつものやり方になりがちです。ルーティンに磨きがかかると、すっかり習慣化されてしまい、能率も高くなりますが、同時に、勇気を持って目の前の状況から飛び出して新しい可能性を探り、古いルーティンを打ち破り、次のレベルまでパフォーマンスを高める必要もあります。

効率性のパラドックス

現代でも、いまだに経営管理の考え方の大部分はフレデリック・ウィンズロー・テイラーの科学的経営管理のコンセプトに根差しています。つまり、ルーティンの標準化とプロセスの最適化こそ生産性を向上させるベストの策だと信じられています。この考え方だと、労働者は機械の歯車になり、理想的な技術仕様書に沿った特定の機能を果たすことが求められることになります。

しかし、今日私たちの仕事はチーム間、業者、顧客間の相互適用性を必要とすることがとても多くなっています。ですから、一見油を売っているように言えるおしゃべりも、業界全体の収益構造の枠組みの中で業務を行っている他人の状況を知るのに役立つことが多いのです。それに気づく前は、新しい方向に進むきっかけとなる情報にはごくわずか遭遇できませんでした。

この傾向は、分断された環境ではさらに顕著になります。物事が変動的で、いろいろなことが瞬く間に起こり、数え切れないほど多くの方向に向かっていくとき、多様なネットワークを構築して、頻繁にそれにアクセスすることがますます重要になります。つまり、外に出ていって他人と少しおしゃべりする必要があるということです。

というわけで、効率性を高くしようとすると、一種のパラドックスが発生するわけです。最適化を目指すほど、進歩は目に見えにくくなり、変化に反応することも新しい可能性に気づくこともできにくくなります。ですから、より多くの成果を上げたいなら、PCから離れて、コーヒーを片手に、生々しいゴシップに興じるべきかもしれません。結果は保証の限りではありませんが。

Want To Make Your Team More Productive? Let Them Gossip More | Inc.

Greg Satell(訳:春野ユリ)

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