特集
カテゴリー
タグ
メディア

素晴らしいCEOになりたい? それにはまず、素晴らしいプロダクトマネージャーになってください

素晴らしいCEOになりたい? それにはまず、素晴らしいプロダクトマネージャーになってください
Image: Monkey Business Images / Shutterstock.com

Inc.CEO(最高経営責任者)に至る道はたくさんありますが、ある道を通れば、ほかの道を通るよりも後々有利になることがあります。もちろん、CEOになることが重要なのですが、いちどその責務についたあとは、そこで何をするか? どのように行うか? がもっとも重要なテーマとなります。

昨年、Salesforce社の重役から、コール・インテリジェンス企業Invoca(かかってきた電話のデータを収集し、マーケティングやセールス、カスタマー・インサイトに役立つ情報を提供する)のCEOとして、はじめて組織を率いる立場に立ったGregg Johnson氏は、このことをよく理解しています。

以下はGregg氏の談話です:

私はSalesforce社で、プロダクトマネジメントとプロダクトマーケティングを10年間担当したあと、昨年10月にInvoca社にCEOとして入社しました。

仕事をはじめて数週間経ったころ、前の会社の同僚から「会社のトップになる気分はどうだい? 全社員に命令できるなんてさぞかし愉快だろう?」と聞かれました。そのとき私たちは自宅にいたのですが、10歳になる息子は私の新しい肩書を”的確に”言い表す言葉を探しあぐねているようでした。でもついに、その言葉を見つけました。「ビッグボス(big boss)」です。そして、幼い弟にビッグボスの仕事は人びとに命令を出すことなんだ、と説明しました。

「boss」という言葉は、オランダ語で「主人」を意味する「baas」に由来します。この語源は、従来型のCEO、つまり、企業の最高責任者であり、重役の中で一番上位に位置する者、を表す言葉としてはしっくりきます。しかし、私が考える現代のCEOのイメージや私自身のビジネスとリーダーシップの経験、そして私が尊敬してやまないリーダーたちの実像には、まったく合っていません。

実際、私がCEOという現在の責務を担うにあたり、最も役に立ったと思う訓練期間は「誰のボスでもない」立場だったときのこと。具体的に言えば、プロダクトマネージャーとして過ごした時間でした。

テクノロジー企業におけるプロダクトマネジメントは直接コントロールできる幅が最も狭く、影響力によるマネジメントの幅が最も広い領域だと言えます。その役割は、多種多様な人びとを協力して働かせることなのですが、正式な権限はあまり持たされていません。もっとも、テクノロジー分野で働いたことがない人は、プロダクトマネージャー(PM)という職種になじみがないと思います。プロダクトマネージャーは次のものを含む、さまざまな役割を担っています。

  • デザイナーやエンジニアと一緒にプロダクトを開発する。
  • プロダクトマーケティングにより、プロダクトのポジショニング、価格、市場投入戦略を決定する。
  • デマンドジェネレーション(営業機会の創出)チームとともに見込み顧客を牽引する。
  • ブランドマーケティングチームとともに、アナリストやメディアへプロダクトを周知させる。
  • セールスチームとともに、4半期ごとの売上結果をまとめる。
  • カスタマーサクセス、およびカスタマーサポートチームとともに、顧客の満足度を高める。

実際に、企業のありとあらゆる部署とやりとりすることになります。ただし、向こうからは何の報告もあがってきませんが…。

たとえば、従業員が500人ほどの一般的なソフトウェア企業では、プロダクトマネージャーはおそらく20人ほどです。たしかにその役割は「プロダクトマネジメントに関するあれこれ」なのですが、その戦略とビジョンを実現するためには、「あなたのために働いているわけではない」500人中480人の協力が必要不可欠となるのです。

これが、私がプロダクトマネジメントの経験がCEOになるための素晴らしい訓練になると考える理由です。プロダクトマネージャーの役割そのものが、本質的に優れたCEOになるために必要なスキルの獲得を求めるのです。そして、そのスキルとは次のようなものです。

1. チームと企業にとって魅力的なビジョンを描く

CEOの一番の責務は、企業をビジョンに向かわせ、すべての従業員が未来を思い描けるようにすることです。そうすれば、従業員たちがその未来を現実のものとしてくれます。

ビジョンを明確に描くほど、その達成のために組織の知的で創造的なパワーをより効果的に活用することができます。「ボス」になって企業運営の細かいところまでマイクロマネジメントする必要はありません。プロダクトマネージャーの役割もデザイナーやエンジニアとつねに戦略的ビジョンを確認し合いながらプロジェクトを前に進めることです。優れたプロダクトマネージャーは、細かい指示を出さなくても、ビジョンに命を吹き込むとができます。

たとえばSalesforce時代に、その良い事例となるエピソードがありました。当時、私の同僚でプロダクトマネージャーだったAdam Tormanは、プロダクトのユーザープロフィールをもっとシンプルなものにしたいと考えていました。不必要なくらい複雑だと感じていたのです。Adamは、デザインチームとエンジニアリングチームをその気にさせるには、この問題を具体的かつリアルな形で見せる必要があると考えました。

そこで、ユーザープロフィールに関わるすべての画面と関連データをプリントアウトして、エンジニアリングチームに見えるように壁に並べて貼り出しました。それは、本社ビルの複数階にまたがるほどの長さになりました。効果はてきめんで、Adamはもはや、エンジニアリングチームに細かく説明する必要はありませんでした。エンジニアたちはその問題を自分の問題ととらえ、解決のためのアイデアを自ら出すようになりました。これがCEOの一番の責務です。

2. 厳しい投資判断を下す

ビジョンを策定した後のCEOの役割は、限られたリソース、時間、資本をどこに集中するか、優先順位をつけることです。

CEOは従業員たちがトレードオフの意思決定を自ら行い、企業戦略に合わせながら迅速に動けるように必要なコンテキストを提供しなければなりません。企業のビジョンを遂行するうえでの障害を取り除くのも役割です。そして、優先順位をつけることはプロダクトマネジメントのまさに中心的な責務と言えます。

Salesforce時代の出来事がもう1つ頭に浮かんできます。2009年、TwitterとFacebookが注目を集めるようになったときのこと。マーク・ベニオフ(SalesforceのCEO)が、Salesforceのプロダクトチームとエンジニアリングチームに対し、プロダクトのコアにソーシャル機能とコラボレーション機能を構築するように、と指示を出しました。私たちはそれを実現するために、ほかのどのプロジェクトを「保留」にするかを決めなければなりませんでした。

私たちが最初のプランを持ってマークに会いにいくと、彼は激しい口調でこう言いました。「君たちは積極性が足りない。このソーシャルなレイヤー(後にSalesforce Chatterとなる)は、最優先事項なのだ。後回しにできるものがどれくらいあるのか、君たちはもっとタフな決断をしなければならない」

私たちはプランを練り直し、さらに多くのプロジェクトを保留にして投資額を増やし、9カ月で一連の機能セットをリリースしました。このとき開発した機能がそれから数年間、企業を戦略的に差別化するのに大いに役立ちました。

私たちはCEOの言葉に従い、ハードなトレードオフと投資の決断を行いました。その結果、今に至る成果を手に入れることができたのです。

3. 30日と3年の視点を行き来する

CEOならではの、私が気に入っていることの1つに30日のタイムスパンと3年のタイムスパンの間で視点を移動させるという、知的チャレンジがあります。CEOは企業が月次、あるいは四半期の目標を確実に達成することに責任を負っています。また企業の課題を見つけ、軌道を正すための手続きを整備し、分析することも仕事です。

しかし同時に企業のビジネスを業界のトレンドに合わせ、新たな成長源をつくるように努める責任も担っています。

プロダクトマネージャーも同じようなやり方で、複数の思考モードを切り替える必要があります。その仕事の重要な役割は、毎日のようにエンジニアリングチームと顔をあわせ、プロダクトの最新状態を確かめ、軌道を修正し続けていくことです。そして、そのわずか数時間後には1年後、あるいはそれ以上先にリリースする、新しいプロダクトのコンセプトについて、ブレインストーミングを行っているかもしれません。

スティーブ・ジョブズは、何年も先を見据える戦略的な視点と、プロダクトの細かいニュアンスを見る視点を行き来することができる、稀有なCEOの見本です。1997年にジョブズがAppleに戻ったときにしたように、企業の進路をあれほど大きく変えらえるCEOはめったにいません。ジョブズは「未来を見る」能力を持ち、Appleをパーソナルコンピューティングだけでなく、モバイルデバイス、音楽、エンターテインメント、テレビを扱う企業へと大きく転換させました。

大きなビジョンを完遂するために、ジョブズはプロダクトのパッケージデザインに至るまで、消費者体験に関する微細な、でも重要な要素に徹底的にこだわりました。1984年に発表したMacintoshの箱の色やデザインを決めるのにジョブズ自身が積極的に関わり、それが後にiPodやiPhone用のユニークなパッケージデザインへとつながります。

ジョブズにとっては、プロダクトのいかなる細部であっても取るに足らないものはありませんでした。この注意深さがAppleのカルチャーの核心であり、成功の要因でもあるデザインへの徹底したこだわりを導き、浸透させたのです。

とはいえ、誰もスティーブ・ジョブズやマーク・ベニオフになることはできません(なるべきでもありません)。優れた企業幹部やCEOになる方法はたくさんあり、また、そこへ至る道もたくさんあるのですから。しかし、企業がテクノロジーや市場の変化にすばやく対応しなければならならい今日の世界では、従業員が企業の利益になる意思決定を自律的に下せるような環境を整えることがリーダーの重要な責務となります。

私の考えでは、このタイプのリーダーシップを訓練するのに最適な場所はリーダーが公式な権限をふるってマネジメントをするような、従来の指揮統制型の環境ではありません。今日必要とされるリーダーの資質は、人びとへの影響やビジョンを結晶化してモチベーションを与えるといったマネジメント経験を通して、そして誰よりも権限があるその肩書に頼らないことで身につくものなのです。

直接的な権限をほとんど持たないプロダクトマネージャーとしての経験が、未来のCEOにとって最も効果的なトレーニングの場であると私が言うのは、こうした理由によります。


Want to Be a Great CEO? Be a Great Product Manager First|Inc.

Image: Monkey Business Images / Shutterstock.com

Reference: Salesforce, Invoca, Gregg Johnson

Jeff Haden(訳:伊藤貴之)

swiper-button-prev
swiper-button-next