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オランダに移住して気づいた「オーガニック食品」から見えてくること

オランダに移住して気づいた「オーガニック食品」から見えてくること
image via Shutterstock.

オランダで暮らしはじめて日本との違いに驚いたり、感心したり、日々色々と気づくことがあります。なかでも、生活に身近なこともあって大いに興味をもっているのがオーガニック食品です。

私は日本ではあまりオーガニックに関心がなく、むしろ懐疑的でした。日本のオーガニック食品は、農林水産省が定めた「有機JAS」認定をとる必要があり、認証を受けない食品は「有機」や「オーガニック」などの名称表示、これと紛らわしい表示をすることが法律で禁じられています。そして認定取得に莫大な費用がかかります。そんな事実を知り、オーガニック食品の価格には農家の方たちが丹念に育てた時間やコストよりもむしろ流通経路が反映されているのではないかと思うようになりました。そのような事情も影響しているのか、オーガニック表示が今一つ明瞭ではなく、イメージ先行で流行っている感じがしました。またオーガニック専門店の店舗数も多くなく、ひとたびこだわりはじめると、生活に不都合がおきそうな感じもしました。有機JASのラベルがなくてもオーガニックを名乗れる食品も多いような気がするので、オーガニックという謳い文句に頼ることはあまりありませんでした。

特別ではないオーガニック食品

しかし、オランダでは意識しようがしまいが、普段の暮らしの中でオーガニック食品が目に飛び込んできます。例えばオランダ最大の店舗数を誇るAlbert Heijn(アルバート・ハイン)という一般的なスーパーマーケットでは、普通のジャガイモ横に緑色の表示「Biologisch」(オーガニック食品)があります。農産品だけではなく、加工食品でも普通の商品とオーガニック商品が隣り合わせで並んでおり、種類は1000品にのぼります。値段も躊躇するほどの差はありません。

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(左)オーガニックのジャガイモと普通のジャガイモは14セントくらいの価格差。(中)(左)サラダオイル、ハムの売り場でもオーガニックがずらり

オーガニックにこだわる、こだわらないに関わらず、すべての消費者に選ぶ権利を委ねる陳列方法が逆に関心を引くともいえます。

オーガニックにもっとこだわりたい人には、オーガニック専門のスーパーマーケットもあります。「EKOPLAZA」や、主にアムステルダムで展開している「Marqt」などのチェーン店がその代表格です。圧倒されるのはその品揃え。農産物、畜産物からポテトチップやチョコなどの嗜好品まであり、食材に気をつけている人は、あちこち探し回る必要もなく、大抵のものをここで買うことができます。また、中規模、あるいは個人経営のオーガニック店が街で普通に見つかります。オーガニック食品は特別な存在ではなく、人々の暮らしのなかにあることを痛感します。

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オランダ全土で90店以上を展開するオーガニックスーパー最大手のEKOPLAZA。


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有機食品と地元の食品にこだわるMarqt(マルクト)というスーパー。デンハーグ、ロッテルダム、デンハーグにも店舗がある


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オーガニックスーパーではグルテンフリーの食品も多い。右がそば粉。左が製パン用の小麦粉


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日本食のワカメやヒジキはオーガニック食品として認知されている。

オーガニック認証ラベル

オランダではどのようにしてオーガニック食品を認定しているのでしょうか。オーガニック認証ラベルについて調べてみました。

代表的なのが、EUのオーガニックファーミング認証ラベルです。EUの厳しい有機農業規則に従って生産された農産物であることを証明しています。

また、オランダ国内ではSkalという機関が検査、認証を行っているEKOラベルがあります。Skalによって認定されたオーガニック企業のみがライセンスを取得でき、95%以上のオーガニック原料を使用した食品にラベルをつけることができます。オランダの消費者にいちばん広く認知されています。EUの認証ラベル、あるいはEUとEKOの両方を取得している食品も多くあります。


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EUオーガニックファーミングの認証ラベル(左)とSkalが検査、認証を行うEKOラベル(右)


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両方のラベル認証があるカボチャと生姜のスープ。

その他、EKO PLAZAなどではEU諸国から広く商品を輸入しているので、それぞれの国の認証ラベルがある食品も見かけます。また、オーガニックからは少し外れますが、おもしろい認証ラベルもありました。Ik Kies Bewustという機関が発行しているHet Vijnkeというラベルです。食生活に関心をもってもらうためのラベルで、緑のラベルは毎日の健康に必要な栄養素が入っている基本的な食品のなかでも、低脂肪チーズや繊維が豊富で塩分控えめの全粒粉パンなど、より健康的な食品につけられます。青色のラベルはスナックやソフトドリンクなど必須ではないが、たまに食べる食品の中でも糖分や塩分を控えた商品につけ、消費者がより健康的なチョイスができるようにアドバイスする役目を果たしています。

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右下のマークがHet Vijnkeの緑のラベル。ジャガイモはオランダ人の主食のひとつ。


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Het Vijnkeの青色のラベル。商品は朝食でよく食べられるワッフル。ライスワッフルが一般的だが、写真はトウモロコシが原料のもの。

オーガニックは社会問題を投げかける

オーガニックスーパーに通ううちに、食の安全だけではなく、オーガニック食品にはもうひとつのメッセージがあることに気づきました。それは食品をめぐるさまざまな問題です。

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クッキー(右上)には持続可能なパーム油の生産と利用を促進する認証制度RSPOのラベルがついています。コーヒーのパッケージ(右中)にはフェアトレードの認証ラベル、チョコレート(右下)にはヴィーガン、グルテンフリー、乳製品を含まない情報の他に、小規模生産者から直接仕入れていること(Direct trade)、包装材料が自然に循環することを目指す生分解性パッケージ(Foil4Soil)を使用していること、持続可能な森林管理のための国際基準ラベル(PEFC森林認証)があります。

フェアトレードとは、発展途上国で生産される作物や製品を適正な価格で継続して取引を行うことで生産者の生活を持続的に支えることを目的としています。貿易の不均衡が大きな問題になっていることは知識としてあるものの、生産者はあまりにも遠くてピンとこないうえに、それを是正するための術をいち消費者はもっていません。そこに認証ラベルがあるとアクションがとれるうえ、パッケージに印刷された生産者のイメージ写真でフェアトレードを身近に感じることができます。

また、卵や肉などの畜産物には、3つ星で表示される「Beter Leven」というラベルがついているものがあります。これは家畜の飼育状況を示すラベルで、家畜によって条件が違います。卵の場合、どの鶏も屋内は1㎡に9羽の飼育空間を条件として、1つ星は平飼いと止まり木や砂場などの遊具、2つ星はさらに屋外に自由に行けること、屋外では4㎡に1羽の広さを確保、1グループ最大6,000羽まで。3つ星はそれらの条件に加え、屋内は1㎡に6~7羽の空間確保、くちばしキャップの禁止などが義務づけられています。

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卵売り場にはさまざまな種類が売られており、Beter Levenのマークがない安い卵もあります。ちょっとだけ値段を足せば努力をしている生産者を支援することになり、ひとたびBeter Levenのマークのある卵を買い始めると安い卵に戻れなくなります。そんな自分の購買行動の変化に、オーガニック食品は健康や食の安全はもとより、さまざまな社会的な問題を考えるきっかけになるのだと気づきました。このような認証ラベルを意識することで、生産者、家畜の状況、環境問題など、手に取る食品が売り場に置かれるまでの過程を以前よりリアルに考えられるようになりました。

足元から育つオーガニック

ある週末、自転車でデルフト郊外に出かけた際、とある敷地でファーマーズマーケットに出くわしました。デルフトに拠点をもつコーヒーやパン、八百屋などのオーガニックショップが露店を開いていました。このようなマーケットは珍しいものではなく、週末あるいは週中の決まった日に、広場や通りで頻繁にオーガニックや手作りなどのマーケットが盛んに開かれています。郊外に行けば農家から新鮮な自家製チーズやジャムなどを買うこともできます。

オランダでこれだけオーガニックが浸透しているのは、幼い頃からこんなマーケットに通っていることも大きいのではないかと思いました。オーガニック食品は特別な場所で特別な存在として売られるものでもなく、流行りでもなく、学校や社会見学で教えてもらうものでもなく、人々の暮らしに寄り添いながらじわじわと広がり、生活に浸透していくものなのだと思います。


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原っぱで行われていた1日限定のマーケット。


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Boeren(農家)のマーケットなのでDJもファーマー風。


著者プロフィール

水迫尚子(みずさこ・しょうこ)LinkedIn

出版社2社、1年のイギリス留学を経て、フリーランスの編集者・ライターとなる。編集者としては主に実用書、ライターとしては旅行雑誌/書籍に関わり、その他に企業のCSRの英文編集/チェッカーも行う。旅行媒体の編集者・ライターとして関わった主な書籍に『わがまま歩き 香港』『わがまま歩き マカオ』『わがまま歩き オランダ ベルギー ルクセンブルグ』がある。オランダの観光ガイド「ikganaar」、パン好きが高じて立ち上げた「オランダの茶色のパン」を運営している。

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