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旅行特集─2017年、夏

移住者の私がオススメする「夏のオランダ」で訪れたい5つの場所

移住者の私がオススメする「夏のオランダ」で訪れたい5つの場所

こんにちは。オランダ、デンハーグ在住の水迫尚子です。今回は、「移住者に聞く旅行ガイド」のオランダ編として、オランダに来たら訪れてほしいお気に入りのスポット5つをご紹介します。

デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園(Het Nationale Park De Hoge Veluwe)

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まず、今までに訪れた場所のなかで、いちばん感動し、今でも自分のなかでは不動のトップにいるデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園を紹介したいと思います。

初めて訪れたのは2年前の夏で、公園内にあるクレラー・ミュラー美術館が目的でした。折り畳み自転車ごと列車に乗り込みアーネム(Arnhem)駅へ。オランダでは珍しい上り坂を10キロほどひいこら漕いでようやっと公園入口に着くと「美術館までは、この入口から8キロくらいね」。デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園は広さ55ヘクタール、氷河期に形成されたオランダ最大の氷堆積地帯であること、オランダで最も美しい自然景勝地に選ばれていることをのちに知りました。

森の中をしばらく漕ぎ、突然、開けた大地に出ました。吸い込まれそうな青い空と白い雲、どこまでも広がる草原。向こうに山並みが見えるのが普通の景色だと思っていた私には、目の前に広がるだだっぴろい風景が信じられませんでした。草やヒースがさわさわとたなびき、美術館を訪ねるために来たこと、オランダにいることさえ忘れ、夢心地でペダルを踏み続けました。景色は枯れ木が横たわる荒涼とした砂丘になり、草原になり、マツのトンネルを抜け、森を抜けて目的地に着きました。美術館の前に自然の芸術を全身で受けとめたせいか、すでにすっかり大満足している自分がいました。とはいえ、ヴァン・ゴッホ、ルドン、ピカソ、ルノアール、モネなどの名画を所蔵するクレラー・ミュラー美術館も素晴らしいです。

公園は3つの入り口からアプローチできます。鉄道駅エデ・ワーヘニンゲン(Ede-Wageningen)かアペルドールン(Apeldoorn)からバスに乗るのが一般的です。入ってすぐに駐輪場があり、そこにずらっと並ぶ白い自転車が無料で利用できます。とにかく広いので、入口で地図を購入するのがおすすめです。自転車道の分岐に番号が付されたポストが立っているので、その番号を頼りに無駄なく回ることができます。カフェは美術館内に1つ、公園内に2つあります。

美術館は観賞しているうちに多少疲れてくるものですが、ここでは大きな窓から緑が映り、森の中を散歩する気分で名画が鑑賞できます。絵画も心なしかのんびりしているように見えます。

営業時間:デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園:1~3・11・12月9:00~18:00(9月~20:00、10月~19:00)、4・9月8:00~20:00(5・8月~21:00、6・7月~22:00)

クレラー・ミュラー美術館:10:00~17:00(彫刻庭園~16:30)、月曜休

料金:公園と美術館のコンビチケット大人€18.60(6~12歳€9.30)、公園のみ大人€9.30(6~12歳€4.65)

住所Houtkampweg 6, 6731 AW Otterlo

URLhttps://www.hogeveluwe.nl/en

ビネンディーゼ(De Binnendieze)

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オランダ人とボートは切っても切り離せない関係です。初夏の陽気になると、川や運河にボートで繰り出し、ワインをかたむけたり、おしゃべりに興じたりして、リビングルームで寛ぐがごとく、悠々と水面をすべっていきます。そんな水とオランダ人のつきあいを知るにはボートでの運河めぐりが一番です。運河沿いに並ぶ美しいカナルハウスを水上から眺めるのが定番ですが、今回は、建物の下から街を眺めるという一風変わったボート巡りをご紹介しましょう。

アムステルダムから列車で約1時間、北ブラバンド州の州都、通称デンボス(Den Bosch)、正式にはスヘルトーヘンボス(’s-Hertogenbosch)に着きます。デンボスは湿地に築かれた要塞都市で16世紀にはオランダ第2の人口を抱える都市にまで栄えました。人口が増えるたびに運河や水路の上に街を広げていったそうで、そんな中世の名残を眺めるのがビネンディーゼというボート巡りです。ビネンはオランダ語で内側、ディーゼは北ブラバンド州を走る川の名前です。

オープンボートに乗り込むと船頭さんが静かに船を滑らせます。水路幅が次第に狭くなり、トンネルの中に入ります。正確にはトンネルではなく建物の下。見上げる天井は建物の床部分です。船頭さんによる歴史解説は残念ながらオランダ語なのでちんぷんかんぷんですが、それでも、貿易、生活の路として使われていた中世のインフラが今でも建物を支え、下の昔と上の現在が同じ時間に存在していることに感動を覚えます。狭い水路の両側にそそり立つ壁の渓谷、水路に降りる階段でまどろむ猫。頭上の橋を中世の人が渡っているような錯覚さえ起こします。まちなかを巡った後、最後に広いドメル川に出て約1時間の船旅は終わります。

街整備のために取り壊されるところだったのを、1970年にデンボスの資産として保護することに定め、今では観光ハイライトになっています。オープンボートで涼風を感じながら、まちの下から歴史を知るユニークなボート巡り。Historical boat trip、Fortifications route、Boad trip Jheronimus Boschの3種類がありますが、1時間弱のHistorical boat tripがおすすめです。

運航時間:4~10月火曜~土曜10:00(月曜13:30)~17:00、日曜10:00~16:00、11~3月火曜~土曜10:00~17:00、日曜12:00~15:00

料金:大人€8.50(4~12歳€4.50)

住所:出発はMolenstraat 15aVoldersgatの2つ

URL: https://dagjedenbosch.com/en/activiteiten/activiteit/historische-route-2/

スヘフェニンゲン(Scheveningen)

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雲ひとつなくピカッと晴れわたる7月のとある週末。中心街はさぞかし混んでいるに違いないと出かけてみると、人はまばらで、ガラーンとしています。友人のお店に寄ってみると、彼はやれやれと首をふりつつ「仕方ないよ、今日は。みんなビーチだよ」。

オランダの夏は突然20度以下になったり、曇り日が続いたりと、日本の夏ほど安定していません。なので、ちょっとでも晴れ日があると、人々はここぞとばかりにビーチへと出かけるのです。オランダ西側は北海に面しているのでビーチはたくさんありますが、なかでも有数のビーチリゾートとして知られているのがスヘフェニンゲンです。スケベニンゲンと発音できなくもなく、その名前で日本人には強烈な印象を残しますが、1885年創業の高級ホテルの前に白い砂浜が広がる美しいビーチです(ヌーディスト用のビーチもあります)。

スヘフェニンゲンの魅力は、いろんな楽しみ方があることです。デッキチェアをレンタルして、さらさらの砂浜で日がな1日日光浴というヨーロッパビーチの典型的な過ごし方はもちろん、ビーチハウスで海を見ながら爽快ランチや夕日の感動ディナー、ナイトクラブで盛り上がることもできます。ちなみにビーチハウスというと掘っ立て小屋風な日本の海の家を想像するかもしれませんが、どっこい砂の上に建てられた季節限定の立派なレストランです。

ビーチに並行して整備されたブルバードはそぞろ歩きにぴったりで、地元では有名なSimonisという魚屋さんがスナックバーやレストランを出しており、ここのタラのフィッシュ&チップスはビーチサンダルサイズです。海に突き出た桟橋はDe Pierという施設で、一時期は存続の危機にありましたが、数年前に見事に復活し、レストランやショップ、上階のデッキにはソファーを並べたバーなどもあります。De Pierには昨年観覧車が完成し、バンジージャンプで度胸試しもできます。

昼間の強烈な日の光が随分柔らかくなる夕方、にぎやかさの中にも穏やかな空気が漂いはじめ、波打ち際では犬たちがじゃれあっています。ゆっくりゆっくり水平線に沈んでいく夕日をビーチハウスから眺めていると、自然に幸せの溜息がもれます。

プラスアルファで楽しみたい人は、ハーグ中心街で自転車を借りてスヘフェニンゲンまでサイクリングがおすすめ。30分ほどで着きます。ビーチ周辺の砂丘にもサイクリングロードが整備されており、砂地にへばりつくように茂る草や、マツやローズヒップをつけるバラの道は砂丘の夏の香りに包まれています。

営業時間:ビーチハウスはお店にもよるが、4~10月の10:00~24:00

住所Scheveningen

URLhttps://denhaag.com/en/scheveningen

フロレンシア(Florencia)

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私の住むデンハーグは、ビネンホフという国会議事堂があり、大使館も多いので、エクスパット(駐在員)の街というイメージがあります。高そうなスーツを身にまとい、颯爽と街を歩き、夕方はカフェでワイン片手に談笑…というような。確かにそういう人たちもいますが、ローカルなハーグっ子たちは、単刀直入なオランダ人でも涙がちょちょぎれるくらい口が悪く、荒っぽく、陽気な人たちが集う下町風情があるのです。

そんな下町ハーグの人々にこよなく愛されているアイスクリームパーラーがフロレンシアです。イタリア系の家族がグローテケルク(大教会)の愛称をもつ教会の近くの広場に根を下ろして80年以上の老舗で、レトロな雰囲気ですがちっともオシャレではなく、ガサガサしていて、カウンターでもたもた迷っていると、クープを手にしたフロレンシアお母さんがアゴをしゃくって“Zeg het maar”(何にすんの?というニュアンス)とせっついてきます。イタリアチームのサッカー中継があると、心ここにあらずでテレビ画面に見入りながらちゃっちゃとお客をさばいています。

店の前の広場にはこれまたトレンドとは無縁の黄緑色のテーブル、椅子のテラス席が雑然と並べられていて、オランダでは珍しく朝は7時から夜の11時まで開いているからか、アイス片手にくっちゃべる人たちが入れ替わり立ち代わりして、いつもにぎわっています。毎日通うおじさんグループもいるようで、ここで仲間とおしゃべりしなければ1日が終わらないのかもしれませんね。

アイスは25種類以上あり、定番のイチゴやチョコレートのほか、ケーキ、スパイスの効いたスペキュロース、オランダのクッキー、ストロープワッフルといたオリジナル・フレーバーもあります。1スクープ(ボレチェ)が1ユーロという安さも人気の秘密です。オランダの人たちは1ボレチェにホイップクリーム(スラッグローム)をトッピングするのが好きなようです。

私は、アイスはもとより、雰囲気も含めてフロレンシアが気に入っています。好きな時間帯は夏の夜7~8時頃。晩ごはんを済ませ、ポケットに小銭を入れていそいそと出かけます。まだまだ日は高く、夕方のような雰囲気で、同じく夕飯を済ませたであろう人たちが集って、延々と話しています。いつものおじさんグループはもちろん、昔は鳴らしたといわれる娼婦とピンプの高齢カップルの姿もたまに見かけます。数年前までは知ることもなかったハーグの人たちの人生模様とざわめきに包まれ、異国で見つけた小さな幸せを、アイスと一緒にしみじみと味わいます。

営業時間:夏期7:30(土・日曜8:00)~23:30、冬期7:30~22:00、金曜7:30(土曜8:00)~23:00、日曜8:00~22:00

住所: Torenstraat 55, 2513 BN Den Haag

URL: http://www.florenciaijs.nl/

工芸とおもちゃの博物館(Oude Ambachten & Speelgoed Museum)

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最後に博物館をひとつ紹介します。オランダは九州サイズの広さに1000以上のミュージアムが密集するミュージアム大国です。オランダ人の高い整理整頓能力、収集癖が多分に貢献しているのではと思います。そのなかでひとつ取り上げるのは大変難しいですが、後にたびたび出合うことになる「集めすぎてしまった」博物館の代表格として取り上げたいと思います。

オランダにはバイブルベルトと呼ばれる内陸地帯があります。保守的なプロテスタントの人々が住んでおり、グローバルって何のこと?というくらいのんびりした時間が流れています。そんなバイブルベルト地帯の、およそ観光には縁のないバーナベルト(Barneveld)市のテルスクール(Terschuur)村に、この博物館はあります。

館長と思われるおじさんがアジアからの来訪に「日本から来たの?嬉しいね」と大変喜んでくれました。そして得意そうに「この博物館では160種以上の昔の道具や工芸が展示してあるんだ。手に取ってもいいよ、ただし丁寧に扱ってね」

ここは1900から1970年代に至るまでの「学校」「病院」「印刷工場」「リビングルーム」「雑貨屋」などテーマ別の展示室を巡りながら、オランダの昔の暮らしや仕事を学ぶという博物館です。展示物を手にとってもいいし、座ったりすることもできるので、ハンズオン型と言えるでしょうか。

最初に入った「理容室」では、理容室がまるごと再現されていました。おびただしい数の展示品は、カミソリやハサミ、ブラシはもちろんのこと、壁には昔の電話、テーブルには雑誌、なぜかゆりかごに赤ちゃんまでいます。次に入った「学校」の部屋では、黒板、机、イス、昔の地図、定規、教材、鉛筆、インキ壺、お弁当ボックス、水筒などノスタルジックな品々がずらずらっと並び、人形の先生と生徒で授業風景が再現されています。

……しかし。この人形がどう見てもデパートのマネキンなのです。モードファッションのポーズの先生が放つ違和感はかなりのものです。次に入った「産婦人科医院」では、バレリーナの手つきをした看護婦が補聴器をその手にもち、無理やり寝かされた妊婦マネキンが無表情でベッドに横たわっていました。次の部屋、その次の部屋でも、マネキンが商店の女将さん、アンニュイなバーテンダー、専業主婦、やたらイケメンな印刷工などに変装して、ショーウィンドウで活躍していた頃の独特のポーズのままでたたずんでいます。上流階級のご家庭の部屋では、カツラがややずれた無表情な奥様が、無表情な赤ちゃんを抱き、廊下にはフリフリの女性用ももひきをはいた片足マネキンが並んでいました。

入り口近くでは、やや雑然とした展示だったものの部屋ごとのテーマがはっきりしていたのですが、奥にいくにしたがって何の部屋だかわからなくなり、動物のはく製だけ! 昔のコンピュータだけ! という部屋もありました。この博物館は人々の寄付から成り立っているらしいのですが、次々と物品が舞い込んでくるらしく、館長さんは嬉しい悲鳴を上げているのだそうです。展示したいけどもはやカテゴライズ不能で、納戸の展示と思われる部屋には、なぜかバンベルをもつお兄さん、下着姿のお姉さんマネキンがいました。

学芸員をおき、学術的に検証され、正しく展示された博物館もいいですが、ここのように、細かいことはヌキにして、とにかく見てくれ!と独創的な展示法で迫ってくる博物館も味があります。


営業時間:10:00(日曜11:00)~17:00、月曜休

料金:大人€9.95(5~14歳€8.95)

住所: Rijksweg 87, 3784 LV Terschuur

URL: http://www.ambachtenmuseum.nl/



著者プロフィール

水迫尚子(みずさこ・しょうこ)LinkedIn

出版社2社、1年のイギリス留学を経て、フリーランスの編集者・ライターとなる。編集者としては主に実用書、ライターとしては旅行雑誌/書籍に関わり、その他に企業のCSRの英文編集/チェッカーも行う。旅行媒体の編集者・ライターとして関わった主な書籍に『わがまま歩き 香港』『わがまま歩き マカオ』『わがまま歩き オランダ ベルギー ルクセンブルグ』がある。オランダの観光ガイド「ikganaar」、パン好きが高じて立ち上げた「オランダの茶色のパン」を運営している。



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