日本人が総じて低そうな「CQ」とは?
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突然ですが、「CQ」という言葉をご存知ですか?ハーバード・ビジネス・レビュー(2004年)には「CQ」についてこう紹介されています。
In a world where crossing boundaries is routine, CQ becomes a vitally important aptitude and skill.
(国境を越えることが日常的な世界では、CQが極めて重要な能力およびスキルになる)
IQ(知能指数)やEQ(こころの知能指数)も大切ですが、今後、CQの重要性はますます高まってきます。
1. CQとは
さて、CQとは何か?
CQ(Cultural Intelligence Quotient)とは、一言でいえば「多様性に適応する力」です。CQが高い人は、国籍や民族、宗教、性別、年齢などがさまざまなダイバーシティな環境においてでも、効果的かつ円滑にコミュニケーションを取ることができます(※1)。
残念ながら、日本はCQが低い国の1つでしょう。
日本は、人種のるつぼと言われるアメリカのように多民族が暮らしているわけでもなく、移民率の高いヨーロッパのように国籍や宗教が多彩なわけでもありません。「ごちゃまぜ」感が少なく、小さな違いにも敏感な国なので、CQを高めにくい環境です。
各国がビジネスの場で必要な人材を育成・誘致・保持する力を測った「IMD World Talent Report (世界人材調査)2016」(※2)によると、調査対象の61カ国中、日本は30位。特に「管理職の国際経験」という項目では最下位の61位でした。
グローバル化が進む中、外国人をマネジメントする能力が必要となるケースが増えてきています。また、同じ日本人同士でも、価値観やライフスタイルが多様化してきているので、CQの重要性は増していくでしょう。
2. CQを高めるには?
CQはトレーニングすれば高めることができます。手っ取り早いのは、やはり「異文化」にどっぷりと浸かり、「違和感」のシャワーをたっぷり浴びること。海外への留学や旅もいいでしょうし、国内にいながらであれば、外国人率の高いシェアハウスで暮らしたり、Airbnbなどで外国人を宿泊させるのもいいでしょう。
他にも、内閣府主催の国際交流事業「世界青年の船」はCQアップの特効薬としてオススメです。
3. 「世界青年の船」とは?
今年度で30年目を迎える「世界青年の船」事業。世界11カ国から「各国政府のセレクション」を通過した約240名が参加します。

事業の目的は、以下4つ。
・異文化対応力やコミュニケーション力の向上
・リーダーシップやマネジメント力の向上
・国境を越えた強い人的ネットワークの構築
・各分野でリーダーシップを発揮し、社会貢献活動に従事することをコミットする国際協調精神の育成
これらを達成するために、約40日間、船で数カ国を旅しながら、逃げ場のない船上空間で寝食をともにします。
キャビン内は3名での異文化共同生活。プログラムは非常に趣向が凝らされていて、船内の至る所で侃々諤々の議論(※3)が行なわれる仕掛けになっています。上っ面のコミュニケーションではとても切り抜けられません。

事業全体を通じて、参加者たちの異文化に対する敬意や関心が高まり、違いに対して柔軟度が飛躍的にアップします。「人はみな違うからこそ影響し合い、それぞれの人生がより彩られていく」と、体験を通じて実感します。プログラムが終わってからも参加者たちの交流は持続していくので、異文化経験値は生涯にわたって伸び続けていきます。
この事業はCQを向上させるための絶好のチャンスです。6月11日(日)に昨年度参加者たちによる「帰国報告会」があるので、ご興味がある方はぜひご参加ください。
4. 最後に
今後、「違い」に対して寛容な人とそうでない人で分かれる「ダイバーシティ格差」の時代になっていくように思います。違いに不寛容な人は同じタイプでグループ化するので、息苦しい環境に身をおくようになるかもしれません。
『幸福途上国ニッポン』(アスペクト)の著者である目崎雅昭さんは、「個人への寛容さが幸福度と非常に高い相関関係を持つ」と言っています。違いを認め合えば認め合うほど幸福度は上がるということです。
私たちのデフォルトは「幸せ」な状態です。寛容であればイライラやストレスを感じる機会が減り、デフォルトの幸福が守られやすいことは確かでしょう。
CQを高めることで、仕事でもパフォーマンスが上がり、プライベートでも幸福感がアップしそうですね。CQを高めるべく、意識的に異文化に触れる機会を増やしていきましょう。

永崎 裕麻(ながさき・ゆうま)|Facebook

※1: CQはCultural Intelligence Quotient以外にも、好奇心指数(Curiosity Quotient)やコミュニケーション指数(Communication Quotient)、子ども力指数(Children Quotient)などの意味で使われることがあります。
※2: https://www.imd.org/globalassets/wcc/docs/talent_2016_web.pdf
※3: 昨年度のプログラムでは、全参加者が6つのコース(1. ダイバーシティ推進とインクルーシブ社会の実現 2. 平和構築のための対話型アプローチ 3. 責任あるツーリズム 4. 青年のエンパワーメント 5. 国際貢献活動 6. 防災活動のための人材育成)に分かれ、活発なディスカッションが行われています。
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