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自分の子どもがいじめにあったら「夢を持って」逃げること

自分の子どもがいじめにあったら「夢を持って」逃げること

いじめからは夢を持って逃げましょう! ――「逃げる」は、恥ずかしくない「最高の戦略」』(長野雅弘著、パンローリング)の著者は、数校での15年におよぶ校長職を経て、現在は聖徳大学児童学部教授を務める人物。豊富な現場経験を生かしてこれまでにも多くの著作を残してきましたが、今回は、子を持つ親なら誰でも気になる「いじめ」をテーマにしています。そして、その根底にあるキーワードは、「逃げる」。

そもそも、大きくなってしまったいじめがなくなるのは、非常に稀なケースです。普通は加熱します。だから、「大きくなってしまったいじめはなくならない」という前提に立って、(いじめにあって)苦しんでいるのなら逃げてしまえばいいのです。そのときの大人の役割は、子どもを上手に逃がす手はずを整えてあげることです。これが、大きくなってしまったいじめに対する“正しい”対処法のひとつです。逃げることさえできれば、あとで再起することは難しいことではありません。(「序章」より)

子どもがいじめにあって苦しんでいるのであれば、「夢を持って逃げる」という選択肢も“あり”だという考え方。夢を持って逃げることは恥ではなく、立派な戦法のひとつだというのです。しかも、とても役に立つ戦法といえるのだとか。

では親として、具体的にどうすればいいのでしょうか? まずは第4章「親はいじめに対して何ができるのか」を見てみたいと思います。

自分の子どもは自分たちで守る

学校がいじめを認めていたり、いじめに対して「なんとかしよう」と考えている先生が存在していることは事実。しかし残念ながら、いじめ対策を十分に行なっているとはいえない学校があることもまた事実なのだと著者は指摘しています。隠蔽体質がまだまだ浸透していて、小さな芽のうちに摘み取ることのできない学校もあるというのです。

だとすれば、親がしっかり対策していかなければならないということになります。「学校がなんとかしてくれるはずだ」と思っているようでは不十分。学校に任せても、いじめられている子のことを親身になって考えてはもらえないと思っておいたほうがいいことすらあるというのです。なぜなら、隠すことやもみ消すことには力を使っても、被害者を助けることは二の次になることがあるから。

もちろん先生がすべて悪いわけではありませんが、苦しんでいるいじめ被害者がいるのは事実なのだから、親にも出番があるということです。「子どものいざこざ(喧嘩)に親が出るなんて」という風潮がありますが、いじめは単なるいざこざではないと著者は主張します。それどころか立派な犯罪になるケースもあるからこそ、大人がしかるべき対処をしなければいけないというのです。(98ページより)

「おかしい」と感じたら、子どもの部屋を調べてみる

思春期に入ると、子どもは親と口をきかなくなる傾向にあります。親としては寂しいものですが、それは成長過程において当然のこと。しかし口をきいてもくれないとはいえ、普段からよく見ていれば子どもの異変に気づくことはできるそうです。

そして、「あれ、いつもと違うぞ」と思ったら、解くべき手段は子どもの部屋を調べることだと著者。子どもにあとでなにをいわれたとしても、徹底的に探ってみるべきだというのです。そしてその際には、以下の箇所を重点的に調べることが大切だといいます。

・机の中

悪口を書かれたメモなどが入っていないかどうかなどを調べます。また整理整頓されているかどうかもチェックします(整理整頓の乱れは、心の乱れや不安に起因している可能性があります)。


・ 帰ってきたときの靴の状態や服

靴については、極度に汚れていないか、服については、汚れはもちろん、破られていないかなどを確認。また、朝持っていったハンカチが紛失していたり、ハンカチに血がついていないかなども確認。お金や物が取られていないかなどもチェックします。


・カバンやバッグの中

カバンやバッグが傷つけられていないか、ゴミが入っていないか、落書きがされていないかなどをチェックします。


・ 教科書やノート、筆記用具

教科書やノートに落書きがないか、ページが破られていないか、ページの間にガムがくっついていないか、ペンが折られていないかなどをチェックします。

(103ページより)

「子どもの持ち物を勝手に調べるなんて……」と躊躇せず、子どもを助けるために正しいことをしているのだから遠慮すべきではないと著者は強調します。ただし探ったことは、本人がいうまで待ったほうがいいそうです。(101ページより)

でも、その結果、子どもがいじめにあっていることがわかったとしたら、そこから先はどうすればいいのでしょうか? 第5章「子どもを『いじめ』から上手に逃がしてあげましょう」から要点を抜き出してみましょう。

子どもを逃す手順

「ひどいいじめにあっている子どもを逃がしたい」と思ったなら、次の手順を踏まえるべきだといいます。

1. 教育委員会に出向く

頼ってもなにもしてくれない学校はあるものなので、そういうときは地域の教育委員会に相談に行くといいそうです。その際、おもに次のことを話すことが大切。

◎ 子どもがいじめを受けていることを具体的に話すこと

◎ 親として、何度相談しても一向にいじめが改善しない学校に通わせるのは心配なこと

◎ 親子ともに転校を希望していること

(137ページより)

もちろん、それ以前に学校側と十分に話をしていることが前提ですが、いちばん大事なのは「逃がしたい(転校したい)」という意思をしっかり伝えること。教育委員会は、いじめを原因とする転校の申し出があった場合には、極力それを叶えるように努力してくれるのだそうです。ただし教育委員会側から転校先を斡旋されることはないため、転校先はこちら側で決める必要があるのだとか。(136ページより)

2. 転校先の選び方

「転校する」と決めたとしても、具体的に「どこの学校がいいのか」については悩むところ。「夢を持って逃げる」わけなので、「行きたい学校はどこなのか」について、親だけではなく子どもにも考えさせることが重要。その際に重視すべきは、次の2点だそうです。

1. 場所:転校先は、自分の子どものことを誰も知らない場所にある遠方(隣県など)がいいそうです。なお公立から公立はもちろんのこと、私立から公立への転校も可能。

2. 学力:場所と同様に、子どもの学力を考慮することも大切。インターネットで調べれば、「自分の希望する学校の偏差値がどのくらいか」はすぐにわかります。

3. 転校先を検討するときの情報源

転校先を考えるときの情報源として、「受験ナビ」「インターエデュ・ドットコム」などの学校案内サイトを著者は挙げています。また、インターネットでは拾えない情報が入ってくるだけに、塾からの情報も貴重だとか。

4. 希望の転校先が決まったときは

行きたい学校が決まったら、その学校に連絡して転校希望の旨を伝えます。先生方と親子の面談、親への聞き取り、在籍校への照会、試験などがあり、すべてパスしたら転校手続きをとることになるわけです。

5. 試験について

公立の中学校を除き、転校するにあたっては試験があるのが普通。その試験で希望校レベルの得点をとらなければ入学できないので、普段から学力をつけておく必要があるわけです。

合否は多くの場合、試験当日か翌日にはわかるそうです。希望校側は「なんとか助けてあげられれば」と必死であるだけに、面接時には「どうして、うちの学校を希望したのか」を聞かれることに。そこで、いじめを受けていたこと、いじめのある学校に通わせたくないこと、教育委員会に相談したことなど、それまでの経緯を親子ともに話すべきだといいます。

6. 転校にかかる費用について

転校するということは新入生と同じ扱いになるため、制服や体操服、靴、教材などが必要になります。もちろん入学金や授業料も必要で、私立の場合はもろもろ含めて高額(学校によっては100万円ほど)に。さらに家族で引っ越すことになるとすれば、引越し代金もかかります。そういうことも考えて、転校先を決めるべきだということ。

7. 転校を受け入れてくれる時期

公立高校の場合は、基本的に学期のはじまる前。一般的にチャンスは年2〜3回で、しかも緊急避難的状況を除き、空きがある場合に限られるそうです。小中学校の場合は、無理してでも教育委員会がなんとかしてくれるケースが圧倒的。私立校の場合は、「空き(在籍する余地)があること」「転校試験期間が設けられており、それに合致していること」「学力的合致があること」など、それぞれの学校に内規があるもの。ただし県や地域によってはセーフティネットが設けられていて、いじめ被害者を受け入れる取り決めをしているところもあるそうです。(137〜144ページより)




ひとたび発生してしまったとしたら、そのいじめから逃れることは容易ではありません。だからこそ本書を参考にしながら、追い詰められている子どもをしっかりサポートしたいものです。


印南敦史

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