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移住先のスウェーデンでローンを組んで家を買う方法

移住先のスウェーデンでローンを組んで家を買う方法

2016年3月にスウェーデンへ家族で移住し、2017年1月にストックホルム郊外にマンションを購入しました。スウェーデンへ移住して1年も経たずに家を買ったと言うと多くの方に驚かれますが、スウェーデンでは家を買うことが日本ほど大きなイベントではなく、私が家を買ったと言ってもスウェーデン人は誰も驚きません。

スウェーデンの住宅事情

彼らとしては車を買い替えるぐらいの感覚に近く、1つの物件に生涯に渡り住み続ける人はごく少数です。

独身:ワンルーム → 子なしカップル:1~2LDK → 子持ち家族:郊外に戸建て → 老後:1~2LDK

このようなイメージで彼らはライフスタイルに合わせて家を住み替えるのが一般的です。

我々は移住後しばらくの間は借家に住みましたが、スウェーデンではどういう訳か賃貸物件があまり存在しないため、家賃が高額であったのと、周りの友人や同僚の勧めもあり不動産の購入を決意しました。

スウェーデンの家と聞くと、大きい戸建てをイメージされるかと思いますが、日本と同様で集合住宅もありますし、都心に行けば戸建てなどほとんど見かけることはありません。また、日本には馴染みのないRadhusといって、戸建てが連なったタイプの物件もあります。戸建てほど独立していませんが、集合住宅ほど密着もしていなく、ちょうど戸建てと集合住宅の間のようなものです。

価格帯は日本と同様、都心>郊外、戸建て>Radhus>集合住宅というのが一般的です。

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いわゆる戸建てタイプ。近年、ストックホルム及び近郊の住宅相場は急上昇しており、郊外や地方との価格差が広がっている。国もこれを問題視しており、2016年7月より毎年元金の最低2%を返済することを義務化した法律が施行されたばかりで、それまでは利子のみの支払いで済んだ。
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写真中央奥に見えるのがRadhusタイプの住宅。Radhusとは英語でRow house、”連なった家”の意味で文字通り隣の家との壁が接している。戸建てと比べて物理的距離が近く、ご近所付き合いもしやすい。我々も移住後しばらくはこのタイプの物件に住んでおり、ご近所さんにはかなりお世話になった。スウェーデンに限らず海外へ移住するのであれば、ご近所付き合いがかなり重要になってくるのでこうした物件を探すのがオススメ。
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集合住宅タイプ。これは現在の我家。築51年。郊外でもこのような集合住宅はかなり存在し、価格帯としてはもっともリーズナブル。スウェーデンでは戸建てもRadhusも集合住宅も新築物件はほとんど存在せず、中古物件の築年数は誰も気にしない。気にするべきは共用部の大規模修繕がいつ行われたのか、対象物件のメンテナンスがどの程度行われているかであり、これらが価格を設定する上で支配的となる。ちなみに我家の大規模修繕は10年前に行われており、言ってみれば築10年という感覚に近いかもしれない。
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我家のリビング。ストックホルム中心部より車で30分程の郊外で2LDK、74平米。価格は約3400万円。だがこれは1スウェーデンクローナが13円で計算した場合で、12円だと3200万円、15円だと4000万円となるのでこれだけでは日本の住宅相場とは比較はできない。エンジニアである同僚5人に聞いたところ彼らの物件価格は5000万円~1億円に分布しているところから見れば私の物件はとてもリーズナブル。
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スウェーデンでは共働き世帯が98%。サラリーマン世帯であっても、夫婦共にエンジニアのような割と稼げる職業であればプール付き豪邸に住むことも可能。屋内プール付き物件に住む同僚(私と同じ平社員)もいる。

スウェーデンで家を買う方法

スウェーデンでは新築物件がほとんど存在しないので、不動産屋が仲介役となって売主と買主の間に入ります。日本の中古物件の買い方と似ていますが、異なる点もいくつかあります。

まずは物件の探し方ですが、日本と同様、駅前の不動産屋へ行ってもいいのですが、「Hemnet」というサイトで物件を探すのが主流となっています。

日本でいうところの「SUUMO」のようなもので、地域や条件を入力し検索をすれば色々と見ることができます。

気になる物件を見つけたら、サイトに記載されている物件公開の日に実際にそこまで足を運びます。アポなしでOKです。たいていの場合はHemnetに公開されてから2~3週間ほどで物件公開の日が設定され、週末の昼間に1回、平日夜にもう1回、各1時間ほど内覧の機会があり、売主と不動産屋から直接話が聞けます。

また、日本とは違って、サイトにデカデカと住所が記載されるので公開内覧まで待たなくとも、物件外観やその周辺を探ることも容易です。

注意すべきは、スウェーデンの中古住宅は入札となっており、Hemnetの表示価格は入札開始価格となっています。内覧が終わると、多くの場合は直ちに入札が開始されるので、本当に買う気があるのであれば、現地に行くまでに気持ちを固めておくぐらいの準備が必要です。

しかし、内覧日に出向いた際に、売主より「ごめんね!もう売れちゃった!」と言われるようなことがあります。これは内覧日までに特定の人と水面下で交渉が進み、まとまったことを意味します。私も実際にこの方法で契約しました。私はどうしても現在の物件が欲しかったので、Hemnet公開後、直ちに不動産屋へ連絡をし、その後はオーナーと直接やりとりをしました。公開内覧日の1週間前に内覧をさせてもらい、その後慌ただしくも何とか公開内覧日までに契約を済ませました。

移住したばかりの日本人がスウェーデンで住宅ローンを組むには

スウェーデンに移住したばかりで住宅ローンを組ませてもらえる銀行を探すのにはかなり苦労しました。

実際に3つの銀行に融資を申し込みましたが、いずれも門前払いでした。ウェブ上の申し込みだったので、あれこれ条件を変えてみて気付いたのが、スウェーデン在住期間は問題ではなく、私が妻帯者であることが引っかかっていました。

我家の場合、妻の身分は学生なのでシングルインカムとなり、98%が共働きのスウェーデンでは、我々の世帯収入は他の皆さんと比べるとだいぶ少なくなりますし、銀行からすると珍しいケースとして分類せざるを得なく、またリスクも高いと判断されてしまい、既婚でかつ妻の収入がゼロと記載した瞬間に自動的に”融資不可能”の画面へと切り替わりました。仮に、妻の収入として、僅かな額でも入力すると一気に7000万円ほどのローンが組めることが分かりました。

しかし、ここで諦めてはいけません。スウェーデンでは銀行に限らず、話を聞いてもらうことで四角四面のルールから例外認定をしてもらえる機会が多くあります。

私の場合は、勤める会社の財務トップに状況を説明し、会社と取引している銀行と取り合ってもらうお願いをしました。話をした翌日に銀行から電話があり、なぜスウェーデンで働いているのか、どういう仕事をしているのか、収入はどれだけあるのか、妻は今後働く予定なのか否か、またその計画はどのようなものなのか、などと、まるで企業の面接のような質問をいくつも受けました。

その結果、現在の物件が購入できるだけの十分な額の融資を受けることができました。つまり、彼らスウェーデン人はルールこそもちろん尊重しますが、実態に合わせて柔軟にそして合理的に対処していく印象があります。スウェーデンに住んでいると、銀行に限った話ではなく、色々な場面でそう感じることができます。「ルールですから」という説明をされて「はいはいそうですか」と言う人はまずいないでしょう。

また、上述の入札に参加するにあたっては、銀行から発行されるLånelöfte (ロァネルェフテ) と言われる、融資可能上限額が記載された証明書が必要となってきます。住宅購入希望者がスウェーデン人であればおそらく聞かれることがないでしょうが、私のような移民となると売る側からしたら、購入希望者がローンを組めるのか不安に思うのは当然のことです。そんな時にこの証明書があれば話がスムーズに流れます。落札はしたがローンが組めない、という最悪な事態だけは避けたいものです。

頭金を何%入れるかも重要

日本では頭金0円でも住宅ローンが組めますが、スウェーデンでは住宅購入価格の最低15%を頭金として用意する必要があり、これは移民でもスウェーデン人でも誰でも同じです。そして、元金の毎年最低返済率はこの頭金をどれだけ入れるかで、下記のように変わってきます。

頭金 ※1年間の最低返済額 ※2
15%〜29%2%
30〜49%1%
50%以上0%(利息のみの返済でOK)

※1 住宅販売価格に対する頭金の割合

※2 借入額に対する割合(つまり販売価格-頭金)

ローンの利息は日本と同様で最近は歴史的に低く、私が選んだ銀行では変動金利で約2%となっています。

いくらの物件を狙うのか、そして頭金をどれだけ用意できるのかで毎月の支払額がだいたい計算できます。

スウェーデンで本気で物件探しをするならば、まずはこのLånelöfteと頭金を用意し、その後Hemnetサーフィンを存分に楽しみましょう。そしてお気に入りの物件があれば公開内覧日に見に行ってみると良いと思います。

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旧オーナーと鍵の引き渡しの日。結局、入居するまでメールや電話のみのやりとりで、不動産屋にも銀行にも一度も会わなかった。その一方、この方とは事あるごとに会ったので、物件引き渡しの日にはすっかりお友達。今でも交流は続いていて、洗濯機の使い方や、ネットの契約等、色々な質問をさせてもらっていて、毎度丁寧に回答をしてくれていて非常にお世話になっている。


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旧オーナーの新居にて。玄関とダイニングのランプが不要になったとのことで引き取りに行った。つまり、我家の玄関とダイニングのランプは再び戻ってきたことになる。奥様は我々同様妊婦さん。我々の第二子と同時期に産まれるそうで。スウェーデンでは、この旧オーナーのように子供ができると大きな家に引越す傾向にある。ライフスタイル・家族構成に合わせて家もコロコロ変えていくのがスウェーデン流。我家も5年程経過し、妻が職を得た段階で大きな戸建てへ引っ越したい。
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スウェーデンではDIYが極めて盛ん。家を買って、壁を壊す、壁を作る、壁の色を塗る、キッチンを入れ替える等、DIYのレベルがかなり高い。写真は我家のダイニングで、私も自分で床を張り替えてみることに。
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買ってきた床板同士をはめ合わせて余分なところを切っていくだけ。やってみればそんなに難しくない。やり方はさまざまだが、今回は既存の床の上にそのまま新しい床を敷くことにした。床の構造を調べ、ホームセンターでアドバイスをもらうと良い。私はこれが初めての経験であったので、もうすぐ終わるころにやっとコツをつかんだ。
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我ながら、素人がやったとは思えない出来栄えに大満足。悪戦苦闘しながら3日で完了。キッチンとダイニング、合わせて20平米程が約5万円で済んだ。もちろん床板の質はピンキリで、お金をかけようと思えば価格は青天井となる。これですっかり自信が持て、以後何でも自分でやるようになった。
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玄関のホールも同様に床を変更することに。こちらは変更前。
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こちらが張替後。前回のキッチンとダイニングの経験が生きたため、短期間で終わり、かつ仕上りもより美しくなった。スウェーデンの人たちはこのように、いつも家のどこかをいじっている人が多い。仕事を早く終え、自分の家を延々と改造・メンテナンスをする人が会社にも多く、私もその話の輪に入れるようになってスウェーデン社会の一員になれた気がして非常に嬉しい。

最後に

冒頭に書いた通り、スウェーデンではライフスタイルや家族構成の変化に合わせて家を住み替えるのでオーナーはコロコロと変わっていきます。また、オーナーは丁寧にメンテナンスや改造をするのも当たり前で、この、メンテナンスや改造ひとつひとつが、よりその家への愛着を増すことになり、同時に資産価値を維持・向上させていくことになります。

スウェーデンで家を買い、メンテナンスや改造をすることでスウェーデンの文化の醍醐味を味わえると言っても過言ではないでしょう。


吉澤智哉(よしざわ・ともや) | Blog | Facebook |

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東京都出身ストックホルム在住。妻と3歳の娘を持つ35歳。2016年3月より、スウェーデンの自動車部品メーカー Öhlins Racing ABにて研究開発業務に携わる。

12~14歳は米国オハイオ州で過ごす。日本大学理工学部機械工学科を卒業後、(株)本田技術研究所及び(株)ホンダレーシングにてオートバイの車体設計に9年間従事。娘の誕生をきっかけに、ワークライフバランス向上を目指し32歳でBMW Japanへ転職、品質エンジニアとして2年間勤めた後に更なる家族の幸せを求めスウェーデンへの移住を決意。

吉澤智哉

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