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眠る前のウトウトは禁物? 仕事のパフォーマンスを高めるための眠り方とは

眠る前のウトウトは禁物? 仕事のパフォーマンスを高めるための眠り方とは

学生時代のみならず、社会人になってからであっても、「もっと頭がよければ…」と思わされる機会は少なくないものです。しかし、本をたくさん読むとか、なんらかの問題に取り組むとか、インプットする時間を増やすことで頭をよくしようとするとしたら、相応の時間が必要になってくるのも事実。

しかし、時間に制限がある人でも頭をよくする方法があると主張するのは、『頭がよくなる眠り方』(菅原洋平著、あさ出版)の著者。睡眠に関する多くの著作を持つ作業療法士、いわばリハビリテーションの専門家です。

そのキーワードこそが、本書のテーマとする「睡眠」なのです。(中略)毎日の眠り方をちょっとだけ工夫すれば、無理に時間をつくったりしなくても、記憶力を高めたり、思考力を上げることが実際に可能なのです。

なぜそんなことが可能なのかといえば、寝ている間に私たちの脳は学習し、成長しているからです。この脳の機能を有効に活用して、頭をよくすることこそが本書のテーマです。(「はじめに」より)

睡眠と頭のよさは、無関係なことのようにも思えます。なのに寝るだけで頭がよくなるとは、いったいどういうことなのでしょうか? どう眠れば、頭をよくすることができるのでしょうか? 「実践編」と銘打たれた第3章「頭がよくなる基本の眠り方」から、いくつかのポイントをピックアップしてみましょう。

「ベッド=睡眠」と脳に覚えさせる

睡眠の力を鍛えていくにあたって、著者はまず、睡眠の力を下げてしまう2つの典型的なNG行動を排除することを勧めています。それは、「ベッドの上でなにかする」ことと、「就寝前にウトウトする」こと。

ベッドの上に「眠り」に関係ないものを置いたり、あるいはベッドの上で読書したり、スマホをいじったりと、眠りに関係ないことをするケースはよくあります。時間を持て余したり、あるいは眠るための準備としてそうすることもあるでしょう。しかし、こうした行動によって睡眠の力が低下するというのです。なぜなら脳は、「場所」と「行動」をセットで記憶する仕組みを持っているから。

たとえばベッドの上で読書をすると、文字を読む言語野や視覚野が働くため、「このベッドは文字を読む場所だ」と脳が記憶してしまうというのです。というのも、脳は作業を場所とセットで記憶し、再びその場所に行こうとしたとき、以前そこで使った脳の部位を働かせるという特徴があるから。これはフィールドフォワードという、脳が効率化を図る仕組みだといいます。

いってみれば、効率化のための仕組みが裏目に出てしまうわけです。そこで著者が勧めているのが、「場所を切り分ける」こと。「ベッドの縁が眠りのスタートライン」だと脳に教えこめばいいという考え方です。

たとえば就寝前に本を読む習慣がすでにあるのなら、その習慣は変えなくてもいいので、ベッドの横に椅子を置き、そこで読んでみる。そして眠くなったら、本をその場に置いてベッドに入る。こうすれば、脳は「ベッドは睡眠をする場所」と記憶し、ベッドに入りさえすれば、速やかに眠りの作業をはじめてくれるということ。

またレム睡眠(睡眠の主体であるレム睡眠に対し、眠っている間に、眼球が急速に動いている状態)時には外部の刺激を監視しながら眠るため、ベッドの上に物があると「巣のなかに敵がいる」と反応し、目が覚めてしまうのだそうです。

こうした無駄な刺激を避け、ベッドが安心して睡眠作業のできる場所であることを脳に教えるためにも、ベッドの上に物を置かないことが重要であるという考え方。(74ページより)

眠気をためて勢いよく眠る(睡眠圧)

目覚めている間、脳のなかには徐々に睡眠物質がたまっていくそうです。充満した睡眠物質を分解する作業が「睡眠」であり、水分物質が充満しているほど深い睡眠が出現するということ。この眠気のたまり具合が「睡眠圧」。人間の睡眠は眠っていない時間が長ければ長いほど、その後の睡眠がどーんと深くなるというのです。

このことについては、パチンコのゴムをイメージするとわかりやすいと著者は表現しています。ちょうど、パチンコのゴムをグーっと引っぱって限界になったところで放すと、石が遠くに飛ぶようなイメージ。


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たとえば徹夜をし、眠くて仕方がないところで眠ると、ぐっすり眠れるもの。それが、睡眠圧による効果だというのです。つまり睡眠の質を高めるには、就寝前までの睡眠圧を高めることが重要だということ。

逆にいえば、仕事帰りの電車のなかでウトウトするとか、お風呂に入りながらうとうとするなどの「ウトウト」が、睡眠の質を台なしにしてしまうというのです。せっかくためてきた睡眠物質がウトウトした瞬間に、パチンコのゴムを放したときのように一気に失われてしまうというわけです。

ウトウトしたあとに睡眠圧は残っていないので、本睡眠のときに睡眠物質があまりためられず、深い睡眠が得られなくなってしまうことに。そこで「たくさん眠っているのに疲れがとれない」「眠り足りない」という人は、普段から本睡眠の直前にウトウトしていないかとチェックするといいそうです。

そして大切なのは、無理に起きているよりも、眠くなったら思い切って寝てみること。1日の睡眠圧が高まった状態から、ひとたまりの睡眠をつくるわけです。そうすることで睡眠の質が向上し、すっきりした頭で起きることができるというのです。

起きている間はすっきりした頭で集中し、夜には睡眠を使って脳の情報処理をする。理想的なのは、そんなサイクルだと著者はいいます。(78ページより)

4-6-11睡眠の法則で睡眠を鍛える

「起床4時間以内に光を見て、6時間後に目を閉じ、11時間後に姿勢をよくする」(82ページより)

著者によれば、これが睡眠を効率化するためのもっとも基本的な法則。「4-6-11睡眠の法則」と呼ばれ、さまざまな企業で生産性を向上させる方法として活用されているのだそうです。これは、メラトニンリズム、睡眠—覚醒リズム、深部体温リズムという3つの生体リズムを活用しているもの。


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生体リズムには、1日のなかで最高になる時間帯と最低になる時間帯があり、この高低差が「振幅」。振幅の大きさが、そのまま睡眠の効力を決めるというのです。

日中にはっきり目覚めていて、夜間はぐっすり眠っているとしたら、それが振幅の大きい状態。一方、日中はぼーっとして集中力を欠いているのに、夜間の睡眠でもぐっすり眠れていないとしたら、それは振幅が小さくメリハリがない状態だということ。この法則を鍛えることで、生体リズムの振幅(睡眠の力)に大きなメリハリをつけることができるというわけです。

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なお、生体リズムが整っているのか乱れているのかは、次の2つの質問でわかるそうです。

1. 午前、午後、夕方、眠る前で、もっとも眠いのはいつですか?

2. 午前、午後、夕方、眠る前で、もっとも眠くなく、頭が冴えているのはいつですか?

(84ページより)

通常は、眠る前にもっとも眠くなり、午前中にもっとも頭が冴えるはず。「いちばん眠いのは午前で、いちばん冴えているのは眠る前」という人は、生体リズムが乱れているのだそうです。

リズムに乱れがあると、「実際に仕事や勉強にかかっている時間に対し、集中している時間が少ない」「資料や問題を読み込むのに時間がかかる」など、成果が見合っていない可能性が高いのだとか。同じ時間を使うのであれば、睡眠時間を削るよりも、頭が働くべき時間に短時間で集中して仕事や勉強をし、脳が働くリズムをつくることが先だという考え方です。(82ページより)



このとおり、著者が提唱していることは決して難しいことではなさそうです。だとすれば、試してみる価値は十分にあるはず。本書を参考に睡眠の質を変え、頭の状態をよりよくして見れば、仕事のパフォーマンスが向上するかもしれません。


印南敦史

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