特集
カテゴリー
タグ
メディア

孫正義が実践する「高速PDCA」とは?

孫正義が実践する「高速PDCA」とは?

孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきた すごいPDCA―――終わらない仕事がすっきり片づく超スピード仕事術』(三木雄信著、ダイヤモンド社)の著者は、ソフトバンク社長室長として、孫正義氏のもとでさまざまな実績を積み上げてきた人物。注目すべきは、さまざまな業務を通じ、「高速PDCA」の土台を構築したということです。

いうまでもなく、PDCAとはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の略。この4段階をらせん状につなげ、そのサイクルを1周ごとに向上させ、継続的な業務改善を行うという考え方です。このPDCAに関する本書のポイントは、著者が孫社長の仕事のやり方を徹底的に分析した結果、孫社長の仕事に次のような特徴があることに気づいたという点です。

・「目標へのこだわり」が異常に高い

・目標を達成するために、「ありとあらゆる方法」を試している

・「数字で厳密に」試した方法を検証している

・「常にいい方法」がないかと探っている

そう、PDCAに忠実に仕事をしているのです。

でも、少しだけ普通のPDCAの回し方とは違いがあります。それに気づいた私は、何が違うかを明らかにし、従来のPDCAを改善して新しいPDCAを生み出すことに成功しました。(「はじめに」より)

つまり、それこそが著者の提唱する「高速PDCA」。この仕事術を使えば、誰もが、いまよりずっとたくさんの仕事を、より高い精度で扱えるようになると断言しています。第1章「高速PDCAを動かす8ステップ」を見てみましょう。

高速PDCAを動かす8ステップ

PDCAについての基本的な考え方をおさらいするために、著者はここで、売り上げに伸び悩むコンビニの例を挙げています。

このコンビニが利用者にアンケートをとった結果、売り上げが伸び悩んでいる原因は、商品の魅力不足にあることがわかったそうです。そこで店長は、さっそく新商品を入荷することにしましたが、どんな商品が受け入れられるのか見当もつきません。そこで思いついたのが、PDCAサイクルで売れる新商品を探すこと。

1. 新商品の一覧から売れそうな商品を1つ選ぶ

2. 新商品の1カ月の販売目標を立てる(PLAN)

3. 選んだ商品を売り出す(DO)

4. 1カ月後、新商品の売れ行きを検証する(CHECK)

5. 売れなかった理由を分析し、より売れそうな新商品を売り出す(ACTION)

6. 2.〜5.のプロセスを繰り返して、売れそうな新商品を残す

(60ページより)

こうして売れそうな新商品にあたりをつけていくと、いつかはそのお店の売り上げを改善する新商品が見つかる。これがPDCAサイクルの基本。ソフトバンクでもこの基本の考え方を大切にしているものの、次のような工夫をしてさらに速く確実にPDCAを回しているというのです。

1. 新商品の「1カ月の販売目標」を決める

2. 「1カ月の販売目標」から逆算して、「1日の販売目標」を立てる

3. 新商品のリストを作り、1カ月と1日ごとの販売計画を立てる(PLAN)

4. リストに挙がったすべての商品を同時に販売する(DO)

5. 毎日、「1日の目標」を達成できたか検証する(CHECK)

6. 検証をもとに、商品の並べ方、見せ方などを毎日改善する(ACTION)

7. 1カ月後、どれが「1カ月の販売目標」を達成できる商品かを数字で検証する

8. 「1カ月の販売目標」を達成できる商品に絞って販売する

(61ページより)

つまり、通常のPDCAと異なるポイントは、次の4点だということになります。

・「大きな目標」(1カ月の販売目標)と「小さな目標」(1日の販売目標)がある

・1つの商品を順番に試すのではなく、複数の商品を一度に試す

・1カ月後に結果を検証するのではなく、毎日結果を検証している

・一番すぐれた商品を絞り込み、そこに集中している

(62ページより)

果たして人気になりそうな商品は、おにぎりなのか、アイスなのか、パンなのか、飲み物なのか? もしもコンビニ利用者や周辺住民の属性や行動パターンを詳細に調べ上げる余裕があるなら、ヒットしそうな商品の目星をつけることはできるかもしれません。しかし、それもあくまで予測であり、確実な答えとはいえないわけです。

ならば、最初からたったひとつの正解を見つけようとするのではなく、ヒットしそうな商品をすべて並べてしまえばいい。そうすることによって、なにが売れる商品なのかが自ずと明らかになるということです。いわば、これが高速PDCA。

この方法であれば、通常のPDCAよりも速いスピードで、なおかつ正確に、どれが主力の商品かを判断することができるわけです。仕事の仕組みの違いが、そのまま結果へと直結するということ。

1. 大きな目標を立てる(週、月単位など)

2. 小さな目標を立てる(1日が原則)

3. 目標達成に有効な方法をリストアップする

4. 期間を決めて、すべての方法を同時に試していく

5. 毎日、目標と結果の違いを検証する

6. 検証をもとに、毎日改善する

7. 一番すぐれた方法を明らかにする

8. 一番すぐれた方法を磨き上げる

(64ページより)

つまりはこの8ステップが、高速PDCAの流れだというわけです。(58ページより)

ソフトバンクは高速PDCAで急成長した

ご存知のとおり、ソフトバンクは創業からわずか30数年で8兆円企業へと成長しました。著者によれば、それを実現できたのは、ソフトバンクが他社とは違う戦略を持っていたからで、それこそが高速PDCAなのだそうです。

企業が大きくなるためのプロセスとして、日本で多いのは「自社の置かれた市場における機会と脅威をとらえて、自社の強みと弱み、競合他社の強みと弱みの分析に基づいた企業の維持・発展をめざす」という戦略であるはず。創業者が得意なことを事業として拡大していったり、ビジネスセンスにすぐれた技術者が、持ち前の技術を使って従来になかった便利なものをつくり、それを本業にしてビジネスを拡大していくなどのケースです。

しかしソフトバンクの場合は、厳密な本業がないというのです。孫社長の戦略は、「自社が優位性を獲得できる可能性のある新しい市場を探索・選択し、その優位性を確立するためのヒト・モノ・カネ・情報の経営資源を交渉によって短期間に調達し、一気にナンバーワンをめざす」というものだとか。つまり新規事業をどんどんつくっていき、その事業を成長させることで企業規模を拡大していくということ。

事実、ソフトバンクのグループ企業は通信事業から携帯電話の流通事業、金融業、球団の経営、情報発信サイト、出版、発電事業、ゲーム事業、ロボット事業など多くの分野にわたっています。通常、最初は孫社長が社長職に就き、ある程度規模が拡大したら部下に会社を任せ、次の新規事業の育成に切り替えるのだそうです。

「将来、どの事業が成長しているのか」ということはだれにもわかりません。

だから、できるだけ多くの手段を考えて、それを実行する。そうすることで目標の実現可能性を最大化していったのです。(73ページより)

これこそ、まさに高速PDCAだということ。分野を問うことなく「今後伸びそうな事業はなにか」を探し、可能性があると思えば次々に投資していく。そのなかから伸びそうな事業に資源を集中し、急拡大させていく。最初に本命の事業はなく、成長したものが本業のひとつになっていくというわけです。(70ページより)


こうした基本的な考え方に基づき、以後の章では高速PDCAを日々の仕事で実践するためのコツが解説されています。決して難しいものではないだけに、自身の業務に応用できるはず。仕事を効率化させたいのであれば、必読の1冊だといえます。

(印南敦史)

swiper-button-prev
swiper-button-next