特集
カテゴリー
タグ
メディア

「健康でありたい」という意識は世界共通。Fitbit CEOジェームズ・パーク氏インタビュー

「健康でありたい」という意識は世界共通。Fitbit CEOジェームズ・パーク氏インタビュー

新年になると、「今年こそ運動を習慣化する!」という目標を立てるものの、いつの間にか続かなくなってしまいます。ダイエットも全く同じですが、運動のモチベーションを長期間にわたって維持するのは簡単ではありません。

では、どうしたら良いのでしょうか? アクティビティートラッカー(活動量計)のブランドで知られ、市場シェア1位で、世界で2900万人のユーザーを擁する企業、Fitbit(フィットビット)は、「計測することが第一歩」と考えているようです。

今回、ライフハッカー編集部は、そんなFitbit社のCEO及び共同創設者であるジェームズ・パーク(James Park)氏にインタビューする機会を得ました。同社のサンフランシスコ本社を訪れて見えてきたのは、Fitbitを始めとする健康系ウエアラブル機器の未来と可能性です。

※ この記事は同社のプレスツアーに参加し、交通費の支給を受けたうえで執筆しています。

Fitbitとは何か

Fitbitって何? という人のために、Fitbitについての予備知識をまず説明します。Fitbitはいわゆるアクティビティートラッカー(活動量計)と呼ばれるデバイスで、腕などに付けて使うウエアラブル機器です。日々の歩数や活動量、睡眠時間などを記録し、データとしてまとめてくれるというもの。このデータを健康維持やフィットネスなどに役立てることができます。

Fitbitの魅力は、自分のフィットネス状態をシンプルに可視化してくれることにあります。測定項目は、機種によりますが、今回試しているCharge2であれば、歩数、心拍数、睡眠時間、消費カロリー、エクササイズの種類、総エクササイズ時間などで、これらをスマホのアプリと同期して、まとめて記録・確認できます。スマートなのが、睡眠時間を自動で識別してくれるところです。ウォーキング、ランニングといったエクササイズの種類も自動で識別して記録してくれるので、普通に生活していれば特別な操作なしで、自動的にデータが蓄積されていきます。

170131Fitbit_app1.jpg
(左)Fitbitアプリのダッシュボード画面。(中央)有酸素運動によるフィットネスレベルのスコア(VO2MAX)。(右)Fitbitが自動認識したエクササイズ。

また、おもしろいと思ったのが、有酸素運動によるフィットネスレベルのスコアです。これは、体がどれだけ酸素を取り込む能力があるのかを指標化したもので、心拍数やフィットネスデータを元に、同年齢の人と比較して自分がどれくらいエクササイズできているかを示してくれます。単純に歩数やエクササイズ時間のデータを見ただけでは、自分がどれだけ運動できているのかわかりにくいですが、このような指標があることで自分の健康度がよくわかります。

170131fitbitblaze3.jpg
GPS内蔵のハイエンドモデル、Blaze。

FitbitはWiiの体験から生まれた

機能性が高いFitbitですが、実際に運動不足の解消に役立つのでしょうか? Fitbitの創業の経緯も含めて、同社の共同創設者でありCEOのジェームズ・パーク氏にお聞きしました。

── Fitbitを創業した経緯について教えてください。

パーク氏:少し日本に関係があります。2006年12月の終わり、私は任天堂のWiiを数時間も並んで購入しました。実際にプレイしてみて、衝撃を受けました。Wiiはテレビゲームの固定観念を崩したのです。テレビゲームといえば1人で暗い部屋で黙々と、みたいなイメージでしたが、Wiiのゲーム体験はフィジカルで、家族や友人を巻き込んで楽しむスタイルでした。

でも、Wiiの素晴らしい体験はリビングルームの中に限られたものでした。この体験をポータブルな形でリビングルームの外に持ち出せないか、と思ったのがFitbitが生まれたきっかけです。

── 健康のためにエクササイズをするのが大切だと、頭ではわかってはいても、私も含めて大半の人はなかなかやる気が起きない、という現状があります。Fitbitを使って、どのようにモチベーションを保ったら良いと思いますか?

パーク氏:1つのことが重要というわけではなく、さまざまな要素が関わってエクササイズをするモチベーションを促すことができると考えています。私が特におもしろいと思っているのは、ソーシャル体験です。Fitbitから得られたユーザーデータを解析すると、一緒にFitbitをつけてエクササイズする友だちが増えれば増えるほど活動量が増えることがわかりました。友だちが1人増えれば、(最初の7人までは)1日の歩数は500〜1000歩ほど上がります。なので、一緒にFitbitをつける友だちを作ること、Fitbitのアカウントに友だちを増やすことが1つのモチベーションを上げる方法だと思います。

── データをただ集めるだけでなく、活用することが重要だと感じます。今後、どんな形で活用することを想定していますか?

パーク氏:すでにFitstar(フィットスター)というサービスを展開していて、Fitbitのコア製品に位置付けています。Fitstarはエクササイズのパーソナライズ指導をしてくれるサービスで、Fitbitのデータからユーザーのエクササイズレベルを理解して、次にどんなエクササイズをしたら良いかを教えてくれます。これまでのエクササイズ指導コンテンツはユーザーが誰でも同じコンテンツを提供するだけの静的なコンテンツだったのですが、Fitstarはユーザーに合わせてコンテンツが変化する動的なコンテンツです。

── 日本市場へのローカライズについて教えてください。

パーク氏:Fitbitが創業当初から大切にしてきたことは、Fitbitはどこかの国だけで販売したり、特定の国の人向けに作ったりしているわけではない、ということです。Fitbitはかなり初期の段階でグローバルに展開してきました。というのも、健康でありたい、体型を保ちたいと思う意識は、国や文化を問わず、世界共通だからです。

ただ、文化によって健康についての考え方や方法論の好みに違いはあります。これは興味深いのですが、例えばドイツ人はエクササイズに綿密に決められた計画があるほうが良いと思う傾向がありますが、フランス人はあまりエクササイズの計画がハッキリ決まっていないほうがいいと考える傾向があります。また、エクササイズをする目的についても、例えばアメリカ人はよりアクティブになるためと答える人が多いですが、中国ではバランスをもたらすため、日本では病気にならない体づくりのため、という回答が多いです。

とはいえ、健康的でありたいというニーズがあるのは同じで、大きな可能性を感じています。

── これまでのFitbitの進化を見ると、搭載するセンサーの種類を増やすことでFitbitの価値が高めてきました。今後、どのような種類のセンサーに興味を持っていますか?

パーク氏:センサーの種類を増やすという課題はバッテリーだけでなく、スペースの課題でもあります。腕に身につけられるスペースには限りがあるからです。睡眠障害や循環器系疾患といった病気のことを考えると、少なくとも深刻な状態になる前に何かしらの警告をすることは技術的に可能です。Fitbitはこれまでの研究開発を通じてさまざまなことがわかるようになりました。これからの発展を楽しみにしていてください。

── Fitbitの最新モデル、Charge2やFlex 2は非常に人気のあるモデルだと聞いています。これらのモデルの開発から学んだことについて教えてください。

パーク氏:これまでの開発を通して学んだことの1つご紹介すると、「1つのモデルがすべてを兼ねることはない」ということです。ユーザーはそれぞれ異なる好みをもっているし、大きさも違えば、求めるバッテリー持続時間、1つの製品に払ってもいいと思える金額も異なります。私たちが開発したFitbitの製品にはさまざまな種類がありますが、それぞれが異なる目的をもっています。例えば、Flex2はウェアラブルながら、身につけていることを忘れられる製品です。それは製品の薄さでもあり、耐水性などの機能でもあります。ウェアラブル機器に対して「身につけていることを忘れたい」という好みを持った人にはFlex2は響く商品でしょう。

Charge2も人気商品なのですが、こちらはどちらかというとコア商品であり、さまざまなタイプの人に、ぜひユーザーに使ってもらいたいおすすめの機能(有酸素運動によるフィットネスレベルのスコアや、呼吸ガイドなど)を詰め込みました。

── 最後に、日本のユーザーへのコメントがあればお願いします。

パーク氏:Fitbitと聞くと、多くの人は「活動量を計測する企業」だと思っています。しかし、私たちはただ計測する以上のことができると思っています。例えば、高血圧や糖尿病といった慢性疾患は、定期的にエクササイズをする、といった生活習慣を変えることで予防できる可能性が高くなります。

現代のヘルスケアは治療医学をベースに作られています。つまり、それは、病気になったらどう治すか、ということです。でも、生活習慣病のような慢性疾患はどうやってならないように予防するか、という予防医学の考え方が重要です。Fitbitは病気にならないようにどう予防するか、という分野でもっと活躍できると考えており、大きな社会的意義を感じています。

先ほど、日本には「病気にならない体づくり」というニーズがあることをお伝えしました。各国でそれぞれ異なるエクササイズのニーズに合わせて、Fitbitはこれからもユーザーに合った製品やサービスを提供していきます。


Fitbitが登場してから約10年。今回最新モデルのCharge2を使ってみて使いやすさは大幅に改善しています。製品価格も、エントリーモデルなら数千円、ハイエンドモデルでも2万円ほどで購入できる手軽さもうれしいところです。

ただ、Fitbitが向かっている方向性は、ハードウェアやソフトウェアの進化だけではないと思いました。

1つの実験がすでに始まっています。

2016年2月、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社は、同社社員3000人健康増進への取組みとして、「Fitbit Group Health」の導入を発表しました

これは、Fitbitのデバイスを社員に配布して、日々の運動量などを計測し、疾病と活動データの因果関係を分析する取組みです。同社は、Fitbitで得られたデータを活用した新しい保険商品の開発を検討する、としており、これが実現すると、Fitbitで日々エクササイズをしている人は病気になるリスクが低いと見なされて保険料が安くなる、といった全く新しいタイプの保険ができる可能性があります。ユーザーからすれば、「保険料が安くなるならもっと運動をしよう」という気になるのでお互いにメリットがありそうです。

そして、メリットがあるのは企業や個人だけではありません。2015年に概算医療費が41.5兆円を突破した日本にとって、健康な人を増やすことは、社会全体の課題でもあるのです。

ヘルスケアの領域でFitbitはこれからどんな一手を打ってくるのか、期待を込めて注目していきたいと思います。

(文・写真/大嶋拓人)

swiper-button-prev
swiper-button-next